助けた騎士団になつかれました。

藤 実花

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ムーンバレー地方

10.私の秘密

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「シルベーヌ様は……優しくて聡明な人だ。その美しさと比例して……」

「美しくないから、ここにいるのだけど?」

あ、心で考えたことをつい言葉に出してしまった!
と思ったがもう遅い。
ディランは驚いた顔をして私を見た。

「美しくないとは!?先程もそんなことを言ったが……どこをどう見たら、そんな結論になるのかわからない。シルベーヌ様……君は、夜の女神のように美しい」

そう。
人は私をそう形容する。

『冥府のシルベーヌは、宵闇の女神。その美しさは世界一。漆黒の髪、漆黒の瞳、深紅の唇、真白な肌。その煌めきに叶うものなし』

世界に流布されたその噂は、自分で言うのもなんだけど、半分は正解なのだ。
この美しさは闇の中でだけのもの。
冥府では昼でも薄闇で、それが通常だけど、地上の昼は燦々と太陽が輝いている。
昔、一度だけ、地上の昼を体験したくて、こちらに来たことがあった。
でも、太陽の光を浴びた途端、私は自分の姿が変わるのに気付いた。
慌ててスピークルムで確認すると、そこに写っていたのは、自分でないような何かだった。

つまり、昼の私と夜の私はほぼ別人。
ラシュカ王は昼間の私を見た。
その評価は……言わずもがな。
顔を背けるほどのものだということね。

「その言葉、もう一度明るくなってから言えるかしら?」

「……どういう意味だ?」

ディランは不思議そうに青い瞳を瞬かせた。

「別に……さて!今度は中の様子を見たいわ。どうかしら、進行状況は?」

不自然に話を逸らした私を、ディランは黙して見る。
だが暫くして、もう私が語らないとわかると、スッと立ち上がり手を差し伸べて言った。

「捗ってますよ。ご覧下さい」

その手を取り、二人で玄関扉をくぐった。
見回すと壁の石はすっかり取り除かれ、剥き出しになった基礎が露になっている。
基礎は思ったよりも小さく、これがあの大きな屋敷になるのかと、私は興味津々だ。

「これはシルベーヌ様!今、基礎の見直しをしているところです!もう少し規模を大きくしてどこにも負けない館を作るつもりですので、お楽しみに!!」

という甲高い声が聞こえたが、姿は全く見えない。
一体どこから?とキョロキョロ辺りを見回すと、中心となる大きな柱の一番上に人がいた。
……人?猿かな?
そう思わせるような身のこなしで、その人(猿?)はするすると降りてきた。

「スレイ。シルベーヌ様が驚いているぞ。きちんと降りてから声を掛けなければ……」

ディランはやれやれといった感じで、スレイと呼ばれた男に言った。

「あー、すんません。ちょっと嬉しくて昂っちゃってー」

「嬉しいの?何で?」

スレイの言葉に被せて、私は尋ねた。

「おれ、もともと大工なんですよ。普通の家とか、砦とかは結構作るんですけど、館なんてもん作ったことなくて……あ、でも、やりようはわかってますらね!ラシュカ一番の館を作って見せますよ!!」

「………そ、そうなの?ありがとう!楽しみにしてるわ」

私の言葉にスレイは破顔し、また作業に戻っていく。
それを確認して、私は少し疑問に思ったことを、遠慮なくディランにぶつけてみた。

「ねぇ、ディラン?」

「はい?」

「ヴァーミリオン騎士団って、兼業なの!?みんな副業持ってるの??」





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