婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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「……怖いのか?」

怖いよ!

無言で固まってたらリカルド王子もそのまま固まってる。

目がうるうるしてきた。

「……ぐすっ、……ズズッ」

「……」

頭をふわふわ撫でてる。

私の髪をまとめて肩に流したら長い腕に囲われた。

「……泣くな」

「うう、……はい」

頭の天辺に顎が乗ってる。

腕や肩を触る手つきが優しいけどなんで触るのか分からない。

ポロポロ涙がこぼれる。

手で擦ってたら顎を持ち上げられた。

「擦るとまた腫れる」

前ほどじゃないけど昨日いっぱい泣いたから今朝も腫れてた。

メイド長がせっせと冷やしたり何度も目薬さしてくれたりとこまめにお世話してくれたからどうにかなった。

手をおろして触らないように。
 
メイドさん達の手間を増やしちゃうから。

涙が睫毛に絡んで目にチクチクするから開けられない。

「……そのまま目を閉じてろ」

うわお、顔までペタペタ触ってるぅ。

頬っぺた摘ままないでよ。

「……肉が薄い」

「薄い?うすい?」

何が?

えらいがっかり気味だし。

思わず目が開けた。

あれ?本当にがっかりしてる?

「食べてるのか?」

「食べてますよ?」

「これじゃぁ、食べさせてないみたいだ。屋敷で使用人達に不自由させてないつもりなのだが。お前も回りと仲良くしてると聞いてた。ちゃんと一人前食べてるのか?」

厚みのない頬っぺたを引っ張りながらしょんぼり。

言われて私もしょんぼり。

一人前は食べてない。

そんなに入らないから。

半人前よりちょっと多いくらい。

少食です。

前より活発だからお腹が空くし食べてるけど、いきなり胃袋は大きくならないもん。

「背が伸びんぞ」

そう説明したらリカルド王子の一言。

「それは困ります」

もう少し伸びたい。

姉妹の中で一番のチビは卒業したい。

「間食を増やすか。甘いもの」

「お菓子?」

今日のお菓子みたいなの?

生クリームたっぷり乗せたプリン?

バターこてこてのマフィン?

それともいい香りのチョコレート?

サクサクのクッキー?

もしかしてフルーツいっぱいのふわふわケーキ?

考えただけでも涎がじゅわーっ。

どれでもいいから食べたい!

「やっと笑った」

「お菓子は嬉しいですから」

ニコニコしてるとリカルド王子も笑う。

キレイな顔だから笑顔の方がいい。

悪どいのもジト目もだめ。

幸せそうな顔がいい。

「リカルド王子が笑ってるから嬉しいです」

お菓子と同じくらい好き。

絵本のお姫様と王子様みたい。

キラキラの蜂蜜色の髪とライトグリーンの砂糖をまぶした飴みたいな眼も好き。

美味しそう。

「かわ、」

いい、とまでは聞こえた。

眉間にびしりと亀裂入れて、スッゴい渋い顔で誉めてくれてありがとうございます。

どういう感情なのかは全く分からないけど。

「……うーん」

なんか唸ってるし、両手で顔を挟んで難しい顔しながらコツンとおでことおでこを当ててる。

ぐりぐりしてるし。

本当にどういう感情?

私はどんな気持ちになればいいの?

ルーラさんにぺろってされた時みたいでむずむずする。

恥ずかしいけど嬉しい。

飴をもらって誉めてもらった時にも似てる。

もっとしてほしい。

おねだりのつもりで私もぐりぐりって返してみた。

「いたた、」

「あっ、申し訳ありません」

強すぎて痛がらせちゃった。

馬鹿だなぁ、私。

リカルド王子のおでこが離れちゃった。

寂しい。

眉を下げてしょぼっとしてたら私の顔見て笑ってる。

「ふっ、くくっ」

ぐりぐりしてた私のおでこをリカルド王子が指でなぞってる。

顔が近づいたからもう一回してくれるのかな。

私からもおでこを寄せた。

ぐりぐりだと思ったけど違った。

柔らかい。

ふにふに。

チュッて聞こえる。

何回も。

あれ?

じっとしてたら瞼に顔が当たって目をつぶった。

チュッ、チュッてのもまだ聞こえる。

柔らかい感触も続く。

すごいふわふわで気持ちいい。

手に挟まれた顔もあったかくてぽわーってする。

おでこも頬っぺたも。

顔が気持ちいい。

ふわふわが当たる唇も。

「れ、」

「ん?」

ぬるってしたのが唇に当たった。

え、何これ?

てか、私は何されてるの。

そう思ったらバチって目が開いた。

「んん?ん?!」

うわぁあ!リカルド王子のドアップ!?
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