人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
71 / 315

練習

しおりを挟む
リーグの問いに答えて目の前で手を引いて泳がせる。

「ここまでだ。手を離すと沈む」

「見た限り手を添えてただけでしたね。引っ張ってなかったっす。充分綺麗に泳げてました。速さもありますし。…あーそっすねぇ。試しにあれで。…ちょっと待っててください」

ざばさばと陸に上がり、集めた薪の中から平たい木の板を持ってきた。
何をするのか分からず黙ってやり方を眺めた。

「これ、腹の下に入れて浮いてみてください」

言う通りに水面に浮かぶとリーグは足を押して滑らせる。

「バランスっすよー。だらっと力抜いてください」

しばらくそうやって浅瀬から深いところを繰り返した。

「次は手をかいて、そーそー。上手っす。自分で好きに進めるっしょ?」

慣れたら足も動かしてみてと促す。
たまにひっくり返るが慣れて自在に泳げるようになった。

「次っす。これを取ってください」

甲冑の胸当てを持ってきてエヴ嬢の足元に沈めた。
深さはエヴ嬢の肩辺り。
素直に頭から潜って胸当てを拾う。
次は私の身長ほど離れた場所に置かれて、足をつかないように出来ますかと問えば不格好ながら地面を蹴ってそこまで辿り着く。
深さや距離を変えてこれを繰り返した。

「潜るのに慣れたんで次はワニワニをします」

「ワニワニ?なんだそれは?」

団の訓練にはない名前だ。

「チビの命名っす。手本を見せるので真似してください」

ぼこっと水面に潜り、石を掴みながら水底すれすれをすいすいと泳いでいく。
エヴ嬢も促されるまま真似て水の底を泳いだ。
潜水は苦手らしく、何度も繰り返すがすぐに上がってくる。

「やっぱ、慣れてないから息継ぎはかなり短めっすね。ヤンもなんすよねー」

「そうなの?」

「そうっすよ。てか、そろそろかな?どのくらいで苦しくなるとかどうやれば沈むとか上がるとか分かったんじゃないすか?自分の出来る範囲みたいなのが」

こくりと頷くと、がんばりましたねーと誉めた。

「試しに泳いでみましょっか。団長の所がゴールっす」

足の着く浅瀬でリーグに言われた距離に離れた。
泳ぐと言っても私なら二、三回手足をかいたら届きそうな距離だ。

「団長のところまでゴーっす。足ついてもいいから気楽に」

リーグの柔らかい笑みに肩の力を抜いてエヴ嬢がざぶんと水面に飛び込む。
思ったよりスーっと滑って泳いでくる。
手を差し出して伸びた手を触ると勢いよく立ち上がった。

「出来ましたぁ!」

手を掴んできゃぁっと喜ぶ。

「すごい、私泳げましたっ。団長、出来ました」

「良くやった」

両手で頭をわしわしと撫でてやると満面の笑みでふんぞり返る。

「よし、次はリーグのところまで泳げ」

「はいっ」

リーグと私の距離を離しつつ何度も繰り返して浅瀬ではかなり泳げるようになった。

「さーせん、団長はあっちで待っててください」

対岸を指すのでざぶっと泳いで辿り着く。
ど真ん中の深いところにリーグが泳いで待つ。

「エヴ嬢、スタートっすー。ゴーゴーっすよー」

離れたエヴ嬢はオロオロと戸惑っていたが、リーグに促され私も手を振るとしばらくしてざぶっと飛び込んだ。
怖いようで先程よりゆっくり進み、すんなりとリーグを越して、私の元へと辿り着いた。

「よくやった。えらいぞ」

「お、泳げたけど、やっぱり怖いです」

私の腕に手を添えて、ざぶんと立ち上がる。

「そうか、怖いのによくやった」

両手で頭をわしわしと撫でて、そう言うとへらっと顔が緩んだ。

「私、頑張りました」

その顔が可愛くてたまらない。
満足感と喜びに輝いて、私に誉めて誉めてと訴える目が可愛い。
眩しさに今日何度目かの目眩がして頭が揺れる。
気づけば何も考えず、頬を両手で包んで口づけをしいた。
唇を当てただけで音は鳴らず、満足感から幸せだったが、エヴ嬢に付き添って泳いだリーグが目を丸めて側に立っていたことと対岸の焚き火に当たるヤン達が見ていることに今さら気付き、はっとしてエヴ嬢を見れば目を丸めて私を見上げていた。人前で許しもなくやってしまったと現実に戻る。自分で分かるくらい獣耳がぺたりと下がり、足の間に尻尾が丸くすぼまる。

「…すまん」

手のひらを向けてゆっくり上げながら小さく謝るときょとんとしたまま頷いた。

「え、と。…はい」

戸惑いながら口づけをした唇を手の甲で軽く拭っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...