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冬の間もそんな日々は変わんなかった。
相変わらずダグとアリオンは仲が良くて、カナン様も負けじとタグを甘やかす。
こいつを殺してぇ俺と、仕事で信用はしても機会があれば処分したいカナン様。
団長と親父、ベイル部隊長が上手いことアリオンをフォローして生かし続けた。
俺とベイル部隊長のサシ飲みも相変わらず。
酔い潰れると抱き枕にしたがるから酒量は気を付けてる。
俺は酔い潰れるとアリオンへの恨み節でやかましいそうだ。
そうやってお互いに気を付けながら今日もサシ飲み。
「今年のお供は聞いたか?人員が変わるぞ」
「なんでですか?」
「帰りに坊ちゃま達の従者を二人連れて帰る」
「へぇ、マジで領地に興味ないんですね」
カナン様のお子様。
三人いて上は双子、下に二歳離れた三男。
全員、皇太子と第二王子に重用され、華やかな王宮勤めを好んで領地に興味がない。
5歳の幼少期から王子方の側仕え兼友人。
幼いのに数ある名家の中から難しい試験を乗り越えて勝ち得た役職に大変誇らしいと思っていたけど、今となってはそう簡単な話でもなかった。
数年前から三人揃って領地には帰らないと言い張るので、随分前から奥様のマリアンナ様が三人の説得をカナン様に頼んでたらしいが無駄だった。
双子のお坊ちゃんが18歳になられてそろそろ誰か領地経営をと話が出てるのに、案の定腹心の使用人をこちらへ代理として置くことが決まった。
私兵団も本邸の使用人も全員不満に思っている。
三人のうちのお坊ちゃんならまだしも、使用人かと。
ダグに関して性欲魔神の色ボケだが、他に置いては自ら参加される賊の討伐、利益を上げた経営手腕、領民への善政、文句のつけどころがない。
武も智もある。
信用がないのは下半身だけだ。
なんだかんだで尊敬されている。
なのにご子息三人は王宮の勤めを優先されて一度も領地へ訪れたことがなかった。
特に今回の件で全く興味がないと分かり、聞いた俺達は心底失望した。
それだけでも不満なのに、まさか一度も訪れることもなく代理人を寄越すだけとは思わなかった。
「つまらない奴じゃなきゃいいですけど」
「……さあな」
不機嫌な声。
ベイル部隊長も不満に思ってる。
団長と親父も口にはしないが面白くないのは皆知っていた。
気にしてないのはダグとアリオン。
カナン様の采配に従うだけとダグが言えばアリオンも頷いていた。
しかも、ダグはカナン様が間違うはずがないと自信満々。
お前のカナン様への信頼がすげぇわと呆れた。
こっちはカナン様への信頼云々じゃなくてお坊ちゃん達に不満なんだっつーの。
「時期はいつも通りですか?」
「ああ、川の雪解け後に。馬車をひとつ増やす。今回、お前とトロンソ小隊長は決まってる」
いつも我が家からは分担で一人なのに、今回は俺もか。
「坊ちゃま達へ顔合わせですかね。お互い跡継ぎですし」
着いて行ってもあまり関わりがなく、まだ挨拶したことがなかった。
「おそらくそうだな」
「他は誰ですか?」
極力、武の要となる団長は残る。
領内の状況に応じてベイル部隊長も。
でも顔合わせ目的なら団長を連れて行くのか?
去年の夏から今にかけて、カナン様本人がでばって精力的に領内の掃除をしていた。
犯罪の温床はほぼ壊滅したし、害獣駆除も徹底的に。
近隣領まで俺達を派兵して援助していた。
「今回は俺が行く。あと本気かどうか分からんが、ダグを連れて行くらしい」
「は?なんで?どういう風の吹き回しですか?」
いつも置き去りなのに。
護衛として弱すぎるから。
「護衛兼従者にすると仰っていた。ずっと前からお考えだったらしい。アリオンが細かく仕付けて、伯爵家の恥にならない程度になったら同行させるそうだ」
「護衛?従者?どっちも厳しくないですか?」
「最近、ダグに負け越してるくせ偉そうに」
「負けてませんよ」
持久力がないから打撃を堪えれば俺の勝ち。
負けてはいないが、毎回急所に二、三発食らって悶絶させられる。
昨日は地面に押さえ込もうとしたダグの肘が眉間に入って気絶しかけた。
軽さを重視して動くようになってからこの調子。
フルアーマーの甲冑を着ていても関節部の隙間に剣を刺してくるから油断ならねぇ。
一発が鋭く重くなったし、とにかく狙う場所がえげつない。
俺のあとに組んだアリオン相手には躊躇なく金的かまして目潰し、続いて盾を横殴りにこめかみ。
回りは玉ひゅんで固まっていたのに、アリオンは全て防いでスピードが遅いと叱っていた。
ついでに跳び跳ねて逃げるダグをしばらく泳がせてたあと、あっという間に下敷きに潰してた。
捕まったら最後と思えと脅し付き。
いつもその流れでどう反撃するかを教えている。
もう、本当にえげつないやり方。
おかげであいつ、小型ナイフをいくつか鎧に仕込んで持ち歩くようになった。
「この半年でマナーや字の勉強もかなり進んでる。俺より出来るかも」
ベイル部隊長は団長直伝で仕込まれてカナン様に認められている。
俺はないけど王都で王宮の出入り経験もある。
「マジですか?」
「家に帰れば毎晩、遅くまで勉強してる」
「あいつ、何目指してるんですか?」
「さあ?」
ベイル部隊長も首をかしげた。
夜も深まり酒も進んだところでシモの話。
「下半身、どうですか?」
「……全然」
いつものもごもごした口とだらだらの深酒に察した。
「エセルリナで試したんでしょ?」
「だめだった」
「怒ったんじゃないですか?」
「いや、死んだ奴にまだ未練たらしく惚れてて勃たないと話したら可哀想だって号泣してた」
「あばたもえくぼ」
「言い方ひどいな」
「すいません」
金銭に厳しいエセルリナが意外と情が厚いことにも驚いたけど、エセルリナ的にベイル部隊長なら何でもいいんだろ。
惚れてるし。
「エセルリナはああ見えて純愛ものが好きだから。流行りの芝居なんかいつもチェックしてるし、字が読めないから恋愛ものの本は客に中身を聞いて喜んでる」
「へぇ、詳しい」
「付き合いが長いからなぁ。俺も字の勉強になるから読み聞かせには付き合ってやった。読めないくせに買うから。エセルリナは惚れた男に甘い。あの店に勤めてるのも昔の男のせいだよ。借金の肩代わり」
「よくある話ですね」
「そうだな。エセルリナの男も死んだけどな」
「……なんでですか?」
「病気だったらしい。治療費で借金しても金が足らなかったんだとよ。まあ、商売女の話だ。どこまで本当か分からん」
「ベイル部隊長は信じてるんでしょ?」
一瞬、眉をひそめ俺を見つめて頷いた。
「お前はどう思う?ホラ話かどうか」
「俺はどっちでもいいですよ。付き合いも浅いし、判断つきません」
「そうか」
黙って飲む様子を眺めて、ベイル部隊長はエセルリナを自分と重ねてたんだと考えた。
部隊長の人間模様に、なるほどねーと勝手に納得して部隊長のボトルに目を向けた。
思ったより減ってると気づいて視線を上げた。
「まだ飲みます?」
「ああ、もう少し」
舌が回ってないし、この量はまた二日酔いだな。
「はい、どうぞ」
「……なんの真似だ?」
両手を広げた俺を訝しげに睨み付けた。
「どうせまた抱き枕でしょう?早めにしてあげましょうか?」
ジョークのつもりだったけど、失敗した。
一気に目がつり上がって、ミシッと持っていたグラスから異音が響いた。
やべ、調子に乗った。
「ロニー、俺を舐めてんのか?」
「いえ、真面目です」
恐ろしくて、ふざけましたと言えない。
からかうだけのつもりだったけど、虎の尻尾踏んだ。
死ぬ。
ボコられる。
「……いい度胸だなぁ?」
「……拳骨なしでお願いします」
勘弁してほしい。
でも部隊長の張り手も痛い。
鼻血が出る。
「そうか。なら来い」
「……へ?」
「真面目なお前の善意を受け取ってやる。で、何してくれんの?」
怒りをほぐしたと思ったら、ニヤァと笑って見下してやがる。
張り手と拳骨よりまし。
てか、調子に乗った俺が馬鹿だし。
「何しましょうか?」
「任す」
ニヤニヤしてるのは変わらない。
グラスを煽りながら小馬鹿にした視線で俺を見てる。
「満足させなかったら殴るぞ」
「え、とですね」
何かしろと煽られて、テンパった俺はベイル部隊長が単純に謝らせたいだけだと気づかなかった。
「失礼しますっ」
「あ"ぁ"?」
立ち上がってベイル部隊長の頭を両手で掴んだ。
「ル、ルガンダ兄さんがよくダグにこうやってたんで、うちの弟にも」
ダグがお兄ちゃん返してと泣くと必ずやってた。
両手で耳の横から髪に指を埋めて、うなじや後頭部まで手櫛ですく。
ダグだけじゃなくて寝付きかけた弟にも。
チビの俺にも別れ際にいい子いい子と頭を撫でてこんな感じ。
ベイル部隊長は俺の仕草を茫然と見上げてる。
目も口も全開に開いて唖然としてる。
「や、やめろ!」
「うおっ!」
ベイル部隊長がいきなり背面に仰け反った。
ルガンダ兄さんを真似て、首に両手の指を絡ませてかけていたから俺も巻き添え。
引っ張られて押し倒しちまった。
「すいません!」
しかも両手の指を絡めてたから自分を支えられず、がっつりとのし掛かってやべぇ。
離れようとするのに髪は絡んでるし、俺が乗るからベイル部隊長の首に手が潰されて抜けねえし。
もう慌てた。
「く、ぅ、ちきしょ、こんなんで、くそぉ、」
「え?え?」
よく見たらボロクソに泣いてる。
だばだばってレベル。
「うーっ!うう!」
歯ぁ食いしばってもう号泣。
こっちは離れようってしてるのに肩を握られて抱きつかれた。
待って、ベイル部隊長。
情緒不安定すぎん?
相変わらずダグとアリオンは仲が良くて、カナン様も負けじとタグを甘やかす。
こいつを殺してぇ俺と、仕事で信用はしても機会があれば処分したいカナン様。
団長と親父、ベイル部隊長が上手いことアリオンをフォローして生かし続けた。
俺とベイル部隊長のサシ飲みも相変わらず。
酔い潰れると抱き枕にしたがるから酒量は気を付けてる。
俺は酔い潰れるとアリオンへの恨み節でやかましいそうだ。
そうやってお互いに気を付けながら今日もサシ飲み。
「今年のお供は聞いたか?人員が変わるぞ」
「なんでですか?」
「帰りに坊ちゃま達の従者を二人連れて帰る」
「へぇ、マジで領地に興味ないんですね」
カナン様のお子様。
三人いて上は双子、下に二歳離れた三男。
全員、皇太子と第二王子に重用され、華やかな王宮勤めを好んで領地に興味がない。
5歳の幼少期から王子方の側仕え兼友人。
幼いのに数ある名家の中から難しい試験を乗り越えて勝ち得た役職に大変誇らしいと思っていたけど、今となってはそう簡単な話でもなかった。
数年前から三人揃って領地には帰らないと言い張るので、随分前から奥様のマリアンナ様が三人の説得をカナン様に頼んでたらしいが無駄だった。
双子のお坊ちゃんが18歳になられてそろそろ誰か領地経営をと話が出てるのに、案の定腹心の使用人をこちらへ代理として置くことが決まった。
私兵団も本邸の使用人も全員不満に思っている。
三人のうちのお坊ちゃんならまだしも、使用人かと。
ダグに関して性欲魔神の色ボケだが、他に置いては自ら参加される賊の討伐、利益を上げた経営手腕、領民への善政、文句のつけどころがない。
武も智もある。
信用がないのは下半身だけだ。
なんだかんだで尊敬されている。
なのにご子息三人は王宮の勤めを優先されて一度も領地へ訪れたことがなかった。
特に今回の件で全く興味がないと分かり、聞いた俺達は心底失望した。
それだけでも不満なのに、まさか一度も訪れることもなく代理人を寄越すだけとは思わなかった。
「つまらない奴じゃなきゃいいですけど」
「……さあな」
不機嫌な声。
ベイル部隊長も不満に思ってる。
団長と親父も口にはしないが面白くないのは皆知っていた。
気にしてないのはダグとアリオン。
カナン様の采配に従うだけとダグが言えばアリオンも頷いていた。
しかも、ダグはカナン様が間違うはずがないと自信満々。
お前のカナン様への信頼がすげぇわと呆れた。
こっちはカナン様への信頼云々じゃなくてお坊ちゃん達に不満なんだっつーの。
「時期はいつも通りですか?」
「ああ、川の雪解け後に。馬車をひとつ増やす。今回、お前とトロンソ小隊長は決まってる」
いつも我が家からは分担で一人なのに、今回は俺もか。
「坊ちゃま達へ顔合わせですかね。お互い跡継ぎですし」
着いて行ってもあまり関わりがなく、まだ挨拶したことがなかった。
「おそらくそうだな」
「他は誰ですか?」
極力、武の要となる団長は残る。
領内の状況に応じてベイル部隊長も。
でも顔合わせ目的なら団長を連れて行くのか?
去年の夏から今にかけて、カナン様本人がでばって精力的に領内の掃除をしていた。
犯罪の温床はほぼ壊滅したし、害獣駆除も徹底的に。
近隣領まで俺達を派兵して援助していた。
「今回は俺が行く。あと本気かどうか分からんが、ダグを連れて行くらしい」
「は?なんで?どういう風の吹き回しですか?」
いつも置き去りなのに。
護衛として弱すぎるから。
「護衛兼従者にすると仰っていた。ずっと前からお考えだったらしい。アリオンが細かく仕付けて、伯爵家の恥にならない程度になったら同行させるそうだ」
「護衛?従者?どっちも厳しくないですか?」
「最近、ダグに負け越してるくせ偉そうに」
「負けてませんよ」
持久力がないから打撃を堪えれば俺の勝ち。
負けてはいないが、毎回急所に二、三発食らって悶絶させられる。
昨日は地面に押さえ込もうとしたダグの肘が眉間に入って気絶しかけた。
軽さを重視して動くようになってからこの調子。
フルアーマーの甲冑を着ていても関節部の隙間に剣を刺してくるから油断ならねぇ。
一発が鋭く重くなったし、とにかく狙う場所がえげつない。
俺のあとに組んだアリオン相手には躊躇なく金的かまして目潰し、続いて盾を横殴りにこめかみ。
回りは玉ひゅんで固まっていたのに、アリオンは全て防いでスピードが遅いと叱っていた。
ついでに跳び跳ねて逃げるダグをしばらく泳がせてたあと、あっという間に下敷きに潰してた。
捕まったら最後と思えと脅し付き。
いつもその流れでどう反撃するかを教えている。
もう、本当にえげつないやり方。
おかげであいつ、小型ナイフをいくつか鎧に仕込んで持ち歩くようになった。
「この半年でマナーや字の勉強もかなり進んでる。俺より出来るかも」
ベイル部隊長は団長直伝で仕込まれてカナン様に認められている。
俺はないけど王都で王宮の出入り経験もある。
「マジですか?」
「家に帰れば毎晩、遅くまで勉強してる」
「あいつ、何目指してるんですか?」
「さあ?」
ベイル部隊長も首をかしげた。
夜も深まり酒も進んだところでシモの話。
「下半身、どうですか?」
「……全然」
いつものもごもごした口とだらだらの深酒に察した。
「エセルリナで試したんでしょ?」
「だめだった」
「怒ったんじゃないですか?」
「いや、死んだ奴にまだ未練たらしく惚れてて勃たないと話したら可哀想だって号泣してた」
「あばたもえくぼ」
「言い方ひどいな」
「すいません」
金銭に厳しいエセルリナが意外と情が厚いことにも驚いたけど、エセルリナ的にベイル部隊長なら何でもいいんだろ。
惚れてるし。
「エセルリナはああ見えて純愛ものが好きだから。流行りの芝居なんかいつもチェックしてるし、字が読めないから恋愛ものの本は客に中身を聞いて喜んでる」
「へぇ、詳しい」
「付き合いが長いからなぁ。俺も字の勉強になるから読み聞かせには付き合ってやった。読めないくせに買うから。エセルリナは惚れた男に甘い。あの店に勤めてるのも昔の男のせいだよ。借金の肩代わり」
「よくある話ですね」
「そうだな。エセルリナの男も死んだけどな」
「……なんでですか?」
「病気だったらしい。治療費で借金しても金が足らなかったんだとよ。まあ、商売女の話だ。どこまで本当か分からん」
「ベイル部隊長は信じてるんでしょ?」
一瞬、眉をひそめ俺を見つめて頷いた。
「お前はどう思う?ホラ話かどうか」
「俺はどっちでもいいですよ。付き合いも浅いし、判断つきません」
「そうか」
黙って飲む様子を眺めて、ベイル部隊長はエセルリナを自分と重ねてたんだと考えた。
部隊長の人間模様に、なるほどねーと勝手に納得して部隊長のボトルに目を向けた。
思ったより減ってると気づいて視線を上げた。
「まだ飲みます?」
「ああ、もう少し」
舌が回ってないし、この量はまた二日酔いだな。
「はい、どうぞ」
「……なんの真似だ?」
両手を広げた俺を訝しげに睨み付けた。
「どうせまた抱き枕でしょう?早めにしてあげましょうか?」
ジョークのつもりだったけど、失敗した。
一気に目がつり上がって、ミシッと持っていたグラスから異音が響いた。
やべ、調子に乗った。
「ロニー、俺を舐めてんのか?」
「いえ、真面目です」
恐ろしくて、ふざけましたと言えない。
からかうだけのつもりだったけど、虎の尻尾踏んだ。
死ぬ。
ボコられる。
「……いい度胸だなぁ?」
「……拳骨なしでお願いします」
勘弁してほしい。
でも部隊長の張り手も痛い。
鼻血が出る。
「そうか。なら来い」
「……へ?」
「真面目なお前の善意を受け取ってやる。で、何してくれんの?」
怒りをほぐしたと思ったら、ニヤァと笑って見下してやがる。
張り手と拳骨よりまし。
てか、調子に乗った俺が馬鹿だし。
「何しましょうか?」
「任す」
ニヤニヤしてるのは変わらない。
グラスを煽りながら小馬鹿にした視線で俺を見てる。
「満足させなかったら殴るぞ」
「え、とですね」
何かしろと煽られて、テンパった俺はベイル部隊長が単純に謝らせたいだけだと気づかなかった。
「失礼しますっ」
「あ"ぁ"?」
立ち上がってベイル部隊長の頭を両手で掴んだ。
「ル、ルガンダ兄さんがよくダグにこうやってたんで、うちの弟にも」
ダグがお兄ちゃん返してと泣くと必ずやってた。
両手で耳の横から髪に指を埋めて、うなじや後頭部まで手櫛ですく。
ダグだけじゃなくて寝付きかけた弟にも。
チビの俺にも別れ際にいい子いい子と頭を撫でてこんな感じ。
ベイル部隊長は俺の仕草を茫然と見上げてる。
目も口も全開に開いて唖然としてる。
「や、やめろ!」
「うおっ!」
ベイル部隊長がいきなり背面に仰け反った。
ルガンダ兄さんを真似て、首に両手の指を絡ませてかけていたから俺も巻き添え。
引っ張られて押し倒しちまった。
「すいません!」
しかも両手の指を絡めてたから自分を支えられず、がっつりとのし掛かってやべぇ。
離れようとするのに髪は絡んでるし、俺が乗るからベイル部隊長の首に手が潰されて抜けねえし。
もう慌てた。
「く、ぅ、ちきしょ、こんなんで、くそぉ、」
「え?え?」
よく見たらボロクソに泣いてる。
だばだばってレベル。
「うーっ!うう!」
歯ぁ食いしばってもう号泣。
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