上 下
9 / 18
梅雨と言えば。

エピローグ。

しおりを挟む
それから数日間。
あの坊主、じゃなくて子供は決まって雨が降るたびあの場所に現れた。
そして比較的小雨な今日も……。

鳥居をくぐり、いつものように傘をさし、一段一段、さして長くはない石段を登る。
この梅雨の季節にうんざりとしながら。

梅雨と言えば。
雨が降り、じとじとジメジメ嫌な季節。

『梅雨と言えば、雨に黄色い雨合羽、赤い長靴、お気に入りの青いビニール傘。』

気分はどんより、洗濯物も生乾き。

『かえるに、かたつむりに、紫陽花に、てるてる坊主』

寝起きは最悪、目的地へ向かう足腰も重い。

『水溜まりで』

心なしか頭痛もするし、腹も痛い。

『ピチピチちゃぷちゃぷランランラン』

本当に嫌な季節


「おいコラお前」

俺は先程から、俺の思考をタイミングよく邪魔をしてくる声。
黄色い雨合羽に、赤い長靴、青いビニール傘を持った。

「なんの、嫌がらせだ?」

子供に問いかけた。

すると

『これ、返すの忘れてた。』

まだ小学生にもならないだろうその子はニィと嬉しそうに笑って、あのハンカチを手渡してくる。

「あぁこれ、別にいいのに」

そう言えば、俺も昔はコイツみたいに雨の日が好きだった。
まぁさすがにどしゃ降りは勘弁だけ ど。


「有り難う」


俺は子供の頃からお気に入りの、黄色いてるてる坊主のハンカチを受け取った。



梅雨と言えば、君に会える。


だから最近は、なんだかんだでこんな季節も悪くない。




― 完 ― 
しおりを挟む

処理中です...