―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

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チャプター5:「〝Utility〟」《多用途隊編》

5-5:「―その手がトリガを引く―」

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 偉仰の一番機が先行、誘身の二番機が続き。上空の太陽を背に、二機は急速な急降下行動を仕掛ける。
 その機首、切っ先が向け。そしてコックピットの照準器に、表示されるHUDの向こうに映るは。大々敵に宙空を飛び行く敵性の飛行部隊。異世界の大型鳥獣のグルフィに、空飛ぶ箒の姿。

「とりあえず、デカブツをヤって出方を見る。俺ぁ真正面に見えるのを、圭七ちゃんは他を適当に選んでくれや」
《諒解》

 微かに揺れるそれぞれの機体の、操縦桿を操り安定させながら。両者は通信で算段を交わす。
 その間に。二機はその急速な降下行動で、敵飛行部隊の真上まで距離を詰め迫る。
 偉仰はまだ微細な操縦桿操作で、素早く機体姿勢を調整。HUDのレティクルに、一体の一際大きな体で目立つ鳥獣グルフィを納め。そして――操縦桿のトリガーに掛けていた、人差し指を引いた。

 ――鈍くしかし響く声が唸り。発生した振動を、機体が操縦者である偉仰へと伝える。
 そして吐き出されたのは、畏怖する域の咆哮。
 F-101Jがその機体に備える、二門の83式30mm機関砲が。その身に収める30mm機関砲弾を吐き出したのだ。

 上空真上より発砲投射され、降り注ぐ機関砲弾の火線。それは〝死の雨〟に等しい。
 そしてその死の雨は、その射線上にあった大型グルフィの背に見事命中直撃。その巨大な体を、しかしいとも容易く貫いた。
 グルフィの肉が削げ貫かれ、血飛沫が散る。さらにその手綱を操えう騎乗兵が、あるいは銃座の形態に似る、備え付けの連弩に付いていた同乗の兵が。炸裂を諸にその体に受けて弾け飛ぶ。
 そして大型グルフィは宙空で、激痛に巨体を張り反らせて絶叫の鳴き声を上げる。しかし次には力を失う様子を見せ、ガクンと高度を落してそのまま地上へと舞い落ち始めた。

 一番機に一拍遅れて投射された、二番機の機関砲火線も同様。別の個所に位置していた、同じく大型グルフィを撃ち貫き。その飛ぶ力を奪い去り、先のグルフィと同様の落ち行く結末を辿らせる。

 そして投射の一撃目を成功させた直後には。
 二機は敵飛行部隊の隙間を狙い、貫くように上空から下方へと飛び抜け通過。
 その轟音衝撃で狼狽する兵達を尻目。、機種を上げて上昇行動に転じ、弧を描く軌道で高い高度へと復帰して行く。

「マぁジでメチャデケェ鳥に、空飛ぶ箒だ。トンデモねぇな」

 その内の一番機のコックピットで偉仰は、今しがた通過時に見えた、元の世界ではありえなかった異世界の存在に。改めてここが異世界の空である事を実感し、そんな言葉を零す。
 そして視線をチラと背後後方へ向け、その異世界の飛行部隊の姿を。火力投射の効果と、それを受けた敵の状況を確認する。
 敵の飛行部隊は一撃による影響でその隊形を大きく崩し。そして遠目にも混乱に陥った様子を見せ、応戦、追撃行動に移る様子はまだ無かった。

「追撃はまだ無い、テンパりからすぐには回復できてねぇな。圭七ちゃん、もう一撃行けそうだ」
《諒解》
「分かれて時間差で突っ込むぜェ、細かくは任せる」

 敵の様子に、再進入からの再攻撃が可能と見た偉仰はその旨を誘身に告げ。了解の返答を寄こした誘身に、さらに補足と促す言葉を返し送ると。偉仰は操縦桿を引き倒した。
 上昇行動中にあった二機は、そこから編み糸を紐解くように分散。
 偉仰の一番機は機体を傾け反らして上昇軌道から離れ、横面の旋回行動へと移行。一方の優身の二番機はそのままの軌道でインメルマンターン軌道を行うべく、上昇行動を続ける。
 一番機は大きな旋回行動で円形を描きながら回頭。今も混乱下にある敵飛行部隊の、進行方向の右方側面を取る。
 その群勢の横っ腹に切っ先を、その機首を向け。照準器にそれを納め――偉仰はトリガーを引いた。

 二門の83式30mm機関砲の咆哮が再び上がる。
 そして吐き出され撃ち込まれ、直撃ないし宙空で炸裂した30mm機関砲弾の猛威が。グルフィの鳥騎兵達や箒の警備兵達を。無造作なまでに傷つけ、千切り屠り去った。
 力を失い墜ちて行く、あるいは幸運にもその脅威を逃れながらも、狼狽え恐怖する彼等彼女等の中へ。
 偉仰のF-101Jは飛び込み。驚かすようにその轟音と衝撃で割って、一瞬の後には飛び抜け通過する。
 それに一層の狼狽混乱を見せる、雇われ兵や警備兵達。しかしそんな所へ、容赦なくさらなる追撃が襲う。
 偉仰の一番機より、少し包囲角度を変えた方向。飛行部隊の斜め後方上空より、緩降下で進入して来る誘身の二番機の姿が在った。
 そして直後にはその身に備える機関砲がまた唸りを上げ。脅威の雨となって降り注いだ30mm機関砲弾が彼等彼女等を貫き、その身体を引き裂く。
 そして墜ち行く彼等彼女等の中を割る様に、誘身のF-101が轟音を響かせ飛び抜けた。



 わずかな時間。体感を言い表せば、わずか一瞬にも等しい時間だ。
 その間に、正体不明の異質な飛行体――敵、突如として現れたそれ等より。注がれ襲い来たまた異質な、そして暴虐なまでの威力を体現したそれにより。
 まさに瞬く間に。雇われ兵達のグルフィが、そして警備兵の箒隊が。ことごとく血肉の塵と化して宙に散り、そして血へと墜ちて行った。
 最初の一撃を受けた段階で、すでにその態勢の大きくは崩され失われ。
 一撃を間逃れ。しかし異質な現象を前に、ただちの判断を失った雇われ兵や警備兵達が、ようやくそれを〝敵〟の襲撃と判断して応戦追撃の考えが追い付いた時には。
 しかしすでに再度、部隊の腹と背後を取られ、そして暴虐の二撃目が襲来。
 現時点で、雇われ兵と警備兵から成るこの部隊はすでに、まともな命令系統を、組織的な行動力を。そして士気戦意の大半を失っていた。
 元より後ろ暗い汚れ仕事を請け負っていた、お世辞にも士気の高いとは言えなかった即席部隊。そこへの正体不明の脅威的な存在の襲撃だ。早々の瓦解も不思議では無かった。

「――くぅッ!」

 そのそれぞれが阿鼻叫喚の混乱に在る中。
 一人、その身を置く宙空から、その向こうを睨み上げる姿が在った。
 魔王軍より差し向けられた、監視役の鋼竜の女竜人だ。
 監視対象である飛行部隊が混乱狼狽で、最早行動不可能に陥るのを尻目に。彼女はその端麗な顔をしかし一杯に顰め。その向こうの上空で、上昇旋回行動に入っている異質な飛行体の姿をその目で追いかけている。

「あれが……気配の見聞こえていた謎の組織の……――!?」

 そして言葉を零す。
 この紅の国の魔王軍への寝返りの企て。
 それに反する村町を屠り消し去ることが今回の目的であったが。その反する村町の背後に、それに力添えする何か大きな組織の存在気配が在る事は、彼女も知らされていた。
 そして今まさに現れ襲い来た、異質な飛行体の編隊。
 正体詳細は皆目不明だが。それがその謎の組織の手の者であろう事は、最早明らかであった。

「ッぅ……小癪な……――舐めるなァ!!」

 そして、次に女竜人が上げたのは。その美麗な、しかし竜の牙の覗く口を掻っ開いての、激高の一声。
 監視、目付け役としての同伴の身であったとはいえ。誇り叩き鋼竜の、そして魔王軍に身を置く己への、しかしそれを意に会する気配すら無い、無礼なまでの一撃。
 侮辱――彼女が激高するには十分であった。

 そしてその直後。彼女はその鋼の翼を大きく薙ぐ様に、ブワと羽ばたかせると。
 次の瞬間には、その宙空の一点より姿を消した――いや、気配を追いかけ見れば。彼女は、遥か空の向こうへ、異質な飛行体の方向へ、凄まじい勢いで飛び出していたのだ――



《――偉仰さん、後方下方》

 進入再攻撃から、離脱上昇行動に在った偉仰の一番機。
 そのコックピットの偉仰の耳に、通信越しの誘身の。いつもの通り淡々としていながらも、しかし警告の意が込められた言葉が寄こされたのはその時。

「――ッ」

 すぐさま振り向き。視線を機体の後方下方に向けた偉仰は、寄こされた警告が示す物を即座に見止め。そして小さく口を鳴らす。
 今しがた進入攻撃を試みた、敵の飛行物体の群勢。その中より飛び出し離れ、こちらへと進路を取る一つの〝影〟が見えた。
 そして、飛行部隊より瞬く間に距離を離すその動きから。その影が、凄まじい速度――少なくとも亜音速に匹敵する速度を出している事は、即座に判別できた。

「聞いてた、ヤベェのが出て来たかッ」

 その存在を視認し、そんな一言を零す偉仰。
 ――魔力、魔法、魔物に魔獣。そして勇者に魔王。
 この異世界に、元の世界での常識を覆す。驚異的な力、身体能力を有する存在が数多居る事は、偉仰等ももちろん知らされていた。
 そして今見えた異様な動きの影に、いよいよそれとの接触を理解しての。あまり歓迎したくない、苦い色を込めての一言であった。

《そっちに》

 続け聞こえ来る二番機の誘身からの言葉、それは偉仰も認識している。その影は偉仰の一番機を追いかけ向かって来ている。明確な、一番機を攻撃目標と定めての追撃の動きだ。

《今、援護に》
「いや――チトこっちで引っ張る」

 さらに、誘身からは一番機の援護に向かう言葉が寄こされるが。しかしそれに、偉仰は取り下げる旨の一言を返した。
 そして合わせて返したのは、シンプルに自身の考えを伝える言葉。

「少しの間、俺が遊び相手になる。その合間に、圭七ちゃんは本丸の残りを浚えてくれッ」

 続け、プランの詳細を少し捲し立てる口調で、誘身へ向けて送る偉仰。
 敵の飛行部隊本隊は、大部分の作戦力を削いだとはいえ、まだ一部残っている。こちらの注意が逸れた隙に再編成され、防護目標である草風の村や凪美の町に流れられては、都合が良くなかった。
 少なくともそれが不可能な程度までは、戦力を削いでおく必要がある。
 偉仰の指示は、自身の一番機で脅威存在であろう影を引き付けている間に、誘身にその役割を任せるものだ。

《諒解。まずくなったら呼んで》

 その指示に、誘身は異論心配を寄こす等の事は無く。するりと承諾の言葉と、同時にそんな付け加える言葉を寄こす。
 そして別方にあった誘身のF-101Jは、機敏な旋回回頭行動を見せて、三度目の進入攻撃へと向かっていった。

「頼む」

 その二番機の動きを見つつ、任せる言葉を一言送る偉仰。

「っとぉ、来やがった」

 そして視点を移せば、自身の機の後方より。おそらく生身と見える姿で、しかし反した信じ難い凄まじい速度で追いかけて来る、翼を生やして空を飛ぶ人影が見えた。

「んじゃ、遊ぼうぜぇッ」

 そんな影に呼びかけるように、コックピット内で言葉を上げ。そして偉仰は操縦系を操り、愛機のアフターバーナーを点火した。

 偉仰のF-101Jはアフターバーナーを吹かし急上昇、高めの高度へと至り。そこからロール反転して機首を下げ、スプリットSの機動動作へ移行。
 追撃して来る影を翻弄し、あわよくばその後ろを取るべく。機動行動を連ね行う。
 しかし驚くべきことにその翼を生やす人影は、ほとんどぴったりといった様子動きで、偉仰の機を追いかけて来たのだ。

「マジでトンデモだな」

 コックピット内でそんな微かな驚きの言葉を零しつつ、偉仰は続く機動動作を行うべく、操縦桿を倒す。



「ッ……小賢しい……ッ!」

 憎々し気に零す女竜人。
 その、竜の特徴を持つものの基本な人間のそれである容姿からは信じられぬ。亜音速域の速さで彼女は飛び駆け、目の前を飛ぶ異質な飛行体に喰らいつき追いかける。
 しかし飛行体は速度だけではなく、飛行機動を繰り返して女竜人を揶揄うように先を行く。
 それに焦れる女竜人。

「ならば……――鋼よ、冷徹な裁きの鋼の杭よ――」

 その彼女は、次にはその口より何かの言葉を、文章の一節を紡ぎ始める。
 それは、魔法詠唱。巨大な鋼の杭柱を召喚生み出し、それを仇成す物へと向け打ち出し、その身を貫き屠る攻撃魔法。
 今、それを証明するように。飛ぶ女竜人の周囲に彼女に追従しながら、数本の3~4m長の大きな杭柱が生み出され出現。
 そしてその全てが、目の前を飛ぶ異質な飛行体へ向けて、打ち放たれた。



「マジかッ」

 逐一後方を振り向き、自機を追いかける相手を確認していた偉仰は。何度目かの確認、機を旋回させながら振り向いた際に、それを見た。
 後方より自機を追う影――何度か見た所、竜の特徴を持つ女らしき容姿が見て取れたその姿の。その周りに、追従飛行しながらいくつかの何か、杭柱状の物体が出現。
 次には、それは竜女の側より打ち出されるそれで飛び出し。より速い速度で偉仰のF-101Jを追いかけ始めたのだ。
 そしてさらに。横面に旋回中であった偉仰の機に合わせ追うように、その杭柱の群れは追尾旋回行動を見せる。
 ミサイル。
 原理理屈は分からないが、異世界の力によるミサイル攻撃。そんな考え、ワードが偉仰の脳裏に浮かんだ。

「ッ」

 少し歓迎し難そうに、苦い色で口を鳴らす偉仰。そして直後に偉仰は、操縦系の一つを操作。直後にその意思を反映して、機体の備えるフレアランチャーから、後方に向けて盛大にフレアが散布された。
 しかしまた振り向き見れば。食らいつき追いかけて来る竜女が、何か少し驚き気分を害したような様子を見せたのみで。杭柱のミサイルと竜女は引き続き追尾、喰らいつき追いかけて来る。

「効かねェか」

 熱源探知のアラートが鳴らなかった時点で想像はしていたが、どうやら杭柱の仕組みは熱源誘導では無いようだ。
 それにまた少し苦く零しつつ。偉仰はなんとか杭柱のミサイルを振り切り、そして竜女の集中を惑わし乱す事を目論み。操縦桿、操縦系を活発に動かし、機動飛行を続ける。

 しかし実の所を言ってしまえば、F-101は格闘線や激しい空中機動を得意とする機体機種では無い。
 日本国隊ではその方針から。当機種にも行き過ぎ程の改良アップデートが成されていたが、それでも格闘機動飛行には不得手とする部分がまだあった。
 一方、元よりその備えるエンジンから速度加速性能には優れたF-101。それが日本国隊多用途隊のF-101Jにあっては改良アップデートによって、驚異的なレベルまで至っていた。

 その事から、その速度加速力をもってすれば。また実の所、今の状況から逃れる事は容易であった。
 しかし今の偉仰の一番機の役割は、二番機が敵本隊を無力化する間、脅威として明確な竜女を引き付ける事にある。そこを先んじて高速離脱してしまい、竜女の注意が誘身の二番機へ向いてしまえば元も子もない。
 その事から、偉仰はリスクに身を置いてでも、相手との距離を一定に保ち、その注意を引き付けておく必要が在った。

「チト、ウゼぇなッ」

 コックピットで、機を操り可能な限りの機動飛行を行いながら。悪態を零す偉仰。

「いっぺん引き離して、ブルファイトでぶつかるかッ」

 状況を少し煩わしく思い始めた偉仰は。一度加速高速で竜女を引き離し、その先で反転回頭。真正面よりぶつかり機関砲投射を浴びせ、竜女を杭柱のミサイル諸とも撃ち排除する案を脳裏に浮かべる。
 もちろんリスクは伴う。
 今、再び背後の竜女を振り向き見れば、またおそらく魔法か何かの力で出現させたのだろう。その丈3mを越えると見える、巨大な両刃剣を手に持ち構えて一振るいする姿が見えた。

「向こうさんも、ぶつかる気満々かぁ?」

 それを見た偉仰は、その印象の悪いおやじの顔に、また印象の悪い不敵な笑みを浮かべて零す。
 そして、いよいよ策を実行せんと、アフターバーナーを吹かそうとした――しかしその時であった。

《――偉仰さん、そのまま維持して》

 パイロットヘルメット内臓の通信機より響いた声。それは誘身の元。

「ッ」
《こっちでやる、向きも速さもそのまま――》

 続け。端的に淡々とした声で、しかし明確に訴え寄こされるは要請の言葉。
 それは、現在上昇行動の最中に在った偉仰の機に。全て維持したそのままの飛行を要請するもの。
 それを聞き留め、即座にその意図に察しを付けた偉仰は、アフターバーナー点火のために動かした手を止める。


 ――鈍い轟きが。
 そして金属類が数多ぶつかり合い、損壊するような雨打つそれのような音々が。
 最後に、それらを描き消す凄まじい轟音が。


 偉仰の機の背後で響き上がり、そして同時に凄まじい衝撃と気配が背後を飛び抜けた。

「ッ」

 何度目になるか、機の背後を振り向き見れば。機の背後宙空には、宙空間で飛び散る何か何かの破片群――杭柱のミサイルの、原型を失い砕け散る様が見える。
 そして、今しがた飛び抜けた衝撃気配を追って、自機の側方上空へ視線を移せば。
 そこには飛び抜けた直後の姿の、別のF-101J。誘身の二番機の姿が在った――



「――なッ!?」

 女竜人は、目の前で起こった現象に目を剥いた。
 己が手で、己が魔法で生み出し。憎き異様な敵を負わせていた、鋼の杭柱達。
 それが一瞬の間に、入った〝横やり〟により全てが砕け散り、宙空で塵屑と成り果てたのだ。
 聞こえた唸り声に、衝撃音、飛び抜けた気配と、わずかに見えた姿。
 最早、その正体に察しを付ける事は容易い。今も目の前を飛ぶ、異質な飛行体の片割れ。それが割り入り横やりを挟んで来たことは明らか。

「――どこまでもぉっ!!」

 散々の己を翻弄する小賢しい術に。女竜人は激高、牙を剥く。
 そしてしかし、武に長ける女竜人は知っていた。狩る者は、狩った瞬間に、狩った直後に、その身に隙を作る。そここそ驕り高ぶる捕食者を、逆に狩り取る絶好の機会だと。
 その身に染みた知識と、そこからの確証。そして何より、己をどこまでを翻弄した忌々しき相手を是が非でも屠らんと。
 最早迷いも無くそれらに身を任せ、手にした両刃の大剣を振るい構え。女竜人は飛び出す勢いで、急激な軌道変更で進路を変えた。
 今まさに、狩りを終えた直後で隙を晒しているであろう憎き敵を。その眼光と、手に構えた得物で貫き断たんして――

「――ぇ?」

 しかし。
 直後に女竜人の口から漏れたのは、微かな驚きと多分に呆けたような声。
 無理も無い、その先に在るはずのもの。狩りの直後で、隙だらけの身を晒しているはずの憎き敵が、しかし彼女の視線の先に居ないのだ。
 その先に見えるは、微かに雲が掛かるも澄み渡る空。

 ――いや。
 気配は、異質な殺気はある。それは、彼女の〝すぐ真横〟に――

「ぁ――」

 視線をそちらに向けた彼女の口から、また掠れた呆け声が漏れる。
 そこにあったのは、異質な飛行体。


 ――F-101J。誘身の操るその二番機。


 横滑りする動きで、微かな緩降下を見せる機体。
 そして見たその機の姿が。漏れた一言が。彼女の最期のそれとなった――



 F-101Jの。誘身の二番機の備える二門の83式30mm機関砲が、無慈悲にも咆哮を上げた。
 吐き出された30mm機関砲弾の火線は、その貫通と炸裂は。女竜人の身を容赦なく貫き千切り、引き裂いた。
 竜人は人間よりも遥かに堅牢な体を持つのだが。機関砲弾のその暴虐なまでの貫通、炸裂の前には、ましてその直撃にはまるで無力であった。
 機関砲弾の貫通直撃に、その一撃のみで彼女の胴はパッと消えるように大穴を開け。さらには立て続け連続的に襲った貫通炸裂に、彼女の体はまるで弄ばれるように、千切られ弾かれ。宙空を舞台に細切れになっていく。


 永遠とも錯覚する暴虐はそれは――しかし誘身が操縦桿のトリガーを離したことにより。実際の所はわずか5秒にも満たない時間で終了を迎える。
 そして注がれた暴虐の果てに、その身を血肉の塵へと変じた女竜人は。最期には紙吹雪の如き儚い様相で、宙空を舞い地上へと墜ちて行った――


「――」

 照準の、レティクルの先で血肉の吹雪と化した女竜人の。その最後の姿を静かな眼で見送る誘身。

 先の一連の動向をもう一度確認すれば。
 まず。偉仰の一番機を追いかける杭柱のミサイルを、二番機よりの機関砲投射で破壊無力化して見せたのは、他ならぬ誘身。
 そして魔法のミサイルの無力化から、そのままの飛行で飛び抜けた二番機は、誘身は。その主である女竜人の追撃の目が、自身に向くことを当然予測していた。
 その予測から、誘身は飛び抜け通過の直後に、急速な機体の減速動作を実施。ストール――ほぼ失速のそれから、機体姿勢を90°変えて横滑りの動きで緩降下。
 その結果、予測通りに二番機を追撃して来た女竜人のその側面を取り。機関砲の投射を浴びせ、無力化撃墜に成功したのであった。

「――」

 失速を感知し、ストール警報の電子音が一瞬遅れて、コックピット内に鳴り響く。
 しかし誘身はそれに慌てるでもなく、操作行動で再びエンジンを吹かして推力を回復。機体姿勢も復帰させて、失速状態から回復して機は通常飛行へと戻った。

「――偉仰さん、そっちに合流する」

 前方上空へ視線を向ければ。
 女竜人と魔法ミサイルの追撃の脅威が無くなり。二番機同様に機動行動から体制復帰し、通常飛行に移行した一番機の姿が見えた。
 誘身はその一番機の偉仰に向けて無線通信で告げ。同時に操縦操作で少し機を加速。微かな上昇加速で一番機に追いつき、その斜め後方に着けて隊形を再編した。

《被害無しか?》

 前を飛ぶ一番機のコックピットに、キャノピー越しに偉仰がこちらを振り向く姿が微かに見え。同時に通信越しに、安否確認の声が届く。

「被弾被害無し(ノーダメージ)」

 それに、通信越しに端的に返す誘身。

《ブルファイトをかまそうとしたんだが、機会を持ってかれちまったなァ》

 誘身の側に被害が無い事が確認でき。それに気を解き、同時に偉仰の側も被害が無い旨を伝えるためだろう。偉仰からはふざけ、そして少し悪そうな声色でのそんな言葉が寄こされる。

「悪いね」

 それに、誘身は変わらずの淡々とした一言で返す。

《向こうも完了だな?》
「もちろん」

 それからまた尋ねる声に、誘身はまた端的に返す。それは、誘身があたった敵本隊の無力化が完了しているかを尋ね、そしてそれに肯定で返すもの。
 それぞれが編隊隊形の下方を見れば、敵本隊はそのほとんどが墜とされ部隊としては崩壊。わずかな生き残りが、最早連携も取らずに散り散りに逃げ去っていく姿が見えた。

「全部墜とすまでは、しなくていいんだよね?」
《あァ。昨日から、その辺はこれ以上徹底はしなくていいって周知が来てる》

 その生き残りの姿を見止めつつの誘身の尋ねる声に、偉仰からはまた肯定の言葉が帰る。
 先日まで多用途隊始め日本国隊は。可能な限り残敵の逃走などは阻み、自分等の存在が敵方に伝わる可能性を排除して来た。
 しかし昨日より、その旨に在っては解除緩和の指令周知が降りた。すなわちそれは、最早微細な配慮は必要無くなり、紅の国側へ施行した行動――排除等がそこまで進んでいる事を示してた。

《んじゃ、帰るか。任務は完了だ》

 自分等の出撃目的である、敵性部隊の全ての排除完了を見て。偉仰からはそう促す、少し倦怠感の含まれた声が寄こされる。
 偉仰、誘身にあっても。素人ではない、慣れている身であるとはいえ、今しがたまで行っていたのは殺し合いのそれだ。それも今回に在っては、この地の人々を守るための行動とはいえ、一方的な虐殺に限りなく近かった。
 それに、微かながらも気疲れを起こしての、そんな色の言葉であった。

「諒解」

 それに、誘身は察しつつもまた端的に答える。
 そして一番機のコックピットから、偉仰が指先でジェスチャーを示し寄こし。直後には一番機は90°バンクの挙動を見せ、先んじて旋回。空域より離脱を開始。
 誘身も操縦桿を倒して推力を吹かし、同じく90°バンクからの旋回で一番機を追いかけ続く。
 出撃から任務を一つ完遂し、二機編隊のF-101Jは。借りの住まいとする豊原基地への帰途へと着いた――
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加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

異世界に流されて…!?

藤城満定
ファンタジー
東京発沖縄着の船で修学旅行に出港した都立東品川高等学校2年4組の生徒35人は出港して2時間が過ぎた頃に突然の嵐に巻き込まれてしまい、船が転覆してしまって海に投げ出されてしまった。男子生徒の宮間景太郎が目を覚ますと、そこはどこかの森の中だった。海に投げ出されたのに、何で森の中にいるんだ?不思議に思って呆然としていたら、森の奥から聞き覚えのある女子生徒達の悲鳴が聞こえてきた。考えるより先に体が動いた。足元にあった折れて先端が尖った木の枝と石コロを取って森の奥へと駆け出した。そこには3人の女子生徒が5匹の身長160cmくらいの緑色の肌色のバケモノに襲われていた。そのバケモノは異世界アニメやコミックでお馴染みのゴブリン?だった。距離は10mはある。短剣を持ったのと木製の棍棒を持ったゴブリンの内、棍棒を持ったのがソレを振り下ろすのを防ぐのは無理な距離。ならばと、拾っておいた石コロを全力投球投。全くの無警戒だった場所からかならの威力で投げられた石コロが頭に命中して、そのまま倒れてしまったので他のゴブリン共も動揺した。その隙に女子生徒達とゴブリン共の間に立ち塞がり、拾った木の枝(棒?)を振り回して距離を置き、斃したゴブリンから棍棒を拾ってそこからはタコ殴りに殴りまくった。棍棒や短剣を弾くと、頭、首、肩、腕、足と、それはもうフルボッコのボッコボコにして斃してから暫くして女子生徒達に「大丈夫か?」と声をかけると、3人ともポカーンと口を開けて呆然としていた。まあ、無理もない。何故なら景太郎はクラスでは寡黙で、いつも1人で行動しているそれは、ぶっちゃけて言うと、完全な『ボッチくん』だったからだ。そんな景太郎が自分達の命を助けてくれた。それも今まで誰も見た事のない熱く必死な戦い方でだ。これは謂わゆる『吊り橋効果』ではあるが、こうまで男らしい姿を見せられては惚れるなというほうが無理だろう。その瞬間から女子達による景太郎の取り合い合戦が始まった。 【毎週火曜日に投稿します】

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