人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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支度のためにヤン達は鎧を脱いだ。
特別な存在である彼らの鎧と剣、衣類にはどれもクレインの家紋とエヴの従者と分かる刺繍が縫ってある。
クレインの出自と分かるものは全て外す。
ジェラルド伯の命ではないと少しでも見せかけるためだ。
代わりに王宮を歩いて不自然にならない格好をすることにした。
ヤンとダリウスは下級兵士。
王宮を知るエド達を中心に率先して王宮で使う物と似た鎧を用意した。
エドやスミスが記憶を頼りに見た目を整えていく。
ここは様々な武具を取り揃えているおかげで、ヘルメットからブーツまでそっくりなものが手に入った。
これなら赤銅の肌も牙も隠せる。
「…ヤン一人なら執事で通るのだが」
それが一番、王城内をうろきやすいのにと不満になる。
近衛の巡回経路と王宮の見取り図を三人の頭に叩き込んだが、初見の奴らを連れていくのは無謀だったかもと自信がなくなる。
バラけて活動出来る気もしない。
固まって城内を動くにしても格好も体格もこの三人は凹凸が激しすぎて目立つ。
三人を眺めて悩んでいたら、ラウルが半泣きで睨んでいた。
「…なんで俺だけ」
「仕方ないだろ。王宮にお前の体つきをした執事も兵士もいない」
身長はエヴより拳ひとつ大きいだけ。
華奢さと顔立ち。
これではメイドか小姓だ。
小姓だとそれを連れる貴族が必要だからメイドと決まった。
「スミス、派手にするな。そのヘッドドレスは違うだろ」
「すいません、か、可愛くて、つい」
興奮するスミスにラウルが向こうずねを蹴って怒っていた。
服装が整えばトリスとモルガナがカツラをつける。
半分に切れた耳を隠すため不自然にならないようにサイドの髪を丁寧にカットをしている。
「勤めて間もない田舎娘風ですか!?それとも、」
「いや、人目を惹くのは避けたい。目立たなければそれでいい。印象が薄くなるようにとことん地味にしろ」
私の言葉に二人で顔を見合わせた。
「これをどうやって目立たなくすればいいのよ」
エルフの華やかに整った顔立ちにモルガナが顔をしかめた。
「趣味じゃないのにすればいいのよ」
トリスの助言にモルガナがなるほどと手を叩いた。
「そばかす描いて、こうやって肌荒れっぽく。この白粉と混ぜて、血色悪く、顎回りも形が悪く見えるように、」
「眉を剃って不揃いにして、左右の目のバランスを非対称にいじって、」
「待て、やり過ぎだ!」
放っておいたのは失敗だった。
地味どころか王宮で雇われないような顔立ちに変えられた。
「すげぇ、魔法みたいだ」
回りは呑気に化粧の上手さを誉めてこの馬鹿どもと言いたくなった。
ある程度の基準を私達で説明するが、感覚的な話に私達と違う独特な感覚を持つ二人は困っていた。
化粧の技術なんかない私達も具体的に眉をどうしろとか顔色をどうしろなんて助言は出来ない。
「あー、もう、普通って何ぃ?分かりませんよぉ」
疲れてモルガナが愚痴が出た。
「…リーグを呼んでこい」
程よい普通の顔ならあいつだ。
「え!可愛い!これが普通なんですか?」
「本当だぁ、可愛い。私をこういう子、大好きだわ」
「地味って言うか顔立ちを癖のない落ち着く感じにすればいいのね。控えめなほっこり感を出せばいいのよ」
リーグがはしゃぐ二人にベタベタ顔を触れてるから恥ずかしがるかと思ったのに。 
意外なほど落ち着いた態度で顔から、すんと表情を消して微動だにしない。
首をかしげていたら、側で見ていたエドが相好を崩して破顔した。
「おいおい、リーグ。平気なのか?こんな綺麗な女性に囲まれて顔色ひとつ変えないとは。団長じゃあるまいし」
エドが女慣れは事実のようだとからかうとリーグが手を振って否定する。
「妹がこんなですし。近所のお姉さま方もこうやってガキをからかうのが趣味っす。それよか、拷問官候補と聞いてるので、男の子のあれがひゅんです」
めっちゃ怖ぇっす、と真面目な顔で呟いた。
もう聞いたのか。
エドとスミスはきょとんとしてるのに。
二人がリーグを手本にラウルの顔を弄ってる間に怪我の状態を尋ねた。
「久しぶりに動かすせいか、最初ちょっと鈍かったっすね。本当に少しだし、今は何もないっす」
「ラウルもか?」
「はい、最初の違和感、だけ」
話の途中で、トリスに動くな、邪魔するなと叱られてしまった。
出来上がると顔立ちからちゃんとラウルだと分かるのに、透ける肌の白さは健康的な落ち着いた色、バランスよく整ったパーツの形は全て小ぶりに見えるようになった。
「…魔法か?」
「技術です」
「趣味と実益です」
二人の返答に、すごいなと返した。
ラウルから追い払われたスミスが離れた場所でしゃがみこんで拝んでる。
「か、可愛いぃ。完璧だ。最高だ。理想の、女の子だ」
前より好みらしい。
ラウルにまでは聞こえていない。
聞こえていたらまた蹴りを入れに来る。
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