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53※ルーラ
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「ほい、奥様達と召し上がると良いよ」
「ありがとうございます。こんなにたくさん」
案内されたパティスリーで皆の分もと言って近衛隊長の両手からはみ出るほど買ってくださった。
「多すぎません?何も全種類買わなくても」
さすがに近衛隊長が戸惑って眉を下げて尋ねてる。
「プライベートの使用人の数を考えたらこんくらいいるじゃん。お前ら近衛の分も買ってやったんだから文句言うなよ」
それは別に発注して後日届く予定。
「ルーラへの快気祝いでしょうに。なんだってこんな買うんですか」
「あー、そうだったね。買いすぎたわ。つい懐がぬくくて財布の紐が緩んじゃった」
「全部吹き飛んだんじゃないですか?」
「飛んだよ。ぱあーっとね。こうやって景気よく使うのが気持ちいいのよ」
けらけら笑ってふさがった手を気遣って馬車を雇ってくれた。
小窓から顔を出してお礼を口にするとまた眉が下がる。
「楽しみなよ。人生」
せっかく生きていたのだからと。
「そいつ、良い奴よ。オススメしとく」
「高い店でしたからね。皆にも伝えておきます」
言いよどんでいる横で本気ですっとぼけた近衛隊長。
奮発しすぎじゃないですかと付け足して。
フォルクス様はあなたのことを言ってるのに何を言ってるの?
「ぶはは。アホ」
「ふ、ふふ」
私もたまらず吹き出してしまう。
「え?何ですか?」
近衛隊長は私達の笑いが分からずきょとんとしてる。
「そいつ、こういう奴なんだよ。さすがに心配かなぁ」
「ふふ、出来る限りのことはいたします。でも期待なさらないでくださいませ」
「適当に構えば良いんだって。ほどほどに。気に入らなきゃポイよ」
気楽にしろと言われて肩の力が抜ける。
「俺もはよ帰って嫁ちゃんにお土産渡さなきゃ」
「え?ご結婚されてましたっけ?」
ぶら下げたお菓子の袋を大事そうに抱えて初耳だった近衛隊長は目を丸くしてる。
私も初耳。
私に興味を持たないのはもう他にお心にいらっしゃったからなのね。
では会った時からと思うと少し寂しい。
明るくて遠回しに気を回すフォルクス様が居心地よくて惹かれていたと自覚すると少し気恥ずかしい。
あれだけ近衛隊長を遠ざけていたのに。
「今度ね。やっとよ」
「もうそう呼んでるんですか?」
「悪い?」
「気が早いと言いたいだけですよ」
「嬉しくてさ。今度会わせるよ」
「ええ、ぜひ」
「やっぱりお前にゃもったいねぇからやめよかなー」
「どっちですか」
「独り占めしたい方なのよ、俺は」
近衛隊長の苦笑いに自慢げな笑みで返してる。
「二人とも気を付けて帰りな、バイバイ」
もう帰れと手を振られ馬車を進めた。
「奥様はどんな方でしょうね」
揺れる馬車の中でぽつりと呟くと向かいに腰かける近衛隊長が目をさ迷わす。
「さあ。恋人がいたと聞いたことがないし非婚主義だったのがああも変わるとは。どんなお相手か想像つかんが、よっぽどなのかな。何かこう、あるんだろうね。色々な魅力が」
何気ない相づちなのにチクリと胸に刺さる。
“私と違って”
勝手にそう付け足してみすぼらしかった頃の自分と比べて責めている。
思ったより慕っていたのか、単純に卑屈になってしまっているせいかしら。
今は微笑ましいと思っていたはずのリカルド王子と愛されて幸せそうなラインも羨ましい。
「……見かけより性格だろう。あの人に付き合えるんだから、うん、きっとそうだ。……似た者同士かもしれん。気を付けよう」
「え?」
「こっちの話だ」
渋く顔を歪めて唸って、そう言えば何度もフォルクス様にからかわれて右往左往していたなと思い出してまた口許が緩む。
見られないように手で隠してうつ向いた。
「……邪魔して悪かった」
「何のことですか?」
いきなり何?
「慕っていたフォルクス先輩から貰いたかったのだろう。横やりだった」
「え?」
私がいつフォルクス様を慕ったと言うの?
自然とそう頭に浮いて、惹かれていたと思ったけど多少だと気持ちがはっきりした。
どちらかと言うと羨ましい。
夫婦の幸せを得たことが。
何てことない。
回りの結婚が羨ましいだけ。
寂しく思ったのは独り身が悲しくなったからだ。
自分にはないものが欲しくなっただけ。
なんだ。そうかと一人ごちた。
近衛隊長の申し訳なさそうな様子を尻目に自分のことで頭が一杯。
「どうしても私から贈りたかった。私以外から貰ったもので喜ぶのは見たくなくて。その髪飾り。せめてもの思い出になったのに。私は気が利かない」
小さくぽつりと呟いて恥ずかしそうにうつ向いてる。
目をそらすから私が気にしていないことに気づいてない。
私より年上なのに。
そんな姿に心がくすぐられて、気遣う言葉の優しさの暖かさに嬉しくなった。
反発したいのに寂しさを自覚したらこのぬるさが居心地がいいと思えた。
でも私じゃだめ。
王宮での高い地位、貴族としての身分。
平民の子を成せない私じゃ釣り合わないもの。
近衛隊長の誤解を利用してこのまま言葉尻を掴んでなじれば嫌われるのは簡単だと分かるけど出来なかった。
嫌われたくない。
この優しさを手放したくない。
怖じ気づいてしまって意気地無しなのは自分ね。
この方を想えば離れるのが当然なのに。
……想えば?
違う、別に好きじゃないと心の中で言い聞かせる。
でもそれに反応して、嫌いじゃないと心が騒いだ。
「ありがとうございます。こんなにたくさん」
案内されたパティスリーで皆の分もと言って近衛隊長の両手からはみ出るほど買ってくださった。
「多すぎません?何も全種類買わなくても」
さすがに近衛隊長が戸惑って眉を下げて尋ねてる。
「プライベートの使用人の数を考えたらこんくらいいるじゃん。お前ら近衛の分も買ってやったんだから文句言うなよ」
それは別に発注して後日届く予定。
「ルーラへの快気祝いでしょうに。なんだってこんな買うんですか」
「あー、そうだったね。買いすぎたわ。つい懐がぬくくて財布の紐が緩んじゃった」
「全部吹き飛んだんじゃないですか?」
「飛んだよ。ぱあーっとね。こうやって景気よく使うのが気持ちいいのよ」
けらけら笑ってふさがった手を気遣って馬車を雇ってくれた。
小窓から顔を出してお礼を口にするとまた眉が下がる。
「楽しみなよ。人生」
せっかく生きていたのだからと。
「そいつ、良い奴よ。オススメしとく」
「高い店でしたからね。皆にも伝えておきます」
言いよどんでいる横で本気ですっとぼけた近衛隊長。
奮発しすぎじゃないですかと付け足して。
フォルクス様はあなたのことを言ってるのに何を言ってるの?
「ぶはは。アホ」
「ふ、ふふ」
私もたまらず吹き出してしまう。
「え?何ですか?」
近衛隊長は私達の笑いが分からずきょとんとしてる。
「そいつ、こういう奴なんだよ。さすがに心配かなぁ」
「ふふ、出来る限りのことはいたします。でも期待なさらないでくださいませ」
「適当に構えば良いんだって。ほどほどに。気に入らなきゃポイよ」
気楽にしろと言われて肩の力が抜ける。
「俺もはよ帰って嫁ちゃんにお土産渡さなきゃ」
「え?ご結婚されてましたっけ?」
ぶら下げたお菓子の袋を大事そうに抱えて初耳だった近衛隊長は目を丸くしてる。
私も初耳。
私に興味を持たないのはもう他にお心にいらっしゃったからなのね。
では会った時からと思うと少し寂しい。
明るくて遠回しに気を回すフォルクス様が居心地よくて惹かれていたと自覚すると少し気恥ずかしい。
あれだけ近衛隊長を遠ざけていたのに。
「今度ね。やっとよ」
「もうそう呼んでるんですか?」
「悪い?」
「気が早いと言いたいだけですよ」
「嬉しくてさ。今度会わせるよ」
「ええ、ぜひ」
「やっぱりお前にゃもったいねぇからやめよかなー」
「どっちですか」
「独り占めしたい方なのよ、俺は」
近衛隊長の苦笑いに自慢げな笑みで返してる。
「二人とも気を付けて帰りな、バイバイ」
もう帰れと手を振られ馬車を進めた。
「奥様はどんな方でしょうね」
揺れる馬車の中でぽつりと呟くと向かいに腰かける近衛隊長が目をさ迷わす。
「さあ。恋人がいたと聞いたことがないし非婚主義だったのがああも変わるとは。どんなお相手か想像つかんが、よっぽどなのかな。何かこう、あるんだろうね。色々な魅力が」
何気ない相づちなのにチクリと胸に刺さる。
“私と違って”
勝手にそう付け足してみすぼらしかった頃の自分と比べて責めている。
思ったより慕っていたのか、単純に卑屈になってしまっているせいかしら。
今は微笑ましいと思っていたはずのリカルド王子と愛されて幸せそうなラインも羨ましい。
「……見かけより性格だろう。あの人に付き合えるんだから、うん、きっとそうだ。……似た者同士かもしれん。気を付けよう」
「え?」
「こっちの話だ」
渋く顔を歪めて唸って、そう言えば何度もフォルクス様にからかわれて右往左往していたなと思い出してまた口許が緩む。
見られないように手で隠してうつ向いた。
「……邪魔して悪かった」
「何のことですか?」
いきなり何?
「慕っていたフォルクス先輩から貰いたかったのだろう。横やりだった」
「え?」
私がいつフォルクス様を慕ったと言うの?
自然とそう頭に浮いて、惹かれていたと思ったけど多少だと気持ちがはっきりした。
どちらかと言うと羨ましい。
夫婦の幸せを得たことが。
何てことない。
回りの結婚が羨ましいだけ。
寂しく思ったのは独り身が悲しくなったからだ。
自分にはないものが欲しくなっただけ。
なんだ。そうかと一人ごちた。
近衛隊長の申し訳なさそうな様子を尻目に自分のことで頭が一杯。
「どうしても私から贈りたかった。私以外から貰ったもので喜ぶのは見たくなくて。その髪飾り。せめてもの思い出になったのに。私は気が利かない」
小さくぽつりと呟いて恥ずかしそうにうつ向いてる。
目をそらすから私が気にしていないことに気づいてない。
私より年上なのに。
そんな姿に心がくすぐられて、気遣う言葉の優しさの暖かさに嬉しくなった。
反発したいのに寂しさを自覚したらこのぬるさが居心地がいいと思えた。
でも私じゃだめ。
王宮での高い地位、貴族としての身分。
平民の子を成せない私じゃ釣り合わないもの。
近衛隊長の誤解を利用してこのまま言葉尻を掴んでなじれば嫌われるのは簡単だと分かるけど出来なかった。
嫌われたくない。
この優しさを手放したくない。
怖じ気づいてしまって意気地無しなのは自分ね。
この方を想えば離れるのが当然なのに。
……想えば?
違う、別に好きじゃないと心の中で言い聞かせる。
でもそれに反応して、嫌いじゃないと心が騒いだ。
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