陸上自衛隊 異世界作戦団

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Part12:「前へ」

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「――ッ」

 崖上と辿り着いた彗ヰは、登り切ると同時に素早くG28を構え。次には崖上の周辺に警戒索敵の視線を走らせる。
 しかし直後に眼に飛び込んで来たのは。広がる崖上の向こう、帝国軍陣地の一角で上がった爆炎。
 後方対岸に配置した、味方側の重迫撃砲中隊が寄越した支援砲撃が成したそれだ。
 同時に、向こう奥から上がっていた強烈な敵対空機関砲の砲火がしかし潰える。今の砲撃が見事にちょうど、敵の対空機関砲を仕留めたようだ。

 それを目撃しつつも、彗ヰは次には地面を蹴って飛ぶように進み。
 その先にあった敵の塹壕スポットへと飛び込んだ。

「っとッ――どォよ、一番乗りだッ」

 そんな冗談交じりの一声を、自身への気付けの意味で零しながらも。
 同時の動きで塹壕スポットの端に身を預け。G28を突き出し構えて、周辺の様子を改めて詳細に観測する彗ヰ。

 崖上の向こう一帯に広がるは、帝国軍部隊の配置する陣地。
 それは元は同盟軍側の構築していたものを、占拠した帝国軍が突貫で増強したもの。

 ここに配置している帝国軍部隊は、崖際での防衛戦闘は限界と判断したのか。崖上陣地の向こう奥側へと引き、改めての防御態勢の構築を試みているようであった。
 また向こうに見える、元は同盟軍の物であったコンクリートトーチカからは。複数方向へ機関銃掃射が唸り。
 張り巡らされた塹壕に籠った帝国軍部隊の、それぞれの抵抗攻撃もそこかしこに見えた。

「――彗ヰ、よく切り開いたッ。だが登ったはいいが、まだ敵の態勢分厚そうだなッ」

 そんな周辺の様子光景を観測していた彗ヰの背後から、声が届く。
 そして振り向いた瞬間に、彗ヰに続いて崖を登り到着した二曹が、塹壕スポット内に飛び込んで来た。
 続けて分隊の各員も次々に到着し、塹壕各所へと飛び込んでカバー配置に付き。順次、各個に向こうの敵部隊への射撃攻撃を始める。
 さらに他にも。崖上の各方には各小隊・分隊が続々と昇ってきて到着、戦闘行動を開始する様子が見えた。

「見た限り、配置した敵はおおよそ中隊規模。目標の敵重迫は確認できずッ」
「もっと奥に据えてるな――ここからもう一仕事だ、押し上げるぞッ」

 各方に、敵味方双方の苛烈な銃火の音を聞きながら。
 追い付いてきた二曹に向けて、彗ヰは間髪入れずに観測結果、状況を端的に伝える。
 二曹も受け取ったそれから推察の言葉を零し。次にはすぐさま、ここより続く行動指針を発する。

 丁度それに合わせるかのように、側方向こうの小隊機関銃班が。帝国軍側の銃火を封殺すべく、M240B汎用機関銃を唸らせ始める。

「前へッ!」

 そして二曹が張り上げ。
 それに呼応して分隊は行動を再開。塹壕を飛び出して、敵味方の銃火が入り交じる内を推し進め始めた。

「――ッォ!?」

 味方の支援射撃に、敵の応射。双方が前後より飛び掠める内を、少しでも早く駆けていた彗ヰだが。
 直後、前方向こうで爆炎が上がり爆音が届く。
 反射で鉄帽を抑えつつも、向こうに見たものは。銃眼より火に煙を噴いて上げる、敵のコンクリートトーチカ。

 対戦車隊によって崖上に持ち込まれた87式対戦車誘導弾が、トーチカに撃ち込まれ。それが見事にトーチカ銃眼の隙間より内部へ叩き込まれ、その内で炸裂。
 無力化した光景であった。

 そして同時に見えるは、爆砕されたトーチカ内で奇跡的に難を逃れ。しかし慌てトーチカの扉を叩き、飛び出て来る帝国兵。
 他にも、抵抗の中心であったトーチカを潰され。塹壕に籠る帝国兵達にも、後退しようとする動きが見える。

 しかし、彗ヰ等の襲撃が早かった。

「っ……!?」

 トーチカを中心に張り巡らされた通用壕。その内を縫って走り、急き後退しようとしていた帝国兵たち。
 しかし彼らは、その無防備を晒したタイミングを狙われ。
 踏み混んで来た彗ヰ等始め、第3普通科中隊の小隊・分隊よりの。無数の銃火に晒された。

 ――唸り響き始めた、自衛隊側の無数の銃火とその音。
 それらは漏れなく、塹壕内に潜み、あるいは縫い走っていた帝国兵達に注がれ浴びせられ。
 帝国兵達に抵抗の隙すらを与えずに、彼らを塹壕の底へと崩し沈めて行った。

「――ッ!」

 彗ヰ始め数名は背後に周囲を、またわずかに塹壕内に残る残敵を味方に任せて。塹壕を飛び越え、ないし内に飛び込み。
 その向こうで逃走を。もしくは後退再構築から、必死の応戦を見せようとしていた帝国擲弾兵たちに、機関銃などを。
 しかしまたそれを認める前に、的確な射撃で擲弾兵達を撃ち抜き。敵機関銃にはこちらの擲弾を撃ち込み、爆砕から無力化せしめる。

 そしてその間も。塹壕中に向けられた味方の無数の銃火は、響き続けた。

「――撃ち方止めッ、撃ち方やめーッ!!止めろーッ!」

 永遠に続くのかと錯覚すらしたそれは。
 しかし間もなく、二曹が手振りと合わせて、射撃停止を命じる怒号を張り上げ。
 それから数秒を要して、ようやく各員の銃撃は停止。

「――……っォあッ!」

 無数の銃声がようやく止み、しかし耳鳴りが微かに残る中。
 誰かの零した、唸るような吐息が聞こえた。

 各員の眼下には――塹壕の底に倒れ、崩れ沈んだ帝国兵達の亡骸が、重なり連なっている。
 ほとんど一方的な殺戮となった攻撃に、その結果の眼下の光景に。少なからずの心の負担を吐き出した、誰かの吐息であった。

「調べろッ」

 二曹も同じ思いを内心に浮かべつつも、残敵がいないかの確認を命じ。数名がまた塹壕へと飛び込み確認を始める。

「二曹」

 それが始まった所へ、二曹に声が掛かる。視線を起こせば、彼らの小隊長の三等陸尉が近くまで歩いて来る姿が見えた。

「制圧は見事だった――だが一仕事の後で悪いが、さらに進めてくれるか?」
「敵重迫の所在の捜索ですね?かかります」

 三尉は今の分隊の制圧行動を評しながらも、続けて少し申し訳なさそうにしながら、指示の言葉を紡ぐ。
 だが二曹は、もちろん承知していると言うように。指示の示す所を言葉にし、そして了解の返答を返す。

「まだせいぜい序盤クリアってトコか。やれやれ――」

 そのやり取りを、塹壕を挟んだ向こうで聞きながら。
 彗ヰは倦怠交じりのそんな言葉を零した――
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