人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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ワルツ

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「ご年配だとお聞きしていましたが、とても朗らかで足腰のしっかりされた方ですね」
「ウィッカー族の実力者はそれなりに長命ですから」
普通は人族と同じ寿命だが、能力の高いウィッカーなら存命の魔法が使える。
鷲鼻の年老いた魔女の他に見目麗しい魔女もいるというので彼も何かしらの若返りをかけているのだろう。
「午後もダンスの練習をされるんですか?」
「そうですね。何もなければ」
エヴへ視線を向けると首をかしげて考えている。
「疲れたようだな。午後は休むか?」
「あ、いえ、大丈夫です。なんとなくダンスというよりヒールの練習だなぁって思ったんです。立ちっぱなしだし」
「立ちっぱなし?ヒールの、どんな練習をするの?」
「んー…あのね、」
エヴの説明を聞いてほぉ、と感嘆した。
「姿勢は大事ですからね。良いと思います。それだけでかなり見違えますから」
ステップは追々教えていきますと答えると納得に頭を揺らす。
「エヴ、半日だけどどれだけ良くなったか見せてくれるかな?」
「え、はい。でもどうやって?」
「簡単だよ」
カラトリーを置いて微笑みを浮かべて立ち上がると向かいのエヴの隣まで颯爽と歩いてくる。
座って見上げるエヴへ軽くお辞儀をして紳士的に手を差し伸べた。
「一曲いかがですか?そちらの空いたスペースで」
にっこり笑うロバート殿の手にすっと手を乗せた。
「はーい」
機嫌のいい間延びした返事に苦笑いをした。
「子供っぽく伸ばしたらだめだよ。短くね?返事が分からなかったら微笑んで頷くだけでにしなさい」
「はい、お兄様」
食堂の空いたスペースへ二人が向かい合わせに並ぶ。
「ワルツで構いませんか?他に踊りたいダンスはありますか?」
「え?基本しか分かりません。知ってるのに」
「分かってるよ。初めて誘う女性にこうやって尋ねて気遣うものなの。最初の挨拶から気遣いのない男とは踊らなくていいよ。断りなさい」
「ふーん、そうなんだ」
「そうなの。じゃぁ、最初の一歩はせーので行くよ。…せーの、いち、に、さん、いち、に、さん、」
ホールより狭い食堂なのに、器用に回りをよけながら不馴れなエヴをリードしている。
「おお~…、さすがだ。…様になってる。お嬢様もお上手だ」
ブラウンが感嘆に声をあげた。
王都でロバート殿のダンスを遠目からちらっと見掛けた時は気づかなかった。
かなり上手いのに自分は目立たないように、相手へのフォローを優先して女性を惹き立たせている。
その手腕に感心からため息がこぼれた。
先程よりヒールに慣れて背筋を伸ばしたエヴが伸び伸びとした動きでロバート殿のリードに身体を合わせ、表情にも余裕が見えた。
ロバート殿の自分の大きな見せ場を作ることなくお互いに礼を取る最後まエヴが美しく見えるように心掛けている。
「お二人とも素晴らしかったですっ」
すぐに拍手するブラウンに合わせて私達も賛辞を送った。
「ジェラルド伯の大胆さとはまた違ってとても繊細で美しい所作ですね。王都でお見掛けしていましたが、これ程の腕前だとは存じませんでした」
「誉めすぎですよ」
苦笑いで答える隣でエヴは満面の笑みでふんぞり返っている。
「さっきより上手になりました」
「そう?」
喜ぶエヴにロバート殿は目を細めて微笑み返す。
「エヴ、実際にとても上手だった。先程より姿勢や歩き方がよかったのもあるが、ロバート殿だからだ。ここまでパートナーを惹き立たせる技術は相当だ」
「そうなんですね、じゃあ、ずっとお兄様とだけ踊りたいです」
「くっ、くく、また極端な。出来ないから練習しているんだが?」
斜め上は母君譲りだろうか。
「分かってますけどぉ」
くすくす笑うと恥ずかしそうに頬がふくれる。
「それにしてもロバート殿。ヤンとダリウスの目標になりました。どこまで仕上げられるか分かりませんが、最低限、ジェラルド伯とロバート殿のお二人と見劣りしない程度に成らねばなりませんね。二人はうちの団員にも相手をさせましょう」
「よろしいのですか?」
「必要でしょう?」
主の教育基準に合わせる。
使用人教育の基準だ。
ポンコツな側仕えなら足元を見られる。
「団長、あの、」
「…旦那様と、ロバート様の、この水準をですか」
「そうだ。問題か?側仕えとして当然だが?」
「…いえ、ありません」
「…努めさせていただきます」
真顔で返すと二人とも引きつりながらも了承する。
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