4 / 315
守護
しおりを挟む
「本当に先程のご令嬢が?」
「…お耳を」
ジェラルド伯は渋い表情のまま互いに寄って、伯へ耳を寄せる。
「娘は守護の紋を持っています」
今日、目を見開くのは何度目か分からない。
守護の紋。
男なら、戦士であればどれ程熱望するか。
実在の人物を見たのは初めてだ。
私の知る限りにいないと言うだけで歴史的には珍しくはない。
時代によってはまとめて数人産まれたこともあるほど。
資料も豊富に残されている。
書物によれば硬化した魔力が全身を包み、空を飛ぶワイバーンから地表に落とされても死なずどんな名刀で刺し貫かれようと弾き飛ばす。
だが、望むのは男だけだ。
女であれば永遠の処女、または乙女の呪いと言われて忌避される。
傷ひとつ、つかんのだ。
破瓜が出来ん。
「だからですか?ですが、五日五晩というのは?膨大な魔力を持っていると聞きましたが」
「幼い頃から魔力の供給が不安定でドレインを扱える者を雇い、無理な吸引を繰り返しているうちに魔力の回復が常人を超えてしまい、器も大きく育ってしまいました」
「どれ程ですか?」
「常人の倍は動けます。守護の紋があるとはいえ、災害とされる上位魔人と肉体強化だけで五日五晩です。私と息子でさえ長時間の強化は無理です。娘は日をまたいでも平気です。使った端から回復が追いつきますから」
ご息女達が仕留めた魔獣へ視線をずらす。
「私と息子はあの大きさを単体で仕留めることは出来ません。出来ても娘達のように連続は無理です」
「エド」
「はい」
「あの魔獣を単体で仕留められるか?」
私の問いに解体されている肉を眺めた。
「はい、あの種類は経験があります」
「連続では?」
「群れだときついですね。ですが、やれないこともないといったところです。順番にということならもっと楽ですね」
だろうな。
私でも可能だ。
「団の中で出来る者は?」
「…難しいかと。隊列を組んで狩るべきです」
同意を込めて首肯を返す。
そしてあの小柄なご令嬢とその従者の三人は王都いちの剣豪と言われている私とその二番手の副団長と同等なのかと感嘆のため息を吐いた。
「素晴らしい」
ポツリとこぼした言葉にジェラルド伯は首を振った。
「戦士としてなら。ですが、年若い娘ですので」
「申し訳ない。無神経なことを」
「誠に男であれば。女の身でこうも派手に武功をあげて父として誇らしくもあり心配でもあります」
兄の立場のロバート殿も同じ気持ちらしく二人とも同じ顔を心配を浮かべていた。
「あれほどの華の顔を持ちながら。王都中の花から花へと浮き名を流したグリーブス団長でさえ見とれて、」
慌てて片手を上げて話を制した。
「ご無礼を。不躾をお許しいただきたい」
やはり見られていたと恥じた。
自分では見咎められるつもりほどとは思わなかったが、よほど呆けていたのだ。
わざわざこうやって釘を刺すほど。
言われて先程のご令嬢を思い出す。
あんな血に濡れて少し拭いただけの顔なんか分かるものでもないのに。
あの細めた目と、くっと上がった柔らかな口許。
ぞわっと気が昂るのを圧し殺した。
「…お耳を」
ジェラルド伯は渋い表情のまま互いに寄って、伯へ耳を寄せる。
「娘は守護の紋を持っています」
今日、目を見開くのは何度目か分からない。
守護の紋。
男なら、戦士であればどれ程熱望するか。
実在の人物を見たのは初めてだ。
私の知る限りにいないと言うだけで歴史的には珍しくはない。
時代によってはまとめて数人産まれたこともあるほど。
資料も豊富に残されている。
書物によれば硬化した魔力が全身を包み、空を飛ぶワイバーンから地表に落とされても死なずどんな名刀で刺し貫かれようと弾き飛ばす。
だが、望むのは男だけだ。
女であれば永遠の処女、または乙女の呪いと言われて忌避される。
傷ひとつ、つかんのだ。
破瓜が出来ん。
「だからですか?ですが、五日五晩というのは?膨大な魔力を持っていると聞きましたが」
「幼い頃から魔力の供給が不安定でドレインを扱える者を雇い、無理な吸引を繰り返しているうちに魔力の回復が常人を超えてしまい、器も大きく育ってしまいました」
「どれ程ですか?」
「常人の倍は動けます。守護の紋があるとはいえ、災害とされる上位魔人と肉体強化だけで五日五晩です。私と息子でさえ長時間の強化は無理です。娘は日をまたいでも平気です。使った端から回復が追いつきますから」
ご息女達が仕留めた魔獣へ視線をずらす。
「私と息子はあの大きさを単体で仕留めることは出来ません。出来ても娘達のように連続は無理です」
「エド」
「はい」
「あの魔獣を単体で仕留められるか?」
私の問いに解体されている肉を眺めた。
「はい、あの種類は経験があります」
「連続では?」
「群れだときついですね。ですが、やれないこともないといったところです。順番にということならもっと楽ですね」
だろうな。
私でも可能だ。
「団の中で出来る者は?」
「…難しいかと。隊列を組んで狩るべきです」
同意を込めて首肯を返す。
そしてあの小柄なご令嬢とその従者の三人は王都いちの剣豪と言われている私とその二番手の副団長と同等なのかと感嘆のため息を吐いた。
「素晴らしい」
ポツリとこぼした言葉にジェラルド伯は首を振った。
「戦士としてなら。ですが、年若い娘ですので」
「申し訳ない。無神経なことを」
「誠に男であれば。女の身でこうも派手に武功をあげて父として誇らしくもあり心配でもあります」
兄の立場のロバート殿も同じ気持ちらしく二人とも同じ顔を心配を浮かべていた。
「あれほどの華の顔を持ちながら。王都中の花から花へと浮き名を流したグリーブス団長でさえ見とれて、」
慌てて片手を上げて話を制した。
「ご無礼を。不躾をお許しいただきたい」
やはり見られていたと恥じた。
自分では見咎められるつもりほどとは思わなかったが、よほど呆けていたのだ。
わざわざこうやって釘を刺すほど。
言われて先程のご令嬢を思い出す。
あんな血に濡れて少し拭いただけの顔なんか分かるものでもないのに。
あの細めた目と、くっと上がった柔らかな口許。
ぞわっと気が昂るのを圧し殺した。
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる