16 / 120
16
しおりを挟む
泣き止んだけどルルドラ王子が私の手を握ったまま。
お部屋までお供してあげた。
「おやすみなさいませ」
「おやすみなさい、ライン義姉様、兄上」
「おやすみ、ルルドラ」
扉を閉めたけど寂しそうだった。
メイドさんが側にいるから大丈夫だと分かってるけど気になっちゃう。
チラチラと後ろの扉に目を向けてる。
「……年下好きとは思わなかった。……ふぅ、」
「え?」
見上げたら隣でリカルド王子がしょんぼりしてた。
なんで?
「……リカルド王子?」
「何?」
目が合うとにっと笑う。
いつも通り。
「いえ、何も」
「そうか」
部屋の前でおやすみなさいとご挨拶をすると呼び止められた。
「ラインは私の妻だと分かってるよな?」
「はい」
書類上の奥様。
内情は雇い主とメイド。
先生と生徒。
それだけ。
「よし、分かってるならいい。あとで来るから待ってろ」
「え?」
それだけ言ったらさっさと私の部屋の扉を閉めちゃった。
扉越しに鼻唄と隣の部屋の開閉音。
……え?
あとで来るって何が?
首を捻ってたらお世話に来てるメイドさん達が微笑んだ。
「仲がよろしいのですね」
「……はあ」
豪華なお部屋。
湯あみも出来る。
仕切りがあるだけの隣室のスペースにバスタブ。
拭くだけでいいのに。
「一人で大丈夫です」
実家でもリカルド王子のお屋敷でも一人でしてたから恥ずかしいんだけど。
なのに、だめですと三人がかりで窘められ縮こまって湯あみ。
三人とも優しかったのに腕の火傷に顔色が変わった。
「……こちらは?」
「……調理場でちょっと。……鍋をかき混ぜた時の」
「鍋を?奥様がなぜ調理場などに?」
「貴族の女性に傷など許されませんっ、どういう、」
「あ!よく見れば指にも沢山お怪我されてる!」
「まあ!なんてこと!」
腕と指の傷に三人とも真っ青。
三人が私の体を見せろと怒った。
膝っ小僧が少し黒いのもバレた。
お尻や腰にある青アザも。
床磨きに這いつくばるし、忙しい調理場で慌てるとよくテーブルの角にぶつかるから。
「女性に怪我をさせるなんて!陛下にお知らせします!」
「え、ええっ?」
部屋に陛下がやってくるしリカルド王子も。
「……リカルドの仕業なのか?身体の怪我は」
「ち、違います!調理場が担当なので、私がおっちょこちょいだから、あっちこっちにぶつかるだけです」
「……指の怪我だけと思ったらお前は。……はぁ」
「メイドをさせてたんじゃなかったのか?何だって調理場をやらせてた?」
「王妃ですよ。調理場の下働きなら確実に隠せますから。狙うのは分かってましたし。まさか屋敷の人間全てに毒を盛るとは思いませんでしたが」
「ああ、そういうことか。納得はした。しかし数が多いなぁ」
呆れる二人は寝間着の袖を捲って腕の斑についた火傷痕を見てる。
「……ふむ、怪我をしたものは仕方がない。明日、御殿医に薬を届けさせるから、あとは夫婦で話し合え。先程のメイド達には上手いこと言っておこう」
「よろしくお願いします。女にしくじったバカ王子なら覚悟してますけど、暴力夫の名までつくのはごめんです」
「どちらも親としても御免被る。同じ男として暴力夫は最も最低かな」
すぐに陛下は部屋から出ていったけど目の前にリカルド王子が残ってる。
「……申し訳ありません」
しょぼっと項垂れて謝ったらリカルド王子は頭を撫でてる。
何だかんだで湯あみはしたから髪が濡れてる。
「御手が濡れてしまいます」
「そうだな」
リカルド王子の髪もびっしょり。
ポタポタと滴が垂れてる。
湯あみもそこそこに駆けつけた。
多分、途中だったんだと思う。
陛下もびしょ濡れだった。
二人とも濡れたままガウンだけ羽織って駆けつけたから私達が叫んだもん。
前を閉じてくださいって。
でも心配して駆けつけてくれた。
びしょ濡れのガウン姿で。
このままだと風邪を引かせてしまう。
そう思って持っていたタオルをリカルド王子に向けた。
「お拭きいたします」
眉をへにゃっと下げて見上げると私を見下ろしてにぃっと嬉しそうにしてる。
「貸してみろ」
「う、ぷ!」
パッと取り上げて対面に立ったまま私の頭に被せてわしわし。
「あの、私がします」
使用人なんだけど?
「あとで頼む。お前を先にする」
「あ、」
ぐいっと頭を引き寄せるから胸に寄りかかった。
うわお。
近い。
緊張する。
じたばた暴れてもがしっと頭を掴むし、なんとか背中を向けたのに肩を無理やり引っ張られる。
「こっちを向け」
嫌。
怖い。
頭をブンブン横に振った。
「……ふーん。……頭を拭いてもらいたいのに」
「あ、はい。座ってくださいませ」
新しいタオルをテーブルから取って振り向いたらこいこいと手招き。
座ってるから後ろに立とうとしたのに前からだって。
言われたら仕方ないと思って前に垂らした頭をごしごし。
ぎゅ、ぎゅって髪を丁寧に絞る。
「わっ」
いきなり腰掴まれた!
「は、離し、っ」
「この辺にもアザが出来てると聞いたが何をやった?」
「ぶ、ぶつけただけ、」
うあああっ、そこは腰じゃないいい。
お尻ぃ。
「妙なところにばかりだから余計、誤解される。気を付けろ」
お腹に顔を埋めながら抱き締めてむにむに、むにむに。
やーめーてー!
「せっかく何もなく無事だったのに怪我ばかり増やすな。毎日、頑張っていたのは分かるが、こんなに火傷とアザまで作ってたのか。させなければよかった」
「スイ、マセ、ン」
心配されると怒りづらい。
硬直して片言で謝った。
「膝もか」
「……床磨きでよつんばになりますから」
硬い大理石とか。
床磨きは好き。
黙々と出来るから。
ピカピカで鏡みたいになるのも楽しい。
「あわわ、」
また引っ張られた!
「や、やだ」
今度はリカルド王子の膝に座らされて慌ててた。
なんでここなの?!
お部屋までお供してあげた。
「おやすみなさいませ」
「おやすみなさい、ライン義姉様、兄上」
「おやすみ、ルルドラ」
扉を閉めたけど寂しそうだった。
メイドさんが側にいるから大丈夫だと分かってるけど気になっちゃう。
チラチラと後ろの扉に目を向けてる。
「……年下好きとは思わなかった。……ふぅ、」
「え?」
見上げたら隣でリカルド王子がしょんぼりしてた。
なんで?
「……リカルド王子?」
「何?」
目が合うとにっと笑う。
いつも通り。
「いえ、何も」
「そうか」
部屋の前でおやすみなさいとご挨拶をすると呼び止められた。
「ラインは私の妻だと分かってるよな?」
「はい」
書類上の奥様。
内情は雇い主とメイド。
先生と生徒。
それだけ。
「よし、分かってるならいい。あとで来るから待ってろ」
「え?」
それだけ言ったらさっさと私の部屋の扉を閉めちゃった。
扉越しに鼻唄と隣の部屋の開閉音。
……え?
あとで来るって何が?
首を捻ってたらお世話に来てるメイドさん達が微笑んだ。
「仲がよろしいのですね」
「……はあ」
豪華なお部屋。
湯あみも出来る。
仕切りがあるだけの隣室のスペースにバスタブ。
拭くだけでいいのに。
「一人で大丈夫です」
実家でもリカルド王子のお屋敷でも一人でしてたから恥ずかしいんだけど。
なのに、だめですと三人がかりで窘められ縮こまって湯あみ。
三人とも優しかったのに腕の火傷に顔色が変わった。
「……こちらは?」
「……調理場でちょっと。……鍋をかき混ぜた時の」
「鍋を?奥様がなぜ調理場などに?」
「貴族の女性に傷など許されませんっ、どういう、」
「あ!よく見れば指にも沢山お怪我されてる!」
「まあ!なんてこと!」
腕と指の傷に三人とも真っ青。
三人が私の体を見せろと怒った。
膝っ小僧が少し黒いのもバレた。
お尻や腰にある青アザも。
床磨きに這いつくばるし、忙しい調理場で慌てるとよくテーブルの角にぶつかるから。
「女性に怪我をさせるなんて!陛下にお知らせします!」
「え、ええっ?」
部屋に陛下がやってくるしリカルド王子も。
「……リカルドの仕業なのか?身体の怪我は」
「ち、違います!調理場が担当なので、私がおっちょこちょいだから、あっちこっちにぶつかるだけです」
「……指の怪我だけと思ったらお前は。……はぁ」
「メイドをさせてたんじゃなかったのか?何だって調理場をやらせてた?」
「王妃ですよ。調理場の下働きなら確実に隠せますから。狙うのは分かってましたし。まさか屋敷の人間全てに毒を盛るとは思いませんでしたが」
「ああ、そういうことか。納得はした。しかし数が多いなぁ」
呆れる二人は寝間着の袖を捲って腕の斑についた火傷痕を見てる。
「……ふむ、怪我をしたものは仕方がない。明日、御殿医に薬を届けさせるから、あとは夫婦で話し合え。先程のメイド達には上手いこと言っておこう」
「よろしくお願いします。女にしくじったバカ王子なら覚悟してますけど、暴力夫の名までつくのはごめんです」
「どちらも親としても御免被る。同じ男として暴力夫は最も最低かな」
すぐに陛下は部屋から出ていったけど目の前にリカルド王子が残ってる。
「……申し訳ありません」
しょぼっと項垂れて謝ったらリカルド王子は頭を撫でてる。
何だかんだで湯あみはしたから髪が濡れてる。
「御手が濡れてしまいます」
「そうだな」
リカルド王子の髪もびっしょり。
ポタポタと滴が垂れてる。
湯あみもそこそこに駆けつけた。
多分、途中だったんだと思う。
陛下もびしょ濡れだった。
二人とも濡れたままガウンだけ羽織って駆けつけたから私達が叫んだもん。
前を閉じてくださいって。
でも心配して駆けつけてくれた。
びしょ濡れのガウン姿で。
このままだと風邪を引かせてしまう。
そう思って持っていたタオルをリカルド王子に向けた。
「お拭きいたします」
眉をへにゃっと下げて見上げると私を見下ろしてにぃっと嬉しそうにしてる。
「貸してみろ」
「う、ぷ!」
パッと取り上げて対面に立ったまま私の頭に被せてわしわし。
「あの、私がします」
使用人なんだけど?
「あとで頼む。お前を先にする」
「あ、」
ぐいっと頭を引き寄せるから胸に寄りかかった。
うわお。
近い。
緊張する。
じたばた暴れてもがしっと頭を掴むし、なんとか背中を向けたのに肩を無理やり引っ張られる。
「こっちを向け」
嫌。
怖い。
頭をブンブン横に振った。
「……ふーん。……頭を拭いてもらいたいのに」
「あ、はい。座ってくださいませ」
新しいタオルをテーブルから取って振り向いたらこいこいと手招き。
座ってるから後ろに立とうとしたのに前からだって。
言われたら仕方ないと思って前に垂らした頭をごしごし。
ぎゅ、ぎゅって髪を丁寧に絞る。
「わっ」
いきなり腰掴まれた!
「は、離し、っ」
「この辺にもアザが出来てると聞いたが何をやった?」
「ぶ、ぶつけただけ、」
うあああっ、そこは腰じゃないいい。
お尻ぃ。
「妙なところにばかりだから余計、誤解される。気を付けろ」
お腹に顔を埋めながら抱き締めてむにむに、むにむに。
やーめーてー!
「せっかく何もなく無事だったのに怪我ばかり増やすな。毎日、頑張っていたのは分かるが、こんなに火傷とアザまで作ってたのか。させなければよかった」
「スイ、マセ、ン」
心配されると怒りづらい。
硬直して片言で謝った。
「膝もか」
「……床磨きでよつんばになりますから」
硬い大理石とか。
床磨きは好き。
黙々と出来るから。
ピカピカで鏡みたいになるのも楽しい。
「あわわ、」
また引っ張られた!
「や、やだ」
今度はリカルド王子の膝に座らされて慌ててた。
なんでここなの?!
15
あなたにおすすめの小説
公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした
佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。
その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。
長女ソフィア。
美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。
そして──もう一人。
妹、レーネ・アルヴィス。
社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。
姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。
だが彼女は知っている。
貴族社会では、
誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。
王立学園に入学したレーネは、
礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。
やがて──
軽んじていた者たちは気づく。
「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。
これは、
静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!
パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
手放したのは、貴方の方です
空月そらら
恋愛
侯爵令嬢アリアナは、第一王子に尽くすも「地味で華がない」と一方的に婚約破棄される。
侮辱と共に隣国の"冷徹公爵"ライオネルへの嫁入りを嘲笑されるが、その公爵本人から才能を見込まれ、本当に縁談が舞い込む。
隣国で、それまで隠してきた類稀なる才能を開花させ、ライオネルからの敬意と不器用な愛を受け、輝き始めるアリアナ。
一方、彼女という宝を手放したことに気づかず、国を傾かせ始めた元婚約者の王子。
彼がその重大な過ちに気づき後悔した時には、もう遅かった。
手放したのは、貴方の方です――アリアナは過去を振り切り、隣国で確かな幸せを掴んでいた。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる