純喫茶カッパーロ

藤 実花

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最終章 浅川池で逢いましょう

⑤大切な人のために何かをしたいと思うこと

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一之丞達の答えを聞いて、四尾からフッと気が抜けた。

「そ、そんな訳なかろう……選ぶなら水神の玉のはず……人間などを……」

あり得ない……と呟いた四尾は、そのまま力なく下降した。
何が彼に起こったのか……。
茫然自失となり、高度を落として行く四尾はあきらかにショックを受けている。
それを見て、機を窺っていた一之丞が大きく跳躍し、次郎太と三左は示し合わせたようにサッと水鉄砲を構えた。

「一之丞!!」

自慢の跳躍で上空までやって来た一之丞は、ストンと私の肩に乗った。

「サユリ殿っ!無事であるか?すまぬ。私がちゃんと一緒におれば……」

「ううん!大丈夫!」

短く会話を交わした私達は、落ちて行く四尾と、睨みを利かせる次郎太と三左を見た。

「次郎兄!いっくよぉー!」

「任せとけ!」

2人は息もぴったりに、構えた水鉄砲の引き金を引いた。
百円のオモチャであったはずの水鉄砲は、彼らの妖力で超絶パワーアップされた立派な武器になっている。
2人の法被が銀竜を中心に輝き、その輝きが水鉄砲に流れ込む。
水鉄砲は銀色に染まった水を勢いよく放出すると、ムチのように四尾目掛けて飛んで行く。
2本のムチは四尾の体を難なく捉え、グルグルと巻き付くと身動きを取れないようにした。

「くうっ!」

体に巻き付く銀色の水を見て、四尾はやっと状況を把握した。
なんとか外そうともがくが、水鉄砲の水は無限に出続け、もがけばもがくほど動けなくなっていく。

「兄さまぁ!!今だよっ!」

「うむっ!」

下から叫ぶ三左の声に一之丞が反応した。
彼がむんっ!と印を結ぶと私を捉えていた風の鎖がいきなり霧散し、自由になった体を一之丞がしっかりと抱き止めた。
そのまま、2人で落ちていくのかと思いきや、なんと池から水蒸気が大量発生し、私と一之丞をフワリフワリと畔まで運んだのだ。

「大事ないか?」

一之丞はそっと優しく私をおろした。

「うん。ありがとう」

「礼には及ばぬ……そもそも、私の失態であるのだ」

「いや、そうじゃなくて……ね……」

「そうじゃない?とは?」

首を捻る一之丞に私は言った。

「水神の玉より、私を選んでくれたこと……嬉しかった……から」

「なに、それは当然のことである。家族は助け合うもの。サユリ殿も先ほどそうしたではないか」

はて?
そんなことをしただろうか?と、今度は私が首を捻る。

「自分が危険な目に合っているにも関わらず、我らに水神の玉を選べと申したであろう?」

「あ、そう言えば……」

思い出した私に、一之丞は真剣な表情で言った。

「思えば、契約書を交わした父と仁左衛門殿にも固い絆があったのやもしれぬ……私とて、サユリ殿と出会う前は、何故人の為に父が力を貸したのかわからなかった。だが今は父の気持ちが良くわかるのだ」

「うん」

「大切な人のために何かをしたいと思うこと。それが一番大事なことなのだ」

と言って一之丞は後ろを振り返る。
そこには、次郎太と三左に捕まっている四尾がもがき、暴れ、叫んでいた。

「天狐には我らの選択がよっぽど意外だったと見える。あのように隙をみせるなど、本来あり得ぬからな」

一之丞の表情は堅く、少しの憐憫も窺えた。

「うん。私もそう感じたよ。きっとそこに四尾の動機があるんじゃないかな……」

私の言葉に一之丞は頷き、ゆっくりと四尾に近付いた。

一之丞を見つけた四尾は、憎々しい目を向け、吐き捨てるように言った。

「河童め!!離せ!この無礼者が!」

「……天狐よ。何故そのようにすべてを憎むのだ?いや、違うか……お主は哀しんでおるのだな……」

「哀しい……?誰が哀しいと?」

きょとんとした四尾は暴れるのを一瞬止め、何を言っているのかわからない、という表情で一之丞と私を見る。
もしかして。
四尾は「哀しみ」という感情を知らないのではないか。

「哀しいとはなんだ?どういう意味だ?」

表情を変えないまま呟く四尾を見て、やっぱりと思った。
「哀しい」の意味を問う彼は、子供のように純粋な瞳でこちらを見ている。
私は前に立つ一之丞のすぐ後ろまで行き、捕らわれている四尾を覗き込んだ。























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