婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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23※リカルドside

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ラインが安心してスヤスヤ眠ってる。

本気でただの添い寝と思ったようだが、そんなわけあるか。

結婚してもうすぐ1年。

19才の健全な性欲は健在だ。

少しでも触りたいんだ。

起こさないよう優しく髪を撫でる。

薄い金に近い狐色の髪色。

細くて細かな毛先は触れると手触りがいい。

身体は抱き締めると甘い匂いがする。

少しずつふっくらしてきたのもいい。

眠るラインの額に唇を寄せた。

つるっとした白い肌。

泣きながら手入れをされてるようだが、効果は出ている。

艶と色の良さが増した。

胸の膨らみも育ってきて体がますます女性らしく変わってきた。

メイド長達に褒美を増やさねば。

しかし、こうまでこの娘を好むようになるとはなぁ。

全く予想してなかった。

出会った頃は年齢の割には細すぎてぎょっとした。

とうとうこんな娘まで担ぎ出したと父親に呆れたほどだ。

ちらっと見ただけでうんざりして帰れと追い返したのに、帰れないと泣いていた。

そういう命令だと言われて父親を含めた回りの強行策に呆れた。

幽閉という名の隠居をするつもりだったのに。

いらないから送り返したいと父親に手紙を出すと父親からも返せないと返ってきた。

縁談の提案をすると実家の伯爵家が食いついて逆に吹っ掛けてきたという。

四人も娘がいるから全員顔合わせさせてみましょうと。

気に入るなら全て貰ってくれと。

その代わり報償をねだってきたとあった。

互いの気持ちもあるし、一人でいい。顔合わせだけと言うのに周囲を巻き込んで話を大事にされたと愚痴が書いてあった。

特にひい孫を見たがるドルトムント公爵が躍起になって押さえられず、しかもあちらからも金を貰ったらしい。

四人の娘と言う割りには上の三人はとっとと婚約と結婚を決めるし、伯爵家の全員が上手いこと乗っかって周囲を唆した。

今までの見合いのように内密に話を進めていたのに勝手に四人めの末娘が輿入れすると広めてしまい、ここまで広まった噂に四番目の娘は他に行く宛もなくなったから引き取ってやれと父親が同情していた。

これで私が追い返したら中傷の的だ。

評判が地の底の私よりあの娘が的になる。

1日で追い返されたどんな娘かと。

帰る家もないと言うし、あのうちひしがれて泣いた様子なら帰ると絶縁か何か言い含められてるのだろう。

周囲もだが、とんでもない家だ。

そうこうしてるうちに勝手にメイドとして働き始めるし、このまま置いておけばいいかと思ったが、魔女顔負けの毒殺魔が身内にいる。

あの継母が結婚を受け入れて共に暮らしていると知ればろくなことしない。

調べれば案の定、烈火のごとく怒り狂って離宮で癇癪を起こしたと分かった。

私一人とやり合うなら負ける気はしないが、あの人は冷酷で私の周囲を攻撃していく。

私の側で仕える使用人は次々倒れるし、飼っていたペットもすぐに毒を飲まされて殺される。

もと婚約者のマリアナ嬢が苦しむのも見たくなかった。

大事な婚約者だったから。

婚約者と母への証拠を押さえられない。

押さえたとしても国を荒らしたくない。

以前拾って匿っているルーラも命の危険がある。

手が思い付かないうちに彼女を表に出して、下手に死なすのも本意ではない。

父と弟のことも。

二人の気持ちを考えれば言えなかった。

全てを考えた末に馬鹿息子を演じた。

責は私一人で済む。

この娘は平民に紛れて生きるつもりのようだし、そのうち屋敷の外へ出してしまおうと思った。

だが貴族でありながらあまりにも無教養で教育に手間がかかった。

あのままじゃ市井に降りてまともに暮らせない。

暇潰しのつもりで勉強を見てやると意外と楽しい。

たまに頭がパンクして泣きそうになるが、目を潤ませてぐっと堪えるのはいじらしかった。

青い瞳が朝日に反射する水面のように揺らめく。

泣くのも好ましいが笑うともっと。

性格がよく、我慢強く努力家でルルドラに似ている点も気に入った。

それだけだった。

女として好きになる要素はなかった。

肉が薄く細すぎて顔立ちは凡庸。

気まぐれに褒美で飴を与えたらいきなり輝いた。

隠れてひっそりとした雰囲気だったのに、朝日が部屋を明るく照らしたと錯覚するほど。

凡庸に見えた顔立ちは満開の花のように咲き誇る。

私も、側にいたメイド長も見惚れていた。

それからは屋敷でこまねずみみたいに働く娘を眺めて過ごした。

日に日に華やかさが増してひっそり隠れるような雰囲気は薄れていく。

若いからというより本来は華やかな気質なようで、どこにいても目立つ。

ラインに釣られてあっという間に屋敷は明るく変わっていった。

偏屈な庭師のトバじいさんまで孫を構うようにラインの相手をする。

いつもブスッとしてるのにラインの前なら溶けそうな顔で笑う。

隠居を決め込む私に釣られて屋敷は暗かったのに使用人達の表情は明るくなり、私も毎日会うのが楽しかった。

メイド長から使用人としての教育が終えると言われて屋敷から出すのが惜しくなってしまった。

ずっと雇えばいいかと思い直した頃にあの荷物。

メイド長が渋い顔で持ってきた。

原色と露骨なデザイン。

はっきり言って下品、下劣、低俗。

燃やせと言うとキレた執事長がさっさと暖炉に突っ込み、薬の類いは危ないから医師に処分を任せた。

その時にこんな派手なものより大人しい色とデザインが似合うとこぼしてしまい、側にいた二人が目を丸くしていた。

おかげでバレた。

私が女としてとても気に入ってると。

一人より人生の伴侶を得る方がいいと二人に語られることが増えた。

それでも気がかりな事が多いし、手放そうと思うがどうにも惜しい。

自分に沢山の言い訳をしながら、念のために下働きの中に隠して薬も持たせた。

先に私へ毒を盛られたのは予想外だったが、いい機会とも思えた。

私が消えれば丸く収まると安易に考え、察した執事長とメイド長に叱責を受けたが、治療を拒否して過ごしていた。

その間に二人は調理場の毒を見つけ、出所は王妃のお抱えの商会が絡んでることまで調べた。

王妃に怯えていたルーラも決心がついたと言う。

私とラインのために証言したい、もしこれで死んでも王妃の所業を肯定することになると強気だった。

あとは私の采配を待つだけだと三人に詰め寄られた。

それでも決心できそうにないと思っていたのに、好いた女の涙でああも気が変わるのか。

自分の現金さに笑ってしまう。

ずっと自分がいなければ私を挟んで国と家族が荒れることはないと考えていたのだから。

本当はもっと堂々と生きていたかった。

惚れた女が涙を流して生きてほしいと言うならその通りにしたいし、男冥利に尽きる。

いい理由になった。

もう継母はいない。

母の毒殺ははっきりした。

先日、あれは母と同じ毒を飲んだ。

全身が爛れて苦しみながら死ぬ。

もう助からない。

ルルドラには悪いが、生かしても益はない。

これ以上感情の赴くままに暗躍されても困る。

秘密裏に継母の実家の公爵家にも咎は与えた。

継母ひとりの暴走だと調べはついている。

現王妃の実家で三大公爵家の一つとは言え、凡庸な統主には暗躍の知恵はない。

むしろ他の貴族に比べて騙されやすい男だ。

ルルドラの後見としても頼りないから、もと婚約者のサーペント公爵家と結託させてバランスを取っている。

これで事は片付いた。

あとは怖がりのラインを囲うだけなのだが、どうにも私に堪え性がない。

気が急いて泣かせてしまった。

ルルドラの添い寝でも、しれっとイタズラしてしまうし。

以前、口の放り込んだ飴。

目隠しをして大きく口を開けたから本当は妙な気分だったのを思い出す。

ふにふにと薄く開いた唇をつついて遊ぶとパクパクと動いた。

「う、ん、……ルルドラ、王子……くすぐったい、です」

そう言ってプイッと横を向いた。

むにゃむにゃと寝ぼけてる。

びしりと眉間に力が入る。

「……この、兄弟喧嘩のもとが」

ルルドラに嫉妬するじゃないか。

やめろ、馬鹿。

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