4 / 114
チャプター1:「異世界への降着 ―異質な〝ヤツ〟と中隊―」
1-4:「勇者達とこの世界、そして合流」
しおりを挟む
「ニホン……の陸上部隊?どこかの国の軍隊かい?すまないが僕の聞いたことのない国だ」
「奇遇だな、俺も同じことを思ってた。――んでもって、も一つ。アンタ、自分を勇者とか名乗ったか?魔王を倒す旅をしてるとか聞こえたが」
「あぁ、その通りだよ。といっても、まだまだ駆け出しの未熟者なんだけどね」
最期に少し自嘲気味に付け加えたハシア少年。
「どうかしたかい?」
「理解んねぇ事が、また色々増えたことが理解った」
制刻は淡々とした口調で言った。
「とりあえず、言った通りこっちに事を構えるつもりはねぇ。アンタの連れにこれ以上暴れまわらねぇよう伝えてくれるか」
「う、うん」
承諾したハシアは、しかしまだ警戒を完全に解いてはいないのか、体の正面を向けたまま後ろ歩きでその場を離れた。
「おい制刻」
入れ替わりに、自分の名を呼ぶ声がし、制刻は振り向く。
河義が、そして河義に続いて鳳藤が、制刻の元へ駆け寄って来た。空気を察し、小銃こそ降ろしているが周囲への警戒は依然解いていない。
「言葉と話が通じました。停戦です」
「本当か……」
「どうにも俺等を物盗りの類と思ったそうです。さっきの坊主との接触で勘違いさせたらしい」
「おい……それって、お前の外観が原因なんじゃないのか……?」
呆れと懐疑的な様子の混ざった表情で鳳藤は発するが、しかし制刻は取り合わずに河義に向き直る。
「それで、彼らは何者なんだ?」
「一応さっき互いに名乗りました、余計にややこしくなりましたが。国籍と身分を聞きましたが、聞いたことのねぇ国名が飛び出してきた。それと、あの見た目の良い坊主は、自分を勇者とか名乗った」
河義の問いに制刻は答えたが、説明を聞いた河義の表情は、より一層怪訝な物となった。
「勇者……?」
「えぇ。魔王を倒すために旅してる勇者、だと」
「何かそういう類のレクリエーションでもしているのか?」
河義は推測の言葉を発する。
「だとしても度を越しています……!彼らは明らかに殺意を持っていた……」
河義の推測に、青ざめた顔で異論を訴える。
「ぶつかって見たトコと、あの坊主の口ぶりから、ただのごっこ遊びって線は低いでしょう。かといって、ラリってるようにも見えなかった」
制刻はハシアと相対したことで見えた、彼の有りようを報告する。
「不可解だな……。不可解と言えばもう一つ。最初、彼等には言葉すら通じていない様子だった。それがなぜ、なぜ急に意思疎通が可能になったんだ?」
「あぁ、そいつぁ――」
先の異質な現象をどう説明するべきか、言葉を探す制刻。
「あの、いいかい?」
しかしそこへ声が掛かった。
振り返り見れば、ハシアと名乗った少年と、さらにその後ろには、先の斧使いの女と甲冑の男性。そして僧服の青年の姿もあった。
後ろの三人からは、こちらを警戒している様子がありありと見て取れた。
「こっちの人間と話してくれ。俺の上長だ」
視線で河義を示す制刻。
「北部方面隊、54普通科連隊の河義三曹と申します」
「栄と結束の王国の勇者、ハシアと言います。申し訳ない、とんだ誤解で、あなた方に襲い掛かってしまった」
身分所属を名乗った河義に、ハシアも同様に名乗り返し、そして謝罪の言葉を述べる。
「いえ、我々も応戦の前に誤解を解く事を怠りました。皆さんは怪我はありませんか、特にそちらの方」
河義は三人の姿を一度見渡し、そして中でも、特に制刻にダメージを負わされたと思われる斧女に向けて尋ねた。
「え?あ――ま、まぁ大丈夫だよ」
先程まで敵対していた相手から、心配されるとは思っていなかったのか、少し驚いた様子で返事を返した斧使いの女。
「ちょっと掠ったけど、これくらい大したことないよ」
斧使いの彼女はチラと自身の左腕に視線を落としながらも、言って見せた。
「やはり怪我を……鳳藤、手当てをしてあげてくれ」
「あ、はい」
河義は鳳藤に指示を出す。
「あ、いえ大丈夫です。手当ならこちらでできます」
しかし鳳藤が行動に移ろうとする前に、僧服の青年が前に出てきて言った。
「もう、アインプ。怪我をしたなら言ってよ」
「へへ、悪い悪い」
言いながらアインプと呼ばれた斧の彼女は、差し出された水筒を受け取り傷を洗う。そしてそれが終わると、傷のできた左腕を僧服の青年の前へと差し出した。
「じゃあいくよ――生ける力よ、癒したまえ。その力で血肉を蘇らせたまえ――」
僧服の青年はアインプの傷口の上で自身の手の平を翳すと、何か言葉を紡ぎ出す。
驚くべき現象が起こったのは、その次の瞬間だった。
アインプの傷口周辺に、発光する粒子のような物がいくつも現れ、そして彼女の傷が、まるで早送りでもするかのように塞がりだしたのだ。
「な!?」
「傷が!?」
その光景を目にした河義や鳳藤は思わず声を上げる。
アインプの傷はやがて完全に塞がり、彼女の腕はまるで最初から傷などなかったかのような、綺麗な状態に戻った。
「へへ、ありがとなイクラディ」
「今度から、怪我をしたら早く言ってよ?」
礼を言うアインプに、イクラディと呼ばれた僧服の青年はそう返した。
「あ、あの、今のは……?」
そんなやり取りをする彼等へ、河義が疑問の声を割っていれる。
「ええ、初期の治癒魔法です。私はまだ修行中の身で、この程度しかできないのがお恥ずかしいのですが」
対するイクラディは、自嘲気味にそう返す。
「ま、魔法……だって……?」
たった今目撃した驚くべき現象と、〝魔法〟という言葉。
「冗談だろ……」
「ビックリだな」
制刻だけは淡々と発したが、それ以外の各員は最早呆気に取られるしかなかった。
「………ん?」
驚きに少しの間絶句していた河義だったが、その時、村の奥側で動きがある事に気が付く。見れば複数の人々が姿を現し、こちらの様子を伺っていた。
「あの人たちは……?」
「えぇ、ここの住民の人たちです」
河義の疑問にハシアが説明する。そして一人の老人がその中から出て、こちらへと歩いて来る姿が見える。
「まず、僕から説明してきましょう」
「え、ええ……そうしていただけると助かります」
ハシアは身を翻して村の奥へと走ってゆく。
「もうわけが分からん……」
その姿を見送りながら、河義はやや疲れた口調で呟いた。
河義等はハシア達の案内で村の代表と接触。
村内のスペースに小型トラックとオートバイを乗り入れて止め、一軒の家屋の中へと招き通されていた。
一つの机を挟んで、片側にはこの村の村長が椅子に腰かけ、その後ろにハシア達四人の〝勇者一行〟が立ち並ぶ。そして反対側には、河義を先頭に各員が雑把に立ち構えていた。
不可解な事態ばかりの中、河義はなんとか自分等の身分、目的、置かれた境遇などを説明。村人達やハシア達には幾度も首を傾げられたが、村に危害を加える存在では無い事を、どうにか納得してもらえた。
「何にせよ、このたびはとても失礼なことをしました……」
「村長さんが謝る事ではありません、僕が判断を焦ったから」
村長が謝罪の言葉を発し、それを庇うようにハシアが自身を責める言葉を発する。
「よしてください。皆さんは自分の身を守るべく行動をしたに過ぎません。
原因は我々にあります」
対する河義も、非は自分達にあると謝罪の言葉を返す。
「ま、痛み分けってことでいいだろ」
そんな中で制刻だけが、礼節の欠けた口調でそんな旨の言葉を言い放つ。そして横に居た鳳藤が「おい」と発言を咎める言葉を発した。
「いえ、そうですな。幸い犠牲者等出なかった事ですし、それでよしとしませんか?勇者様」
「村長さんや村の皆さんが良いのであれば、僕達から異論は無いです」
しかし制刻の提案を、村長やハシアは受け入れる姿勢を見せ、河義は謝罪と感謝の言葉を述べて頭を下げた。
「ありがとうございます。それで――我々からもお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「ええ、かまいません」
村長の同意を得た河義はまず最初に「あなた方はなぜここに」と、ここが演習場内である事を前提とした台詞を口にし掛けたが、それを思いとどまる。
そして別の台詞を発した。
「ここは――どこなんですか?」
「この村という意味であれば、ここは芽吹きの村という村になります。ただ――」
村長は少し不思議に思いつつも、河義がもっと広い意味での答えを求めている事を察した。
「ここは〝五森の公国〟。〝地翼の大陸〟の中央から少し西にずれた位置にある国だよ」
河義の質問には、村長に代わって、ハシアが答えた。
「………あの、申し訳ないのですが、よろしければ地図などを見せていただけないでしょうか?」
「我が家に備えているのは、近隣の地図くらいですが、それでよければ」
「できれば、攻界地図は無ぇか?」
「おい制刻……!」
相も変わらずのふてぶてしい態度での制刻の要求の言葉に、河義は再び咎める声を上げる。
「あ、僕達が持ってるのでよければ」
しかしその要求の言葉は、ハシアにより受け止められた。
「本当にすみません。では、見せていただけるとありがたいです」
村長が一度家内の奥へと立ち、ハシア達は自分達の荷物を漁り始める。そしてしばらくした後、机の上に古めかしい羊皮紙が数枚差し出された。
「――なんだこれは?」
「意味不明だな」
河義が、続いて制刻が発する。
攻界地図と言って差し出されたその地図に描かれていたのは、制刻等の知る攻界とは似ても似つかぬ物だった。攻界地図を名乗るにも関わらず、彼等の住まう日本列島はおろか、ユーラシア大陸、南北アメリカ大陸、アフリカ、オセアニア、南極に至るまで、彼らの知る地の一切が描かれておらず、見たことも無い形状の島とも大陸とも判別できない地形が並び描かれていた。
「ここが地翼の大陸。そしてここが五森の公国だよ」
ハシアはその攻界地図に描かれた大陸と思しき数々の地形の中から、おそらく西側よりにある一つの大陸を指先で囲い、さらにその該当大陸の中央付近を指し示して見せた。
「……」
説明されたはいいものの、返す言葉が見つからず、河義は困惑した顔で地図に視線を落としていた。
「……ちょっと待ってくれ、この文字」
その時、脇から地図を覗き込んでいた鳳藤が発する。その視線は地図上に書かれた幾多の文字列に注がれている。
それは日本語でも英語でもその他の彼等の知る言語でもない、まったく未知の言語だ。しかし、驚く点はそこではなかった。
「読めるな」
全く知らぬ文字にも関わらず、彼らはその文字の意味が理解できたのだ。
「どうなってるんだ……?」
「何か、よくわかりませんが不思議な力が働いているような気がします……」
鳳藤は、説明というよりも自分を誤魔化し納得させるように、言葉を発する。
「国名や地名が日本語なのも、その力で訳されているからか……?」
河義は困惑しつつも、地図上に書かれている不思議な文字列に目を落としながら、推測の言葉を発した。
「よぉ。所でこの地図、この海より先のモンはねぇのか?」
そんな困惑する河義や鳳藤をよそに、制刻は地図を指し示してハシア等に尋ねる。
「ん、いや無いよ。だってそこから先は――」
質問に対してハシアが発しかけ、
「世界の終わりになっている」
「え?途中から空に繋がってるんじゃないの?」
「片翼協会では神の域だという教えなんですよ」
騎士の男性のガティシア、アインプ、イクラディの三人が、一斉に違った答えを発した。
(天動説世界かよ)
「――実際の所は、探索に行けてないから本当はどうなってるか分からないんだ」
若干のあきれ顔を浮かべた制刻の内心をなんとなく察したのか、ハシアが最後にそんな補足を入れた。
「ん?」
その時、鳳藤が自分達を見る視線に気が付く。
見れば、半開きになっていた玄関口に、先の男の子が立ち、じっとこちらの様子を伺っていた。
「やぁ。どうしたんだい、ボク」
それに気づいた鳳藤は、男の子に話しかける。
「さっきは怖がらせてしまったね。私たちは仲良くなりたいんだ。ほら、おいで」
鳳藤はそれまでの困惑の表情を一転させ、さわやかに微笑み、男の子に呼びかける。
「かっこわるいおねえちゃん、イヤ!」
「か――!?かっこ悪……ッ!?」
しかし次の瞬間発せられた男の子からの一言に、鳳藤は衝撃を受けた。
「傑作だな」
それを見た制刻は、端的に一笑した。
「………」
男の子はというと鳳藤には興味を示さず、策頼の前までトコトコ歩いて来ると、彼の姿をじーっと見上げる。
「?」
「たたかうひとー」
そしてそれに気づいた策頼に、男の子は木でできた人形を向けて翳して見せた。
「戦う人?」
返した策頼に男の子はコクリとうなずく。どうやら物珍しい客人に、自身の人形を見せたいようだ。策頼はしゃがみ込んで男の子に視線を合わせ、男の子の相手を始めた。
その脇でショックで固まっている鳳藤は放っておき、河義や制刻は話を再開する。
「まぁ、地理と言語に関しちゃ、いっぺん置いとこう。――ところで、アンタ自分を勇者と名乗ったが――ここまで見て今更だが、そういうロールプレイとかをしてるわけじゃあ、ねぇんだな?」
「ろーる……?」
制刻のロールプレイという言葉に、ハシア等は怪訝な表情を浮かべる。
「あー、そういう劇をしてるわけじゃ、ねぇんだな?」
察した制刻は、言葉を選び直して尋ねた。
「はは、確かに劇団に間違われることはあるかな。でも、駆け出しではあるけど僕は本当に勇者を命ぜられているんだ」
「国からの証明書だ。近隣提携国の証明もある」
ハシアの自嘲気味の言葉に続いて、ガティシアがいくつかの羊皮紙でできた書類を、机の上に出して示して見せた。
「……」
しかし河義等からすれば、それが何の証明なっているのかすら判別できず、河義は何度目かも分からぬ困惑の表情を作った。
「ま、アンタ等がただのごっこ遊びじゃねぇって事は、なんとなく理解できる。所でだ――あんた等、見たトコずいぶん疲弊してるな。俺等と事を構えただけの疲弊じゃない」
「あぁ、分かるかい……?」
ハシアは少し声のトーンを落として話し始める。
「二日ほどまえから、ゴブリンとの戦いが続いててね。そのせいなんだ」
「ご……ゴブリン?」
ハシアの口から語られたその名称を、河義は困惑と疑問の表情で復唱する。
「あぁ、この村はゴブリンの襲撃を受けてるんだ……」
「ゴブリンって?神話とかに出てくる、あの?」
新好地が尋ねる。
「神話?とんでもない、あいつ等は実際に存在する。この二日間、何度もしつこくこの村に襲撃を仕掛けて来てるんだ」
「言い訳になるけど、そのせいで少し過敏になっていてね……」
アインプが口を尖らせて言い、ハシアがそれに続ける。
「成程、俺等を敵と誤認したのはそのせいか」
制刻は納得したように言った。
「――河義三曹。んなもんが存在しているとなると、ちとヤベエかと」
制刻は河義に向けて言う。
「あぁ……とにかく、できる限りの情報を集めて、戻った方がいいな。すみませんが、地図とこの村の写真を取らせてもらってもいいですか?」
「はい?」
「シャシン?」
河義の言葉に、しかし村長やハシア等は理解が及んでいないのか、疑問の顔を浮かべる。
「えっと……地図とこの村の記録を取らせて下さい」
その反応から察しをつけた河義は、言葉を言い換えると共に、タブレット端末を取り出す。そして写真機能を起動し、机の上に置かれた地図の写真を撮った。
「な!」
それを見た村長やハシア達は、驚きの声を上げた。
「な、何コレ!?」
「地図が……まったく同じ光景が、板に写ってる……?」
皆一様にタブレット端末に視線を注ぎ、驚きの表情を作っている。
「このように、画像記録を取らせてほしいんです。よろしいでしょうか?」
「か、かまいません……」
村長は困惑しながらも、河義の言葉に答えた。
「よし、手分けしてかかろう。新好地士長、策頼一士は外の様子を撮影して来てくれ」
「了解」
「了」
河義の指示で、各員は作業に取り掛かった。
ニホン国の部隊と名乗った彼らは、不思議な道具を用いて何か色々と始める。
黒い髪と顔立ちから、東洋の出身と思われる彼等。
(本当に不思議な人達だな)
作業を進める様子を端から見ながら、ハシアは彼等一人一人を順繰りに観察する。
カワギと名乗った人のよさそうな、彼等の長らしき男性。
最初に現れた妙な馬にまたがっていた男性。その素顔は中性的で、最初女かと思ったほどだ。
男の子の遊び相手をしている男性。一見堅気なのかと疑う程の人相だが、根は優しそうだ。
ホウドウ、あるいはツルギと呼ばれている長い髪の女性。一見妖艶な雰囲気の漂うかなりの美女だが、言動からはどうにも残念な感じの人間である様子が伺える。
そして何より。ゼイコク、あるいはジユウと呼ばれている凄まじい外観の人物。
顔はオークやオーガ、ゴブリンがまだ整って思える程、禍々しい造形しており、人間離れした長く鋭く大きい左腕を持っている。先程の戦闘からその身体能力も半端な物では無い事が伺えた。
「ん。あぁ、気になるか?」
ハシアの視線が自身の左腕に注がれている事に気が付いたのか、左腕の、六本ある大きく鋭い指をユラユラと動かして見せる制刻。
「多指症の親戚みたいなもんらしい」
「一緒にされたくはないだろうよ……」
制刻の言葉に、鳳藤は半ばあきれ顔で言葉を挟んだ。
「村長、勇者様!」
家の玄関扉が勢いよく開かれ、一人の村人が息を切らして駆けこんで来たのは、その時だった。
「どうした?」
「た、大変です!、ば、バケモノが空を、村に……!」
「落ち着いて、何を見たんですか?」
しかし村人が言葉を返す前に、その音は聞こえ出した。
「な、なんだ……?」
「この音は……!」
勇者一行や村人たちは困惑の色を露わにしたが、一方、河義等隊員はその音の正体に予想を付け、外へと駆け出る。
「河義三曹」
外では撮影作業を行っていた策頼や新好地が、音のする方向へ視線を向けていた。
河義等がその視線を追いかけると、村の上空より少し先に、飛翔する巨大な物体の姿が見えた。
一定のリズムを刻む轟音を立て、胴体の上で二つのローターを回している。
隊の保有するCH-47J、大型輸送ヘリコプターであった。
「やっぱりか!」
予想が的中し、河義は声を上げる。
「うっへー!何あれ!?」
「なんだ……あんな魔物、見たことがないぞ!」
一方、ハシア達は現れたヘリコプターに対して警戒の色を、いや、明確な敵意を向けていた。
「だが近づけるわけにはいかない……皆、行くぞ!」
そしてハシアは地面を踏み切り、上空へ向けて思い切り跳躍しようとした。
「ちょい待った」
「わぁッ!?」
しかし、制刻が飛び立とうとしたハシアの首根っこを指先で摘まんで引き留めた。
中空でその小柄な体をゆらし、そのまま制刻の腕から捕まえられた猫のようにぶら下がるハシア。
「ちょ、何を――わ、わぁぁ……!?」
「な、なんだ!?」
「何すんのさ!邪魔する気!?」
勇者一行は突然自分達の行動を妨害した制刻に向けて発する。
「違ぇ。その前に落ち着け、ありゃ俺等の身内だ」
「え……?」
「あ、あれが……?」
制刻の言葉に、ハシア等は驚きと困惑の様子を見せる。
「CH-47Jだが、明るい色の迷彩……陸隊のじゃない」
「〝航空隊〟の航空救難団所属の機体かと……」
河義と鳳藤はヘリコプターの所属を推察する。
「河義三曹。あちらさん、俺等と同じく迷子じゃねぇかと」
「だな……誘導した方がいい。村の近辺に平坦で開けた地形はありませんか?」
「村の北側からは、比較的広い地が広がっているけど……」
河義の質問に、ハシアが村の奥側のさらに向こうを視線で示しながら言う。
「都合がいい、そこに誘導しましょう」
「よし、二人は俺と来い。新好地と策頼はここで待機」
河義は制刻と鳳藤をピックアップ。他、二人に待機を指示する。
「いいでしょう」
「了解」
河義、制刻、鳳藤の三人は、小型トラックに飛び乗る。鳳藤がハンドルを握り、小型トラックを発進させた。
小型トラックは集落を離れ、すぐに開けた場所へと出た。後席では制刻が発炎筒を手に、上空へ掲げている。CH-47Jはこちらを発見したらしく、小型トラックの上空を通過すると同時に旋回を始める。
「こっちを確認したな。鳳藤士長、円形に走って着地地点を指示してやるんだ」
「了解」
河義の指示を受け、鳳藤は小型トラックを何度も円を描くように走らせる。
走行跡で応急的なヘリパッドを描くと、制刻は持っていた発炎筒をその端に放り投げる。
そして小型トラックは応急ヘリパッドから退避する。
少し先で小型トラックを停車させ、河義等が上空を見上げると、CH-47Jが着陸態勢に入る姿が見えた。
CH-47Jは程なく地上近くまで降下してきて、ローターの巻き起こす風圧により、砂埃が盛大に巻き上がる。そしてCH-47Jはその巨体に装着されている四つの着陸脚を地面へと接地させた。
着陸してエンジンを停止させたのだろう、ローターは次第に回転数を下げ、やがて完全に制止。周囲に静寂が戻った。
少しの間をおいて、機体後部に設けられたランプが開き、そこから搭乗員と思しき複数の隊員が下りて来た。その中から一人がこちらに向かって歩いて来る。それを見止め、河義等も小型トラックを降りて、彼等の元へと歩く。
「航空救難団、入間ヘリコプター空輸隊の小千谷二尉です」
「北部方面隊、54普通科連隊の河義三曹です」
両者は相対すると、互いに所属階級、名前を名乗って敬礼を交わした。
名乗りを交わした直後に、小千谷と名乗った航空隊幹部は怪訝な顔を作る。
「助かったよ。しかし、北部方面隊と言ったかい?なぜ北海道の部隊が……」
言いかけた小千谷は、しかし途中でその言葉を変える。
「いや、違うな……ここは一体どこなんだい?まさかとは思うが北海道か……?」
「いえ、我々もここがどこなのかは分からない状況でして。そちらは何があったんですか」
小千谷に河義は説明し、そして質問を返す。
「私達も分からないんだ。私達の機は入間基地から発したばかりだった。その直後、突然瞬いた光に包まれたかと思うと、次に気が付いた時には、このまったく知らない土地の上空を飛んでいたんだ……」
「あぁ……やはり我々と同じですね」
河義は振り向き、背後に見える高地を指し示す。
「我々も突然の光と振動に襲われ、気が付いたらあの高地の頂上にいました。
私たちはそこにいる本隊から偵察に出て、先程この集落、そして彼等と接触したばかりだったんです」
河義は振り向き、その先を視線で示す。
「うっへー、すげぇ」
「あれは……魔獣?あんな物を操っているというのか?」
少し離れた位置にヘリコプターを、やや警戒しつつも物珍しそうに見ているハシア達や村人達の姿があった。
「彼等が現地の人たちか?何か……妙な恰好をしているな?」
「ええ。ここはなんというか……文化形態が大きく異なる、我々の知らない〝どこか〟のようなんです」
「我々の知らないどこか?嘘だろう……」
河義の説明を聞いた小千谷は、信じられないといった風に返す。
「残念ですが、マジのようです。二尉」
そんな小千谷に、河義の後ろに居た制刻は不躾に発した。
制刻のその言葉に、小千谷は「なんてこった……」と呟きながら、パイロットヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げる動作を見せた。
「……とにかく、あなた方と遭遇した旨を本隊に報告します。そして、本隊に合流していただきたく思います」
「あぁ……了解だ……」
小千谷は未だに動揺の収まらぬ様子で、そう返した。
集落での一連の出来事は、無線連絡で全てを伝えるには手にあまり、河義は現地の人間と接触があった事と、ヘリコプターを高地に合流させる旨だけを簡潔に本隊へ伝えた。
航空隊のヘリコプターには先に本体へ合流するために発ってもらい、偵察班は集落での情報収集を続行。そして今しがた、ようやく情報収集作業を終え、高地の本隊の元へ帰投することとなった。
「皆さん、本当に色々とすみませんでした」
河義は並ぶ村長や勇者一行に礼を述べ、頭を下げる。
「いえ、構いませんよ」
「僕たちも。困っている人を手助けするのも、勇者の役目だしね」
そんな河義に、村長やハシア達は温和な笑みを作り返す。
「そうそう、さっきも言ったけど、この近辺にはゴブリンの群れが出没するんだ。君たちも十分な力を持っているようだけど、くれぐれも気を付けて」
「ええ、ありがとうございます。では、私たちはこれで失礼します」
別れを終え、河義は小型トラックの助手席へと乗り込む。他の各員はすでに小型トラック及びオートバイへの乗車をすでに終えていた。
「んじゃ、元気でな」
「はぁ……かっこ悪い……」
車上で制刻が別れの挨拶を述べ、鳳藤は先に男の子から言われた事をまだ気にしているのか、呟いている。
「策頼、いいぞ」
「了」
河義の指示で策頼がアクセルペダルを軽く踏み、小型トラックはゆっくりと走り出し、新好地のオートバイがそれに続く。
偵察隊は集落を後にし、高地への帰路についた。
「奇遇だな、俺も同じことを思ってた。――んでもって、も一つ。アンタ、自分を勇者とか名乗ったか?魔王を倒す旅をしてるとか聞こえたが」
「あぁ、その通りだよ。といっても、まだまだ駆け出しの未熟者なんだけどね」
最期に少し自嘲気味に付け加えたハシア少年。
「どうかしたかい?」
「理解んねぇ事が、また色々増えたことが理解った」
制刻は淡々とした口調で言った。
「とりあえず、言った通りこっちに事を構えるつもりはねぇ。アンタの連れにこれ以上暴れまわらねぇよう伝えてくれるか」
「う、うん」
承諾したハシアは、しかしまだ警戒を完全に解いてはいないのか、体の正面を向けたまま後ろ歩きでその場を離れた。
「おい制刻」
入れ替わりに、自分の名を呼ぶ声がし、制刻は振り向く。
河義が、そして河義に続いて鳳藤が、制刻の元へ駆け寄って来た。空気を察し、小銃こそ降ろしているが周囲への警戒は依然解いていない。
「言葉と話が通じました。停戦です」
「本当か……」
「どうにも俺等を物盗りの類と思ったそうです。さっきの坊主との接触で勘違いさせたらしい」
「おい……それって、お前の外観が原因なんじゃないのか……?」
呆れと懐疑的な様子の混ざった表情で鳳藤は発するが、しかし制刻は取り合わずに河義に向き直る。
「それで、彼らは何者なんだ?」
「一応さっき互いに名乗りました、余計にややこしくなりましたが。国籍と身分を聞きましたが、聞いたことのねぇ国名が飛び出してきた。それと、あの見た目の良い坊主は、自分を勇者とか名乗った」
河義の問いに制刻は答えたが、説明を聞いた河義の表情は、より一層怪訝な物となった。
「勇者……?」
「えぇ。魔王を倒すために旅してる勇者、だと」
「何かそういう類のレクリエーションでもしているのか?」
河義は推測の言葉を発する。
「だとしても度を越しています……!彼らは明らかに殺意を持っていた……」
河義の推測に、青ざめた顔で異論を訴える。
「ぶつかって見たトコと、あの坊主の口ぶりから、ただのごっこ遊びって線は低いでしょう。かといって、ラリってるようにも見えなかった」
制刻はハシアと相対したことで見えた、彼の有りようを報告する。
「不可解だな……。不可解と言えばもう一つ。最初、彼等には言葉すら通じていない様子だった。それがなぜ、なぜ急に意思疎通が可能になったんだ?」
「あぁ、そいつぁ――」
先の異質な現象をどう説明するべきか、言葉を探す制刻。
「あの、いいかい?」
しかしそこへ声が掛かった。
振り返り見れば、ハシアと名乗った少年と、さらにその後ろには、先の斧使いの女と甲冑の男性。そして僧服の青年の姿もあった。
後ろの三人からは、こちらを警戒している様子がありありと見て取れた。
「こっちの人間と話してくれ。俺の上長だ」
視線で河義を示す制刻。
「北部方面隊、54普通科連隊の河義三曹と申します」
「栄と結束の王国の勇者、ハシアと言います。申し訳ない、とんだ誤解で、あなた方に襲い掛かってしまった」
身分所属を名乗った河義に、ハシアも同様に名乗り返し、そして謝罪の言葉を述べる。
「いえ、我々も応戦の前に誤解を解く事を怠りました。皆さんは怪我はありませんか、特にそちらの方」
河義は三人の姿を一度見渡し、そして中でも、特に制刻にダメージを負わされたと思われる斧女に向けて尋ねた。
「え?あ――ま、まぁ大丈夫だよ」
先程まで敵対していた相手から、心配されるとは思っていなかったのか、少し驚いた様子で返事を返した斧使いの女。
「ちょっと掠ったけど、これくらい大したことないよ」
斧使いの彼女はチラと自身の左腕に視線を落としながらも、言って見せた。
「やはり怪我を……鳳藤、手当てをしてあげてくれ」
「あ、はい」
河義は鳳藤に指示を出す。
「あ、いえ大丈夫です。手当ならこちらでできます」
しかし鳳藤が行動に移ろうとする前に、僧服の青年が前に出てきて言った。
「もう、アインプ。怪我をしたなら言ってよ」
「へへ、悪い悪い」
言いながらアインプと呼ばれた斧の彼女は、差し出された水筒を受け取り傷を洗う。そしてそれが終わると、傷のできた左腕を僧服の青年の前へと差し出した。
「じゃあいくよ――生ける力よ、癒したまえ。その力で血肉を蘇らせたまえ――」
僧服の青年はアインプの傷口の上で自身の手の平を翳すと、何か言葉を紡ぎ出す。
驚くべき現象が起こったのは、その次の瞬間だった。
アインプの傷口周辺に、発光する粒子のような物がいくつも現れ、そして彼女の傷が、まるで早送りでもするかのように塞がりだしたのだ。
「な!?」
「傷が!?」
その光景を目にした河義や鳳藤は思わず声を上げる。
アインプの傷はやがて完全に塞がり、彼女の腕はまるで最初から傷などなかったかのような、綺麗な状態に戻った。
「へへ、ありがとなイクラディ」
「今度から、怪我をしたら早く言ってよ?」
礼を言うアインプに、イクラディと呼ばれた僧服の青年はそう返した。
「あ、あの、今のは……?」
そんなやり取りをする彼等へ、河義が疑問の声を割っていれる。
「ええ、初期の治癒魔法です。私はまだ修行中の身で、この程度しかできないのがお恥ずかしいのですが」
対するイクラディは、自嘲気味にそう返す。
「ま、魔法……だって……?」
たった今目撃した驚くべき現象と、〝魔法〟という言葉。
「冗談だろ……」
「ビックリだな」
制刻だけは淡々と発したが、それ以外の各員は最早呆気に取られるしかなかった。
「………ん?」
驚きに少しの間絶句していた河義だったが、その時、村の奥側で動きがある事に気が付く。見れば複数の人々が姿を現し、こちらの様子を伺っていた。
「あの人たちは……?」
「えぇ、ここの住民の人たちです」
河義の疑問にハシアが説明する。そして一人の老人がその中から出て、こちらへと歩いて来る姿が見える。
「まず、僕から説明してきましょう」
「え、ええ……そうしていただけると助かります」
ハシアは身を翻して村の奥へと走ってゆく。
「もうわけが分からん……」
その姿を見送りながら、河義はやや疲れた口調で呟いた。
河義等はハシア達の案内で村の代表と接触。
村内のスペースに小型トラックとオートバイを乗り入れて止め、一軒の家屋の中へと招き通されていた。
一つの机を挟んで、片側にはこの村の村長が椅子に腰かけ、その後ろにハシア達四人の〝勇者一行〟が立ち並ぶ。そして反対側には、河義を先頭に各員が雑把に立ち構えていた。
不可解な事態ばかりの中、河義はなんとか自分等の身分、目的、置かれた境遇などを説明。村人達やハシア達には幾度も首を傾げられたが、村に危害を加える存在では無い事を、どうにか納得してもらえた。
「何にせよ、このたびはとても失礼なことをしました……」
「村長さんが謝る事ではありません、僕が判断を焦ったから」
村長が謝罪の言葉を発し、それを庇うようにハシアが自身を責める言葉を発する。
「よしてください。皆さんは自分の身を守るべく行動をしたに過ぎません。
原因は我々にあります」
対する河義も、非は自分達にあると謝罪の言葉を返す。
「ま、痛み分けってことでいいだろ」
そんな中で制刻だけが、礼節の欠けた口調でそんな旨の言葉を言い放つ。そして横に居た鳳藤が「おい」と発言を咎める言葉を発した。
「いえ、そうですな。幸い犠牲者等出なかった事ですし、それでよしとしませんか?勇者様」
「村長さんや村の皆さんが良いのであれば、僕達から異論は無いです」
しかし制刻の提案を、村長やハシアは受け入れる姿勢を見せ、河義は謝罪と感謝の言葉を述べて頭を下げた。
「ありがとうございます。それで――我々からもお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
「ええ、かまいません」
村長の同意を得た河義はまず最初に「あなた方はなぜここに」と、ここが演習場内である事を前提とした台詞を口にし掛けたが、それを思いとどまる。
そして別の台詞を発した。
「ここは――どこなんですか?」
「この村という意味であれば、ここは芽吹きの村という村になります。ただ――」
村長は少し不思議に思いつつも、河義がもっと広い意味での答えを求めている事を察した。
「ここは〝五森の公国〟。〝地翼の大陸〟の中央から少し西にずれた位置にある国だよ」
河義の質問には、村長に代わって、ハシアが答えた。
「………あの、申し訳ないのですが、よろしければ地図などを見せていただけないでしょうか?」
「我が家に備えているのは、近隣の地図くらいですが、それでよければ」
「できれば、攻界地図は無ぇか?」
「おい制刻……!」
相も変わらずのふてぶてしい態度での制刻の要求の言葉に、河義は再び咎める声を上げる。
「あ、僕達が持ってるのでよければ」
しかしその要求の言葉は、ハシアにより受け止められた。
「本当にすみません。では、見せていただけるとありがたいです」
村長が一度家内の奥へと立ち、ハシア達は自分達の荷物を漁り始める。そしてしばらくした後、机の上に古めかしい羊皮紙が数枚差し出された。
「――なんだこれは?」
「意味不明だな」
河義が、続いて制刻が発する。
攻界地図と言って差し出されたその地図に描かれていたのは、制刻等の知る攻界とは似ても似つかぬ物だった。攻界地図を名乗るにも関わらず、彼等の住まう日本列島はおろか、ユーラシア大陸、南北アメリカ大陸、アフリカ、オセアニア、南極に至るまで、彼らの知る地の一切が描かれておらず、見たことも無い形状の島とも大陸とも判別できない地形が並び描かれていた。
「ここが地翼の大陸。そしてここが五森の公国だよ」
ハシアはその攻界地図に描かれた大陸と思しき数々の地形の中から、おそらく西側よりにある一つの大陸を指先で囲い、さらにその該当大陸の中央付近を指し示して見せた。
「……」
説明されたはいいものの、返す言葉が見つからず、河義は困惑した顔で地図に視線を落としていた。
「……ちょっと待ってくれ、この文字」
その時、脇から地図を覗き込んでいた鳳藤が発する。その視線は地図上に書かれた幾多の文字列に注がれている。
それは日本語でも英語でもその他の彼等の知る言語でもない、まったく未知の言語だ。しかし、驚く点はそこではなかった。
「読めるな」
全く知らぬ文字にも関わらず、彼らはその文字の意味が理解できたのだ。
「どうなってるんだ……?」
「何か、よくわかりませんが不思議な力が働いているような気がします……」
鳳藤は、説明というよりも自分を誤魔化し納得させるように、言葉を発する。
「国名や地名が日本語なのも、その力で訳されているからか……?」
河義は困惑しつつも、地図上に書かれている不思議な文字列に目を落としながら、推測の言葉を発した。
「よぉ。所でこの地図、この海より先のモンはねぇのか?」
そんな困惑する河義や鳳藤をよそに、制刻は地図を指し示してハシア等に尋ねる。
「ん、いや無いよ。だってそこから先は――」
質問に対してハシアが発しかけ、
「世界の終わりになっている」
「え?途中から空に繋がってるんじゃないの?」
「片翼協会では神の域だという教えなんですよ」
騎士の男性のガティシア、アインプ、イクラディの三人が、一斉に違った答えを発した。
(天動説世界かよ)
「――実際の所は、探索に行けてないから本当はどうなってるか分からないんだ」
若干のあきれ顔を浮かべた制刻の内心をなんとなく察したのか、ハシアが最後にそんな補足を入れた。
「ん?」
その時、鳳藤が自分達を見る視線に気が付く。
見れば、半開きになっていた玄関口に、先の男の子が立ち、じっとこちらの様子を伺っていた。
「やぁ。どうしたんだい、ボク」
それに気づいた鳳藤は、男の子に話しかける。
「さっきは怖がらせてしまったね。私たちは仲良くなりたいんだ。ほら、おいで」
鳳藤はそれまでの困惑の表情を一転させ、さわやかに微笑み、男の子に呼びかける。
「かっこわるいおねえちゃん、イヤ!」
「か――!?かっこ悪……ッ!?」
しかし次の瞬間発せられた男の子からの一言に、鳳藤は衝撃を受けた。
「傑作だな」
それを見た制刻は、端的に一笑した。
「………」
男の子はというと鳳藤には興味を示さず、策頼の前までトコトコ歩いて来ると、彼の姿をじーっと見上げる。
「?」
「たたかうひとー」
そしてそれに気づいた策頼に、男の子は木でできた人形を向けて翳して見せた。
「戦う人?」
返した策頼に男の子はコクリとうなずく。どうやら物珍しい客人に、自身の人形を見せたいようだ。策頼はしゃがみ込んで男の子に視線を合わせ、男の子の相手を始めた。
その脇でショックで固まっている鳳藤は放っておき、河義や制刻は話を再開する。
「まぁ、地理と言語に関しちゃ、いっぺん置いとこう。――ところで、アンタ自分を勇者と名乗ったが――ここまで見て今更だが、そういうロールプレイとかをしてるわけじゃあ、ねぇんだな?」
「ろーる……?」
制刻のロールプレイという言葉に、ハシア等は怪訝な表情を浮かべる。
「あー、そういう劇をしてるわけじゃ、ねぇんだな?」
察した制刻は、言葉を選び直して尋ねた。
「はは、確かに劇団に間違われることはあるかな。でも、駆け出しではあるけど僕は本当に勇者を命ぜられているんだ」
「国からの証明書だ。近隣提携国の証明もある」
ハシアの自嘲気味の言葉に続いて、ガティシアがいくつかの羊皮紙でできた書類を、机の上に出して示して見せた。
「……」
しかし河義等からすれば、それが何の証明なっているのかすら判別できず、河義は何度目かも分からぬ困惑の表情を作った。
「ま、アンタ等がただのごっこ遊びじゃねぇって事は、なんとなく理解できる。所でだ――あんた等、見たトコずいぶん疲弊してるな。俺等と事を構えただけの疲弊じゃない」
「あぁ、分かるかい……?」
ハシアは少し声のトーンを落として話し始める。
「二日ほどまえから、ゴブリンとの戦いが続いててね。そのせいなんだ」
「ご……ゴブリン?」
ハシアの口から語られたその名称を、河義は困惑と疑問の表情で復唱する。
「あぁ、この村はゴブリンの襲撃を受けてるんだ……」
「ゴブリンって?神話とかに出てくる、あの?」
新好地が尋ねる。
「神話?とんでもない、あいつ等は実際に存在する。この二日間、何度もしつこくこの村に襲撃を仕掛けて来てるんだ」
「言い訳になるけど、そのせいで少し過敏になっていてね……」
アインプが口を尖らせて言い、ハシアがそれに続ける。
「成程、俺等を敵と誤認したのはそのせいか」
制刻は納得したように言った。
「――河義三曹。んなもんが存在しているとなると、ちとヤベエかと」
制刻は河義に向けて言う。
「あぁ……とにかく、できる限りの情報を集めて、戻った方がいいな。すみませんが、地図とこの村の写真を取らせてもらってもいいですか?」
「はい?」
「シャシン?」
河義の言葉に、しかし村長やハシア等は理解が及んでいないのか、疑問の顔を浮かべる。
「えっと……地図とこの村の記録を取らせて下さい」
その反応から察しをつけた河義は、言葉を言い換えると共に、タブレット端末を取り出す。そして写真機能を起動し、机の上に置かれた地図の写真を撮った。
「な!」
それを見た村長やハシア達は、驚きの声を上げた。
「な、何コレ!?」
「地図が……まったく同じ光景が、板に写ってる……?」
皆一様にタブレット端末に視線を注ぎ、驚きの表情を作っている。
「このように、画像記録を取らせてほしいんです。よろしいでしょうか?」
「か、かまいません……」
村長は困惑しながらも、河義の言葉に答えた。
「よし、手分けしてかかろう。新好地士長、策頼一士は外の様子を撮影して来てくれ」
「了解」
「了」
河義の指示で、各員は作業に取り掛かった。
ニホン国の部隊と名乗った彼らは、不思議な道具を用いて何か色々と始める。
黒い髪と顔立ちから、東洋の出身と思われる彼等。
(本当に不思議な人達だな)
作業を進める様子を端から見ながら、ハシアは彼等一人一人を順繰りに観察する。
カワギと名乗った人のよさそうな、彼等の長らしき男性。
最初に現れた妙な馬にまたがっていた男性。その素顔は中性的で、最初女かと思ったほどだ。
男の子の遊び相手をしている男性。一見堅気なのかと疑う程の人相だが、根は優しそうだ。
ホウドウ、あるいはツルギと呼ばれている長い髪の女性。一見妖艶な雰囲気の漂うかなりの美女だが、言動からはどうにも残念な感じの人間である様子が伺える。
そして何より。ゼイコク、あるいはジユウと呼ばれている凄まじい外観の人物。
顔はオークやオーガ、ゴブリンがまだ整って思える程、禍々しい造形しており、人間離れした長く鋭く大きい左腕を持っている。先程の戦闘からその身体能力も半端な物では無い事が伺えた。
「ん。あぁ、気になるか?」
ハシアの視線が自身の左腕に注がれている事に気が付いたのか、左腕の、六本ある大きく鋭い指をユラユラと動かして見せる制刻。
「多指症の親戚みたいなもんらしい」
「一緒にされたくはないだろうよ……」
制刻の言葉に、鳳藤は半ばあきれ顔で言葉を挟んだ。
「村長、勇者様!」
家の玄関扉が勢いよく開かれ、一人の村人が息を切らして駆けこんで来たのは、その時だった。
「どうした?」
「た、大変です!、ば、バケモノが空を、村に……!」
「落ち着いて、何を見たんですか?」
しかし村人が言葉を返す前に、その音は聞こえ出した。
「な、なんだ……?」
「この音は……!」
勇者一行や村人たちは困惑の色を露わにしたが、一方、河義等隊員はその音の正体に予想を付け、外へと駆け出る。
「河義三曹」
外では撮影作業を行っていた策頼や新好地が、音のする方向へ視線を向けていた。
河義等がその視線を追いかけると、村の上空より少し先に、飛翔する巨大な物体の姿が見えた。
一定のリズムを刻む轟音を立て、胴体の上で二つのローターを回している。
隊の保有するCH-47J、大型輸送ヘリコプターであった。
「やっぱりか!」
予想が的中し、河義は声を上げる。
「うっへー!何あれ!?」
「なんだ……あんな魔物、見たことがないぞ!」
一方、ハシア達は現れたヘリコプターに対して警戒の色を、いや、明確な敵意を向けていた。
「だが近づけるわけにはいかない……皆、行くぞ!」
そしてハシアは地面を踏み切り、上空へ向けて思い切り跳躍しようとした。
「ちょい待った」
「わぁッ!?」
しかし、制刻が飛び立とうとしたハシアの首根っこを指先で摘まんで引き留めた。
中空でその小柄な体をゆらし、そのまま制刻の腕から捕まえられた猫のようにぶら下がるハシア。
「ちょ、何を――わ、わぁぁ……!?」
「な、なんだ!?」
「何すんのさ!邪魔する気!?」
勇者一行は突然自分達の行動を妨害した制刻に向けて発する。
「違ぇ。その前に落ち着け、ありゃ俺等の身内だ」
「え……?」
「あ、あれが……?」
制刻の言葉に、ハシア等は驚きと困惑の様子を見せる。
「CH-47Jだが、明るい色の迷彩……陸隊のじゃない」
「〝航空隊〟の航空救難団所属の機体かと……」
河義と鳳藤はヘリコプターの所属を推察する。
「河義三曹。あちらさん、俺等と同じく迷子じゃねぇかと」
「だな……誘導した方がいい。村の近辺に平坦で開けた地形はありませんか?」
「村の北側からは、比較的広い地が広がっているけど……」
河義の質問に、ハシアが村の奥側のさらに向こうを視線で示しながら言う。
「都合がいい、そこに誘導しましょう」
「よし、二人は俺と来い。新好地と策頼はここで待機」
河義は制刻と鳳藤をピックアップ。他、二人に待機を指示する。
「いいでしょう」
「了解」
河義、制刻、鳳藤の三人は、小型トラックに飛び乗る。鳳藤がハンドルを握り、小型トラックを発進させた。
小型トラックは集落を離れ、すぐに開けた場所へと出た。後席では制刻が発炎筒を手に、上空へ掲げている。CH-47Jはこちらを発見したらしく、小型トラックの上空を通過すると同時に旋回を始める。
「こっちを確認したな。鳳藤士長、円形に走って着地地点を指示してやるんだ」
「了解」
河義の指示を受け、鳳藤は小型トラックを何度も円を描くように走らせる。
走行跡で応急的なヘリパッドを描くと、制刻は持っていた発炎筒をその端に放り投げる。
そして小型トラックは応急ヘリパッドから退避する。
少し先で小型トラックを停車させ、河義等が上空を見上げると、CH-47Jが着陸態勢に入る姿が見えた。
CH-47Jは程なく地上近くまで降下してきて、ローターの巻き起こす風圧により、砂埃が盛大に巻き上がる。そしてCH-47Jはその巨体に装着されている四つの着陸脚を地面へと接地させた。
着陸してエンジンを停止させたのだろう、ローターは次第に回転数を下げ、やがて完全に制止。周囲に静寂が戻った。
少しの間をおいて、機体後部に設けられたランプが開き、そこから搭乗員と思しき複数の隊員が下りて来た。その中から一人がこちらに向かって歩いて来る。それを見止め、河義等も小型トラックを降りて、彼等の元へと歩く。
「航空救難団、入間ヘリコプター空輸隊の小千谷二尉です」
「北部方面隊、54普通科連隊の河義三曹です」
両者は相対すると、互いに所属階級、名前を名乗って敬礼を交わした。
名乗りを交わした直後に、小千谷と名乗った航空隊幹部は怪訝な顔を作る。
「助かったよ。しかし、北部方面隊と言ったかい?なぜ北海道の部隊が……」
言いかけた小千谷は、しかし途中でその言葉を変える。
「いや、違うな……ここは一体どこなんだい?まさかとは思うが北海道か……?」
「いえ、我々もここがどこなのかは分からない状況でして。そちらは何があったんですか」
小千谷に河義は説明し、そして質問を返す。
「私達も分からないんだ。私達の機は入間基地から発したばかりだった。その直後、突然瞬いた光に包まれたかと思うと、次に気が付いた時には、このまったく知らない土地の上空を飛んでいたんだ……」
「あぁ……やはり我々と同じですね」
河義は振り向き、背後に見える高地を指し示す。
「我々も突然の光と振動に襲われ、気が付いたらあの高地の頂上にいました。
私たちはそこにいる本隊から偵察に出て、先程この集落、そして彼等と接触したばかりだったんです」
河義は振り向き、その先を視線で示す。
「うっへー、すげぇ」
「あれは……魔獣?あんな物を操っているというのか?」
少し離れた位置にヘリコプターを、やや警戒しつつも物珍しそうに見ているハシア達や村人達の姿があった。
「彼等が現地の人たちか?何か……妙な恰好をしているな?」
「ええ。ここはなんというか……文化形態が大きく異なる、我々の知らない〝どこか〟のようなんです」
「我々の知らないどこか?嘘だろう……」
河義の説明を聞いた小千谷は、信じられないといった風に返す。
「残念ですが、マジのようです。二尉」
そんな小千谷に、河義の後ろに居た制刻は不躾に発した。
制刻のその言葉に、小千谷は「なんてこった……」と呟きながら、パイロットヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げる動作を見せた。
「……とにかく、あなた方と遭遇した旨を本隊に報告します。そして、本隊に合流していただきたく思います」
「あぁ……了解だ……」
小千谷は未だに動揺の収まらぬ様子で、そう返した。
集落での一連の出来事は、無線連絡で全てを伝えるには手にあまり、河義は現地の人間と接触があった事と、ヘリコプターを高地に合流させる旨だけを簡潔に本隊へ伝えた。
航空隊のヘリコプターには先に本体へ合流するために発ってもらい、偵察班は集落での情報収集を続行。そして今しがた、ようやく情報収集作業を終え、高地の本隊の元へ帰投することとなった。
「皆さん、本当に色々とすみませんでした」
河義は並ぶ村長や勇者一行に礼を述べ、頭を下げる。
「いえ、構いませんよ」
「僕たちも。困っている人を手助けするのも、勇者の役目だしね」
そんな河義に、村長やハシア達は温和な笑みを作り返す。
「そうそう、さっきも言ったけど、この近辺にはゴブリンの群れが出没するんだ。君たちも十分な力を持っているようだけど、くれぐれも気を付けて」
「ええ、ありがとうございます。では、私たちはこれで失礼します」
別れを終え、河義は小型トラックの助手席へと乗り込む。他の各員はすでに小型トラック及びオートバイへの乗車をすでに終えていた。
「んじゃ、元気でな」
「はぁ……かっこ悪い……」
車上で制刻が別れの挨拶を述べ、鳳藤は先に男の子から言われた事をまだ気にしているのか、呟いている。
「策頼、いいぞ」
「了」
河義の指示で策頼がアクセルペダルを軽く踏み、小型トラックはゆっくりと走り出し、新好地のオートバイがそれに続く。
偵察隊は集落を後にし、高地への帰路についた。
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる