人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
244 / 315

拷問

しおりを挟む
後ろに隠されていたエヴとペリエ嬢はまだ抱きしめ合って震えていた。
「あ、あんなに叔父様が、な、泣いて、叫ぶなんて、」
「お、お母様が、怖いぃ」
ロバート殿はエヴの頭を撫でて慰めていた。
「怒らせるとねぇ。ペリエ嬢ももうこれ以上、我が儘を仰らないようにお気をつけてください。さ、馬車に行きますよ」
「わ、分かったわ。お願い、いい子にするからと伝えて」
「分かりました。ご案内します」
ロバート殿がペリエ嬢を連れいこうとすると、部屋から叫び声が響いた。
「や、やめてくれぇ!」
「黙れ!よくも私の伴侶に手を出したわね!100年も生きられない、たかが人族の分際で!精魂すべて吸い出してやる!」
「あ!ああ!やめ!いやだ!うわああ!」
慌てたペリエ嬢が走って解放された扉に向かうのをジェラルド伯が肩を掴んで引き留める。
「ご覧にならない方がいい」
「でも、叔父様が」
「中に宰相がおられます。私も頃合いを見計らって中に入りますから。サキュバスの復讐なら女性に見られるのを憚られることです。先に行かれてください」
大公も愛しの姪御様に見られたらショックで倒れますと言うと静かに引き下がり、トリスとロバート殿を連れて通路へと急いで消えていった。
「エヴも聞かない方がいい。ジェラルド伯、失礼します」
「まだいたのか?早く行きなさい。グリーブス団長、娘をお願いします」
エヴの耳を塞いでジェラルド伯へ声をかけた。
どうやらペリエ嬢と行ったと思っていたらしい。
慌てて私達へ手を振って早くいけと追い払っている。
開いたままの扉からどうにも激しく責め立てられている声が漏れてくる。
「数えなさい、声が小さいわよ」
「大公、止まってますよ。さんじゅうごぉ」
「はいぃぃ、さ、さん、あ、あ、だめだぁ!むりぃぃ!さんじゅ、う、ごぉぉっああん!」
「数えるなんて余裕じゃない?!もっと鳴かせてやる!サキュバスの手管舐めないでよね!腕が入るまでにしてやる。ほら、もうここまで入った」
「ああ!あ!うおお!うおお!」
一段と声が大きくなって塞いでいたが聞こえたらしい。
エヴがぴゃっと飛び上がって後退り私の胸に背中がぶつかる。
「こ、怖いい」
行くぞと声をかけるのにプルプル震えてたのでそのまま後ろから腹に腕を回し、ひょいっと抱えて小走りで通路を抜ける。
「ベイリーフ、そろそろやめなさい」
後ろからジェラルド伯の諌める声が聞こえたが、三人ともやめる気はないらしく中休みの鐘が鳴るまで待てと答えていた。
日の傾きからもうすぐ鳴るが、大公がそれまで三人の責め苦に持つのか怪しく思えた。
王都に戻られてから復讐に動くか心が折れるか。
何にせよ大公一派の一掃も済んでいる今、何か出来ることもなかろう。
「お母様が怖いい」
私の胸にエヴの背中を合わせた状態で抱っこしていた。
腕にしがみついて泣くエヴを連れて通路を抜けて待つヤンとダリウスのもとへ戻った。
誤解されると面倒だと思ったがエヴがメソメソ泣きながら夫人が怒り狂ったことを話すので納得していた。
「ご自分で歩いてください」
ヤンの困り顔にエヴが首を振る。
「怖かったんだもん」
「抱っこして運んでいいですか?」
ダリウスの広げた手にエヴが捕まって寄っていくので仕方なくダリウスに譲った。
「私が運ぶのに」
「たまには俺がします」
白い牙をにゅっとはみ出させて目を細めた。
前抱きに首に顔を埋めるエヴの頭をぽんぽんと撫でていた。
「…私も運びたい」
ぽそっとヤンが呟くので思わずダリウスと振り返る。
エヴも目を丸くして見つめた。
目が合うとヤンが手を広げておいでおいでと手招きをして見せる。
「珍しい」
「ヤンもしたかったの?」
「したいですよ?たまには譲ってください」
「じゃあ、行く、うぷっ」
エヴが手を伸ばして行こうとしたらダリウスがぎゅうっと抱きしめて、いやだとごねた。
「俺、久々なのに」
「私は年をまたいでの久々だ。邪魔をするな」
「取り合いするとまたエヴが怒るぞ。ごねるな」
「う、」
渋々地面に下ろすとエヴがヤンに手を広げて抱っこをねだる。
「昔より目線が近いね」
「そうですね、エヴ様の背が伸びたから。よっと」
「これ抱っこじゃないよ?」
横抱きに抱えてエヴのおでこに頬を当てている。
「こうしたかったんです」
抱っこが嬉しいのかエヴは満足そうに笑う。
もういいと降りたがるのでヤンが大人しく床におろすので、試しに私も抱きしめたいと言うと腕に抱きつき、ぱっと離れるとすぐにヤンとダリウスの腕に手を組んで甘えた。
二人に挟まったエヴの頭を撫でると子どものように微笑む。
夫人に会ってから引っ付き癖が増えたように思う。
「こーら、エヴ。だめだと言ったろう?」
「お兄様」
片手で人間が一人乗れる板を抱えて戻ってきた。
「お兄様、手伝いますか?何に使うの?」
ロバート殿がエヴに頼む前にダリウスがすぐに板を受けとる。
「大公を乗せる。アグネリアの百叩きを受けたら歩けないだろう」
「ふーん、だからあんなに」
見えなかったとエヴは呟く。
「見ない方がいいよ」
「うん、怖かった」
今度はロバート殿の腕にぶら下がって遊び始めた。
「ダリウス、届けてきて。エヴといるよ」
「分かりました」
脇に抱えてさっさと奥へ向かう。
後ろ姿が見えなくなる頃、すぐに中休みの鐘が鳴った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...