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一人寂しく死を生きる。

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春がきて夏がきて

秋がきて冬がきて

そしてまた春がくる。

過ぎ去っていく日々の中を時に悲しく時に苛立たしく思いながら結局私は生きている。

あの頃は赤や黒と決まりきったランドセルも今では色とりどりに好きな色を背負って走る子供達。

年の離れた兄弟姉妹が
手をとって歩く姿に穏やかな気持ちになって、懐かしさから涙が溢れる。

あぁあの頃は良かった。
あんなにも世界は輝いて、あんなにも毎日が楽しかった。

私は毎日笑っていたなぁ。
年の離れた兄弟姉妹の手を引いて歩いたり抱っこしたりおんぶしたり、時には慰めたり。

あぁ私は弱くなった。
弱くなったよ。
こんなにも直ぐ涙が出てくる。

自分らしくとはなんだろうか。
大人になるにつれ言いたい事も言えず苛立たしく過ごす日々。
楽しい嬉しい悲しいツラい腹立たしい。
その全てを隠して生きる日々。

どうして周りはあんなに自由なんだろうか、なんて思うのは私が周りを見れてないからなんだろうなぁ。

もう一度。

もう一度何も気にせず自由に笑って話せる日々を――――。





――それにしても何故だろう、ここ最近の私は歳をとらなくなった。

いや、分かりたくない。
そう、私はまだ生きている。
生きているのだ。

この世界で。












(あぁ、あんな頃あったっけな……あの気持ちの悪いがさ偉そうに手を引いてさ、もうあんな家には戻らないけど、いやどうしたって戻れないんだけど)

(昔の事はあまり覚えてないけど、には会いたくない。変わりに払って貰ってるけど、私はここでやり直す)

(あの子はどうして親の私よりも先に逝ってしまったのか……私も)





『あちらのお宅一家離散して長男だけが地元に残ったそうだけど、早くに亡くなったんですって』
『あぁえぇそうなの? やーねー』
『なんかねー噂によれば~』


『長男以外みんなお金に困っていたそうよ』











――あぁ私は今日もこの街のこの世界で












一人寂しく死を生きる。end
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