魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。(趣味用)

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第一章

藁にもすがる11

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「なんだお前さんも人間か」

龍仙は驚いたと言う顔をすると眉を寄せ、怪訝な顔で魔王を見る。

「人間を二人も囲ってどうするつもりだ?」

そう言いながら何やら赤ん坊に手を翳す。

「どうもしない」

そう返す魔王の横に青年がピタリと並びコッソリと聞く。

「この人も魔族?」
「いや魔族ではない。ただ私なんかよりずっと長生きで蘇生術に長けているのは確かだ」

(魔王より長生きって事は人間でもないって事か……)

一人納得すると龍仙と目があった。

「人間お前さんだろ。赤ん坊の状態を気に病むのは」
「え、はい」
「大した事はない少し栄養失調気味だがそれ以外は至って健康だ。これはよく泣くだろう? 本当に元気のない者は泣く事も出来ん。おい魔族の小僧、お前さんこれにあの花はやっているな?」

一瞬誰に声をかけたか分からなかったが、隣にいた魔王が少しバツが悪そうな顔で答えた。

「小僧と言うな。きちんと花の蜜を水と一緒に飲ませている」
「ならよい」
「花って?」

(おいおいおいおい大丈夫なのかこのじぃさん)

青年が不安に思うのも無理はない。


「この花だ」

そう言って龍仙は、まるで手品のように掌からポンっと花を一輪出してみせる。
薄桃がかった白い花びらのそれは、薔薇によく似ているが薔薇とは少し違う。

「へぇ品があって可愛いですね」

青年の言葉に、龍仙はフンと鼻で笑い「ただの野草だ」と言い捨てた。

「この花の蜜はの長寿の蜜、万病にもきくたいした花だ。この花の蜜で死にかけていた者が何度も救われた。赤ん坊に飲ませてもなんの心配もいらん。気にするでない」
「そうなんですか名前はなんて?」
「名などない。ワシが見付けた花だからの、つけておらん」
「凄いですね」
「何がだ?」
「え、この花を見付けた龍仙さんって凄いな~と思って」

龍仙はジロリと青年をみたが、溜め息をついて顔を背けた。

(え、俺なんかマズイ事でも言った?)

「凄くなどないわ。これはあくまで《これ》がまともな食事にありつけるまでの繋ぎ、小僧。人間を連れて来たと言う事はもう心配はあるまい。この花は全て持って帰るぞ」
「そうかわかった。急に呼んですまなかったな、助かった」
「ワシはもう帰るぞ」
「あぁそこの者、送ってやってくれ」

龍仙は来た時と同じ魔王の配下と一緒に部屋の出口へと向かう。
その姿に青年は有り難うございました。と声をかけると、龍仙は「フンッ」と言ってヨタヨタとしながらも足早に出て行った。


(……もしかして、照れ屋なのか?)


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