人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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魅了

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午後には目処がついて私も休む時間ができたので匂いを辿ってエヴ嬢の元へ向かう。
いつもの天幕や鍛練所にはいない。
城内の敷地の奥にいる。
ヤンから今日はエヴ嬢を人前に出さないようにと頼まれていた。
休みということもあり、エヴ嬢がこちらに用がなければ来ることもない。
念を押されたのは夢魔の能力のせいと思い、それは了承した。
だが、裏の花園のベンチで休んでいるエヴ嬢を一目見て、迂闊に精力を吸ってしまうせいではないと理解した。
花園と言ってもただ広い敷地に野生の花ばなが咲き乱れる広い庭。
その中で側に二人を控えてポツンといる。
三人がこちらに気づいて振り返る。
そこにはいつもの爽やかな溌剌さはない。
傷心のせいではなく、目元が上気しポテッと熟れた唇。仕草も普段通りのはずなのに全体にしっとりとした妖艶さを漂わせ黒々と輝く髪が一段と美しく艶を放っている。
側にいるといつものいい匂いと共に魔力の混じったむせる匂いも漂う。
匂いと様相が下腹にずくずくと滲んだ。
近づくと逃げるようにエヴ嬢は立ち上がって離れていく。
一礼し背を向けて花畑の中に座り込む。

「ヤン、こういうことか」

「はい、能力の影響で」

夢魔の魅了らしい。
魔人として活性化すると全身から溢れるそうだ。
これでは皆の前に出せない。

「…こうなると、お父様もお兄様も会ってくれなくなるから嫌い」

寂しそうな声が聞こえる。
声もまた子供らしい可愛らしさから、少し低く耳に響いて残る声に変化している。
聞くだけでミミがぞわぞわした。
背を向けたまま、いじけたエヴ嬢は静かにぶちぶちと花をちぎり始めた。
実力のあるヤン達なら耐えれるそうだが、お二方は強い能力に抗えず会うと影響を受けるとヤンが説明した。

「三人はこの力に当てられて平気なのか」

かなりむせ返るような力の強さだ。
力の圧に息苦しさも感じる。

「…以前より確かに能力が大きくなってます。…今はまだ耐えれるとしか言えません」

やっと耐えれると言ったところか。

「団長、もう行ってください。私おかしい」

花をちぎり続けている。
ぶちぶちと音が鳴り響く。

「…エヴ嬢?」

「ヤンもダリウスも、どこか離れて。皆、離れて。早く」

すると座ったまま体を前に倒して地面を掴んでいる。
地面に根を張った花と草をぎゅう、と握ると瑞々しかった草花がパリパリと乾いて割れていく。
乾いた花が私達の足元まで広がっていく。
頭を突っ伏して倒れたので驚いていると、ぞわっとした空気が私達を襲う。
一気に威圧のような強い魔力の混じった匂いが溢れた。

「…すごく欲しい。…我慢してるの。すごい、ヤンもダリウスも、団長も。すごい、すごい、お、美味しそうで、」

次の瞬間、足元の干からびた草花が勢いよく成長し、私達の皮膚を刺しながら絡みついてきた。
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