人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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混戦

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二人を残して焚き火に当たるヤン達のもとへ向かった。

「君らの主人に無礼をして悪かった」

開口一番にヤンとラウルに言う。ブスくれてそっぽを向くラウルとなんとも言えない顔で見つめるヤンが対照的だった。
ただ黙って一礼をするので不気味になる。

「何も言わんのか?」

「…その耳と尻尾を見るとですね」

ぺたりと下がる耳と足の間に丸まって絡む尻尾をちらっと見やる。
エヴ様ではありませんが、反省が見てとれるのでと呟く。

「直ぐ様離れてリーグと交代されましたし、エヴ様のお怒りもなさそうなので私共から申し上げることはありません」

「リーグを気にいったようだな」

「そのようですね」

ヤンが、という意味だったのだが。

「君は気にならないか?」

「あぁ、エヴ様が諾と言えば何も」

「好いてるのに」

「ええ、私共の最愛の主ですので」

表面を覆った変わらない品のいい笑みに言葉巧みに腹を探り合う貴族に向いた男だとよぎる。
内心の見えなさにこのあとの模擬戦で本音が見せるだろうと、ひとまず横に置くことにした。

「スミスとダリウスを呼んでくれ。水中模擬戦を行う」

「分かりました」

動こうとするヤンを止めてラウルが向かった。

「オレ、行ってくる」

「スミスさんがいるのにか?いいなら構わないが」

少し驚いたヤンの忠告にたたらを踏んで嫌そうに頷いた。

「気にするな」

肩をぽんと軽く叩いてヤンが向かった。

「うちのがすまない」

残ったラウルにそう言うとむぅっと顔をしかめる。

「いえ、オレが上手くあしらえないだけなんで。それ以外は優秀です。飲み込みが良くて教えがいはあります。自分の参考になる話も多くて悪くはないです」

ないんですけど、と口ごもる様子から察するに、切ろうか切るまいかの瀬戸際のようだ。

「スミスの能力があがってこちらとしてもラウルの指導に感謝している。礼としてジェラルド伯を通じて褒賞を託す予定だ。団からなので金銭になる」

「授業料ですね。…分かりました」

「ああ、少ないがこちらからの気持ちだ。受け取ってもらえると助かる」

ジェラルド伯を通じてなら断れないだろう。
辺境領の収入源にもなる。
一部はジェラルド伯のものになり、そこから残りがラウルの褒賞となるから。
復興の資金に当てると言う口ぶりだった。
彼ならそのまま懐に入れることなくその通りにされるだろう。
悩ましげな渋い顔に、もうしばらく面倒を見てくれというこちらの意を汲んだと分かる。

「…意外と怒ってないようだな?」

「…」

じっと観察していたが、どうにも様子が変だ。
ヤンはまだしも激情型のラウルがこの態度。
もっとふたりの殺気で針の筵になるか、最悪、抜刀騒ぎになると思っていた。

「…今、バランス崩してんのはオレじゃないんで。仲間内でひとりダメになると覚めるんだ。揉めてる時、あれに狙われるとヤバイ」

色魔のことだろう。
この能力を持つ彼らと、三対一で拮抗した力を持つ上位種。
エヴ嬢も合わせてあの強さを持つのなら、あれは黒獅子と張る強さを持つのかもしれない。

「承知した」

バランスを崩したのが誰か分かった。
ふと顔を上げて向こうから避けていた目線を絡めてくる。

「一番、厄介な奴だ。あいつが一番拗れてる」

「気を付ける」

「…そうしてください」

真剣な眼差しに忠告を素直に受けとる。
このあとの模擬戦はかなり混戦しそうだ。
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