人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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完結

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毎日、エヴの離宮に通って卵を見に行く。
「団長、いらっしゃいませ」
「ああ、卵は?」
「また大きくなりました」
寝台に座って卵を足の間に置いて撫でていた。
楽そうな緩いワンピース。
今日はくつろいでいたらしい。
いつもの鎧は着ていない。
私も寝台に座るとエヴがころころと卵を転がして側に寄るから手を伸ばして撫でる。
産まれてから三ヵ月。
トリスの話ではそろそろだと聞いている。
エヴの両手に収まる大きさから今は育って普通の赤ん坊の大きさ。
トリスは産んだ卵が大きくなることはないのにと驚いていた。
これもエヴのイメージが関わっているらしい。
「誰に似てるかなぁ」
二人で手を添えて撫でる。
「私だろう?」
「灰色の髪に灰色の目ですか?」
「エヴが格好いいと言っていた。私はエヴに似ていても嬉しいが」
「男の子かな?」
「さあな。どちらでも可愛いだろう」
「人狼か人族がいいなぁ。淫魔は大変だから」
「エヴが望むように産まれるだろう。夢魔の出産はイメージが重要らしいから」
腹でなく卵で産むほど。
「そうですね」
卵を転がして私の胸に寄りかかったのでまとめて抱き締めた。
「皆が卵を抱っこしたり撫でてくれます」
「そうか」
「幸せです」
「良かった」
エヴから顔を寄せて頬に口づけ。
好きにさせていると唇にも。
私も顔を寄せてエヴの唇を追った。
エヴが望む時にこうやって応えるなら怒らない。
子供のために書類上、私達は夫婦となった。
式は挙げていない。
まだ勤めが終えていないからと周知させることにエヴが躊躇したからだ。
本当は嫌がっていた。
妻となれば第二兵団団長としての地位の返上を周囲から求められるかもしれない。
ならば先に実績を作って地位を確立させることにした。
たった半年の間にクレインと比較にならない小規模だが、10箇所のスタンビートを六人で平定した。
クレインにもまめに通って暴れまわった。
この三ヵ月。エヴが卵を暖めている間はヤンを主軸にワイバーンで飛び回っている。
そしてエヴが離宮に住むことの反発は意外なほどすんなり収まった。
ロザリオ妃殿下ご本人が喜んだからだ。
時空のねじれに遮られた妖精国から戻られたロザリオ妃殿下の護衛のため。
数少ない女性兵士。
その上、私や魔導師長と戦える力量。
二度の襲撃があったのだ。
私の一個兵団に近い彼らが最も近い離宮に住むことに否はない。
残念ながらシルファヌスの大まかな本体はまだ陛下の体内にその力を残して居座っているのでロザリオ妃殿下は一時帰国されただけ。
完全に除去されるまで戻れないと仰ってすぐにまた妖精国へ戻られた。
「団長、好きぃ」
「今はそういう気分なんだろ?」
「んふ、ふふ」
淫魔の移り気は相変わらず。
すぐにこうやって好きと言うのに機嫌を損ねれば嫌いだと叫ぶ。
私ひとりの精で足らないらしくダリウスから、ヤンとラウルからも。
最近は近衛隊長の匂いがするからおそらくそこからも。
破瓜以外にも、どうやらシルファヌスを吸って器が広がったらしい。
何度も精を吸い付くされて倒れたので仕方ないとも思うが悋気が起きない訳ではない。
今はどうやって私ひとりで満足させるか試行錯誤してるところだ。
力が強まったが、調整は慣れたようでトリスとモルガナを相変わらず側に置いている。
二人の力も強まってそろそろ子作りのために休みがほしいと相談されたそうだ。
どんな子が産まれるかとエヴが喜んでいた。
「団長、もっとチュウします、んん、」
「ん、エヴが望むなら。でも、ここも少し触らせてくれ」
緩い胸元に指を入れて谷間をなぞった。
「え、やだ。気分じゃないです」
「くっ、キスだけか?」
「だめですか?」
「……惜しい。触りたい」
ふにふにの白い肌を指で押してねだると、うーんと唸った。
「抱っこします?」
手を広げて招くので素直に柔らかいそこに顔を埋めた。
「……気持ちいい」
柔肌にかぷっと歯を立てて舌をはせるとエヴはぶるっと身震いする。
あまり強い刺激は嫌がる。
快楽に溺れて意識が飛ぶから。
「だめです。今日はたっぷり魔力を注ぎたいんです」
「う、ぷ」
卵と私を胸に抱き締めてさわさわと髪を撫でて口づけをした。
「もうすぐ産まれるから。元気な子になるように。団長はお父さんなんだから手伝ってください」
「そうだな」
手に魔力を乗せて卵を撫でる。
二人の魔力で。
キスをしながら。
時折見つめ返すエヴの柔らかい眼差しが心地好かった。
「好きだ」
「私もです」
「我が儘を聞くからだろ?悋気を堪えるのがきつい」
ダリウス達のことをチクリと刺す。
「うふ、うふふ」
両手で口許を押さえて笑みを堪えて。
「だって団長、それでも私のことが大好きでしょう?嬉しいもん。それに団長ばかり食べたらまた倒れちゃいます」
それは嫌と耳元で囁く。
「団長、大事だもん」
「大事にされているのか?」
首をかしげると目を丸くしたエヴが見上げてくる。
「してないですか?」
「どうかな」
「淫魔なりにはしてますよ?」
「なりたてのくせに」
「ふふ、嫌ですか?嫌い?」
「嫌じゃない」
それでも好きだと言えば満足げに微笑み、ですよねと呟く。
「淫魔でもいいんでしょ?」
「構わん」
「信じます。あとは焼きもち焼かせないように気を付けます」
「そうしてくれ」
はぁい、と間延びした返事で応えると胸にまた寄りかかって卵を抱える。
耳に髪をかけて頭を撫でて口づけをした。
くすぐったいようで小さくくつくつと含み笑いが聞こえた。
「団長、幸せにしてくれてありがとうございます」
「エヴが頑張ったからだ」
何もしていない。
したのは襲っただけとからかうとまたエヴの肩が揺れる。
「私、強いし頑固だから団長くらい頑丈で強引なのがいいのかも」
「さあな」
「赤ちゃん、あなたのお父さんは強引で嘘つきだけど強くて優しいよ?」
「今からいらんことを吹き込むな」
「ふふ、でも好き」
「ああ、好きだ」
「違います。私がですよ」
そこは嫌われていると思っていたので、驚いているとエヴが私を胸にぐりぐりと額をこする。
赤ちゃんも淫魔の私もいっぱい愛してくださいとねだられて、これ以上どうやってと言いながらも、エヴが望むならいくらでもと返した。

 

~終~
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