人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

文字の大きさ
255 / 315

一目惚れ

しおりを挟む
「ねぇ、トリスはどうやってモルガナを選んだの?」
「え、私ですか」
ぽっと頬を染めて恥じらう。
「相性が良かったんですよねぇ。一目見てお互いに恋に落ちて。150年ほど前です」
「どこで知り合ったんだ?」
ブラウンも興味を引かれて問いかけるとトリスがしんみりする。
「うちの群れとかち合って捕獲したんですよ。オババ達は死肉を好むので殺そうとしてて、私は後学のために立ち会ったけど黒くてつやつやの綺麗な蝙蝠羽根に感動したんです。気に入ったから連れて逃げました。もう里には戻らないつもりで二人で」
「そうなの、死肉を」
恋物語のはずなのに殺伐とした内容だった。
死肉を食べると聞いてエヴは身を引いている。
「今はモルガナと同じ食事で大丈夫ですよ。たまに人里に潜り込んで暮らしていました。人間の食事は美味しいですね」
エヴが料理の乗った皿を進めると喜んで食べていた。
どれも美味しいと笑う。
「人間はすごいですね。料理に関しては人族が一番です。調味料とか、鍋やら包丁やら道具も揃っててモルガナに習わなかったら知りませんでした」
自分で作るのかと問うと、したことないしあり得ないと首を振る。
ハーピィは死肉か残飯を好むのは調理の技術がないからか。
トリスの手足は私達と変わらないがいずれ年老いたハーピィと同じ鳥のかぎ爪になるはず。
そうなると調理のような繊細な作業は出来なくなる。
ぼんやり考えているうちに大食漢で有名なハーピィが次々と皿を空にする。
どうやら食欲を我慢していたらしい。
エヴが驚きつつももっと食べていいと料理を勧めていた。
「繁殖はどうする?」
ハーピィは女しかいない。
討伐をしたことはあるがどうやって増えるのか考えたことはなかった。
疑問に声をかけると卵を生むと答えた。
年頃になると勝手に生むそうだ。
「無精卵ですけど。子種があれば簡単にハーピィが生まれます。でも女同士でも魔力をお腹に流せばモルガナとの子が出来ます」
「女同士なのにか?」
ブラウンが驚いて声をあげた。
私も知らなくて目を丸くする。
「ええ、だからモルガナは能力を高めようとしているんです。今のままでは力が弱くて核が出来る前に流れてしまうから。お嬢様、だから私達を長くお側に置いてください。夢魔の力を私達に授けてください」
「声に出すな」
手を合わせて拝むトリスの口を塞ぐともごもごと手を掴む。
「すいません」
ヤン達にきつく言われているのだろう。
青ざめて震えだした。
「大変。口に出して、言ってしまった」
手が震えて模様が手に浮いた。
「これは?」
隠しているが顔にも浮いているようだ。
痛むようで前のめりにゆっくり倒れる。
「ラウルか」
ブラウンは何かを察して頭に手拭いをかけて隠す。
「私達は抜けるから、あとでラウルを寄越して」
「お嬢様、時間が立てば治まると聞いてます」
「私、こんなの聞いてない。何を打ったの?外させる。部屋に呼んで」
「旦那様の許可があります」
ブラウンのはっきりした物言いにエヴが顔を歪ませる。
「お父様の?」
離れたジェラルド伯を睨み、仕方がないとため息を吐いた。
「もう楽しくない。私はトリスを連れて戻る」
「お嬢様、ヤン達を連れてください」
「三人とも知ってたんでしょ?顔を見たくない」
エヴが抱えようとするのを止めて私がトリスを横抱きに持ち上げる。
「侍女部屋に運べばいいか?」
「私が運びます。団長はいいです」
「行くぞ。どうせ誰か供がいなくては動けん」
ブラウンもロバート殿の側を離れるわけにいかないと言うと渋々頷いて城内へ向かう。
林を抜けて門邸の見張りに残った数名から、どうしたのかと問われて、トリスの具合が悪いと返す。
「どうしたんですか?トリス、飲みすぎたのか?」
聞かれてもトリス本人は答える余裕もなく呻いていた。
「いや、どうやら具合が良くなかったようだ」
誤魔化しにそう答えると見張りの一人が運ぶのを変わると答える。
「団長とお嬢様の手を煩わせるわけにはいきません」
「ああ、それがいい。モルガナさんが心配するよ、トリスさん。薬を用意するけど何がいる?ハーピィには何がいいんだ?お嬢様、どうしたらいいすか?」
若い一人が医務室行ってくると声をかける。
「い、いえ、もう」
よく見ると浮いていた紋様が消えて顔色はもとに戻っていた。
「尊き方、申し訳ありません」
下ろすがふらついてしまい、急いで肩を支えた。
見かねて見張りが木箱を置いて座らせる。
「ラウルに、お父様に文句言ってくる」
「へ?お嬢様?なんでですか?」
「待て!お前らはトリスを部屋へ休ませとけ!」
「は!はい!」
目をつり上げたエヴが振り返ってもと来た道を駆け出したのでそれを追いかける。
強化をかけていないからあっさり捕まえた。
「離してよ!」
怒鳴って暴れそうな気配から脇に抱えて側の茂みに放り込む。
「きゃん!」
すぐに追いかけてごろんと転がったところを首根っこ捕まえて立ち上がらせた。
木に寄りかからせて落ち着けと叱ると涙目にこちらを睨む。
「やだ!文句言うの!」
「外せと言うのか?必要と判断したから二人はトリスにあれをかけた。実際に口が軽い。秘密を晒す気か?」
「だ、だって、あんなに苦しめることない」
「それは話し合いの余地がある。だが、後日にしろ。今、あちらには事情を知らない奴らが多い。そんな中で話題に出すつもりか?」
軽率さを指摘すると顔色を変えてパクパクと口を喘がせるだけで二の句を継げず固まった。
「でもっ、だって、」
言葉が続かないがジェラルド伯達のところへ行こうとする。
行かせまいと寄りかかった木へ肩を押さえつけて縫い止める。
苦しくないようにとは思うが難しい。
「いい加減にしろ。うちの団の者も王都から来た魔導師長もいるんだ。知らせていないクレインの団員らもいる。もっと後先考えろ」
この辺りにも酔い醒ましにうろつく奴もいるかもしれないのだから声を押さえろと顔を寄せて静かに叱った。
「うー!ううー!」
言い負かされた悔しさにじたばたと泣きながら胸を叩いて膝を蹴る。
強化をかけないエヴなら平気だ。
女の力なぞ大したことはない。
「泣くな」
「うるさい、です。団長は、番のくせに、全然言うこと、聞かない」
忠告を聞き入れて泣きべそに小声で答える。
「聞いた方がいいか?」
首を横に振る。
「団長、間違ってない。分かってます」
頬の涙を指で拭うとそっぽを向いてしまった。
背を向けて木にしがみついて寄りかかる。
「こちらを向け」
「いや、馬鹿にしてる」
「何のことだ」
「どうせ馬鹿だもん」
拗ねて背を向けたまま泣くので分からない。
「投げたのは悪かった」
「別に。守護持ちは怪我しません」
早い即答にその事ではないと分かる。
「馬鹿にしたと怒るのが分からない。教えてくれ」
耳が下がって尻尾も丸まってしまった。
先程の威勢はない。
エヴの不利になると思えばああやって強硬な態度で挑めたが、そうでないならエヴの機嫌一つで不安になる。
「私は、皆が分かることが分かりません。だからお父様は言わなかったんです。言葉覚えても、色々勉強しても馬鹿ですもん」
悔しい、そう言うと首筋からぬぅっと黒猫が出てくる。
慰めにぐるぐる泣きながら頭をすりよせて、エヴが胸に抱き締めた。
木に寄りかかったままヒムドを抱いてじっとするので頭を撫でたら叩かれた。
子供扱いしないでと鋭く叱責されるが、どこかに行けとは言わない。
側にいるのは嫌ではないらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

処理中です...