バンパイアガール

秋月

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*消えた少女

消えた少女#4

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―…1ヶ月前のあの事故の日
その前日の夜に私はあるビルの屋上へ静かに向かった
あの子がこの世界に絶望した様な様子でこのビルに入って行ったのが見えたから
影から静かにその子の様子を伺ってるとやっぱりここに自殺をしに来たことが分かった

私にだって悩みはある
誰だって他人に計り知れない悩みを持っているもの
自ら命を絶つ決断をした彼女の絶望と苦しみはどれ程辛いものだったのか、私には想像がつかない

「もうやだ…こんな世界…」

こんな綺麗な星空の下で空を見上げることなく、ただ泣く彼女
今の私は世間的に死んだことにしなければまともに生きてはいけなくなる
心苦しいけどあの子の死を利用させて貰わなきゃ…
私は1歩踏み出して、今にも飛び降りそうな彼女に話しかけた
唯奈「…ねえあなた死ぬの?」

「誰!?なんでここに人が居るの!?」

誰も居ないと思ってたみたいで彼女は私の存在にとても驚いていて、そしてとても怯えた目をしていた
彼女は目に写る全てが最早怖いんだ…

唯奈「私が誰かなんてこれから死ぬあなたには関係ないでしょ?
それより…なんで死ぬの?
最後に私が聞いてあげる」

見ず知らずの私相手だったせいなのか、彼女は吐き出すように言葉にした

「だってこんな世界に生きていても意味ない!
誰も私は必要ないのっ
もう苦しいの!学校も家も自分の名前も…全部大っ嫌い!!!」

彼女は何処にも居場所が無いんだ

唯奈「自分の名前ね…
なら貴方に私の名前をあげる
私の名前は"佐々木唯奈"
ねぇ,私の変わりに死んでくれない?」

そう伝えると彼女は少し戸惑ったように返した

「変わりって…貴方なんなの…?
私の自殺を止めたりしないの?」

唯奈「止めたら貴方は死なないの?」

そう聞き返すと彼女は黙り込んだ

唯奈「貴方はどんな事があっても自殺することをもう心に決めている
それに赤の他人の私が説得したって貴方の苦しみが消える訳じゃないし、根本的な原因の解決が出来るわけじゃない
貴方の命は貴方だけのもの
私が貴方の命の選択を否定するわけにはいかないでしょ?」

「…でも身代わりって…貴方は何かしたいの?」

唯奈「ある意味では貴方と同じかもしれない
私の目的は世間的な私の死亡という事実が欲しいの
ある目的の為に死んだことにしたいの」

「目的?世間的な死?
一体なんなの…でも他人の私が貴方のそんなこと気にしても仕方ないか…
どうせ私は死ぬし…
いいよ、貴方のお願い聞いてあげる
私の死が貴方の役に立てるなら、少しくらい生きていた意味があったのかもしれないな…」

そうして彼女は屋上から身を投げ出して夜の暗闇へ消えていった
私に彼女の苦しみを救えたら、彼女が死ぬこともなかったのかな…
皮肉なもんだなぁ…

そして翌朝、散歩をしていたとある男性が血塗れの女の子の死体を発見し、驚愕した

「うわあぁっお…女の子が…っ誰か!!」

すぐに警察と救急車が集まったが既に亡くなっていた彼女が助かることはなかった
そして彼女の身元は財布に入っていた学生証で判明した
荷物も確認したところ彼女の物だと両親が証言した

「可哀想に。運悪く顔から落ちたんだね…」

「見つかった時は顔が潰れていて、誰だか分からなかったらしいよ」

「でも身元を判明出来る物があって助かった
こうして家に帰ってこれたんだから…」

唯奈「……」

私の家からお経が聞こえてくる
黒い服に身を包み、啜り泣く顔見知りの人達
私の葬式が今、行われてる
そんな様子を影から見て、私は家を後にした
悲しくないと言えば嘘になる
皆にごめんねって謝りたい気持ちが込み上げる
でも後には引けない
覚悟も決めて後悔もしちゃいけないから
彼女の鞄から学生証を取り出す
そこには"大野おおの志乃しの"という名前が記されていた
私の身代わりに亡くなった彼女の本当の名前
昨日あの後、私と彼女の服と荷物を交換して私はその屋上を後にした
その後、彼女は身を投げた
彼女がどれ程の痛みと苦痛を体験したか私には分からない
体も心もとても痛かった筈…
でも彼女は私の願いを叶えてくれた
たった数分会って話しただけだけど、見ず知らずの私の意味の分からない要望を聞いてくれるくらい優しい子だったというのは伝わった

唯奈「…志乃ちゃん、私だけは貴方の死を覚えていてあげる
どうか彼女が安らかな眠りにつけます様に」

彼女のバックや服は全て燃やした
これで計画通り世間的に"佐々木唯奈"は死んだ事になった
そして私はそのまま誰にも気付かれずに姿を消したー…

唯奈「……」

蓮斗「名前をあげたって…どうゆう事だよ」

唯奈「そのまんまの意味だよ
だから今"佐々木唯奈"はこの世界に存在しないの」

蓮斗「なんで…なんでそんなことする必要があるんだよ
皆お前の事心配して…っ
俺だって唯奈が死んだって聞いてどれだけ辛かったと思って…」

唯奈「計画…私の目的の為、仕方がないの」

蓮斗「計画…?それに唯奈の目的ってなんだよ」

唯奈「……計画は…」

俺は息を飲んだ
唯奈の口から出た計画という言葉
唯奈の話を聞いても全然分からない
いや…分からないように話してる感じだ
計画ってなんだ
それが聞けたら何か分かるかも知れない

唯奈「計画は―…」

これで唯奈のやろうとしてる事が分かる
例えそれがどんな事でも力になれるものなら俺も助けたい

陽香「"唯奈"、余計なお喋りはそこまでにしておきなさい
分かってるでしょ?どうなるか」

あと少しの所で唯奈から何か聞けるかもしれないというところで背後から陽香さんが引き留めるように声をかけた

唯奈「分かってる…そろそろ寝ようか
部屋用意してくるから」

そう言って唯奈は行ってしまった

陽香「…あまり唯奈をからかわないでね」

からかう…?
違う、陽香さんも唯奈もおかしい
何を隠してるんだ…?
でもこれ以上は無理だと思った俺はその日は素直に寝ることにした
聞くチャンスはきっとまたあるから

唯奈「……」

陽香「眠ったみたいだね」

唯奈「そうみたい」

蓮斗…なんで私だと気付いたんだろう…
あの時、蓮斗が私に声なんてかけてこなければ
こんな事にはならなかったのに…
私はただ蓮斗には私の事なんて忘れて幸せに暮らしてほしいだけだったのに…

陽香「厄介だね
これからが夜本番なのに…」

唯奈「大丈夫。必ず来るとは限らないし…
それに側に私達が居る
蓮斗が狙われる可能性は低い」

陽香「そうだね…でも夜は長いよ
油断しないようにね…依月」

依月「分かってる
全力で狩ってみせるから」
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