人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
240 / 315

ハニートラップ

しおりを挟む
二人の会話に時折相槌を入れて過ごす。
今は久々の再会に水をさすより添え物として二人のお話に耳を傾けた。
「アグネリアも後で会えます?元気?」
「ええ、相変わらずよ?」
五人いるという他の女性兵士の名を出して近況を問いかけている。
ふと、疑問になりどう尋ねようか迷った。
「夫人、四人も腕のある女性兵士がおられるのに、ヤン達を専属に起用しているのには訳があるんですか?」
「私の私兵は精神感応の耐性が薄いので夢魔などの護衛には向きませんの。唯一アグネリアがましですけどヤン達ほどじゃありません。以前の夢魔化したエヴ相手にしくじりましたし、既婚者ばかりなので間違いを恐れています」
「…アグネリアに嫌われてるかなぁ」
「嫌ってないわよ?あなたが強すぎただけ」
「もうしない。やだぁ」
腕に顔を埋めてぐりぐりとおでこをこすっていじけている。
「いいのよ?どうせ間違ってもヤン達相手なら」
「は?」
「そのままエヴが望めば嫁にして構いませんでしょう?あの三人も内心は欲しがっていましたし、エヴも三人が好きよね?」
夫人の問いかけに顔を上げて頷く。
「好きなの選んで良いのよ?今はグリーブス団長も望まれているわ」
「1人を選べって言われても。喧嘩になるの嫌だし、嫌われるのも嫌。皆大好きだもん」
「エヴ、その皆には私も入ってるか?」
「え?」
きょとんとした顔を振り向かせて、ヤンとダリウスらと同じでないのを察して耳と尻尾が下がる。
「団長は人狼ですもん」
首をかしげて悩んでいる。
「番だから嫌ったりしないんでしょ?」
「ああ、そうだ」
意図が分からず戸惑いながらもそう答えると、にぱーっと笑って満足そうにまた夫人の腕に顔を隠した。
「…嬉しいぃ」
ぽそっと呟いてゆらゆらと軽く足を揺らす。
「まあ、エヴったら恥ずかしがってるの?」
「エヴ、嬉しいのか?」
腰かけていた椅子から中座し、前のめりにエヴへと問いかけると、エヴはうんうんと顔を隠したまま頭を揺らす。
バタバタと自分の尻尾がやかましい。
暴れる尻尾にぶつかった勢いで椅子がガタンガタンと揺れた。
「お母様達と一緒。嬉しい。ありがとうございます、団長」
隙間から瞳を覗かせて心底嬉しいと笑みで細める目をこちらを向けるから心臓がぎゅうううっと締まった。
「ぐ、」
耐えれずに大きく息を飲んでよろめく。
それを見て夫人はまたころころと笑った。
「まあ、よろしいこと」
「エヴ、結婚をしてほしい」
「え、」
「嫌うなんてことはあり得ない。好きだ、愛してる」
「まあ、熱烈だわ。さすが人狼ね」
「望むなら私がクレインに来る。今の地位も身分もいらない。エヴだけいればいい」
ぽかんと見上げるエヴがハッとして首を振る。
「それ、歴史で習いました!それは傾国の悪い女性です!」
「は?」
「あら?」
話を聞くと他国から仕掛けられたハニートラップで国を傾けかけた古い事案のことだった。
他国でも取りざたされたが我が国も例外ではない。
一番大きいもので、たった一人の相手に大勢の有力者が翻弄されてしまい驚くほど国力を削がれて侵略を許してしまった。
いまだに水面下ではそう言ったことは多々繰り返されているので、教訓として教育に出てくる。
「…違う」
「確かに違うわねぇ、ほほ、ほほっ」
落ち込む私と笑いが止まらない夫人。
「違うのぉ?なんでぇ?団長が国防の要だから辞めたら大変なことになるって副団長やお父様が言ってました」
そこまでジェラルド伯に評価されているとは知らなかった。
誇らしい気持ちに面映ゆい。
「だから私のせいで団長が辞めたら私、国から悪い人と思われるかも」
「そうねぇ。私が隣国の出ですし、領内は隣国との交流も深いわ。いらぬ疑いは用心すべきね」
エヴは賢いわぁ、と頭を撫でて誉めている。
「…また振り出しか」
どう言葉にしたらエヴの心に響くプロポーズになるのか全く分からない。
気難しい夫人の沸点は理解出来るのに、肝心のエヴへの対処が上手くいかない。
ジェラルド伯も四苦八苦しながら毎日プロポーズされていたのではないかとよぎった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...