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練習
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リーグの問いに答えて目の前で手を引いて泳がせる。
「ここまでだ。手を離すと沈む」
「見た限り手を添えてただけでしたね。引っ張ってなかったっす。充分綺麗に泳げてました。速さもありますし。…あーそっすねぇ。試しにあれで。…ちょっと待っててください」
ざばさばと陸に上がり、集めた薪の中から平たい木の板を持ってきた。
何をするのか分からず黙ってやり方を眺めた。
「これ、腹の下に入れて浮いてみてください」
言う通りに水面に浮かぶとリーグは足を押して滑らせる。
「バランスっすよー。だらっと力抜いてください」
しばらくそうやって浅瀬から深いところを繰り返した。
「次は手をかいて、そーそー。上手っす。自分で好きに進めるっしょ?」
慣れたら足も動かしてみてと促す。
たまにひっくり返るが慣れて自在に泳げるようになった。
「次っす。これを取ってください」
甲冑の胸当てを持ってきてエヴ嬢の足元に沈めた。
深さはエヴ嬢の肩辺り。
素直に頭から潜って胸当てを拾う。
次は私の身長ほど離れた場所に置かれて、足をつかないように出来ますかと問えば不格好ながら地面を蹴ってそこまで辿り着く。
深さや距離を変えてこれを繰り返した。
「潜るのに慣れたんで次はワニワニをします」
「ワニワニ?なんだそれは?」
団の訓練にはない名前だ。
「チビの命名っす。手本を見せるので真似してください」
ぼこっと水面に潜り、石を掴みながら水底すれすれをすいすいと泳いでいく。
エヴ嬢も促されるまま真似て水の底を泳いだ。
潜水は苦手らしく、何度も繰り返すがすぐに上がってくる。
「やっぱ、慣れてないから息継ぎはかなり短めっすね。ヤンもなんすよねー」
「そうなの?」
「そうっすよ。てか、そろそろかな?どのくらいで苦しくなるとかどうやれば沈むとか上がるとか分かったんじゃないすか?自分の出来る範囲みたいなのが」
こくりと頷くと、がんばりましたねーと誉めた。
「試しに泳いでみましょっか。団長の所がゴールっす」
足の着く浅瀬でリーグに言われた距離に離れた。
泳ぐと言っても私なら二、三回手足をかいたら届きそうな距離だ。
「団長のところまでゴーっす。足ついてもいいから気楽に」
リーグの柔らかい笑みに肩の力を抜いてエヴ嬢がざぶんと水面に飛び込む。
思ったよりスーっと滑って泳いでくる。
手を差し出して伸びた手を触ると勢いよく立ち上がった。
「出来ましたぁ!」
手を掴んできゃぁっと喜ぶ。
「すごい、私泳げましたっ。団長、出来ました」
「良くやった」
両手で頭をわしわしと撫でてやると満面の笑みでふんぞり返る。
「よし、次はリーグのところまで泳げ」
「はいっ」
リーグと私の距離を離しつつ何度も繰り返して浅瀬ではかなり泳げるようになった。
「さーせん、団長はあっちで待っててください」
対岸を指すのでざぶっと泳いで辿り着く。
ど真ん中の深いところにリーグが泳いで待つ。
「エヴ嬢、スタートっすー。ゴーゴーっすよー」
離れたエヴ嬢はオロオロと戸惑っていたが、リーグに促され私も手を振るとしばらくしてざぶっと飛び込んだ。
怖いようで先程よりゆっくり進み、すんなりとリーグを越して、私の元へと辿り着いた。
「よくやった。えらいぞ」
「お、泳げたけど、やっぱり怖いです」
私の腕に手を添えて、ざぶんと立ち上がる。
「そうか、怖いのによくやった」
両手で頭をわしわしと撫でて、そう言うとへらっと顔が緩んだ。
「私、頑張りました」
その顔が可愛くてたまらない。
満足感と喜びに輝いて、私に誉めて誉めてと訴える目が可愛い。
眩しさに今日何度目かの目眩がして頭が揺れる。
気づけば何も考えず、頬を両手で包んで口づけをしいた。
唇を当てただけで音は鳴らず、満足感から幸せだったが、エヴ嬢に付き添って泳いだリーグが目を丸めて側に立っていたことと対岸の焚き火に当たるヤン達が見ていることに今さら気付き、はっとしてエヴ嬢を見れば目を丸めて私を見上げていた。人前で許しもなくやってしまったと現実に戻る。自分で分かるくらい獣耳がぺたりと下がり、足の間に尻尾が丸くすぼまる。
「…すまん」
手のひらを向けてゆっくり上げながら小さく謝るときょとんとしたまま頷いた。
「え、と。…はい」
戸惑いながら口づけをした唇を手の甲で軽く拭っていた。
「ここまでだ。手を離すと沈む」
「見た限り手を添えてただけでしたね。引っ張ってなかったっす。充分綺麗に泳げてました。速さもありますし。…あーそっすねぇ。試しにあれで。…ちょっと待っててください」
ざばさばと陸に上がり、集めた薪の中から平たい木の板を持ってきた。
何をするのか分からず黙ってやり方を眺めた。
「これ、腹の下に入れて浮いてみてください」
言う通りに水面に浮かぶとリーグは足を押して滑らせる。
「バランスっすよー。だらっと力抜いてください」
しばらくそうやって浅瀬から深いところを繰り返した。
「次は手をかいて、そーそー。上手っす。自分で好きに進めるっしょ?」
慣れたら足も動かしてみてと促す。
たまにひっくり返るが慣れて自在に泳げるようになった。
「次っす。これを取ってください」
甲冑の胸当てを持ってきてエヴ嬢の足元に沈めた。
深さはエヴ嬢の肩辺り。
素直に頭から潜って胸当てを拾う。
次は私の身長ほど離れた場所に置かれて、足をつかないように出来ますかと問えば不格好ながら地面を蹴ってそこまで辿り着く。
深さや距離を変えてこれを繰り返した。
「潜るのに慣れたんで次はワニワニをします」
「ワニワニ?なんだそれは?」
団の訓練にはない名前だ。
「チビの命名っす。手本を見せるので真似してください」
ぼこっと水面に潜り、石を掴みながら水底すれすれをすいすいと泳いでいく。
エヴ嬢も促されるまま真似て水の底を泳いだ。
潜水は苦手らしく、何度も繰り返すがすぐに上がってくる。
「やっぱ、慣れてないから息継ぎはかなり短めっすね。ヤンもなんすよねー」
「そうなの?」
「そうっすよ。てか、そろそろかな?どのくらいで苦しくなるとかどうやれば沈むとか上がるとか分かったんじゃないすか?自分の出来る範囲みたいなのが」
こくりと頷くと、がんばりましたねーと誉めた。
「試しに泳いでみましょっか。団長の所がゴールっす」
足の着く浅瀬でリーグに言われた距離に離れた。
泳ぐと言っても私なら二、三回手足をかいたら届きそうな距離だ。
「団長のところまでゴーっす。足ついてもいいから気楽に」
リーグの柔らかい笑みに肩の力を抜いてエヴ嬢がざぶんと水面に飛び込む。
思ったよりスーっと滑って泳いでくる。
手を差し出して伸びた手を触ると勢いよく立ち上がった。
「出来ましたぁ!」
手を掴んできゃぁっと喜ぶ。
「すごい、私泳げましたっ。団長、出来ました」
「良くやった」
両手で頭をわしわしと撫でてやると満面の笑みでふんぞり返る。
「よし、次はリーグのところまで泳げ」
「はいっ」
リーグと私の距離を離しつつ何度も繰り返して浅瀬ではかなり泳げるようになった。
「さーせん、団長はあっちで待っててください」
対岸を指すのでざぶっと泳いで辿り着く。
ど真ん中の深いところにリーグが泳いで待つ。
「エヴ嬢、スタートっすー。ゴーゴーっすよー」
離れたエヴ嬢はオロオロと戸惑っていたが、リーグに促され私も手を振るとしばらくしてざぶっと飛び込んだ。
怖いようで先程よりゆっくり進み、すんなりとリーグを越して、私の元へと辿り着いた。
「よくやった。えらいぞ」
「お、泳げたけど、やっぱり怖いです」
私の腕に手を添えて、ざぶんと立ち上がる。
「そうか、怖いのによくやった」
両手で頭をわしわしと撫でて、そう言うとへらっと顔が緩んだ。
「私、頑張りました」
その顔が可愛くてたまらない。
満足感と喜びに輝いて、私に誉めて誉めてと訴える目が可愛い。
眩しさに今日何度目かの目眩がして頭が揺れる。
気づけば何も考えず、頬を両手で包んで口づけをしいた。
唇を当てただけで音は鳴らず、満足感から幸せだったが、エヴ嬢に付き添って泳いだリーグが目を丸めて側に立っていたことと対岸の焚き火に当たるヤン達が見ていることに今さら気付き、はっとしてエヴ嬢を見れば目を丸めて私を見上げていた。人前で許しもなくやってしまったと現実に戻る。自分で分かるくらい獣耳がぺたりと下がり、足の間に尻尾が丸くすぼまる。
「…すまん」
手のひらを向けてゆっくり上げながら小さく謝るときょとんとしたまま頷いた。
「え、と。…はい」
戸惑いながら口づけをした唇を手の甲で軽く拭っていた。
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