人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
21 / 315

迎え

しおりを挟む
念のために出立の準備は進めると話せば納得して頷いた。
廃屋をあさり、使えそうなものをかき集めた。少量の枯れ木と食料、水の調達も。準備を終えて、日がもっとも高く昇った頃、2人は現れた。

「ヤン!ラウル!」

エヴ嬢が駆け寄るとラウルも駆けて、飛び込む身体を抱き締めていた。

「よく無事で!心配しましたっ!本当に、良かった!」

良かったと何度も絞り出すように口にし、感涙しながらエヴ嬢の背中が反り返るほどきつくかき抱き、二人とも膝が折れて座り込む。

「ごめん、心配かけて。ラウル、ヤン。ごめんなさい」

ぺたりと座ったままラウルの涙にごめんなさいと何度も応え、ヤンも二人を包むように被さって二つの頭に腕を回した。

「遅くなって申し訳ありません」

「ヤン、怒らないでね。ごめんなさい」

「叱られるのは私共です。まだ砦の方に魔獣が多くてお迎えの人員が割けず、お二人のことは後回しになってしまった」

「あの後の撤退は大丈夫だった?砦は無事?」

「飛行種の殲滅をしてくださったおかげで危なげなく撤退は完了しました。昨日まで砦の方に魔獣の襲来がありましたが、犠牲者もなく副団長とジェラルド様が指揮を執り、両団共に力を合わせて対応しております。念のための戦力としてダリウスを残しました」

「そっかぁ、よかった。帰ったらダリウスにも謝んなきゃ。心配してるよね」

震える声で、とてもしておりますと応えた。

「ラウル、御礼を」

ヤンはグズグズとしがみついていたラウルの腕を引いて立たせ、二人は私の前に片膝をつく。

「クレイン領平定のみならず、我らが主人をお守りいただいたこと誠に感謝いたします」

胸に拳を深く頭を下げた。

「共に戦うのが我らの使命だ。二人とも立たれよ」

「私、お礼してない」

またすっとんきょうなエヴ嬢が呟き、二人の隣に並ぶと同じように頭を下げた。

「三度救われました。鳥のお腹と溺れた時とアモルの影からです。ありがとうございます。団長」

ヤン達のように下げると頭から長い黒髪が垂れて落ちる。
地に着くのが勿体ないと思い、エヴ嬢の手を取り立たせた。
逃がす気にならず手を握りしめる。

「ご令嬢に騎士の礼は似合わない」

「ご令嬢?ああ、えーと、ありがとうございます」

私に片手を取られたまま、騎士の礼と同じくらい下手くそなカテーシーを披露し、思わず破顔する。

「失礼した」

笑われたのはわかったらしい。
それなりに我慢してるつもりだろうが、分かりやすくムッと唇を突きだしてむくれてる。

「クレイン領の姫君。叶うなら頬に口付けを賜りたい」

「はぁ?なんで?あ、いや、なんでですか?」

「冒険活劇で竜を倒した騎士は姫君からキスを賜るのを知ってるか?だから私も姫君の口付けがほしい」

「し、知ってますけど」

柳眉を寄せてむーっと考え込んでいる。

「でも、届きませんし」

ならばと身体を屈めて顔を近くに寄せる。変わらず怪訝そうな表情だ。それも楽しくて顔が緩んだ。
しばらくモゴモゴとしていたが、顔を傾けた。頬を向け目をつぶると、ゆっくり顔に近づく気配を強く感じて胸が高鳴り心臓が握られたかのようだった。
つぷ、と柔らかな感触が頬に当たり、すぐに離れ、さらっと流れる黒髪が揺れて頬にかかる。
緊張から強くエヴ嬢の手をぎゅっと握り締めてしまった。姿勢を戻して目を開けて見ると困った顔で首をかしげていた。
少し頬が赤いのは気のせいではないと思いたい。目が少しだけ潤んでるのも。
黙って握ったままのエヴ嬢の手を顔に寄せてキスをした。すると、ますます顔を困らせて小さく手を引いたのでそのまま離してあげた。

「二人も立たれよ。すぐ砦に戻る。詳細は道中頼む」

「畏まりました」

さっと立ち上がり、四人連れだって帰路を急いだ。
帰る前にラウルは二羽の鳥を飛ばした。
ジェラルド伯宛とダウリス宛だそうだ。
同じ内容だが、早く知らせたいと言っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...