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昔話
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あれから3日たつ。
遠見櫓に引きこもって平和だ。
昼はクレイン領団のブラウンや他の顔見知りの者が来て、夜はリーグが世話役に来る。
1日、エドに采配を任せて夕暮れになるとエヴ嬢達と外へ食事だ。
「ぶ、」
ひとつ、難点は日に数回あるラウルからの鳥だ。
頭に突進する。
「ジェラルド伯にもこうなのか」
ぼやくと側のブラウンが笑った。
「いや、そいつは特別使用ですよ。普通は手のひらや肩に乗って消えます。あいつ、何やってんだか」
ブラウンが顔をしかめて呆れていた。
「…恨まれてるからなぁ」
「いえ、あいつはなかなかの根性悪ですから。ヤンとお嬢様がいなかったらただの輩です。本当にクソガキでした」
「ふ、そうか」
話が続くのかと思えば、黙って持ってきた書類を手渡して見張りに戻ろうとした。
「詳しく聞きたいがだめか?」
「ん?大したことないですよ?資料をご覧になったでしょう?」
「ああ、見たがどんなクソガキだったか聞きたい。面白そうだ。椅子に座るといい」
「はは、どうですかね」
向かいの椅子に座るので、特別だと引き出しからワインを出した。
「よろしいんですか?」
「たまにはな。それに、これで言い訳になるだろう?私に無理矢理飲まされたということで話せばいい」
「はは!さばけた方だ!」
「さあ、根掘り葉掘り聞きだそう。楽しみだ」
グラスに注いで手渡すとひと口飲んで、良いものですねと笑った。
「秘蔵の品だ。そのくらいの価値はある。何でも話してくれ」
「あはは、団員ならみんなが知ってる話ですよ。10年くらい前ですね。ベアード団長が拾ってきて全く言うこと聞かない。文句ばかり。あんな跳ねっ返りどこで拾ったかと聞くと盗賊の討伐で拾ったと。あの見た目だったので賊の捕虜だと思ったらしいんですよ」
「見た目は少年だからな」
私もその場にいたら誤解したかもしれん。
「うちの団長、厳ついけどすごい優しいんですよ。息子のダリウス坊っちゃんと一緒に可愛がってほだして。それなのにあの跳ねっ返り、捕まった猫みたいにしょっちゅう暴れて迷惑な術式をばら蒔いて。二度と使えないようにクソガキを封印してくれって団員らと頼んだら、旦那様が娘を見てくれって言い出したんです」
「ほぉ、それは思いきりがいい」
高度な術式の扱いに目をつけたのか。
「…怖かったですよ?助けてくれって言うのかと思ったら、俺達の前で娘は死ぬ方が楽かと聞いてました。あいつ、その時は何も知らないから貴族の金持ち娘と侮って馬鹿にして。旦那様は、心から死ぬべきと思うなら殺せと。親として苦しまず頼みたいと」
息を飲んだ。
恐ろしいことを、なんてことを。
そう思うのと、ジェラルド伯にとって無理に生かしてるという苦しみも容易に想像ついた。
「もちろん皆止めました。俺達はお嬢様のことを知ってましたから。ヤンが必死なのも、旦那様と奥様、兄君のロバート様が大事にしておられるのも。あんな、クソガキ、笑って殺すんじゃないかと心配でした。あいつ、自分だけ不幸だと思ってましたから」
どっちもあり得ないですよねと呆れていた。
「…しばらく、一年くらいですかねぇ。久々に戻ってきたら大人しくなって、俺達にかけた術式を解いて悪かったって謝るんですよ。ヤンのもとで鍛えられていると噂は聞いていたんですけど、何があったのか知らなくて団長に聞きました。そしたら舐めた態度からヤンに何度も殺されかけて、奥様も愛刀のレイピアを振り回して旦那様を殺しかけたとか」
確か、奥方は人族で隣国の伯爵家出身。
かなり古いワルキューレの一族だと聞いている。
今は混血が進んで人族しか産まれないとか。
いずれご挨拶に伺うから人となりを把握したい。
「不思議だ。それがどうして改心に繋がったのかわからん」
奥方の話も気になるが、先にラウル達の話題を尋ねた。
「不思議でしょう?人間性に問題あるから放逐できないということでヤンの手伝いに雇っていたそうです」
「信用がないのに?思い切りが良すぎる」
「お目付け役として甘ったれのダリウス坊っちゃんも一緒にです」
「甘ったれ」
「そう甘ったれです。昔は鍛練からすぐ逃げてピーピー泣いてばっかりで根性がなかったんです。争い事が大嫌いみたいで。一年、来なかったのも逃げ出したとばかり。だいたい、ベアード団長が叱るのに庇うから、あのガキが余計調子に乗ったんですよ。それが問題を起こせば連帯責任でヤンはドレインと拳で二人を躾たとか。あいつは腕もあります。お嬢様のことで忙しいのに暇を見つけてはベアード団長に鍛練を受けて甘ったれよりかなり鍛えてましたから。ざまぁみろですね」
「手厳しいな」
苦笑いで言うと当たり前ですと答える。
遠見櫓に引きこもって平和だ。
昼はクレイン領団のブラウンや他の顔見知りの者が来て、夜はリーグが世話役に来る。
1日、エドに采配を任せて夕暮れになるとエヴ嬢達と外へ食事だ。
「ぶ、」
ひとつ、難点は日に数回あるラウルからの鳥だ。
頭に突進する。
「ジェラルド伯にもこうなのか」
ぼやくと側のブラウンが笑った。
「いや、そいつは特別使用ですよ。普通は手のひらや肩に乗って消えます。あいつ、何やってんだか」
ブラウンが顔をしかめて呆れていた。
「…恨まれてるからなぁ」
「いえ、あいつはなかなかの根性悪ですから。ヤンとお嬢様がいなかったらただの輩です。本当にクソガキでした」
「ふ、そうか」
話が続くのかと思えば、黙って持ってきた書類を手渡して見張りに戻ろうとした。
「詳しく聞きたいがだめか?」
「ん?大したことないですよ?資料をご覧になったでしょう?」
「ああ、見たがどんなクソガキだったか聞きたい。面白そうだ。椅子に座るといい」
「はは、どうですかね」
向かいの椅子に座るので、特別だと引き出しからワインを出した。
「よろしいんですか?」
「たまにはな。それに、これで言い訳になるだろう?私に無理矢理飲まされたということで話せばいい」
「はは!さばけた方だ!」
「さあ、根掘り葉掘り聞きだそう。楽しみだ」
グラスに注いで手渡すとひと口飲んで、良いものですねと笑った。
「秘蔵の品だ。そのくらいの価値はある。何でも話してくれ」
「あはは、団員ならみんなが知ってる話ですよ。10年くらい前ですね。ベアード団長が拾ってきて全く言うこと聞かない。文句ばかり。あんな跳ねっ返りどこで拾ったかと聞くと盗賊の討伐で拾ったと。あの見た目だったので賊の捕虜だと思ったらしいんですよ」
「見た目は少年だからな」
私もその場にいたら誤解したかもしれん。
「うちの団長、厳ついけどすごい優しいんですよ。息子のダリウス坊っちゃんと一緒に可愛がってほだして。それなのにあの跳ねっ返り、捕まった猫みたいにしょっちゅう暴れて迷惑な術式をばら蒔いて。二度と使えないようにクソガキを封印してくれって団員らと頼んだら、旦那様が娘を見てくれって言い出したんです」
「ほぉ、それは思いきりがいい」
高度な術式の扱いに目をつけたのか。
「…怖かったですよ?助けてくれって言うのかと思ったら、俺達の前で娘は死ぬ方が楽かと聞いてました。あいつ、その時は何も知らないから貴族の金持ち娘と侮って馬鹿にして。旦那様は、心から死ぬべきと思うなら殺せと。親として苦しまず頼みたいと」
息を飲んだ。
恐ろしいことを、なんてことを。
そう思うのと、ジェラルド伯にとって無理に生かしてるという苦しみも容易に想像ついた。
「もちろん皆止めました。俺達はお嬢様のことを知ってましたから。ヤンが必死なのも、旦那様と奥様、兄君のロバート様が大事にしておられるのも。あんな、クソガキ、笑って殺すんじゃないかと心配でした。あいつ、自分だけ不幸だと思ってましたから」
どっちもあり得ないですよねと呆れていた。
「…しばらく、一年くらいですかねぇ。久々に戻ってきたら大人しくなって、俺達にかけた術式を解いて悪かったって謝るんですよ。ヤンのもとで鍛えられていると噂は聞いていたんですけど、何があったのか知らなくて団長に聞きました。そしたら舐めた態度からヤンに何度も殺されかけて、奥様も愛刀のレイピアを振り回して旦那様を殺しかけたとか」
確か、奥方は人族で隣国の伯爵家出身。
かなり古いワルキューレの一族だと聞いている。
今は混血が進んで人族しか産まれないとか。
いずれご挨拶に伺うから人となりを把握したい。
「不思議だ。それがどうして改心に繋がったのかわからん」
奥方の話も気になるが、先にラウル達の話題を尋ねた。
「不思議でしょう?人間性に問題あるから放逐できないということでヤンの手伝いに雇っていたそうです」
「信用がないのに?思い切りが良すぎる」
「お目付け役として甘ったれのダリウス坊っちゃんも一緒にです」
「甘ったれ」
「そう甘ったれです。昔は鍛練からすぐ逃げてピーピー泣いてばっかりで根性がなかったんです。争い事が大嫌いみたいで。一年、来なかったのも逃げ出したとばかり。だいたい、ベアード団長が叱るのに庇うから、あのガキが余計調子に乗ったんですよ。それが問題を起こせば連帯責任でヤンはドレインと拳で二人を躾たとか。あいつは腕もあります。お嬢様のことで忙しいのに暇を見つけてはベアード団長に鍛練を受けて甘ったれよりかなり鍛えてましたから。ざまぁみろですね」
「手厳しいな」
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