明日死ぬ君に、愛を囁く

香月 樹

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#3 この子となら、一歩踏み出せると思った。

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後輩に告白された。

彼はとても天真爛漫で、見た目もかっこいい・・・というより可愛いかな。
まるで元気な小動物のようだ。クリクリな目なんてまさしく栗鼠りすのようだ。
いつも元気な笑顔がとても眩しくて、まるで太陽のような子だ。

女子とも仲が良いし、とても人気がある。彼女がいないのが不思議なくらいだ。

そんな彼が、どうして僕なんかに告白したのだろうか?
思わず「え???」ってビックリした。顔に出てなければ良いんだけど。

血が出た時の対応に気を付けなければいけないので、
周りに迷惑が掛からないよう、HIVの陽性者である事は身近なところには伝えてる。
隠して無いから知ってると思っていたのだけど、余り気にしてないのかな?

もしそうなら、なんか嬉しいな。

だいぶ慣れては来たけど、好奇の目にさらされたり、
腫れ物に触るように扱われたりは、やっぱり正直良い気はしない。

だから、人との接触は極力避けて来たし、まともな恋愛や結婚は無理だと諦めていた。

そんな僕の事を好きだと、大好きだと、真っ直ぐな目で言った。
クリクリな目に、緊張からかうっすら涙まで溜めていた。

だから思わず「いいよ。」って答えてた。

僕は人として彼が大好きだ。いつも彼の純粋さに癒されている。
そんな彼の言葉に応えられずにいれようか。

当然男性との恋愛経験なんてないし、
伝染うつすかもしれないと思うと怖くて、女性とも付き合った事が無い。
一方的に好きになる事はあっても、いけない事だとその想いを閉じ込めて来た。

そう、僕はゲイじゃない。

これまで好きになったのは女性ばかりだ。
でも、今大事に思う相手は、家族以外では彼だけだ。
時折、その行動を愛おしいと思う事さえある。これもきっと好きの1つだと思うんだ。

ハッキリとそう思えたから彼の告白に応じた。
付き合っていけば、好きの形が変わるかもしれない、そう思えたから。

それは愛情とは言えないのかもしれないけど、
それでも僕は彼の気持ちと、自分の今の気持ちを大事にしたい。

これまでは恋愛に臆病で、自分で線を引いていたけど、
きっと彼なら「ほら、行こうよ」って手を引いて、その線から引きり出してくれる。

そう思えたから、僕は彼と一緒に生きて行こうと決めた。

そうは言っても、勿論僕はいつ病気が発症するかわからない身だから、
いつまでも彼を自分の都合で繋いでおく事は出来ない。

彼にとって枷になる。負担になる。彼から、あの笑顔を取り上げてしまうかもしれない。
彼には幸せになって欲しいから、僕は自分の中で一緒にいる期限を決めた。

彼が別れようと言うまで。
もしくは、病気が発症するまで、と。
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