白黒の猫~ずっと可愛い黒猫が欲しかったのに、気づけば茶とらの毛並みを撫でていた~

うめまつ

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ひとしきり泣いて俺の肩はびしょ濡れ。

静かになったから様子を伺いつつ閉じていた口を開いた。

「いい加減、重くないですか?どきますよ」

そう言うのに離さない。

「……もう少し」

「はぁ?」

「ルゥの代わりだ。頼む」

「……はい」

上官命令は絶対。

……嘘。

単純に同情。

あんだけ泣けば分かるわ。

ルガンダ兄さんとの思い入れのあるやり取りだって。

俺が変なスイッチ入れちまったせいだ。

死んでから10年もたつのに、こんなに好きなのかと感心するのと、悪いことしたなという罪悪感で複雑。

「今だけルガンダ兄さんの代わりしましょうか?何か、したかったことあればしますけど」

「……いい。お前は違う」

「今さらでしょう?何回俺をルガンダ兄さんの代わりにしたんですか?今もだし、……ベイル部隊長?」

反論すると思ったのに黙りこんだ。

「もしもし?聞いてます?」

「……もう充分だ」

「本当に?」

「……ああ、これでいい」

「はぁ、また嘘ついてる。……いい加減信用してください」

またもごもごしてる。

今のはかなり分かりやすかった。

「何でもしますよ。泣かせた詫びに」

「いらん」

泣いたことを指摘したせいで横にそっぽを向いていじけてる。

顔をそらした拍子にボロッと涙の筋が鼻筋を伝った。

「お前は違うからいい」

「そうですね。色も似てないし。……ルガンダ兄さんならこういう感じでしょうか?」

「お、い、ロニー!」

やわやわと下敷きの手で首筋を揉んだ。

ついでにおでこを寄せてこめかみに口を沈める。

「偽もんですけど。出来る限り真似てみますよ。違ったら教えてください」

「ロニー!やめろ!余計なことをするなっ」

「今日くらいですよ?代わりが手に入るのは。本当にいいんですか?」

「いいって、言ってる」

「またどもってます。嘘つき」

「はあ?」

お互いの譲らなさに、お互いが呆れて同時に大きなため息。

「何だってそう代わりをしたがる?」

「何でしょうね、使命感?」

「馬鹿か?」

「失礼ですね、人の善意を」

「馬鹿じゃなきゃなんだ?」

「お人好し?」

「アホ」

「ベイル部隊長も相当ですよ。死んだ相手に10年も操立てて童貞処女を貫いて、」

「舐めてんのか?」

「イエ、滅相モアリマセン」

射殺しそうな視線に固まった。

「だいたいお前、代わりで良いわけ?」

「別に、俺もルガンダ兄さん好きだし、あんま、気にならないかなぁ。むしろあんな人の代わりを俺じゃなぁ、頼りないですよね。格落ちの偽もんですよ。逆に申し訳ないって思います」

正直にそう答えたら、ベイル部隊長の呆れ顔が大袈裟になる。

「馬鹿か」

「馬鹿ですかねぇ?」

「馬鹿だよ」

にぃ、とベイル部隊長の頬が緩む。

戸惑いや怒りは収まったらしい。

なら続きをするかと顎のラインとうなじを捏ねながら額にキスをした。

「うおおい!」

「はい?」

「だからやめろって!」

「なんでですか?」

「アホかよ!」

「まぁまぁ、覚えてるだけ真似してみます。代わりにどうぞ」

「こ、のアホ!」

そう言うけどさ。

だって、手が肩握ったままじゃん。

どけとも言わないし、頭突いたり技もかけて来ない。

正直に言わないならこっちも勝手にしますよ。

「目ぇつぶって兄さんを思い出したらどうですか?」

「……嫌だ」

「どもった」

「くそ、」

「いいのに、別に。強情ですね」

「お前が、緩すぎる」

また泣いてらぁ。

「若さですかね?柔軟なもので。それより目ぇつぶってください。しゃべるのも止めましょう。似てないし」

「ルゥの、代わりはいねぇよ」

「ですねぇ」

それは同感。

似てない声を押し殺して答えた。

まぶたに唇を当てて目を閉じさせたら、ダグを泣き止ませる時の仕草を思い出して真似てみた。

目ぇつぶったら大人しく俺の手に任せてくれた。

あとは流れに任せてただ優しく触れ続ける。

それだけで相変わらず泣くし、背中の服を掴んだ手の力は強い。

女より大きな手。

ダグよりもデカイ。

俺は別に逃げる気はないけど、不安ならしっかり掴んでおけよ、もう逃がすなよとよぎった。

俺は掴むところも見つけられずに逃したから。

黒い瞳と白くなだらかな背中を思い出して寂しくなった。

冷徹な大魔王と強力な門番が側にいる。

以前のような二人で過ごすようなやり取りはなくなった。

遊びに行くのも約束した外食もなし。

振り向きもされずに、あいつを逃がしたとばかり思う。

マジでカナン様が手放すのを待ってたのに。

絶対その時は来ると思ったのに俺の7年は無駄だったか。

でも、まだあいつがいいって心の底は燻ってどうするか悩んでる。

あの継ぎはぎみたいに隙間に入る方法なんか思い付かないのに。

自分の寂しさを埋めたくてベイル部隊長の額やこめかみにキスを繰り返して茶色い柔らかな髪を撫でる。

傷ついたベイル部隊長に優しくするとなんでか、俺のささくれが癒された。

死んだルガンダ兄さんを想うベイル部隊長。

あんたと俺は同類と思っていいかな。

「……ルゥ」

「んー?」
 
ダグとルガンダ兄さんは間延びした返事をよくしたから真似た。
 
「……はは、似てねぇ」

「すいません」

ルガンダ兄さんが死んだのは17才だったし、華奢な体で綺麗な柔らかい声だった。

22才の俺はデカイ体格通り低くて、いつも大声で怒鳴るせいで少ししゃがれてる。

肺活量もあるから声の張りがめっちゃあるし。

「興醒めですよね、すいません。続けます?」

「もういい」

すんなりと答えた。

顔も満足そう。

「よかったですね」

「ああ、悪いな」

「いいえ、別に、ん、ん?!」

「ん、ふ、」

だから情緒不安定ですか?

唐突なキスに俺はどうしたらいいの?

「ん、はぁ、あ」

「れ、あむ、ん、ロ、ニー、」

ん、ん、と二人でいつまでも。

息苦しさとキスの上手さにぼーっとしてたら、いつの間にか引っくり返されて俺が下敷き。

「べ、ベイル部隊長?」

「勃った。付き合え」

「へ?!」

俺の太ももに股がってエロい顔で、にやぁっと笑っていた。

「ちょ、ちょ、俺、ケツは無理ですよ?未使用ですからね?」

「俺もだ。今日は使わない」

「今日は?!」

「お前も気が向けばヤるだろう」

「うあっ、くぅ、ちょ!」

パンツ越しに揉まれて慌てた。

おっきしてる!

「えー?!何で俺勃ってんの?!」

「さっきから固かったぞ」

キスの間、腹に擦り付けてたと言われて頭を抱えた。

無意識!

「お前ばっか気持ちよくなるな。俺のも頼む」

「うう、はいぃ」

お互いの竿を引っ付けてグリグリ。

これ初めてだけど意外と気持ちいいぃ。

「れ、んちゅ、」

「うわ、エロ」

「ああん?」

ベイル部隊長が手を舐めて涎つけてる。

「意外とセクシー系なんですね」

「訳の分からんことを」

二人とも股間の刺激に息切れしながらも相変わらずな会話。

「滑りが足らんからだ、ん、ぺろ、お前も足せ」

「あ、はい、うわお、気持ちいいぃ」

たっぷりの涎でぐちゃぐちゃエロい。

喘がされながら手を濡らして俺も参戦。

俺ばっかされるのも不満だ。

負けたくねぇ。

さっきまで俺の下で泣いてたくせ。

「く、は、」

「ふ、あう、」

二人であうあう言いながら手を必死で動かした。

お互い負けず嫌いだからたまに睨み合ったり喘がせてニヤついたり。

でもやっぱり経験。

未使用ちんこはあっという間。

「あ、あうっ、くっ」

ガクガク震えて俺の上に前のめり。

勝った!

達成感で一杯!

「……俺だけじゃ、悪いなぁ」

この負けず嫌い!

「ううっ、う!」

俺の胸に倒れて勝ち誇った顔を上目遣いにねめつけて強気に笑った。

竿にまとわりついた精液でぬるんぬるんのぐちゃぐちゃ。

うわぁ。イクわ、これ。

「ふっ!う!」

「ほーら、イケよ?ロニー?」

ただ上下にするだけの雑な手淫なのに今は強い刺激が魅力的。

あのベイル部隊長が他人の竿いじってるだけであり得ねぇのに、それが俺のだからね。

ニヤッと笑いながら俺をもてあそぶなってば。

泣き腫らしたせいで目元が赤くて音と視覚の暴力だな、これ。

てか、28才の童貞処女が何エロさ炸裂させてんの?

何なのこの人?

死んだルガンダ兄さんに操を立てて10年の未亡人枠じゃねぇの、あんた。

唐突な方向転換に理解が追い付かないし、ちんこは気持ちいいし。





あー、もうイったわー。

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