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暴走
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「な、な、な、んで、」
ひとり動けず鼻血を出すリーグが突っ伏して呻いている。
「なんで、まっ、真っ裸なんすかぁぁっ」
小さな叫びを私達も突っ伏して聞いていた。
「…エヴ様、まさか、寝ぼけて、脱いだんですか?」
ラウルが地を這うような声音で尋ねた。
「ち、違うぅ。な、ないもん。見つからないよぉ」
衝立の奥でひとり寝巻きを探してうろうろしている。
のろのろと身体を起こし、ふーっと一息入れてからラグに座り直した。
先程の光景はばっちり見えた。
シーツをまとう余裕などなかったらしい。
慌てて倒れる衝立を手で追って、しかも寝台から転げ落ちて無防備に晒した。
たわわな胸も細い腰も、伸びた足も。
衝立を戻そうと私達がもたついてる間にシーツにくるまっていたが、迂闊なエヴ嬢は上手く身体に巻けず尻をはみ出したまま寝台の奥に逃げていった。
人狼の目に感謝だ。
人族とエルフの目では全貌は見えなかった思うが、恐らく薄暗くぼんやり見えたはずだ。
リーグはうっすら見えた裸体にこの反応なのだ。
刺激の強さからあっという間に鼻血を出してうずくまっていた。
ぼんやり見たことさえ腹が立つが私ほど見えていないはずだ。
それより、オーガのダリウスは私と同じくらい夜目が利く。
見えたのだろう。
今さら鼻血を出して手拭いで押さえていた。
先程と同じように土下座をして隠しているが匂いで分かる。
面白くないが仕方がない。
「ヤン、探してぇ」
「…分かりました。…そちらに入って大丈夫ですか?」
ぐったり疲れた気配が隠せていない。
「だ、大丈夫。み、見つけてよぉ」
「一旦、こちらを」
衝立に手をかけて半泣きの顔を少し覗かせたので、ガウンを手渡している。
裏に入ってしばらく探したが見つからないらしく諦めた。
「…仕方ありません。違うものをご用意します。少々お待ちください」
「ふぇぇ、…わかった」
リーグの鼻血も落ち着いた。
お暇すると声をかけて天幕を後にした。
「…団長、服の心当たりあるっす。見つかったら返し行きます」
道中の言葉に首をかしげた。
櫓に戻ってリーグが衝立の裏から、ありましたと持ってきた。
「どういう原理っすか。着てきたならさっきのも着て帰ればいいのに」
「分からん。それより届けたら向こうの陣で休め。往復していたら日が昇って休む暇がなくなる」
「いいっす。明日は適当に仮眠とりますから」
「仮眠は構わんが、こちらは構うな。あちらから日の出と供に自陣へ行け。エドへあの件の伝達も頼みたい」
逞しいご婦人方への要請と私兵の捕縛、軟禁する天幕を指示する。
「人員の調整ができたら馬車に詰め込む」
あれを扱える団員がいない。
輸送の指揮にエドをつけるしかない。
それさえもこの戦況に損害がある。
「団長の立ち会いのもとっすか?」
「無しだ。姿を見せると余計興奮する」
また幼子のように地面に転がって泣き真似されたら困る。
私がいない方がまだ気丈に振る舞う。
「ですね。うっす」
行ってきますとまたエヴ嬢の天幕へと出ていった。
平静を保つがまだ首まで赤かった。
正直なところ、こいつの記憶をなくなるなら、頭を掴んで今すぐ振り回したい。
殴ってもいい。
だが、そうもいかないと不満に口許を歪めた。
疲れたと言うこともあり寝台に寝転んだ。
番の裸を見られたというムカつきと私と同等の貫禄を持つ彼らの慌てふためきようが面白かったと複雑な心境だった。
リーグと同様に若い彼らも全く慣れてない。
だが、人のことを言えない。
女性の裸を見て鼻血を出すほど程うぶではないのに。
彼ら程若くないのに熱くなる自分が恥ずかしくなり、寝台から飛び起きて剣を掴むと外でいつまでも振るった。
日が高く昇りきった頃、近くの水辺で汗を流した。
朝方に準備の完了か了承の内容を乗せた鳥が来ると思ったがなかなか来ない。
空を見上げもうかなり日が高いのにと眉をひそめた。
不審な点はもうひとつ。
朝方には必ず一人は来るはずの世話役のブラウン達がいつもの時間になっても来ないことだ。
朝食の時刻はとうに過ぎた。
初めてのことに嫌な予感がする。
このままでは埒が明かない。
待つのは止めだと自陣に向かった。
途中、後ろから馬が走ってきた。
「グリーブス団長!こんなところに!櫓にいなかったから探しましたっ」
「ブラウン、何があった?」
慌てた様子から何か起きたと察して問う。
「あいつらが、ラウルとリーグを襲いやがった!あいつらです!」
「なんだと?!」
「早く後ろに乗ってください!お嬢様を止めてください!」
「どういうことだ?」
何を止めろというのだ?
何があった?
問うより先に飛び乗るとブラウンは馬を走らせ、話を続けた。
「二人とも死んじゃいません!怪我がひどいが生きてます!でも今は意識がなくて、旦那様とベアード団長であいつらの取り調べをしようとしたのに、お嬢様に知られました!お嬢様があの高飛車のところへ乗り込んで、詳しく分からないが言い争ったらしいんです!そしたら急に二人を拐ってどこか行っちまったって!」
「ペリエ嬢と誰だ?」
「あの女騎士です!」
「あいつらという確証は?」
「現場の近くを私兵達が人払いさせていたとうちの団員が言ってました!それにお嬢様との言い争いで高飛車と女騎士が自分達だとばらしたそうです!」
「ヤン達は?」
こんな時の彼らだ。
なぜ止めないのか分からなかった。
「実はあの高飛車のところへ乗り込む前にヤンとダリウスは止めようとしたら、お嬢様に触れた途端、倒れて。何か能力を使ったみたいです!」
そこまで話を聞いてエドの天幕の近くまでたどり着いた。
人だかりに怒鳴り声が響いていた。
「エド!どこだ!」
「団長!」
馬上から怒鳴るとエドが駆け寄ってきた。
人だかりを払うとベアード殿ら複数のクレイン領団の男達が私兵と侍女らを捕縛して押さえている。
「ブラウンから話を聞いた」
エドに聞いた話を伝えるといくつか補足に話を付け足した。
朝いちで伝わるはずの伝達も伝わっていない。
こちらへラウルと向かう途中、二人が女騎士と私兵に襲われたと分かった。
「番でないあいつらがなぜ、」
「どうやらラウルを番と勘違いしたようです。見た目から女と思われて、リーグが側にいることも特別扱いと判断したと口にしておりました。番から解放すれば自分が選ばれると考えて、」
「お話し中、申し訳ない。グリーブス団長、旦那様の命によりこの者達は我が領で預かりする」
「しかし、それは」
喚く私兵らを団員らが引きずる傍ら、ベアード殿は涼しい顔だ。
戸惑ったエドが遮るとふん、と鼻を鳴らす。
いつもの穏やかさは微塵も感じられない。
「クレインはお嬢様と一蓮托生、今回の揉め事の非は全てこちらが引き受ける。但し、最低限の仲裁はお任せしたいとのこと。まずはお嬢様とアバズレどもを探していただきたい。ラウルがあの状況ではこちらは探せない」
「了承した」
有無を言わさない圧を漂わすベアード団長に頷く。
たとえ圧がなくとも、脅迫されたとしてもそれは私がせねばならない。
「どうやって、検討もつかないのに」
エドが悲鳴のような声をあげた。
「人狼の鼻は飾りなのか?」
ベアード殿の冷えた視線にエドがはっとして私を振り返る。
ラウル程の正確性はないがそれしかない。
「しかし、あの様子では、たとえ団長でも話など出来ない。ペリエ嬢らも無事かどうか、」
「お嬢様なら殺しはせん。何をしてるか分かりかねるが。…ふ、だが、隠したのは正解だ。我が領団の全員が殺気立っている。私も、あれは息子同然だ」
ふと、横を向いて目を細めた。
「あれらも皆の息子同然」
人だかりを掻き分けてダリウスとヤンが駆けつけた。
二人とも顔色が悪くやっと立っているような状態。
ヤンはダリウスの肩を借りてなんとかといったところだった。
「親父!エヴ様は!?」
「強化をかけたまま、あちらにアバズレ二人を掴んで飛んでいったそうだ。捜索はグリーブス団長に依頼した」
城門の先を指さす。
匂いの方向もそちらだ。
二人が指をさした方向へよろめきながら走る。
「追いかけるのは諦めろ。お前達はお嬢様に負けた。まだまともに動けない。おい、二人を止めろ」
抵抗する二人を団員らが支えてやんわりと引き留めている。
それさえも振りほどけず膝をついた。
二人の強さを理解する周囲がおののく。
「怒り狂ったお嬢様は三人を制する程お強い。我が領団にとめられる者はいない。それより時間の無駄だ。グリーブス団長、お嬢様とアバズレの行方を急いでもらいたい」
頷いてブラウンから馬を引き継ぐ。
「待て!黙って聞いていれば!それが頼む態度か?!あまりにも不躾だ!領兵団長と王都兵団団長では開きがあるというのに!」
うちの団の一人が叫び、私が制する前に怒鳴り声が返ってきた。
「るせぇよ!手ぇ出した女ひとりにいいようにされやがって!何もかもてめぇらの大将のせいだ!後手後手に回った策に被害者を出しやがって!黒獅子を打った英雄の一人に!わかってんのかよ!この、ぶはあ!」
ブラウンが殴って黙らせた。
「馬鹿が!クレイン領が揉めんのは王都のパーティーかちーぱっぱかわっかんねぇ名の貴族だけだ!王都兵団に馬鹿やんじゃねぇ!旦那様の意向を理解しろや!黙ってそのゴミどもを陣に連れてけ!」
尻を蹴って追い立てる。
その間に騎乗し体制を整えた。
「うちの者が失礼をした。態度も改めよう。だが、あれがこちらの本音だ。はっきり言って怒りが収まらない。しかし公爵家のみとの対立になるか王都に弓を引く形になるか、今はあなたの尽力が必要だということも分かっている。頼む。今お嬢様を探せるのはグリーブス団長だけだ」
「いや、こちらに非がある。申し訳ない」
頭を下げて乞われ、私も礼をとりすぐさま馬上から手綱を引く。
「団長!隊列はいかがなさいますか?!」
「必要ない!どうせついてこれない!」
エドの問いにそう答え、どっと馬の腹を蹴り駆け出した。
ひとり動けず鼻血を出すリーグが突っ伏して呻いている。
「なんで、まっ、真っ裸なんすかぁぁっ」
小さな叫びを私達も突っ伏して聞いていた。
「…エヴ様、まさか、寝ぼけて、脱いだんですか?」
ラウルが地を這うような声音で尋ねた。
「ち、違うぅ。な、ないもん。見つからないよぉ」
衝立の奥でひとり寝巻きを探してうろうろしている。
のろのろと身体を起こし、ふーっと一息入れてからラグに座り直した。
先程の光景はばっちり見えた。
シーツをまとう余裕などなかったらしい。
慌てて倒れる衝立を手で追って、しかも寝台から転げ落ちて無防備に晒した。
たわわな胸も細い腰も、伸びた足も。
衝立を戻そうと私達がもたついてる間にシーツにくるまっていたが、迂闊なエヴ嬢は上手く身体に巻けず尻をはみ出したまま寝台の奥に逃げていった。
人狼の目に感謝だ。
人族とエルフの目では全貌は見えなかった思うが、恐らく薄暗くぼんやり見えたはずだ。
リーグはうっすら見えた裸体にこの反応なのだ。
刺激の強さからあっという間に鼻血を出してうずくまっていた。
ぼんやり見たことさえ腹が立つが私ほど見えていないはずだ。
それより、オーガのダリウスは私と同じくらい夜目が利く。
見えたのだろう。
今さら鼻血を出して手拭いで押さえていた。
先程と同じように土下座をして隠しているが匂いで分かる。
面白くないが仕方がない。
「ヤン、探してぇ」
「…分かりました。…そちらに入って大丈夫ですか?」
ぐったり疲れた気配が隠せていない。
「だ、大丈夫。み、見つけてよぉ」
「一旦、こちらを」
衝立に手をかけて半泣きの顔を少し覗かせたので、ガウンを手渡している。
裏に入ってしばらく探したが見つからないらしく諦めた。
「…仕方ありません。違うものをご用意します。少々お待ちください」
「ふぇぇ、…わかった」
リーグの鼻血も落ち着いた。
お暇すると声をかけて天幕を後にした。
「…団長、服の心当たりあるっす。見つかったら返し行きます」
道中の言葉に首をかしげた。
櫓に戻ってリーグが衝立の裏から、ありましたと持ってきた。
「どういう原理っすか。着てきたならさっきのも着て帰ればいいのに」
「分からん。それより届けたら向こうの陣で休め。往復していたら日が昇って休む暇がなくなる」
「いいっす。明日は適当に仮眠とりますから」
「仮眠は構わんが、こちらは構うな。あちらから日の出と供に自陣へ行け。エドへあの件の伝達も頼みたい」
逞しいご婦人方への要請と私兵の捕縛、軟禁する天幕を指示する。
「人員の調整ができたら馬車に詰め込む」
あれを扱える団員がいない。
輸送の指揮にエドをつけるしかない。
それさえもこの戦況に損害がある。
「団長の立ち会いのもとっすか?」
「無しだ。姿を見せると余計興奮する」
また幼子のように地面に転がって泣き真似されたら困る。
私がいない方がまだ気丈に振る舞う。
「ですね。うっす」
行ってきますとまたエヴ嬢の天幕へと出ていった。
平静を保つがまだ首まで赤かった。
正直なところ、こいつの記憶をなくなるなら、頭を掴んで今すぐ振り回したい。
殴ってもいい。
だが、そうもいかないと不満に口許を歪めた。
疲れたと言うこともあり寝台に寝転んだ。
番の裸を見られたというムカつきと私と同等の貫禄を持つ彼らの慌てふためきようが面白かったと複雑な心境だった。
リーグと同様に若い彼らも全く慣れてない。
だが、人のことを言えない。
女性の裸を見て鼻血を出すほど程うぶではないのに。
彼ら程若くないのに熱くなる自分が恥ずかしくなり、寝台から飛び起きて剣を掴むと外でいつまでも振るった。
日が高く昇りきった頃、近くの水辺で汗を流した。
朝方に準備の完了か了承の内容を乗せた鳥が来ると思ったがなかなか来ない。
空を見上げもうかなり日が高いのにと眉をひそめた。
不審な点はもうひとつ。
朝方には必ず一人は来るはずの世話役のブラウン達がいつもの時間になっても来ないことだ。
朝食の時刻はとうに過ぎた。
初めてのことに嫌な予感がする。
このままでは埒が明かない。
待つのは止めだと自陣に向かった。
途中、後ろから馬が走ってきた。
「グリーブス団長!こんなところに!櫓にいなかったから探しましたっ」
「ブラウン、何があった?」
慌てた様子から何か起きたと察して問う。
「あいつらが、ラウルとリーグを襲いやがった!あいつらです!」
「なんだと?!」
「早く後ろに乗ってください!お嬢様を止めてください!」
「どういうことだ?」
何を止めろというのだ?
何があった?
問うより先に飛び乗るとブラウンは馬を走らせ、話を続けた。
「二人とも死んじゃいません!怪我がひどいが生きてます!でも今は意識がなくて、旦那様とベアード団長であいつらの取り調べをしようとしたのに、お嬢様に知られました!お嬢様があの高飛車のところへ乗り込んで、詳しく分からないが言い争ったらしいんです!そしたら急に二人を拐ってどこか行っちまったって!」
「ペリエ嬢と誰だ?」
「あの女騎士です!」
「あいつらという確証は?」
「現場の近くを私兵達が人払いさせていたとうちの団員が言ってました!それにお嬢様との言い争いで高飛車と女騎士が自分達だとばらしたそうです!」
「ヤン達は?」
こんな時の彼らだ。
なぜ止めないのか分からなかった。
「実はあの高飛車のところへ乗り込む前にヤンとダリウスは止めようとしたら、お嬢様に触れた途端、倒れて。何か能力を使ったみたいです!」
そこまで話を聞いてエドの天幕の近くまでたどり着いた。
人だかりに怒鳴り声が響いていた。
「エド!どこだ!」
「団長!」
馬上から怒鳴るとエドが駆け寄ってきた。
人だかりを払うとベアード殿ら複数のクレイン領団の男達が私兵と侍女らを捕縛して押さえている。
「ブラウンから話を聞いた」
エドに聞いた話を伝えるといくつか補足に話を付け足した。
朝いちで伝わるはずの伝達も伝わっていない。
こちらへラウルと向かう途中、二人が女騎士と私兵に襲われたと分かった。
「番でないあいつらがなぜ、」
「どうやらラウルを番と勘違いしたようです。見た目から女と思われて、リーグが側にいることも特別扱いと判断したと口にしておりました。番から解放すれば自分が選ばれると考えて、」
「お話し中、申し訳ない。グリーブス団長、旦那様の命によりこの者達は我が領で預かりする」
「しかし、それは」
喚く私兵らを団員らが引きずる傍ら、ベアード殿は涼しい顔だ。
戸惑ったエドが遮るとふん、と鼻を鳴らす。
いつもの穏やかさは微塵も感じられない。
「クレインはお嬢様と一蓮托生、今回の揉め事の非は全てこちらが引き受ける。但し、最低限の仲裁はお任せしたいとのこと。まずはお嬢様とアバズレどもを探していただきたい。ラウルがあの状況ではこちらは探せない」
「了承した」
有無を言わさない圧を漂わすベアード団長に頷く。
たとえ圧がなくとも、脅迫されたとしてもそれは私がせねばならない。
「どうやって、検討もつかないのに」
エドが悲鳴のような声をあげた。
「人狼の鼻は飾りなのか?」
ベアード殿の冷えた視線にエドがはっとして私を振り返る。
ラウル程の正確性はないがそれしかない。
「しかし、あの様子では、たとえ団長でも話など出来ない。ペリエ嬢らも無事かどうか、」
「お嬢様なら殺しはせん。何をしてるか分かりかねるが。…ふ、だが、隠したのは正解だ。我が領団の全員が殺気立っている。私も、あれは息子同然だ」
ふと、横を向いて目を細めた。
「あれらも皆の息子同然」
人だかりを掻き分けてダリウスとヤンが駆けつけた。
二人とも顔色が悪くやっと立っているような状態。
ヤンはダリウスの肩を借りてなんとかといったところだった。
「親父!エヴ様は!?」
「強化をかけたまま、あちらにアバズレ二人を掴んで飛んでいったそうだ。捜索はグリーブス団長に依頼した」
城門の先を指さす。
匂いの方向もそちらだ。
二人が指をさした方向へよろめきながら走る。
「追いかけるのは諦めろ。お前達はお嬢様に負けた。まだまともに動けない。おい、二人を止めろ」
抵抗する二人を団員らが支えてやんわりと引き留めている。
それさえも振りほどけず膝をついた。
二人の強さを理解する周囲がおののく。
「怒り狂ったお嬢様は三人を制する程お強い。我が領団にとめられる者はいない。それより時間の無駄だ。グリーブス団長、お嬢様とアバズレの行方を急いでもらいたい」
頷いてブラウンから馬を引き継ぐ。
「待て!黙って聞いていれば!それが頼む態度か?!あまりにも不躾だ!領兵団長と王都兵団団長では開きがあるというのに!」
うちの団の一人が叫び、私が制する前に怒鳴り声が返ってきた。
「るせぇよ!手ぇ出した女ひとりにいいようにされやがって!何もかもてめぇらの大将のせいだ!後手後手に回った策に被害者を出しやがって!黒獅子を打った英雄の一人に!わかってんのかよ!この、ぶはあ!」
ブラウンが殴って黙らせた。
「馬鹿が!クレイン領が揉めんのは王都のパーティーかちーぱっぱかわっかんねぇ名の貴族だけだ!王都兵団に馬鹿やんじゃねぇ!旦那様の意向を理解しろや!黙ってそのゴミどもを陣に連れてけ!」
尻を蹴って追い立てる。
その間に騎乗し体制を整えた。
「うちの者が失礼をした。態度も改めよう。だが、あれがこちらの本音だ。はっきり言って怒りが収まらない。しかし公爵家のみとの対立になるか王都に弓を引く形になるか、今はあなたの尽力が必要だということも分かっている。頼む。今お嬢様を探せるのはグリーブス団長だけだ」
「いや、こちらに非がある。申し訳ない」
頭を下げて乞われ、私も礼をとりすぐさま馬上から手綱を引く。
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