バンパイアガール

秋月

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*真実

真実#1

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陽香が死んでから1ヶ月が経とうとしていた
最初は目が覚めたら夢なんじゃないかって思ったけど、現実を目の当たりにして落胆する日々が続いていた
今になるともう陽香が何処にもいない現実を受け入れられるようになっている
それでも陽香を失った喪失感はとバンパイアへの憎しみは決して消えることがなかった

ー…バンパイア研究組織、射撃場
銃声と共に次々に的を撃ち抜いていると、リーダーが顔を覗かせた

リーダー「依月またここに居たのか?」

依月「リーダー、お疲れ様」

リーダー「暇があるとここにばっかり居るな
他にも設備が整ってるんだからずっとここに隠ることもないだろ…」

依月「うん…けど、ここが1番落ち着くというか…」

私はあの日からあの家から立ち去り、この研究所で暮らしている
あの日あれだけ重く感じた銃も今ではこんなに軽々撃てる
その理由は明白だけど…
私が黙り混んでるとリーダーは急に私の頭をわしゃわしゃ掻き乱した

依月「わっ!?ちょっとリーダーっ?」

リーダー「ははっ、変な頭」

なんて笑うリーダー
元々面倒見のいいリーダーだったけど、あの日から私の事をずっと気掛かりにしてるみたいで、私が落ち込んでるとこうやって元気付けてくれる
だからだろうな
この瞬間はふっと心が軽くなるの

依月「もう!変な頭にしたのはリーダーでしょ
うー、ボサボサだよ」

リーダー「ははっ」

笑って誤魔化した…もう

依月「それよりは聞いたよ
リーダー魂あと1つなんでしょ?」

リーダー「あー…まぁ、そうなんだよな」

ちょっとばつが悪そうな顔で答えるリーダー
そりゃそうだよね、だって

依月「前は全員が純血を卒業するのを見届けるまで俺は最後で良いって言ってたのに、どうゆう心境の変化~?」

リーダー「依月も意地悪だなぁ
組織に所属することが決まったんだから純血じゃ無くても皆を見守る事は出来る
だったらわざわざ危険な純血である必要もないからな」

そうリーダーは純血で無くなっても、私同様に組織に残り研究に貢献する道を選んだみたい
そう決めたのがあの件から間もなくしてからみたいで…
なんだか私の心配してくれてるんじゃないかと思ったけど、勘違いしてるみたいで恥ずかしい
思い過ごしもいいところだよね

依月「残る子も半分くらい居るみたいだけど、リーダーが残ってくれるなら私も寂しくないな」

リーダー「そうか?依月がそう言ってくれるならこの選択も悪くなかったと思うよ
ま、俺も世話のかかる妹みたいな依月と居るのは飽きないけどな」

やっぱりリーダーにとっても私は妹みたいな存在なんだ

依月「リーダーはすぐに私を子ども扱いする
リーダーと歳だってそんなに変わらないのに」

リーダー「俺からしたら年下の依月はお子様に見えるよ
それより施設に暮らすようになってからしばらく経つけど…あの家に帰ってるのか?
ここに来てから依月が外出してるところ見たこと無いけど」

依月「あー…えっと…あの日から1度も足を運んでないの
あそこに居ると陽香の事思い出しちゃって…
ここに居る方が皆も居るし落ち着くから…」

受け入れることが出来てもあの場所には陽香との思い出がありすぎる

リーダー「そうか…悪い、余計な事聞いたな」

リーダーは優しく私の頭を撫でた
リーダーのこの優しさは狡いと思う
辛くて苦しい時にこんな風に優しくされたら泣きそうになるんだもん
でも、陽香のかたきを果たすその日まで泣きたくない
未だに心にぽっかりと埋まらない穴が開いてるみたいだった
でもリーダーや仲間がいてくれるから今もこうして私は立っていられる
私は純血ではなくなったけど、皆の為にもここに残り日々バンパイアと戦っている
陽香が死んでしまった現況であるあのバンパイアを探しているけど、未だに見つからない

純血も残り数人
純血ではなくなった人達は半数くらいの人が私と同じようにここに残り日々バンパイアを狩っている
そして残りの半数、元の世界に戻った人達が居る
しかしその子達は組織に関する記憶は全て消されてしまう
まぁ…それもそうだよね
組織の事は絶対秘密だし…
それでも一緒に戦い一緒に笑い合って共に過ごさした大切な仲間
皆が幸せに暮らしていることを私は願ってる

日景「あ、いたいた!依月!春千香!」

リーダー「日景さん!」

日景「良かった
2人を今、探してた所だったんだ」

依月「探して?」

リーダー「もしかして何かあったんですか?」

もしかして新しい任務かな?

日景「あぁ、昨日2人に捕らえて貰ったバンパイアが妙な事を言ったんだ」

昨日捕らえたバンパイア
研究の為に生け捕りにしたあいつ?

依月「妙な事?」

日景「…落ち着いて聞いてくれ
もしかしたらこの組織の中に裏切り者が居るかもしれないんだ」

リーダー「…どういう事ですか?
もし事実だとしたら穏やかじゃないですね」

リーダーの顔付きがスッと変わる

依月「バンパイアの戯れ言じゃないんですか
私達を混乱させる事が目的かも」

日景「その可能性も充分あるが、聞き流すには思い当たる節が幾つかある
バンパイアは俺達にこう言ってきた
この組織内に裏切り者が居るのも気付かないのか
仲間を餌にされているのに薄情な奴等だ…と」

依月「仲間を餌にって…まさかそれって…!」

その言葉を聞いて私もリーダーも顔色が変わった
だって私達には思い当たる件が幾つかあったから
あれから今日まで陽香以外にも2人、同じ様な被害にあった子達が居る
うち1人はなんとか無事だったけど…
そして日景さんの話からすると、陽香はその裏切り者とバンパイアに利用された事になる

日景「信じたくないが…想像している通りだ
そしてもう1つ問題なのが…昨日から山下の姿が見えない」

優秀な研究員の山下さん
私も会ったことはあるけど他の人に比べて無愛想であんまり関わった事がない

リーダー「つまり日景さんは山下さんがその裏切り者だと言いたいんですね」

ドクンと胸がざわめく
胸の内に潜めていた感情が込み上げていくみたい

日景「あくまで憶測だがほぼ間違いないだろう
バンパイアの生け捕りが昨日、山下の姿が見えなくなったのはその頃からだ
タイミングが良すぎる
この事は俺を始めまだ上層部の一部しか知らない事実だ
これはあくまで今時点での推測だが、落ち着いて聞いてくれ」

私達は日景さんの話を静かに聞いた
全身から血の気が引くようだった
そして徐々に怒りが込み上げる

リーダー「嘘だろ…そんな事あっていいのかよっ」

日景「悪いがそれが真実だろう
現に山下は姿をくらましている
…依月…辛いだろうが…」

依月「…今の日景さんの話が真実なら…
何…?陽香はまんまと山下さんに利用され実験体として殺されたって事…!?」

日景「…そうなる
山下はバンパイアと繋がっていたんだ
恐らく純血をバンパイアに渡す事で莫大な金でも手にいれていたんだろう
その研究成果ももしかしたら何処かに売るつもりなのかもな
陽香はその最初のターゲットにされたんだろう」

無愛想な人でも研究熱心でずっと仲間だと思ってた…
この研究所の人達は私達を守ってくれると信じていたのに…!
思えばあの時、陽香を殺せと命じたのも山下さんだった
全部…あいつの手のひらで踊らされていたんだ!
許さない…!!
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