双子の動物物語

秋月

文字の大きさ
3 / 15
*生け贄の双子

生け贄の双子#3

しおりを挟む
紅達が去った後、動物達は不安そうに話してた

『山神様はいつ姿を見せるのだろう』

『もうずっと洞窟から出てこられてない
それほど重い病なのか…』

『山神様が病にかかってからもう5年が経つぞ
もしかしたら山神様はもう…』

『何言ってんだ!
山神様はずっとこの山を守り続けた偉大な方だ!こんな簡単には死ぬわけないだろ!』

『でも最近は頻繁に人間共がやってくる
中には山に入って来る連中も居るし、僕達を躊躇いなく殺そうとして来る
このままでは…』

『山神様の加護がなければ私達は人間達に狩り尽くされて、この大切な森も奪われてしまうわ
それはとてもとても悲しいことだわ』

『山神様はきっと山を守ってくれる!
それに今は紅と青が居るじゃないか!
山神様の子の2人なら人間達から山を守ってくれる!』

『俺達が山神様を信じなきゃ』

『紅と青が一番不安だよねきっと…』

『山神様、早く元気になってくれればいいね』

『僕達にも何か出来ることあるかな』

『紅と青を支えてあげなきゃね』

ー…山の中を颯爽と駆け抜けていく中、私達は考えていた
山神様である父さんと母さんが倒れた今…
この山は私達はどうなっていくんだろう
5年前に突然苦しそうに倒れてから、ほとんど寝たきりの状態
病は治るのか…
病だと思っているけどもしかして違う原因があるんじゃ…?
どうしたらまた以前のように元気になってくれるんだろう
私達も試行錯誤しているけど回復している様子もないし…
守りたい気持ちはちゃんとある
だけど私達だけで山を守っていけるのだろうか不安になる

ハク「紅、青そんな顔してんじゃねぇよ
情けねぇ」

青もきっと私と同じことを考えていたはず

クロ「そんなんじゃ人間共につけ込まれるぞ
今は俺達が山神の変わりなんだからな
しっかりしやがれ」

青「うん…分かってる」

紅「ハクもっと急いで」

こんな事、考えられないくらい走って走って…
どうしてこんな事になったんだろう
だってほんの数年前まで山神様はあの輪の中に共に居たんだから
…嘆いていたってしょうがない
私は山神様、父さんと母さんを信じている
きっとそんな日が戻ってくる
だからそれまで私達が山神様の娘として、立派にこの山を守り抜いてみせる

クロ「着いたぞ」

青「ありがとう」

紅「お前達は少し休んでおいで」

着いた所は山の一番奥にある大きな洞窟
この山の中で最も安全な場所と言っても過言ではない
私と青はハクとクロの背から降りてすぐに洞窟の中に駆け込んだ

紅「父さん!母さん!」

洞窟の奥、暗闇に光る鋭くも優しい目が淡く光る
あまり動かせなくなった体を懸命に動かして顔を上げて、私達を見た

山神「おぉ…私の可愛い娘達…」

山神「紅、青…戻ったのか
様子は変わりないか」

こんな状態でも山の様子を、皆の様子を毎日欠かさず案じていた

紅「人間が数人偵察に来ただけだった
何か話し込んでいたみたいだけど、そのまま帰った
でもあの様子からしてまた来るかもしれない
それより具合は?大丈夫なの?」

山神「心配するな…休めば治る」

5年前に倒れてから、山を駆ける事も出来ず、ほとんどこの洞窟に閉じこもっていた
山神様の力が弱まり、いつしか姿を見せなくなった山神様を人間達が忘れていくのに時間はかからなかった

青「父さん、母さんこれ皆がくれたの
早く良くなりますようにって」

青は皆から預かった薬草を父さんと母さんに渡した

山神「あいつ等…」

山神「早く元気にならなきゃいけないわね」

力が弱まった原因が何かは未だに分からない
最近はこの洞窟から1歩も外に出ない日々が続いていた
休めばいつか治るんじゃないかと思っていたけど治るどころかどんどん衰弱していっているようにも見える
人間に見捨てられた私達を愛情と共に育ててくれた父さんと母さんに、もし万が一の事があったらって考えたら心配でたまらない
私は微かに父さんと母さんが倒れたのは人間の仕業なんじゃないかと思う時がある

青「父さん、母さん早く元気になって
それでまた一緒に山を駆けようよ」

紅「それまでは私達が皆も、この山も父さんと母さんの代わりに守ってみせるから」

山神「…我が娘ながら生意気を言うようになったな」

山神「紅、青…今しばらく皆の事頼みますよ
来なさい。ずっと見張りで疲れたでしょう?
少し眠りなさい」

優しい父さんと母さんの優しく暖かい毛並みに包まれるように私達は眠りについた

山神「…ハク、クロそこに居るんだろう」

ハク「紅と青は?」

山神「今は眠っていますよ」

クロ「何か用かよ」

山神「お前達にも迷惑をかけてすまないと思っている
だが紅と青は眠っている
代わりに山の見張りは頼んだ
何かあったら私達を呼べ
私達が駆けつけよう」

ハク「了解した」

クロ「へっ、その状態で言える事かよ」

山神「お行き」

ハクとクロはすぐに走り出した

山神「頼んだよ…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから

ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。 彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...