―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

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チャプター4:「異海に轟く咆哮」《海隊編》

4-4:「ミサイル護衛艦with驚きと衝撃」

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 ――視点はミサイル護衛艦かまくら、その艦内へ。
 それなりの戦速を出し航行しているため荒々しく揺れる艦内を、しかし慣れた様子で足早にタラップを駆け上るは艦長の都心。
 そして都心はその先に構える水密扉を潜り、その先に広がった開けた空間へと踏み入った。
 そこは護衛艦かまくらのブリッジだ。
 先を一望できるように設けられる艦橋窓の向こうには、曇天の空と群青の大海が広がり。そしてその中には大小の無数の船舶がひしめく光景が見えた。
 そんな飛び込んで来た光景を見ながら、都心はブリッジ内を歩み進み。計器基盤類の前に立つ一人の海隊幹部隊員へと近寄る。

由比ゆひさん」

 その幹部隊員の背に向けて、その隊員の名であろうそれを飛ぶ都心。

「こちらは特別な事は無し、予定行動に変更は無しで?」

 その由比と呼ばれた幹部隊員はチラと軽く顔だけを振り向かせ、都心を見つつそんな言葉を返し、そして尋ねる。
 彼はこの護衛艦かまくらの副艦長であった。
 覗いたその顔立ちは都心よりも荘厳、言ってしまえば少し老けており。実際都心よりも少し年上であった。

「そうだ、このまま継続」

 その副艦長の由比に対して、都心は無遠慮なまでの端的なハッキリとした言葉で解答を返す。
 その瞬間。艦橋の向こうの眼下、艦の前甲板上で2基の203mm口径の主砲が再びそれぞれ咆哮を上げた。
 その砲撃投射行動を継続しながら艦は緩やかな面舵を切り。『嵐鮫の大海団』を遠巻きに見て絶妙な距離を保ちつつ、円形を描き囲う様な航行を行っている。かまくらは脅威が艦へと及ぶギリギリの距離を保ちつつ、主砲砲撃により『嵐鮫の大海団』を徹底的に叩き無力化する算段で行動中であった。

「――恐ろしいまでだ。単艦でここまでを――」

 都心がそんな主砲砲撃や艦の動きを艦橋越しの眼下に一瞥した直後。横からそんな言葉が聞こえ零れて来た。
 まず何より意識を引いたのは、その言葉を紡ぎ寄こした声色。
ダミ声――いや、しわがれた様な何かの効果を掛けたような独特なそれ。
 都心が声を辿り視線を向ければ、その先にあるブリッジのシートの一つに、その声の主の姿はあった。
 ――そこに在るは、身長1mにも満たないまるで子供かと思うような体躯の存在。しかし続け目に入る容姿情報が、それをすぐに否定する。
 その顔はまるで老人のように皺を刻み、鼻は鷲の嘴のように尖り大きい。眼は猛禽類のようなそれ。肌色も人のそれとはまるで異なる。
 その姿は――ゴブリンだ。
 この異世界に存在し、時に獰猛さを見せてコミュニティの脅威となる事もあり。日本国隊も幾度も対応戦闘を要求された存在。
 ――しかし。そのゴブリンの姿格好、纏う服装は。その体に合わせあつらえられてはいるが、カウボーイハットに似た帽子に軍服の、西部劇の保安官のようなそれ。先に7号艇に同乗しているタウディ大尉等と同じ、剣と拳の大公国保安軍の軍服であった。

「シンクラー〝大佐〟、あまり乗り出すと放り出されるぞ」

 そしてそのゴブリンの〝彼〟を。都心はそんな名と階級で呼び、合わせそんな忠告の言葉を飛ばし促す。

「ッ。あぁ、すまない艦長」

 それを受けたゴブリン――シンクラー大佐は。その獰猛な容姿としわがれた声に反した、理知的な言葉づかいで声を返し寄した。


 ここまでで察せるだろうが、彼もまた剣と拳の大公国の軍人であり。今作戦で海隊の元に派遣されてきた派遣武官であった。
 彼――ゴブリンやオーク、トロルやオーガ等といった亜人と呼ばれる種族は。その特性より人類と相いれず争う間柄となることも少なくないが。必ずしも全てがその例に当てはまる訳では無く、中には様々な理由経緯で人類と生活を同じにする者も少なくない数が存在するとのことであった。
 亜人種に対する意識には国や地域によって差異があるとのことだが。
剣と拳の大公国は、実力がある者であれば人類亜人他を問わず、組織やコミュニティに受け入れる貪欲なまでの姿勢風土を持ち。シンクラーのような亜人種の士官軍人等も珍しくは無かった。
 

 少し話題を逸らしゴブリンという種族についても触れておけば。
 この異世界での俗世のイメージでは。ゴブリンは知性に引けを取り、小賢しくそれでいて凶暴という見方が長く根付き、今も少なからずそれは残るが。
 実際の所その気質は育ち営む環境やコミュニティの影響、また個体いや個人差などもあり。荒くれや、未開人の域のコミュニティレベルに留まっているケースも多々ある一方。聡い者や温厚な者も少なくない数が存在するというのが現実であった。

 ちなみにシンクラーは派遣されてきた派遣武官一行の代表格の一人であり。7号艇に乗る艇するタウディ大尉等の直の上官でもあった。


 そのシンクラーはシート、用意され当てられていたそこの座席に。それまでまるで子供のように上に立って乗り出し、先の戦闘の光景を食い入り眺めていたのだが。
都心より忠告を受け、その小さな体躯を背もたれに預け直して手すりを掴み、身体を安定させた。

「ハァ。君等が現れてから、我々の常識は覆されっぱなしだ」

 シート上で引き続き荒々しく航行する艦の揺れを受けつつ、シンクラーはどこか気疲れした色を少し見せながら。そんな台詞を都心に向けて寄こす。
 瞬間にはまたも主砲の砲撃音と振動がビリビリと伝わりくる。

「大佐、その台詞はそのままそっくり返させてもらう」

 そんなシンクラーに。都心は計器基盤に目を落としたり、外部の光景に視線を流したりと必要な行動を取りつつ。片手間にそんな皮肉交じりの端的な言葉を返す。
 都心等からすれば自分等もまた。ゴブリンであるシンクラー自身の存在始め、この異世界の多々の諸々にまた常識を覆されている側でもあった。

「――ッ!艦長、右舷上空を!」

 そのシンクラーが声を張り上げたのは次の瞬間であった。その言葉に合わせ、シンクラーの視線は右舷方向上空に窓越しに向いている。
 その先上空に見えたのは、敵対船団の方向よりこちらに向かって来る多数の飛翔体だ。その正体は船団に護衛追従していた騎鳥グルフィや竜騎兵。そして魔王軍の竜族達。
 その目的はこの護衛艦かまくらへの攻撃と見て、まず間違いなかった。

「問題ない、掌握してる」

 しかしシンクラーの知らせ警告する言葉に、都心は淡々とそんな承知している旨を返す。すでに迫る飛翔体の群れはCICが捉え確認し、そして都心等の元へもボギー接近の報告が上がっていた。
 そして全甲板に視線を降ろせば2基の主砲。そしてミサイル護衛艦かまくらの主格装備であるMk.13単装ミサイル発射機が旋回仰角を取り、迫る飛翔体の群れへと向いてる。
 しかしスタンダードミサイルを構えたMk.13発射機は、すでにとうにその射程圏内に敵飛翔体群を捉えているというのに、一向にミサイルを撃ち放つ気配は無かった。
 苦い話ではあるが、ターター/スタンダード・システムは強力ではあるが基本的に一発づつミサイルを撃つしかない。対して敵飛翔体の数は多く、それにターター/スタンダードをもっての対応は非効率であると判断され。システムは準備行動を取りつつも待機状態に留まっていた。

「CIWSも態勢準備。各砲、各タイミングで射撃を――」

 艦長になる前はターター/スタンダード・システムの要員であった都心は、それを内心面白く無く思いながらも。各担当部署に向けての指示の声を通信に上げようとした。

《艦長ッ、後方より別影飛来!フレンドの〝ミサイル〟投射です――ッ!》

 しかしその時、通信越しにCICよりの砲雷長の声で、知らせの声が届く。

「ッ――」

 それを聞き留め、同時に艦橋窓越しに上空へと視線を上げる都心。
 ――瞬間。
 護衛艦かまくらの真上上空を、複数の高速の飛翔体――SM-2 SAMスタンダード・ミサイルが。現れ、バーナーを吹かして飛び抜けた――



 『嵐海の大海団』より発し放れ。隊形を組んで飛ぶ飛翔体の群れがある。
それは主として船団に所属付随する、グルフィの鳥騎兵や飛竜の竜騎兵。
 さらに一部に、騎手の類を乗せずに単独で飛び動く竜種が見える。それは、魔王軍より派遣されて来た、竜種族の魔王軍の兵達だ。


 彼等は魔王軍より協力――と言う名の監視や〝探り〟目的で派遣されて来ている一団であった。
 先にも一度述べたが、魔王軍側は人類側を裏切り寝返って来た人間達を信用など端からしておらず。それ相応の手回しを行っていた。


 さらに、騎竜の隊形を見る魔王軍竜種兵達の眼は冷ややかでそして不快そうだ。
 厳密には魔王軍竜兵達と竜騎兵に用いられる竜種は、大きな分別では一緒だが、細かくは異なる生き物だ。霊長目で言うとヒトとサルの距離感に類するか。
 竜兵達はその己達より野生に近く知性に欠ける翼竜達を、似てこそいるが劣る生き物と見ていたが。しかしそれでも近い種族である飛龍が、別種族で価値観も異なる人間に操られている様は、魔王軍竜兵達からすれば間違っても気分の良いものでは無かった。
 そして竜兵達のほとんどは、魔王軍が世界の支配を果たした暁には。人間が翼竜を従え操るなどという文化は、根絶に至らしめるという野望を抱いていた。


「――どうなっているんだッ?」

 そんな事情や関係性を持つ魔王軍竜兵達の、船団の騎鳥騎竜隊形に同行している一分派隊。その魔王軍竜兵達の中でも一回り大きい竜が、訝しむ声を漏らした。その竜は分派隊の指揮を預かる個体で、先のオグロヒュムの部下でもあった。その指揮官竜が声を漏らした理由原因は、今の眼下各方の状況光景に他ならない。
 人間達が自信満々に繰り出した大船団は、しかし正体不明の攻撃により次々に沈められ、今や大混乱に陥っている。
 さらに大船団をその様に陥れた、異様な高速の小舟が海上を飛ぶように駆けて暴れ回っており。船団より先には、その小舟等の同胞で親玉とも見える、人間達の戦列艦をも優に超えると思われる灰色の巨船が、堂々なまでの姿で海を割り進んでいるではないか。
 訝しむ声を上げるには、十分過ぎる異様さだ。

「よく分からないが……アレを放ってはおけん」

 続け呟く指揮官の竜。
 人間共の船団がどんな末路を辿ろうと知った事ではないが。あの異質な灰色の船等は、残しておけば魔王軍――仕える魔王への障害となりかねない。
 そう考え、灰色の巨船を沈めんと意識を確固とする指揮官竜。

「――隊長殿!前を!」

 しかし。先を飛ぶ配下の竜兵から、叫ぶような声が届いたのはその瞬間。

「ッ!」

 視線を前に向けた指揮官竜が見たもの。それは前方の宙空を噴煙を描き飛ぶ、異様な飛翔体の群れ。

「あれは――!?」

 正体は不明だが、指揮官竜の本能がそれを危険な存在と感じる。しかし、遅かった。
 その飛翔体の群れは次の瞬間には、騎鳥騎竜の隊形へ。そして指揮官竜や竜兵達の目の前懐へと、信じられぬ速度で迫り飛び込み。


 ――比類なき炸裂の暴力が、その全てを襲い千切り弾き。
 それが指揮官竜達の見た最期の光景。最期の記憶となった――



《――飛翔体の一群、全ての撃墜、無力化を確認!》

 CICよりの砲雷長の声での通信で、接近していた飛翔体隊形の――グルフィや竜のその全てが無力化、撃墜された旨が届く。
 都心はそれを聞きながら、自身も自らの眼で、艦橋窓越しに見える上空にそれを確認していた。
 曇天下の宙空に起こり彩るまでの、いくつもの炸裂。今しがた護衛艦かまくらを飛び抜けて行った多数発のミサイルが成したそれが、迫っていた敵のグルフィや竜達の隊形を、余し逃す事無くその炸裂の暴力で千切り散らかしていた。

《艦長、今のは〝なにわ〟からのものです!》
「だろうな」

 続け通信に上がる砲雷長からの知らせる声。それは、先のミサイル群の出所を示すもの。それに都心は、さして驚くことなはく淡々と一言を返す。
 次いで手元のコンソールに視線を落とせば、その画面端。かまくらより後方には別の艦のアイコンが映し出されており、そこには〝DDG-191〟の表記が表示されている。

「――空までもを、支配下とするのか――ッ」

 続け横より届くは、独特のしわがれた声でのシンクレー大佐の言葉。上空の光景を見ながらのそれは、感嘆と一緒に呆れのそれが混じったものであった。

《――都心さん、聞こえる?》

 そんな所へ都心に耳に。通信でしかしそれまでとは異なる声で、彼の名を紡ぎ呼びかける声が届いた。

「其方の横やりか」

 その聞こえ届いた通信の声に対して。都心はそんな端的な、しかし微かに不愉快そうでそしてドスを利かせたような声を返す。

《見させてもらってたけど、君の戦い方は少し荒々しすぎるな。はっきり言って品が無いよ、もう少し華麗に演じるべきだと思うな?》

 それに対して寄こされたのは、そんな言葉。
 その声色は高く透き通る、可憐な少年のもののようなそれ。そしてその言葉は、ここまでの護衛艦かまくらの戦闘を、都心のやり方に評価を着け咎めるものであった。

「――ほざくかッ、ガキめがッッ!!此処はぶつかり合いの場ッ、イキりで〝ちぇすと〟はできぬッッ!!」

 瞬間。
 都心が通信に返したのは、そんなドスをふんだんに利かせた怒号の声だ。
 それに横に居たシンクレーは驚き目を剥き。
 CICの側で通信を聞いていた砲雷長の女一尉にあっては、小さく悲鳴を上げて飛び上がっていた。

《――ふふ、いいね。〝ボク様〟の好みには合わないけど、そのやり方、その敵など知らないばかりの姿勢はやっぱり好きだよ。流石はボク様の惚れた〝漢〟の一人だ》

 その都心の怒号に対して。通信にまた帰って来たのはどこか妙な色、言葉遣いでの。
 そして都心に罵倒の如きそれを受けたにもかかわらず、今度は都心を好意的に評価し。そしてどこか猫なで声で焦がれるような様子での少年の声。

「キショいッ!!――終ワリ――ッ!」

 それに対して。
 都心はそんな不快感をドストレートに表した怒号をまた通信越しに相手に叩きつけると。
 一方的に通信を終えた。
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