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水差しをおろして手のひらで首筋をさっと拭いたらまた飲む。
こいつが気づかないうちに濡れた首筋や胡座をかいて目の前に見せびらかす白い足をねめつける。
昔に比べて男らしくなっても厳つい俺に比べてまだ華奢。
細くてもちゃんと男らしい体つきなのに、女のような白さのせいなのか妙に目が吸い込まれる。
丸出しの鎖骨や下着からちらちら覗く太ももの付け根。
噛みついてみたくなるような張りのある白さと女とは違う肉の形のよさ。
見えるそこにぞわっと総毛立ち、口の中にじゅわっと涎があふれる。
くそ、普通に男の体格と所作なのに体だけ色っぽくなりやがって。
「見たところ怪我や腫れはなさそうだなぁ」
ねめつけた言い訳に簡単な見診のふりでごまかした。
激しい悋気から折檻好きの領主様のお相手を10年以上こなしてる。
しょっちゅうヤりすぎて倒れる上に、折檻で尻を真っ赤に腫らして俺が手当てをする。
赤い尻にケツからだらだら精液こぼして失神した姿は、痛々しくて腹が立つのとエロくて興奮しちまう。
夜のオカズに何度もお世話になったわ。
ゴチっす。
完璧に空気を読むのに恋愛音痴のこいつは俺の下心を全く察した様子がなく、俺には警戒心がない。
他の奴等の前ではきっちり着込んで肌を出さないし、他人行儀な笑みしか向けない。
それでもこの完璧な笑みと物腰の柔らかさで距離があると誰も分かってないが。
皆、こいつの懐に入ったと勘違いする。
逆上せた奴等から馬鹿みたいに押し倒されてよく叫んでるから俺達は気を抜けない。
こいつに何かあれば鬼のサド伯爵が血の雨を降らすし、こいつも廃人確定だろうと読んでいる。
「ん?ああ、最近ね。カナン様が優しい、ん」
ごしごしと濡れた口許をぬぐった。
ずるずると尻をすって診察台の引っ付けた壁に寄りかかり、水差しは隣へ置く。
「なんだろうね?新しい人も来ないし」
あの伯爵がお前を手放すわけないじゃん。
毎度そう言ってるのに、こんな黒いだけの庶民なんてすぐ飽きるよと笑う。
カナン様の回りに色あざやかな美形が沢山来ていたが、それを無視して10年こいつに執着してる。
貴族のカナン様がこいつの何をそんなに気に入ったのか分からないが。
親父の話だとロリコンじゃないらしいけどな。
まあ、俺もカナン様のことを言えないくらいこの白と黒の二色で中身もシンプルなこいつにハマってるから質が悪い。
領主のお手付きに。
カナン様が飽きる望みがあるならましだが、その気配はない。
それでも友人面しながら特定の相手も作らずにこいつの払い下げを待ってる。
「で、何を話したいんだ?」
「あー、特にないけどね。なんとなく」
寂しいだけか。
自分の指をにぎにぎと摘まんで手遊び。
昔のままの幼さが懐かしくて目を細めた。
「ロニーは忙しい?時間いい?」
手遊びを見つめながら呟いて、空気だけ読む。
見なくても色々と察する勘の良さがあるのに、下心だけは鈍い。
「今日は目新しいものはなかった。治験も経過待ち」
今のところ暇はある。
「明日は?」
「明日は屋敷にこもる。何体か確認したいのがいるからこっちには来ない」
「……ふぅん」
膝を抱いて丸くなる。
俺の前でヘラヘラしない。
顔が正直になる。
この寂しそうな不満顔が内心は嬉しい。
「んだよ、ふて腐れて」
「んー、一人が慣れなくて。今日は一人だしぃ」
「……あぁ、あいつか」
こいつのお気に入りがカナン様に連れられて部隊長と遠出してる。
確か近隣領から賊の群れが逃げて来たから、あちらと共同戦線でその殲滅。
俺にはカナン様の機微が分からないが、ダグはカナン様が黙っていても分かるらしく、討伐行くのが楽しみにしてるみたいだって言ってた。
軍医として我が家から親父と他の数名がお供してる。
俺も行って良かったんだけど、念のために危機回避。
今回、規模がデカイってことで跡継ぎ予定の俺は居残り。
カナン様の腹心の団長も。
いくら他領へ向けて力の誇示が目的とは言え普通、領主が行かねぇ。
出陣するのは団長とカナン様が逆だろって。
内心で突っ込み入れたが、カナン様はかなり好戦的。
団長を本邸に残せるようになって出陣回数が増えた。
マジであり得ないくらい。
こいつのお気に入りが団に入ってから団のフットワークが一段と軽くなった。
何たって私兵団の中で一番強い。
マジで団長より。
頭脳派のカナン様と張るくらい戦術も練れる。
さすがもとは公爵家の筆頭騎士と何度も舌を巻いた。
あのカナン様まで態度を軟化した。
偶然生き延びたとしても、もとは国家転覆の反逆者だから処分するって言ってたのに保留だ。
いつもの鉄面皮を歪ませて、アリオンの処遇について団長の意見は有用だったと評価していた。
捨てたいけど拾い物すぎるって感じ。
そんで籠落したのがこいつ。
手淫だけで国家反逆罪の巻き添えで奴隷落ちした没落騎士アリオンのご主人様。
現場を生で見たけど最高だった。
見かけは庇護欲をそそられるほど色っぽいこいつ。
中身はシンプル。物欲や執着はないし、家族のことや違う意味で体を酷使する仕事を淡々と受け入れてあっさり生きている。
「暇なら飯に行くか?」
「行く」
いつものように誘えば簡単に頷く。
「早く着替えろ。帰るぞ」
「うん」
にぱっと伏せていた顔を上げて笑った。
その反応に思わず俺も口角を上げてしまう。
こいつは素直だ。
可愛げもある。
カナン様が何を思って荒っぽく扱うのか理解出来ない。
こんな寂しがり屋で甘ったれなのに。
可愛いじゃねぇか。
何度も腫れたケツの世話をしたことを思い出しながら、野外趣味の変態サド領主と心の中で囁いた。
覗き見のおこぼれをオカズにする俺はそれ以下か。
こいつが気づかないうちに濡れた首筋や胡座をかいて目の前に見せびらかす白い足をねめつける。
昔に比べて男らしくなっても厳つい俺に比べてまだ華奢。
細くてもちゃんと男らしい体つきなのに、女のような白さのせいなのか妙に目が吸い込まれる。
丸出しの鎖骨や下着からちらちら覗く太ももの付け根。
噛みついてみたくなるような張りのある白さと女とは違う肉の形のよさ。
見えるそこにぞわっと総毛立ち、口の中にじゅわっと涎があふれる。
くそ、普通に男の体格と所作なのに体だけ色っぽくなりやがって。
「見たところ怪我や腫れはなさそうだなぁ」
ねめつけた言い訳に簡単な見診のふりでごまかした。
激しい悋気から折檻好きの領主様のお相手を10年以上こなしてる。
しょっちゅうヤりすぎて倒れる上に、折檻で尻を真っ赤に腫らして俺が手当てをする。
赤い尻にケツからだらだら精液こぼして失神した姿は、痛々しくて腹が立つのとエロくて興奮しちまう。
夜のオカズに何度もお世話になったわ。
ゴチっす。
完璧に空気を読むのに恋愛音痴のこいつは俺の下心を全く察した様子がなく、俺には警戒心がない。
他の奴等の前ではきっちり着込んで肌を出さないし、他人行儀な笑みしか向けない。
それでもこの完璧な笑みと物腰の柔らかさで距離があると誰も分かってないが。
皆、こいつの懐に入ったと勘違いする。
逆上せた奴等から馬鹿みたいに押し倒されてよく叫んでるから俺達は気を抜けない。
こいつに何かあれば鬼のサド伯爵が血の雨を降らすし、こいつも廃人確定だろうと読んでいる。
「ん?ああ、最近ね。カナン様が優しい、ん」
ごしごしと濡れた口許をぬぐった。
ずるずると尻をすって診察台の引っ付けた壁に寄りかかり、水差しは隣へ置く。
「なんだろうね?新しい人も来ないし」
あの伯爵がお前を手放すわけないじゃん。
毎度そう言ってるのに、こんな黒いだけの庶民なんてすぐ飽きるよと笑う。
カナン様の回りに色あざやかな美形が沢山来ていたが、それを無視して10年こいつに執着してる。
貴族のカナン様がこいつの何をそんなに気に入ったのか分からないが。
親父の話だとロリコンじゃないらしいけどな。
まあ、俺もカナン様のことを言えないくらいこの白と黒の二色で中身もシンプルなこいつにハマってるから質が悪い。
領主のお手付きに。
カナン様が飽きる望みがあるならましだが、その気配はない。
それでも友人面しながら特定の相手も作らずにこいつの払い下げを待ってる。
「で、何を話したいんだ?」
「あー、特にないけどね。なんとなく」
寂しいだけか。
自分の指をにぎにぎと摘まんで手遊び。
昔のままの幼さが懐かしくて目を細めた。
「ロニーは忙しい?時間いい?」
手遊びを見つめながら呟いて、空気だけ読む。
見なくても色々と察する勘の良さがあるのに、下心だけは鈍い。
「今日は目新しいものはなかった。治験も経過待ち」
今のところ暇はある。
「明日は?」
「明日は屋敷にこもる。何体か確認したいのがいるからこっちには来ない」
「……ふぅん」
膝を抱いて丸くなる。
俺の前でヘラヘラしない。
顔が正直になる。
この寂しそうな不満顔が内心は嬉しい。
「んだよ、ふて腐れて」
「んー、一人が慣れなくて。今日は一人だしぃ」
「……あぁ、あいつか」
こいつのお気に入りがカナン様に連れられて部隊長と遠出してる。
確か近隣領から賊の群れが逃げて来たから、あちらと共同戦線でその殲滅。
俺にはカナン様の機微が分からないが、ダグはカナン様が黙っていても分かるらしく、討伐行くのが楽しみにしてるみたいだって言ってた。
軍医として我が家から親父と他の数名がお供してる。
俺も行って良かったんだけど、念のために危機回避。
今回、規模がデカイってことで跡継ぎ予定の俺は居残り。
カナン様の腹心の団長も。
いくら他領へ向けて力の誇示が目的とは言え普通、領主が行かねぇ。
出陣するのは団長とカナン様が逆だろって。
内心で突っ込み入れたが、カナン様はかなり好戦的。
団長を本邸に残せるようになって出陣回数が増えた。
マジであり得ないくらい。
こいつのお気に入りが団に入ってから団のフットワークが一段と軽くなった。
何たって私兵団の中で一番強い。
マジで団長より。
頭脳派のカナン様と張るくらい戦術も練れる。
さすがもとは公爵家の筆頭騎士と何度も舌を巻いた。
あのカナン様まで態度を軟化した。
偶然生き延びたとしても、もとは国家転覆の反逆者だから処分するって言ってたのに保留だ。
いつもの鉄面皮を歪ませて、アリオンの処遇について団長の意見は有用だったと評価していた。
捨てたいけど拾い物すぎるって感じ。
そんで籠落したのがこいつ。
手淫だけで国家反逆罪の巻き添えで奴隷落ちした没落騎士アリオンのご主人様。
現場を生で見たけど最高だった。
見かけは庇護欲をそそられるほど色っぽいこいつ。
中身はシンプル。物欲や執着はないし、家族のことや違う意味で体を酷使する仕事を淡々と受け入れてあっさり生きている。
「暇なら飯に行くか?」
「行く」
いつものように誘えば簡単に頷く。
「早く着替えろ。帰るぞ」
「うん」
にぱっと伏せていた顔を上げて笑った。
その反応に思わず俺も口角を上げてしまう。
こいつは素直だ。
可愛げもある。
カナン様が何を思って荒っぽく扱うのか理解出来ない。
こんな寂しがり屋で甘ったれなのに。
可愛いじゃねぇか。
何度も腫れたケツの世話をしたことを思い出しながら、野外趣味の変態サド領主と心の中で囁いた。
覗き見のおこぼれをオカズにする俺はそれ以下か。
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