彼女の些細なおとしもの

よもぎ大福

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「立花ほのか」のおとしもの

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 3週連続で、落とし物探しに出くわす。これはよくあることなのだろうか。
 確かにここ最近、家と職場の往復ばかりで、まともに外出をしていなかった。いつの間にか世の中は、落とし物だらけになっているのだろうか。
「イヤリングを落としたんです。2つとも。さっきこのベンチで休んでいたので、もしかしたら落ちてるかなと思って。」
「どんなイヤリングなんですか?」
「シルバーの三日月の形をしたものです。」
付き合いでベンチの周りを一緒に探す。しかしそれらしいものはなかった。
「イヤリング外れやすいですよね。」
「そうなんです、気に入ってたんでなくさないように、普段あまりつけてなかったんですけど。」
何となく流れでベンチに並んで座る。
「気に入ってるのに、つけないのはもったいないですよね。意味ないっていうか。」
「いいえ、わかります。お気に入りのアクセサリーは家で見てるだけでも楽しいですしね。なくしたらショックですし。」
女性は力強く頷く。
「そうなんです。どれにしようか悩んで悩んで、ようやく決めたイヤリングだったんです。当時好きだった人との初デートに付けてこうとして、張り切って買ったの。」
懐かしむように目を細めて、彼女は言う。
「その彼とは結局うまく行かなかったんですけどね。でも楽しかったなぁ。」
「うまく行かなかったのにですか?」
苦い思い出かと思いきや、彼女にとっては大事なものらしい。
ほのかさんは照れたように髪をいじりながら笑う。
「変にスペックとか、友達の評価とか考えずに、ただ一緒にいたいって思った人だったんです。」
ほのかさんはため息をつく。
「今はダメですね。相手を採点してる自分がいる。それにわかっちゃうんですよね。ああ、向こうも私を採点してるなって。」
そこで彼女が名前を呼ばれた。彼女と同じくらいの年頃の若い男性が、彼女を手招きしていた。
「行かなきゃ。イヤリング探してくださって、ありがとうございます。」
「いいえ、その、見つかるといいですね、イヤリング。」
彼女はあいまいに微笑むと、男性に駆け寄っていった。
2人の後ろ姿を見送ってから、私は残った炭酸飲料を少しだけ口に含んだ。
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