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弟
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そうこうしているうちに討伐に出ていたラウル達が知らせを聞いて続々と戻ってきた。
ラウルの対応出来るものだったのは幸いだ。
それでも解術にかなり時間かかり、強固な精神汚染だとラウルが話す。
「思った以上に強力な魔法だったのか。ジェリー、よかったです。アディお兄ちゃんは安心しました」
「…離せぇ、うぐえ!」
青筋を立てるジェラルド伯を子供のように抱き締めて、抵抗するのに逃がしたくないらしく腕を巻いて首を絞めた。
「…そんなになのか?」
気がすめば肩の手当てを始めたベアードにぽつりとこぼした。
ベアードは変わった男だ。
どさくさに紛れて本当にアディお兄ちゃんと呼ばせてジェリー呼びの許可を取っていた。
ジェラルド伯限定で子供扱いするのが楽しいらしく、その根底はかなりの拗らせたブラコンだと分かり思わず遠い目をしてしまった。
「気持ちとしてジェリー、いえ、旦那様は私の可愛い弟です。お身体の弱かった大奥様に代わりに自分の母とお世話をしてたので愛着があります」
しつこく私の前で幼名を口に出すからジェラルド伯がげしげしと足を踏んで怒っている。
蹴られても嬉しそうだ。
奥方に対しての一途さもだが、オーガは意外と執着が強いのかもしれん。
いや、ベアードの趣味が小さくてか弱い生き物好きなのか?
何にしろ刺激したくないと目をそらした。
「本当の弟が生きていたら旦那様と同じ年齢です。旦那様のおかげで母と私は慰められました。きっと亡くなった弟も旦那様に感謝しています」
またジェラルド伯の赤ん坊の頃からお世話をしたいと笑っていた。
そう言うとジェラルド伯がそっぽを向く。
えらい歳の離れた乳兄弟と思ったらそういうことか。
愛情の一端が垣間見えて納得に思わず頭が揺れる。
「それよりエヴです」
静かに怒るロバート殿が話を遮った。
「ああ、娘を取り返すのは決定だ」
ジェラルド伯がぐったりしている。
肩には固定の当て布を巻いた痛めた肩に手を置いて項垂れていた。
それならどうするかとジェラルド伯と二人で話し合いを重ねる。
途中、意見を求められたが、私もはっきりとした動きが決まらない。
近衛の異常と呼べる異変、陛下とエヴ、魔導師長の安否。
王都から離れたここでは王宮の様子が分からない。
団の動向を含めて考える必要がある。
討伐から戻ったエドと話を重ねてクレインと王宮の問題について話し合う。
「エヴ嬢はどういう目的で拿捕されたのか分かっていないのですね」
目をつり上げたエドの質問に頷いた。
こいつもエヴを大事に思っている。
私の番で同じ兵卒だからというより、自分の娘と歳が近くて重なるものがある。
縄をかけられたと話した瞬間エヴの守護と豪腕を忘れて、あんな可憐なご令嬢にと鬼の形相だった。
「ああ、近衛の狙いが分からん。さすがにないと思うが、エヴの分身が陛下を襲ったというのも考えられる。まだ使いこなせていないようだから」
寝ぼけて影渡りした上に勝手気ままな治療。
エドはこちらの言葉を否定できずに眉をひそめて唇を噛み締めた。
「ここにはワイバーンがいる。騎手の理解もあるから戻るのは問題ない。陛下とエヴと魔導師長、三人の安否確認をしてくる。近衛には嫌われているが、昔ながらの使用人らは私を気に入っている。協力を求めやすい。精神汚染の耐性と人狼の鼻もあるから私が適任だろう」
それが早いと言うことでエドとその方向で話を重ねた。
カールへいつ飛べるか尋ねるとせめて1日は休ませてほしいと答えた。
早ければ夕方だそうだ。
「昨日から続けてですからね。さすがに疲れてます」
「そうか、こちらもまだ相談がある。すぐには動けないから構わない」
「行ったらまたここに戻りますよね。1日休ませれば、また往復出来ます」
「許可なくの使用を申し訳ない」
顔に緊張を漂わせたカールに謝った。
本来なら陛下か宰相の出す許可証が必要で、カールはこのまま誰も乗せずに王宮に戻らねばならない。
魔導師長を運んだ時は陛下からの呼び出しで使用の許可を手紙で頂いていたからよかった。
今はそれを無視して協力している。
「団長、昨日のも違反です。陛下からクレインへ送るように指示を受けていましたが、日程が違います。クレイン伯の様子も、近衛の態度も変でした。緊急時は騎手の独断が許されてるんです」
話せるだけの事情お願いしますと頭を下げて頼まれた。
詳しいことは濁したが、陛下が襲われたと仄めかした近衛、強化以外の異能を持つエヴが犯人と思われて拿捕されたこと。同じく身分不詳の扱いで拿捕された魔導師長、デオルトの言葉。
方針が決まり次第、協力を頼むと頭を下げるとカールも同じように頭を下げて、陛下のためにと答えた。
「では休ませてきます」
そう言ってマルクスを連れてこの場を離れた。
ラウルの対応出来るものだったのは幸いだ。
それでも解術にかなり時間かかり、強固な精神汚染だとラウルが話す。
「思った以上に強力な魔法だったのか。ジェリー、よかったです。アディお兄ちゃんは安心しました」
「…離せぇ、うぐえ!」
青筋を立てるジェラルド伯を子供のように抱き締めて、抵抗するのに逃がしたくないらしく腕を巻いて首を絞めた。
「…そんなになのか?」
気がすめば肩の手当てを始めたベアードにぽつりとこぼした。
ベアードは変わった男だ。
どさくさに紛れて本当にアディお兄ちゃんと呼ばせてジェリー呼びの許可を取っていた。
ジェラルド伯限定で子供扱いするのが楽しいらしく、その根底はかなりの拗らせたブラコンだと分かり思わず遠い目をしてしまった。
「気持ちとしてジェリー、いえ、旦那様は私の可愛い弟です。お身体の弱かった大奥様に代わりに自分の母とお世話をしてたので愛着があります」
しつこく私の前で幼名を口に出すからジェラルド伯がげしげしと足を踏んで怒っている。
蹴られても嬉しそうだ。
奥方に対しての一途さもだが、オーガは意外と執着が強いのかもしれん。
いや、ベアードの趣味が小さくてか弱い生き物好きなのか?
何にしろ刺激したくないと目をそらした。
「本当の弟が生きていたら旦那様と同じ年齢です。旦那様のおかげで母と私は慰められました。きっと亡くなった弟も旦那様に感謝しています」
またジェラルド伯の赤ん坊の頃からお世話をしたいと笑っていた。
そう言うとジェラルド伯がそっぽを向く。
えらい歳の離れた乳兄弟と思ったらそういうことか。
愛情の一端が垣間見えて納得に思わず頭が揺れる。
「それよりエヴです」
静かに怒るロバート殿が話を遮った。
「ああ、娘を取り返すのは決定だ」
ジェラルド伯がぐったりしている。
肩には固定の当て布を巻いた痛めた肩に手を置いて項垂れていた。
それならどうするかとジェラルド伯と二人で話し合いを重ねる。
途中、意見を求められたが、私もはっきりとした動きが決まらない。
近衛の異常と呼べる異変、陛下とエヴ、魔導師長の安否。
王都から離れたここでは王宮の様子が分からない。
団の動向を含めて考える必要がある。
討伐から戻ったエドと話を重ねてクレインと王宮の問題について話し合う。
「エヴ嬢はどういう目的で拿捕されたのか分かっていないのですね」
目をつり上げたエドの質問に頷いた。
こいつもエヴを大事に思っている。
私の番で同じ兵卒だからというより、自分の娘と歳が近くて重なるものがある。
縄をかけられたと話した瞬間エヴの守護と豪腕を忘れて、あんな可憐なご令嬢にと鬼の形相だった。
「ああ、近衛の狙いが分からん。さすがにないと思うが、エヴの分身が陛下を襲ったというのも考えられる。まだ使いこなせていないようだから」
寝ぼけて影渡りした上に勝手気ままな治療。
エドはこちらの言葉を否定できずに眉をひそめて唇を噛み締めた。
「ここにはワイバーンがいる。騎手の理解もあるから戻るのは問題ない。陛下とエヴと魔導師長、三人の安否確認をしてくる。近衛には嫌われているが、昔ながらの使用人らは私を気に入っている。協力を求めやすい。精神汚染の耐性と人狼の鼻もあるから私が適任だろう」
それが早いと言うことでエドとその方向で話を重ねた。
カールへいつ飛べるか尋ねるとせめて1日は休ませてほしいと答えた。
早ければ夕方だそうだ。
「昨日から続けてですからね。さすがに疲れてます」
「そうか、こちらもまだ相談がある。すぐには動けないから構わない」
「行ったらまたここに戻りますよね。1日休ませれば、また往復出来ます」
「許可なくの使用を申し訳ない」
顔に緊張を漂わせたカールに謝った。
本来なら陛下か宰相の出す許可証が必要で、カールはこのまま誰も乗せずに王宮に戻らねばならない。
魔導師長を運んだ時は陛下からの呼び出しで使用の許可を手紙で頂いていたからよかった。
今はそれを無視して協力している。
「団長、昨日のも違反です。陛下からクレインへ送るように指示を受けていましたが、日程が違います。クレイン伯の様子も、近衛の態度も変でした。緊急時は騎手の独断が許されてるんです」
話せるだけの事情お願いしますと頭を下げて頼まれた。
詳しいことは濁したが、陛下が襲われたと仄めかした近衛、強化以外の異能を持つエヴが犯人と思われて拿捕されたこと。同じく身分不詳の扱いで拿捕された魔導師長、デオルトの言葉。
方針が決まり次第、協力を頼むと頭を下げるとカールも同じように頭を下げて、陛下のためにと答えた。
「では休ませてきます」
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