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強情
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「出せ!エヴ!話を聞け!」
「またなし崩しに説得する気でしょう?!嫌ですからね!先にお姫様とお話されてください!」
ドアノブを壊そうと力を込めたら、壊したら許さないからと怒鳴られ先に牽制された。
「くぅっ!」
腹立ちに、どごんと扉を叩く。
肩を落として仕方なしに後ろを振り向いた。
過呼吸で倒れる寸前のペリエ嬢と目が合う。
「ふたり、ふたりっきり、ふたりっきり、」
目をギラつかせぶつぶつと呟く様子が恐ろしくて粟立つ。
思わず強くドアノブを掴み、小さくみしっと音が鳴った。
「エヴ!せめて小窓はあけろ!密室にするな!」
そう叫ぶと、かしゃんと小窓が開かれた。
「背中しか見えません」
そう言われてゆっくり扉に張り付いたまま横にずれる。
「…何を話し合えと言うんだ?ひとりで会話しているぞ?」
ひとりで騒ぐペリエ嬢の姿が恐ろしくて汗ばんできた。
「何でも、結婚のことでも」
「結婚はしない!」
「ならお姫様にしっかりお話してください。それは私の話すことじゃないんですから。誤解だというならご自分でどうぞ」
「だが、」
「うるさい。団長にも怒ってるんです。今日の取り調べで団長も悪いって分かりました」
「なぜ私が?!」
驚いて小窓から顔を出してエヴを見つめた。
想像以上の冷たい視線にびくっと身体が縮こまる。
「邪険にしたって。必死で好きだって言ってるのに目の前で女性を沢山侍って子供扱いしたとか。笑い者にして最低です。男も女もお構いなしに手を出すのにお姫様だけ話し相手にもなれないと。淑女になるために厳しい教育を頑張ったのも団長のためですって。目もくれないから性格拗れて我が儘になったとか」
「私のせいだと言うのか?」
「さあ、どうでしょうね。この人もあの人達も嘘つきだから。でも団長は真剣に取り合うべきだったと思います。嫌だからと逃げてばかり。私にまで黙って箝口令を敷いたり、なかったことにしてもこの人の中ではそうじゃないのに」
「私はちゃんと伝えた。番としか結婚しないと。彼女は、術式で精神が錯乱していたからこちらの話に聞く耳を持たなかった。ラウルに聞け」
力なく弱々しく言うとエヴはラウルから話を聞いていた。
「ふーん、そう。でも今は剥がれてるから関係ありますか?」
興味なさげに一言。
さすがにラウルが取りなすように伝えたのに。
「ここで様子を見ているのでそちらでお話をされてください」
見張りが椅子を寄せたのでそこに座ってこちらを冷めた目で見つめていた。
「エヴ、頼むから話を聞いてくれ、エヴ」
「ヤン、ダリウス、長引きそうだからカードでもする?ブラウンに習った奴。ラウルは片手じゃ無理よね?先に部屋に戻ってて。代わりに二人が入らない?」
「い、いいんですか?」
見張りの二人がおどおどと返答した。
「うん、話が終わるまでだけど。そこの燭台のテーブル使おうよ」
「エヴ様、しかし」
「何?ヤン。私はカードで遊びたいんだけど?このお姫様の相手もあるし、問題ある?」
ピリピリした物言いにヤンはため息をはいて支度を始めた。
「団長、ごゆっくり。こちらは時間潰して待ってますから」
「…エヴ、話を聞いてくれ」
「私とばかり話さないでください。団長は私と結婚したいんですよね?番だから」
「ああ、そうだ」
「なら先にそちらで話し合いをしっかりしてください。二度と私やラウル達を巻き込まないで」
見張りのひとりからカードを受け取ってパラパラとめくった。
「…分かった」
頭をがっくりと項垂れて答えた。
怒りが激しくてどうしようもない。
再度、振り返ったペリエ嬢を見ると、ひえっと叫んで後ろに尻餅をついた。
「ペリエ嬢、私のことは諦めてほしい」
嫌いになってほしい、他の者と幸せになってほしいと頭を下げて頼んだ。
「私は番といたい。あなたではない」
「はい、分かりました」
「は?」
急な返答に間の抜けた声が出た。
術式を外すだけでこうも違うのかと顔が緩んだ。
「でも、好きでいていいですよね?愛してますもの」
「いや、やめてほしい。愛されたくもない」
ぶっと廊下から吹き出す声が聞こえた。
おそらく見張りのどちらか。
根性あるな、と見知らぬ声が聞こえた。
「あなたのしたことに幻滅している。番を狙ったことも、部下が巻き込まれたことも自分勝手に物を盗るところも。あなたの人となり全てが気に入らない。もう関わりたくない」
「ご迷惑をかけたと反省しておりますの。でも想うのは自由ですわ」
「…押し付けがましい。うんざりする」
「嫌です!10年も愛していたのに!こんな別れ方、」
「最初から縁はなかったのに付き合ってるように言うな。陛下よりお叱りがあったはずだ」
「嫌です!いや!いやぁ!陛下に止められたって気持ちは抑えられないのよ!」
「…陛下に?」
後ろからエヴの声が聞こえた。
「ああ、陛下に止められたのに追いかけてくる」
「…陛下から止められたのに?」
「…それは、すごいですね」
「…マジか」
エヴと見張り二人の呆れた気配。
話がいってなかったのかと首を振り向かせた。
ラウル達三人は心当たりに納得した様子だった。
「陛下を通して抗議した。努力したと言うのは分かってもらえたか?」
「…はい。…誤解して、すいません」
「…もとから恋狂いか。術式関係ないかも」
ラウルの呟きが聞こえた。
「部屋に戻ったのかと思った」
「こんな面白いもん見たいに決まってる」
「いい性格してる」
「…へえ、言うね。…エヴ様にした件は許してないからな」
怪我のおかげでしばらくは大丈夫だが粘着質なこいつからどう逃げようか。
「うわっ!離せ!」
よそ見をしていたらペリエ嬢にしがみつかれた。
「愛しているんです!せめて、思い出を!思い出をくださいまし!」
服を脱ごうとするのに気づいてぞわっと総毛立った。
「エヴ!助けろ!襲われる!」
「またなし崩しに説得する気でしょう?!嫌ですからね!先にお姫様とお話されてください!」
ドアノブを壊そうと力を込めたら、壊したら許さないからと怒鳴られ先に牽制された。
「くぅっ!」
腹立ちに、どごんと扉を叩く。
肩を落として仕方なしに後ろを振り向いた。
過呼吸で倒れる寸前のペリエ嬢と目が合う。
「ふたり、ふたりっきり、ふたりっきり、」
目をギラつかせぶつぶつと呟く様子が恐ろしくて粟立つ。
思わず強くドアノブを掴み、小さくみしっと音が鳴った。
「エヴ!せめて小窓はあけろ!密室にするな!」
そう叫ぶと、かしゃんと小窓が開かれた。
「背中しか見えません」
そう言われてゆっくり扉に張り付いたまま横にずれる。
「…何を話し合えと言うんだ?ひとりで会話しているぞ?」
ひとりで騒ぐペリエ嬢の姿が恐ろしくて汗ばんできた。
「何でも、結婚のことでも」
「結婚はしない!」
「ならお姫様にしっかりお話してください。それは私の話すことじゃないんですから。誤解だというならご自分でどうぞ」
「だが、」
「うるさい。団長にも怒ってるんです。今日の取り調べで団長も悪いって分かりました」
「なぜ私が?!」
驚いて小窓から顔を出してエヴを見つめた。
想像以上の冷たい視線にびくっと身体が縮こまる。
「邪険にしたって。必死で好きだって言ってるのに目の前で女性を沢山侍って子供扱いしたとか。笑い者にして最低です。男も女もお構いなしに手を出すのにお姫様だけ話し相手にもなれないと。淑女になるために厳しい教育を頑張ったのも団長のためですって。目もくれないから性格拗れて我が儘になったとか」
「私のせいだと言うのか?」
「さあ、どうでしょうね。この人もあの人達も嘘つきだから。でも団長は真剣に取り合うべきだったと思います。嫌だからと逃げてばかり。私にまで黙って箝口令を敷いたり、なかったことにしてもこの人の中ではそうじゃないのに」
「私はちゃんと伝えた。番としか結婚しないと。彼女は、術式で精神が錯乱していたからこちらの話に聞く耳を持たなかった。ラウルに聞け」
力なく弱々しく言うとエヴはラウルから話を聞いていた。
「ふーん、そう。でも今は剥がれてるから関係ありますか?」
興味なさげに一言。
さすがにラウルが取りなすように伝えたのに。
「ここで様子を見ているのでそちらでお話をされてください」
見張りが椅子を寄せたのでそこに座ってこちらを冷めた目で見つめていた。
「エヴ、頼むから話を聞いてくれ、エヴ」
「ヤン、ダリウス、長引きそうだからカードでもする?ブラウンに習った奴。ラウルは片手じゃ無理よね?先に部屋に戻ってて。代わりに二人が入らない?」
「い、いいんですか?」
見張りの二人がおどおどと返答した。
「うん、話が終わるまでだけど。そこの燭台のテーブル使おうよ」
「エヴ様、しかし」
「何?ヤン。私はカードで遊びたいんだけど?このお姫様の相手もあるし、問題ある?」
ピリピリした物言いにヤンはため息をはいて支度を始めた。
「団長、ごゆっくり。こちらは時間潰して待ってますから」
「…エヴ、話を聞いてくれ」
「私とばかり話さないでください。団長は私と結婚したいんですよね?番だから」
「ああ、そうだ」
「なら先にそちらで話し合いをしっかりしてください。二度と私やラウル達を巻き込まないで」
見張りのひとりからカードを受け取ってパラパラとめくった。
「…分かった」
頭をがっくりと項垂れて答えた。
怒りが激しくてどうしようもない。
再度、振り返ったペリエ嬢を見ると、ひえっと叫んで後ろに尻餅をついた。
「ペリエ嬢、私のことは諦めてほしい」
嫌いになってほしい、他の者と幸せになってほしいと頭を下げて頼んだ。
「私は番といたい。あなたではない」
「はい、分かりました」
「は?」
急な返答に間の抜けた声が出た。
術式を外すだけでこうも違うのかと顔が緩んだ。
「でも、好きでいていいですよね?愛してますもの」
「いや、やめてほしい。愛されたくもない」
ぶっと廊下から吹き出す声が聞こえた。
おそらく見張りのどちらか。
根性あるな、と見知らぬ声が聞こえた。
「あなたのしたことに幻滅している。番を狙ったことも、部下が巻き込まれたことも自分勝手に物を盗るところも。あなたの人となり全てが気に入らない。もう関わりたくない」
「ご迷惑をかけたと反省しておりますの。でも想うのは自由ですわ」
「…押し付けがましい。うんざりする」
「嫌です!10年も愛していたのに!こんな別れ方、」
「最初から縁はなかったのに付き合ってるように言うな。陛下よりお叱りがあったはずだ」
「嫌です!いや!いやぁ!陛下に止められたって気持ちは抑えられないのよ!」
「…陛下に?」
後ろからエヴの声が聞こえた。
「ああ、陛下に止められたのに追いかけてくる」
「…陛下から止められたのに?」
「…それは、すごいですね」
「…マジか」
エヴと見張り二人の呆れた気配。
話がいってなかったのかと首を振り向かせた。
ラウル達三人は心当たりに納得した様子だった。
「陛下を通して抗議した。努力したと言うのは分かってもらえたか?」
「…はい。…誤解して、すいません」
「…もとから恋狂いか。術式関係ないかも」
ラウルの呟きが聞こえた。
「部屋に戻ったのかと思った」
「こんな面白いもん見たいに決まってる」
「いい性格してる」
「…へえ、言うね。…エヴ様にした件は許してないからな」
怪我のおかげでしばらくは大丈夫だが粘着質なこいつからどう逃げようか。
「うわっ!離せ!」
よそ見をしていたらペリエ嬢にしがみつかれた。
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