人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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「ぐ、ぬううっ」
ギリギリと絞められて息が詰まる。
腕を叩いて抵抗をすると少し緩まった。
一瞬のうちに怒りが全身からめらめらと滾って言葉が出ない。
謝ることも出来ずにひくひくと頬がひきつる。
ふう、と一息入れると紋様が引いて強すぎる強化はパキパキと音を立てて解けていく。
「だから治療は折を見てと言ってるでしょ。他人を襲うのが心配なら、ちゃんと精力を。…ああ、アモルはお尻から注げって言ってたね。楽だからって。私が吸うの下手ならあれでいいんじゃない?最悪だけど。さっきも気分悪かった。後ろにいたの団長よね?指?何を刺したの?人が大人しくしていたら本当に好き勝手弄って許せない。同じことを次はヤン達とする。団長がいなくてもかなり器は満たされるし治療の分も得られる。これで決まり」
「待てっ!なぜそんな話になる!したくないのに、ヤン達となぜ!?支離滅裂だ!しかもそんな破れかぶれに、何を言ってるのか分かってるのか?早計に結論を出すな!くっ、このっ」
従えさせられた姿勢に腹が立ち、掴んだ胸ぐらの手を握り返して引き剥がそうと引っ張った。
「手を外したら許さないからね」
「う、くっ、」
その一言で動けなくなった。
歯噛みしながら、大人しく手を離して様子を伺った。
「ふ、団長いい子」
満足げに鼻で笑った。
年上の、地位の高い私にふてぶてしい態度で悔しくなるが番に逆らえない。
むしろ喜んだことに嬉しくなった。
また力強く握られて余計頭を下げさせられてよろめいた所、咄嗟にエヴの両肩に掴まった。
「団長抜きならこうしますって提案」
「は?」
息がかかるほど近くに顔を寄せている。
見下して冴えざえとした視線に身が凍り、あり得ないほど分かりやすく狼狽えた。
「まさか、脅しか?私を」
「番がほしいのは団長だよ。私じゃない」
「え、エヴ、それは、そう、だが、」
猫なで声の情けない声が出た。
肩にしがみついて、おそらく顔も下からすがるような情けない顔だ。
強く突っぱねたい。
言い返したい。
だが、エヴの本気に怯んでどうしようもない。
これは脅しじゃない。
「嫌ならこっちの言うこと聞いてよ。治療の邪魔しないでついでに協力して。代わりに私は団長の望み通り誰ともあんな触れ合いはしない。婚姻は保留にしてあげる。条件としては充分でしょ。返事はどうする?決めた?」
「…話は分かった。だが、断れば?」
ここまで来たら断る気など毛頭ないが、こちらも意地がある。
番とは言え、年下の娘にこうもあしらわれて。
悔しさからなけなしのプライドを掘り起こして余裕に構えたふりで逆に問いかけた。
勘に触ったようで眉がぴくりと跳ねて口許が歪む。
「…断ったら、団長以外の沢山の相手と口でもお尻でもどこからでも。そんな死ぬほど辛いなら勝手に死ねばいいっ!」
言い方の熾烈さに顔を歪めた。
こちらが半泣きだ。
先程までおっとり構えていたが、今までの強引な態度からかなり腹に据えかねていたのだ。
見誤ったと反省する。
本気を込めた脅しにごくっと息を飲んだ。
「…分かった。…エヴが望むなら、何でもする」
「どうも、ありがとうございます」
強く押されたが倒れることなく踏み止まる。
「ヤン、お水ありがとう」
扉の前で茫然と水差しとグラスの盆を持って立ち尽くすヤンに声をかけた。
いつ戻ったのか分からないが、今までのやり取りに圧倒されているのは分かった。
ずかずかと大股で寄ってヤンが一瞬びくついた。
手酌で注ぐと勢いよく一杯めを飲み干して二杯めを注ぐ。
それはゆっくりちびちびと飲んだ。
三人とも動けず息を潜めて固まってエヴの一挙一動に気を配った。
「誰かラウルと食べてきて。私は部屋で食べる。今は誰かと会う気分じゃない。楽しくない。笑えない。悪いけどここまで運んで」
グラスの水を飲みながら水差しを片手に持って、乱暴に足でテーブルの椅子をガンガン蹴って引く。
「全員、行ってくれていいけど。イライラして当たり散らしそう」
もうひとつの椅子も蹴って引いて向かい合わせに動かしたら片方に座って、向かいの椅子にどかっと足を投げ出した。
「…本当に、よくも好きに扱ったね。最悪。気分が悪い」
乱暴に持っていた水差しをテーブルに叩きつける。
しかも怒りに絞り出された声にダリウスとヤンが何も言えず青ざめた。
「私が残る。怒らせた責任を取る。悪かった」
エヴの背中側の椅子を引いて座ってる。
「じゃぁ、それでいい。顔見たくないから二人は行って。食事の配膳は誰かに手の空いてる人に頼んでよ」
すごすごと黙って部屋を出ていく。
「エヴ、」
「黙っててください。声を聞きたくないし顔も見たくない」
取りつく島のなさに当然かと受け入れて背もたれに身体を預けて目をつぶった。
出来るだけ気配を消して静かに過ごす。
不安から機嫌を取りたくてしょうがないがここは黙って側に控えるしかない。
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