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プロローグ
王国暦232年12月3日
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「……以上が、今回の報告となります」
王城内の一室で、俺は部下からの報告を受けていた。
その内容は、予想通りと言うべきか、最悪のものであった。
──“光神の怒り”。
先日から立て続けに起こっている事件の総称だ。
最初の一件目は、王国南部のとある農村で起きた。
そこから徐々に範囲を広げながら、今では王国全土に被害が広がっている。
光神教の司祭達が言うには、これは神からの天罰なのだそうだ。
なんでも、彼らが信奉する光神様とやらが、地上に降臨なさったらしい。
そして、人々を裁く為にこの災害を起こしているのだとか。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。
俺の名は、クラウス。
王国の貴族にして、国王陛下直属の近衛騎士団長を務めている。
「それで、例の件はどうなっている?」
「はい。現在、教会関係者を中心に捜査を進めておりますが、未だ手掛かりは掴めておりません」
例の事件というのは、他でもない“黒い箱”についてである。
実は、事件後すぐに俺の私室に黒服の男がやってきたのだ。
その男は、『我々は“黒い箱”を追っている』とだけ言って、そのまま帰っていった。
恐らく、俺以外の人間に接触している者はいないはずだ。
「そうか。引き続き、何かわかったら知らせてくれ」
「かしこまりました」
そう言って、部下は一礼すると部屋から出ていった。
「……ふぅ」
俺は椅子にもたれかかり、大きく息を吐く。
正直、お手上げ状態だ。
そもそも、俺が知っている情報などほとんどないのだから。
“黒い箱”なんてものは存在しないし、そんなものを盗んだ覚えもない。
となると、考えられる可能性は一つしかない。
やはり、あいつらの仕業か。
「まったく、厄介な事をしてくれるな……」
そう呟いて、天井を見上げる。
もし、このまま奴らの思惑通りに事が運べば、この国は終わるかもしれない。
いや、それどころか世界そのものが……。
「……止めよう」
今はあれこれ考えるよりも、目の前の問題を解決する事が最優先だ。
まずは、少しでも情報を集める事にしよう。
その為にも、まずやるべき事は……。
「失礼します!クラウス団長!!」
突然、部屋の扉が開かれて、一人の兵士が転がり込んできた。
その兵士の顔は青ざめていて、酷く怯えているように見えた。
「……どうした?そんなに慌てて」
「そ、それが、たった今連絡が入りまして、北部にある村が魔王軍から襲撃を受けたと……!」
「なにっ!?」
それを聞いた瞬間、思わず立ち上がっていた。
王国の北部は、魔王の統治する国と国境を接している。
長年、人間と魔族は戦争を続けていたのだが、ここ最近になって、急速に情勢が悪化していた。
つい先日も、王都の目と鼻の先で大規模な戦闘があったばかりだ。
「それで、被害状況は?」
「はっ!村は壊滅状態です。生き残りがいるかどうかも不明でして……」
「……わかった。すぐに行く」
俺はそれだけ言うと、足早に部屋を後にした。
王城内の一室で、俺は部下からの報告を受けていた。
その内容は、予想通りと言うべきか、最悪のものであった。
──“光神の怒り”。
先日から立て続けに起こっている事件の総称だ。
最初の一件目は、王国南部のとある農村で起きた。
そこから徐々に範囲を広げながら、今では王国全土に被害が広がっている。
光神教の司祭達が言うには、これは神からの天罰なのだそうだ。
なんでも、彼らが信奉する光神様とやらが、地上に降臨なさったらしい。
そして、人々を裁く為にこの災害を起こしているのだとか。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。
俺の名は、クラウス。
王国の貴族にして、国王陛下直属の近衛騎士団長を務めている。
「それで、例の件はどうなっている?」
「はい。現在、教会関係者を中心に捜査を進めておりますが、未だ手掛かりは掴めておりません」
例の事件というのは、他でもない“黒い箱”についてである。
実は、事件後すぐに俺の私室に黒服の男がやってきたのだ。
その男は、『我々は“黒い箱”を追っている』とだけ言って、そのまま帰っていった。
恐らく、俺以外の人間に接触している者はいないはずだ。
「そうか。引き続き、何かわかったら知らせてくれ」
「かしこまりました」
そう言って、部下は一礼すると部屋から出ていった。
「……ふぅ」
俺は椅子にもたれかかり、大きく息を吐く。
正直、お手上げ状態だ。
そもそも、俺が知っている情報などほとんどないのだから。
“黒い箱”なんてものは存在しないし、そんなものを盗んだ覚えもない。
となると、考えられる可能性は一つしかない。
やはり、あいつらの仕業か。
「まったく、厄介な事をしてくれるな……」
そう呟いて、天井を見上げる。
もし、このまま奴らの思惑通りに事が運べば、この国は終わるかもしれない。
いや、それどころか世界そのものが……。
「……止めよう」
今はあれこれ考えるよりも、目の前の問題を解決する事が最優先だ。
まずは、少しでも情報を集める事にしよう。
その為にも、まずやるべき事は……。
「失礼します!クラウス団長!!」
突然、部屋の扉が開かれて、一人の兵士が転がり込んできた。
その兵士の顔は青ざめていて、酷く怯えているように見えた。
「……どうした?そんなに慌てて」
「そ、それが、たった今連絡が入りまして、北部にある村が魔王軍から襲撃を受けたと……!」
「なにっ!?」
それを聞いた瞬間、思わず立ち上がっていた。
王国の北部は、魔王の統治する国と国境を接している。
長年、人間と魔族は戦争を続けていたのだが、ここ最近になって、急速に情勢が悪化していた。
つい先日も、王都の目と鼻の先で大規模な戦闘があったばかりだ。
「それで、被害状況は?」
「はっ!村は壊滅状態です。生き残りがいるかどうかも不明でして……」
「……わかった。すぐに行く」
俺はそれだけ言うと、足早に部屋を後にした。
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