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54※ルーラ
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王宮に戻ってメイド長に預かったお菓子を届けた。
「あら、素敵な髪止めね」
ツンツンとつついて後ろに着けた髪飾りをのぞきこんでる。
今日買ったのと聞かれて頷くと近衛隊長からかしらとあっさり当ててくる。
「はい。フォルクス様が快気祝いと仰ったからです」
出来るだけ平然と答えたけどすぐに何か察して目尻のシワを深めてニッコリ笑った。
「良いことよ」
なんでそんなに分かるんですか。
だいたい何がですか。
何も良くない。
私なんか。
「あの方なら素敵ね。私も若ければはしゃいでたかも」
メイド長が?
「意外そうね。私も若い頃があるのよ?」
そうよぎったのがバレた。
「想像つかないもので」
「ふふ。そうねぇ。もう昔だもの」
想う相手がいるのも楽しいことだと言われてもそんなの苦しいだけじゃないかと疑問が残った。
午後のお茶と一緒にフォルクス様が持たせてくださったお菓子を奥様のためにご用意した。
「わぁ、美味しそう」
あのお店の全種類。
焼き菓子からクッキー、ふわふわのケーキを全て並べてキラキラと色鮮やかに光るお菓子の山に奥様が喜んでる。
こんなにはしゃいで。
すごい可愛い。
自然と口許が綻ぶ。
寂しがりやな奥様のためお忙しいリカルド王子の代わりに私達も同席してお茶とお菓子を楽しんだ。
でも今日は席を外した方が良かったかも。
朝から晩まで一緒に過ごす私達の目新しい話題にこの髪飾りが選ばれてしまった。
「ルーラ、この髪飾り見たことないわよ。どうしたの?」
「ガラス?ビーズ?違うわね。小ぶりだけどちゃんと本物の宝石」
「近衛隊長の付き添いで出掛けたのにお買い物してきたのね」
「買っていただいたの?」
いいわねぇとそれぞれ口を揃えて言うけどこっちはだんまり。
「フォルクス様もご一緒に近衛隊長から快気祝いだそうよ」
メイド長の助け船に私も頷くと皆もそれ以上は言わなかった。
以前の私を知ってるから。
市囲に降りようにも寝たきりで動けない。
王妃の秘密を知る私の安否を気遣ってリカルド王子が別邸の屋敷で隠していた。
ここの使用人達が交互に私の面倒を見てくれた。
「ルーラさんは昔、何か病気だったんですか?」
知らないのは奥様だけ。
「奥様、使用人へのお言葉がよろしくありません」
「あ、はい」
質問を無視してたしなめると素直に返事している。
そのまま答えずにいると困ったように眉を下げて何か言いたそうに首をかしげて悩んでいた。
話したくない私の意思を奥様と皆は指摘せずにいてくれる。
「……そうね。私も皆さんに快気祝いをしたい」
「え?」
全員できょとんとしているのに奥様は気づかず、何にしようと言い出した。
「奥様、皆にとは?」
メイド長も不思議がって尋ねた。
「……えと、皆さん、体調を崩したことがあるでしょう?あの時の。……リカルド王子とご一緒に」
それでやっと分かった。
王妃の件。
「近衛隊長もその時のですよね?」
「ええ、そうです」
勘違いにすぐ乗っかった。
はっきり嘘をつく私にメイド長が叱るような眼差しだったけど、微かに頷いてこれでいいと合図を見せた。
不必要に知らせるなとリカルド王子からの指示。
泣き虫で怖がり。
貴族としての教養などなく穏やかな性格。
唯一、仕込まれたの針仕事と閨の作法だけ。
しかも貴族令嬢が学ぶような内容ではなかった。
普通の平民でさえ戸惑うようなことばかり。
爵位返上間近のライラック伯爵家。
先の代から傾いて、少し前までは売るものがないほど疲弊して、残すは爵位だけと私達使用人に聞こえるほど有名だった。
まさか日々の食事にも事欠いて子供らが自ら身を売るほどとはね。
最低、と心の中で舌打ちしてしまう。
貧乏に嫌気がさした奥様のご兄姉はああやって遊んだりお金を稼いだりしていた。
そしてそれを黙認していたライラック伯爵ご夫妻。
奥様の身分を騙ったことで陛下とリカルド王子に内情が判明した。
ライラック伯爵ご夫妻には爵位と子供らのどちらが大切かとお怒りになり、降爵の処罰を与えた。
でもご兄姉方には何も。
陛下の代理でライラック伯爵家を調べに向かったリカルド王子の付き添いでお供してその場にいた。
“子は親を選べない”
集められたご兄姉方にそう仰っていた。
ただ臣下でありながら王家の品位を落としたことは事実で、今後もそういったことをするなら処罰を検討すると諭していた。
あんな奴ら処分してしまえばいいのにと不満を見透かされリカルド王子はあのくらいでいいと仰る。
「目立つと良くない。ラインが慈善活動に熱心なおかげで何かと評判がいいのに。婚家の悪評で夫婦仲が巻き添えを食うのは面倒だ」
離婚になったらどうするとぼやいて真意がやっと分かった。
隠れて陛下の政務の肩代わりをされてるから予定していた政権の復帰を回りに気取られている。
これで婚家のトラブルが目立てば奥様が王家に相応しくないと騒ぎになるし、他家のご令嬢が新たに王子妃として担ぎ上げられてもおかしくない。
事業の譲渡まで気を回して爵位のお取上げを避けたのもそのためかと納得した。
「ルーラさん、じゃなくて、ルーラは何が欲しい?」
思い耽っていたら奥様に問い掛けられて顔を上げた。
「奥様からいただけるなら何でも嬉しゅうございます」
あの時、貰ったもので充分。
リカルド王子が奥様に持たせていたお薬。
一人で飲めばいいのに私に分けてくれた。
全部私に飲ませようとして、いらないと断ったら涙目でお願いだから飲んでと言っていた。
あれを作ったの私なの。
材料が特殊で1人分しか出来なかった。
王妃から隠れている間に何をさせられていたのか知りたくてリカルド王子のもとで薬草について学んだ。
あんな恐ろしいことに巻き込まれてたなんて。
体を壊すもの、殺すもの、頭をおかしくするものを多種多様にいくつも。
きっと使われた。
誰か殺してしまったはず。
知らなかったとは言え。
あの時、苦しめた薬も私が作ったものだったと思う。
回りより特にひどい症状が出たのは罰だと思った。
今考えると以前の服薬で体が影響を受けやすかったんだと思うけど。
「……うーん、何でも良いは困っちゃいますぅ」
へにゃりと眉が下がって情けない声を出すから私達はクスクス笑った。
「奥様から頂く飴で満足しております」
「私共はいつも頂いてますものね」
「奥様が頑張ったご褒美ですのに、いつも私共に配ってくださって」
あの時の飴のお茶は美味しかったと皆は微笑む。
皆、嬉しかったのね。
暖かい眼差しで奥様へ視線を向けてる。
私も。
でも奥様の一番は私。
あの時、私のために泣いて私にだけお薬を分けてくれたもの。
「あら、素敵な髪止めね」
ツンツンとつついて後ろに着けた髪飾りをのぞきこんでる。
今日買ったのと聞かれて頷くと近衛隊長からかしらとあっさり当ててくる。
「はい。フォルクス様が快気祝いと仰ったからです」
出来るだけ平然と答えたけどすぐに何か察して目尻のシワを深めてニッコリ笑った。
「良いことよ」
なんでそんなに分かるんですか。
だいたい何がですか。
何も良くない。
私なんか。
「あの方なら素敵ね。私も若ければはしゃいでたかも」
メイド長が?
「意外そうね。私も若い頃があるのよ?」
そうよぎったのがバレた。
「想像つかないもので」
「ふふ。そうねぇ。もう昔だもの」
想う相手がいるのも楽しいことだと言われてもそんなの苦しいだけじゃないかと疑問が残った。
午後のお茶と一緒にフォルクス様が持たせてくださったお菓子を奥様のためにご用意した。
「わぁ、美味しそう」
あのお店の全種類。
焼き菓子からクッキー、ふわふわのケーキを全て並べてキラキラと色鮮やかに光るお菓子の山に奥様が喜んでる。
こんなにはしゃいで。
すごい可愛い。
自然と口許が綻ぶ。
寂しがりやな奥様のためお忙しいリカルド王子の代わりに私達も同席してお茶とお菓子を楽しんだ。
でも今日は席を外した方が良かったかも。
朝から晩まで一緒に過ごす私達の目新しい話題にこの髪飾りが選ばれてしまった。
「ルーラ、この髪飾り見たことないわよ。どうしたの?」
「ガラス?ビーズ?違うわね。小ぶりだけどちゃんと本物の宝石」
「近衛隊長の付き添いで出掛けたのにお買い物してきたのね」
「買っていただいたの?」
いいわねぇとそれぞれ口を揃えて言うけどこっちはだんまり。
「フォルクス様もご一緒に近衛隊長から快気祝いだそうよ」
メイド長の助け船に私も頷くと皆もそれ以上は言わなかった。
以前の私を知ってるから。
市囲に降りようにも寝たきりで動けない。
王妃の秘密を知る私の安否を気遣ってリカルド王子が別邸の屋敷で隠していた。
ここの使用人達が交互に私の面倒を見てくれた。
「ルーラさんは昔、何か病気だったんですか?」
知らないのは奥様だけ。
「奥様、使用人へのお言葉がよろしくありません」
「あ、はい」
質問を無視してたしなめると素直に返事している。
そのまま答えずにいると困ったように眉を下げて何か言いたそうに首をかしげて悩んでいた。
話したくない私の意思を奥様と皆は指摘せずにいてくれる。
「……そうね。私も皆さんに快気祝いをしたい」
「え?」
全員できょとんとしているのに奥様は気づかず、何にしようと言い出した。
「奥様、皆にとは?」
メイド長も不思議がって尋ねた。
「……えと、皆さん、体調を崩したことがあるでしょう?あの時の。……リカルド王子とご一緒に」
それでやっと分かった。
王妃の件。
「近衛隊長もその時のですよね?」
「ええ、そうです」
勘違いにすぐ乗っかった。
はっきり嘘をつく私にメイド長が叱るような眼差しだったけど、微かに頷いてこれでいいと合図を見せた。
不必要に知らせるなとリカルド王子からの指示。
泣き虫で怖がり。
貴族としての教養などなく穏やかな性格。
唯一、仕込まれたの針仕事と閨の作法だけ。
しかも貴族令嬢が学ぶような内容ではなかった。
普通の平民でさえ戸惑うようなことばかり。
爵位返上間近のライラック伯爵家。
先の代から傾いて、少し前までは売るものがないほど疲弊して、残すは爵位だけと私達使用人に聞こえるほど有名だった。
まさか日々の食事にも事欠いて子供らが自ら身を売るほどとはね。
最低、と心の中で舌打ちしてしまう。
貧乏に嫌気がさした奥様のご兄姉はああやって遊んだりお金を稼いだりしていた。
そしてそれを黙認していたライラック伯爵ご夫妻。
奥様の身分を騙ったことで陛下とリカルド王子に内情が判明した。
ライラック伯爵ご夫妻には爵位と子供らのどちらが大切かとお怒りになり、降爵の処罰を与えた。
でもご兄姉方には何も。
陛下の代理でライラック伯爵家を調べに向かったリカルド王子の付き添いでお供してその場にいた。
“子は親を選べない”
集められたご兄姉方にそう仰っていた。
ただ臣下でありながら王家の品位を落としたことは事実で、今後もそういったことをするなら処罰を検討すると諭していた。
あんな奴ら処分してしまえばいいのにと不満を見透かされリカルド王子はあのくらいでいいと仰る。
「目立つと良くない。ラインが慈善活動に熱心なおかげで何かと評判がいいのに。婚家の悪評で夫婦仲が巻き添えを食うのは面倒だ」
離婚になったらどうするとぼやいて真意がやっと分かった。
隠れて陛下の政務の肩代わりをされてるから予定していた政権の復帰を回りに気取られている。
これで婚家のトラブルが目立てば奥様が王家に相応しくないと騒ぎになるし、他家のご令嬢が新たに王子妃として担ぎ上げられてもおかしくない。
事業の譲渡まで気を回して爵位のお取上げを避けたのもそのためかと納得した。
「ルーラさん、じゃなくて、ルーラは何が欲しい?」
思い耽っていたら奥様に問い掛けられて顔を上げた。
「奥様からいただけるなら何でも嬉しゅうございます」
あの時、貰ったもので充分。
リカルド王子が奥様に持たせていたお薬。
一人で飲めばいいのに私に分けてくれた。
全部私に飲ませようとして、いらないと断ったら涙目でお願いだから飲んでと言っていた。
あれを作ったの私なの。
材料が特殊で1人分しか出来なかった。
王妃から隠れている間に何をさせられていたのか知りたくてリカルド王子のもとで薬草について学んだ。
あんな恐ろしいことに巻き込まれてたなんて。
体を壊すもの、殺すもの、頭をおかしくするものを多種多様にいくつも。
きっと使われた。
誰か殺してしまったはず。
知らなかったとは言え。
あの時、苦しめた薬も私が作ったものだったと思う。
回りより特にひどい症状が出たのは罰だと思った。
今考えると以前の服薬で体が影響を受けやすかったんだと思うけど。
「……うーん、何でも良いは困っちゃいますぅ」
へにゃりと眉が下がって情けない声を出すから私達はクスクス笑った。
「奥様から頂く飴で満足しております」
「私共はいつも頂いてますものね」
「奥様が頑張ったご褒美ですのに、いつも私共に配ってくださって」
あの時の飴のお茶は美味しかったと皆は微笑む。
皆、嬉しかったのね。
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でも奥様の一番は私。
あの時、私のために泣いて私にだけお薬を分けてくれたもの。
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