白黒の猫~ずっと可愛い黒猫が欲しかったのに、気づけば茶とらの毛並みを撫でていた~

うめまつ

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ロニー




*********

普段、私兵団の医務室が俺の仕事場。

数人の部下の報告書を眺めて団員と部下の仕事の把握に勤める。

外科専門の俺は部下の指導。

こいつらの対応出来ない怪我だけ診る。

時々、うちの屋敷には殺処分予定の罪人が届くのでそいつらに傷をつけて薬や治療の研究。

人殺しや強姦魔、善良な人間に迷惑かけた奴らが最後は人類の知恵のために役立つんだ。

新しい医療の技術は人を救う。

きっと天国行けるよ、そう思って猿ぐつわをはめた治験体には感謝を込めて無慈悲に骨を折って腹にナイフを突き立てる。

昔から我が家はそうやって人体の研究を進めてきた。

コルトナー家の守護、白銀の死神。

白銀の髪と灰色の瞳、白い肌を持つ俺達一族の分かりやすい見た目。

畏怖を込めて。

家名のない俺達一族への通り名。

俺はその一族の息子。

死神ロニー。

これが俺の子供の頃の呼び名だった。

とりとめのない昔を思い出しながら、ペラペラと紙をめくって団員や現場で対応した一般市民の患者の怪我や治療に目を通す。

珍しい怪我や病気があれば俺や内科専門の医者がでばる。

特に目新しいものはないと薄っぺらい報告書を閉じた。

「ロニー?」

いきなり隣の荷物置き場兼仮眠室が静かに開いて声をかけられた。

気配に気づかなかった俺は微かにびくぅっと背中がはねた。

振り向くと扉の隙間から腰まである長い黒髪を垂らして真っ白な顔が覗いている。

吸い込まれそうなほど黒い髪と瞳が暗がりに溶けて、無駄に整った青白い顔が逆に浮いて不気味だ。

今のこいつの方が俺より死神に見えるんじゃないか?

「ダグ、いたのか?」

「えへ、不法侵入」

冗談に黙って笑みを返した。

こいつには鍵を持たせている。

出入りは自由。

領主であるカナン様のお相手でよく倒れるから、キツイ時は寝とけと言って持たせた。

「しばらく来ねぇかと思ったら」

「あの人、会わなきゃ平気だろ?」

扉の柱に寄りかかりながら大きく開いて、へらっと顔を緩ませて笑った。

真っ裸かと思ったらだるだるの予備服を着ていた。

ぶかぶかのシャツと下着の半ズボンだけだが。

シャツの裾から白い足が伸びていて眉をしかめた。

んだよ、その無防備極まりない格好。

この馬鹿。

「あぶねぇ。危機感持てよ」

部下のひとりがこいつに逆上せてる。

察しのいいこいつは早くから避けていた。

「……うーん、……キツかったから」

「ケツ?」

「うん、ケツ」

自分の言葉にくすくすと笑って余裕ぶっこいて、いつもよりは調子が良さそうだ。

「何かいるか?」

事後の始末してないなら手拭いやら桶やら頼まれる。

「んー、……話し相手?」

始末はすんでるわけか。

してやるつもりだったのが拍子抜けで少し物寂しくなる。

それを隠して雑に手招きした。

愚痴の相手は詰まらなくて嫌いだがこいつは俺の特別。

聞いてやる。

よたよたしながら木板の診察台に腰かけて、俺はそれを横目に喉も乾いてるだろうと机の水差しを渡す。

黙って受け取りそのまま傾けて、んぐんぐと飲む。

いつからここにいたのか、余程喉が乾いていたんだろう。

思ったより長く。

「ん、ごく、んく、」

勢いに口の端からこぼして首まで濡らしてる。

濡れた白い首から目を離せなかった。

いいなぁ、触りてぇ。

すべすべした肌は舐めたら気持ちいいんだろうなぁ。
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