【完結】さがしびと〜英雄の弟とまつろわぬ姫〜

よもぎ大福

文字の大きさ
19 / 34

第16話 精霊騎士

しおりを挟む
 サラ王女は公務に戻り、アルムは親戚を訪ねると去って行った後。

「クレスくん、これからどうするの?」

 並んで城内を歩きながら、クレスに話しかける。

「山の神殿に出発するまでの間、王都で兄さんを探してみるよ。可能性はかなり低いけど、昔の冒険仲間に会いに来てるかもしれない。さすがに女王には会いにいけないけど、精霊騎士団の人なら話を聞けるかなって。」

「かなり低いの?」

「精霊騎士は声が大きいし、すぐ手合わせしたがって怖いから、近寄らないって言ってたよ。」

「まぁ相性はあるよね。」

「イアルさんも一緒に来てくれる?」

「もちろん!嫌がられてもついていくよ。」

 クレスは嬉しそうに目を輝かせる。

「よかった!何故か俺が聞いて回ると、みんな嫌そうな顔するから。」

 そういえば、初めて声を掛けた時も大分傷心状態だった。

「ちょっとした言葉選びだよ。ちゃんと手伝うから、」

 大丈夫だよ。

 そう口にする前に私の声は、遠くから飛んできた野太い声にかき消される。

「ここにいたのか!やっと会えた!」

 声の先を振り返る。足早に歩み寄ってくるのは帯剣した騎士の男。

 大柄な体に短く刈った金髪。

 日に焼けた黒い肌。

 身につけた制服は、この国の精霊術士が憧れるエリート集団、精霊騎士団のものだ。

「私はマクザン。精霊騎士団の者だ。会えて嬉しいよ、ヴィオンの後継者!」

 クレスが素早く私の背中に隠れる。

「ちょっと、どうしたの、そんな怯えて。」

「いや初見から怖い。」

 そんなクレスの様子を気にするでもなく、マクザンはクレスの肩を豪快に叩く。

「海の神殿では、俺の部下達を手玉に取ったそうだな。俺もひとつ手合わせ願いたいものだ。」

 精霊騎士団はその名の通り、精霊術士で構成された騎士団だ。王家直属の部隊であり、精鋭揃いで知られている。

「その節は申し訳ありませんでした。」

 怯えながら頭を下げるクレス。

 しかしマクザンは朗らかに笑って、その頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「いいや、感謝しているんだ。ガラドールを助けてくれてありがとう。これで、あいつを精霊騎士団に入団させられるかもしれない。」

「ガラドールさんを?」

「優秀な生徒でね。変わり者の学者に弟子入りするわ、海の姫の伴侶になるわ、捉えどころのない奴だが。」

 ガラドールは、どうやら相当期待されていたらしい。

 それだけ彼は必死に、アミルを救う術を探し求めていたのだろう。

「そうそう、今日から俺が、君の護衛に任じられたから。」

 ロザリオが話していたのは彼のことか。

「えええ?嫌ですよ!」

「素直な奴だな。でも決まったことだから!城の外へ、勝手に出たら駄目だぞ。必ず俺が付き添う。よろしく!」

 それだけ言い残し、マクザンは去って行った。

 一方的な展開に呆然とするクレス。

 私も驚きを隠せない。

 精霊騎士は、本来一個人の護衛に就く立場ではない。

 しかも、彼は英雄マクザン。

 その名は聞いたことがある。当代一と謳われる精霊術士であり、剣の使い手。先の戦いでは多くの武勲を挙げている。次期精霊騎士団長との呼び声も高い。

 その英雄騎士を護衛に付けるということは、それだけクレスは今この国にとって、価値のある人間であるということだ。

 当の本人はまるで自覚がないようだけれど。

「というか護衛って、俺は狙われてるの?」

「継承の儀式の信奉者が、各地で行動を起こしてる。あなたが狙われても不思議はない。」

クレスがいなければ、計画は白紙に戻される。それを狙う人々は少なくないだろう。

「もしかして、兄さん探してる場合じゃない?」

「街に出るのは、やめておいた方が良さそう。」

 まさか騎士団が動き出すとは。

 当然、女王も承知の事だろう。

 私が思っていたより、状況は芳しくないようだ。

 目に見えて落ち込んでいるクレス。

 無理もない。あまりに理不尽だ。

 間違いなく彼は英雄なのに、非難の目を向けられ、その身に危害が及ぶ恐れすらあるなんて。

 私は慎重に言葉を選ぶ。

「クレスくんは、間違ってないよ。あなたの力は、海の姫とその周りの人々を助けた。

 その力はこれから、もっとたくさんの人を救うことになる。」

 クレスは呟く。

「俺はただ。」

 うなだれたままの、か細い声。

「イアルさんとの街中デートで、進展を期待しただけなのに。」

 なんという図太さ。心配したのに。

「あ、でも外に出るとさっきの大きい人ついてくるのかー。」

 ヴィオン・ユラフィスは、どうやってこの子をこんなに強いハートに育て上げたのだろう。

 呆れながらも、安堵する。

 彼ならば、この先も大丈夫。

 何があろうと乗り越えられる。

「クレスくん」

 とうとうしゃがみ込んでしまった彼に、優しく手を差し伸べる。

「デートしようか。今日の夜。」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...