バンパイアガール

秋月

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*消えた少女

消えた少女#3

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蓮斗がお風呂に入っている間、私は憂鬱なような嬉しいような複雑な気分だった
再会なんてしたくなかった
蓮斗になんて説明すればいいのか、頭を悩ませる一方で、世間的には死んだ私の事にすぐ気付いてくれて嬉しく感じてしまう自分が居る
私は残酷に離れないみたい
あの時突き放さなきゃいけなかったのに…

「ほらタオル」

唯奈「ありがとう」

タオルを受け取って濡れた髪を拭くけど、蓮斗の事を考えると、手が止まってしまう
そんな私を見て溜め息をついて、わしわしと私の髪を拭き始めた

「全く、びしょ濡れなんだからしっかり拭きなさいよ
風邪引いても知らないからね」

唯奈「ふふ、お節介妬き
これくらい大したことないもん」

「あんたが自分のこといい加減だからね
私としては心配なのよ
いつまでもお子様なんだから」

唯奈「もうそんなに子どもじゃないもん」

「私からしたら昔も今も世話がかかる可愛い妹よ
それで?あの男の子はどうゆう事なのか説明してくれる?
突然連れて帰ってくるなんてびっくりしたんだから」

唯奈「名前は蓮斗
私が…"佐々木唯奈"が生きていた頃付き合っていた彼氏なの
今日どうやらつけられてきたみたいで…
バレないようにはしてたんだけど…気付かれちゃったみたい」

「彼氏…話には聞いていたけどなるほどね
じゃあ"唯奈"に気付くのも頷けるね
感が良さそうな子だもんね
余程唯奈の事大事にしてたんだね
じゃなきゃ気付かないでしょ」

唯奈「うん…」

本当に付き合ってる当初からずっと優しくて自慢の彼氏だった
そんな蓮斗が私も大好きだったんだから…
駄目だな…1度捨てた筈の気持ちが蓮斗と再会して揺れてしまうなんて…

「それで?なんで家まで連れて来たの?
あんたならうまく巻く事も出来たでしょ」

唯奈「…近くにあいつ等の匂いがした
あのままあそこに居たら奴等の餌食になる
それに私の匂いが移ってるかもしれないから…
だから連れて来たの」

私に触れた蓮斗
ほんの些細な事でも私の匂いが付いた蓮斗を奴等が狙う可能性は充分ある

「なるほどね…一緒の所を狙われると確かに厄介だし、説明がつけられないもんね
いい判断をしたね…"依月いづき"?」

唯奈「蓮斗が居るのにその名前で呼ばないでよ…
でもごめん勝手な事して…」

「まぁ、過ぎたことだしもうしょうがない
私も協力するから組織の事はバレないようにね」

唯奈「勿論分かってるよ」

ー…風呂から上がると男物の服が用意されていたからとりあえずそれに着替えた
そしていい匂いが漂っていた
音のする方へ進み、顔を覗かせると皿を並べる唯奈の姿があった

唯奈「あ、蓮斗お風呂上がったんだね
今日はこんな嵐だし、とりあえず泊まっていきなよ
ほらご飯も用意したから」

その笑みや話し方は俺のよく知る唯奈と変わらない
確かにこの雨じゃ帰れないし、何も分からないまま帰るわけにもいかないしな
唯奈の言葉に甘えよう

蓮斗「じゃあ…お言葉に甘えて…」

唯奈「…気になってると思うから先に言っておくね
ここは今、私が居候してる家でそしてここの主の…」

「"陽香ようか"です。よろしくね」

にっこりと俺に微笑む陽香さんはやっぱり唯奈に何処と無く似てる

蓮斗「あ…蓮斗です」

陽香「蓮斗君、唯奈から話は聞いてるの
付き合ってるらしいね」

陽香さんは最初に会った印象では感じられなかったくらい饒舌な人みたいで、俺にどんどん質問してきた
正直戸惑ったし、そんな中でも俺はどんどん疑問が増えていった
初めから疑問なのが唯奈の生存
そしてなぜこんな所に居候なんてしているのか
それに一見優しそうな人に見えるけど、陽香さんも何か引っ掛かる
話を聞いていると陽香さんと唯奈の2人でここに住んでるらしいのになんで男物の服があるんだ…?
陽香さんの恋人のものなのかもしれないかと思ったけど、聞いてみたら恋人の存在自体いないって言うし…
だけどこの流れ、完全に俺が質問出来ない
まるで聞かれちゃ困る様な…
唯奈と陽香さんの関係って何なんだ?
ご飯が終わり、何だか疲れてしまってソファに腰かけて、ふぅーと息を吐く
そしたら唯奈が暖かい紅茶を入れてくれて俺の隣に座った

蓮斗「あ…ありがとう」

唯奈「ごめんね陽香が…疲れたでしょ?」

軽く笑みをこぼす唯奈

蓮斗「まぁ少し…あんな質問攻めにあったの初めて」

今、陽香さんはちょうどお風呂に行っていて今は唯奈と2人きり
これは色々聞くチャンスだ

蓮斗「ずっと聞こうと思ってたんだけど本当に唯奈だよな…?
1ヶ月前に死んだはずなのに…なんでここに居るんだ?
死んでなかったのか?」

ようやく聞きたかった事を聞けた
唯奈から笑みが消えて、俺から顔を逸らすように手元のカップに目線を落とした
話しづらい事なのか少し沈黙した後に唯奈は呟くように口を開いた

唯奈「…私は死んでない
私はただあの子に名前をあげただけ…」
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