婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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65※ルーラ

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「ルーラ、ちょっといいか?」

メイド長のもとへ向かってたらいきなり呼び止められた。

「近衛隊長、急いでますので手短にお願いします」

「……分かった」

いつも通りの冷めた態度に戸惑ったのかもたついてる。

緩んだ態度なんか絶対見せてやらない。

「四日後にこのプライベートで祝いの席があるのは聞いたか?」

彼女から聞いた話。

自分達も参加と存じてますと答えると、どもりながら先日の試着した装いの話をされた。

「君に贈りたい」

もうすでに注文したと仰って唖然とした。

「……もう、買ったんですか」

「……答えを聞く前に悪いと思ったが、時間がない」

呆れる私に申し訳なさそうにされていた。

でも助かる。

着る服がないと悩んでいたもの。

ありがたく受けとることにした。

でも。

「お支払します」

「やめてくれ。贈りたいのに」

「支度金が出てますのでその分だけでも受け取ってください」

「いらん。黙って受け取ってくれ」

支払いますとしつこくと粘るとどうして君はそんなに意固地なんだと叫ぶ。

「君は野暮だ」

ブスくれて金は受けとらんからなと怒って行ってしまった。

こっちはわざと野暮なんですと心の中で言い返した。

奥様の部屋に行くと専属の私達以外に多くのメイド達で賑わって、奥様のクローゼットを引っ張り出していた。

「これは何事でしょうか?」

よく見ると奥様の物でないドレスや小物がたくさん並んでいる。

「おかえりなさいっ、ルーラさん!見てください!こんなにいっぱい」

「奥様、お言葉が」

「ごめんなさい、はしゃいじゃって。それより聞いてください!今度パーティーなんです!ルーラさんも一緒ですよ!」

たしなめるけど興奮してしまってる。

皆とパーティーだと喜んで、この山のような衣類は先程届いて、リカルド王子が私達を着飾らせるために女性ものの品をかき集めてくださったらしい。

「太っ腹」

思わず呟いた。

「奥様の装いはどちらでしょうか?」

「これにしました」

「お言葉が」

「はーい」

注意しても機嫌のいい奥様は間延びした返事をするだけでニコニコしてる。

可愛いからもういい。

それからトルソーにかけられたドレスを見せてくださった。

「まあ、可愛らしい」

定番のクラシカルなドレス。

でもご令嬢向け。

奥様という立場に不釣り合いだけどいいのかしらと内心は戸惑っていた。

今日、取り寄せた品なのか疑問だった。

「リカルド王子からの贈り物でしょうか?」

集められた装いの中から選んだと言うので首を捻る。

「これが着てみたくて。好きな装いを選んでいいとリカルド王子が仰ってくださったから。……似合わないかなぁ」

「いえ、とてもお似合いになると思います」

絶対可愛い。

間違いない。

「プライベートでのパーティーですから、気にされないでよろしいのですよ」

メイド長の言葉に奥様は安心して顔を緩ませた。

「きっとリカルド王子もご覧になりたいはずです」

可愛らしい奥様がお好きだからと他のメイドも添える。

リカルド王子も初めて奥様のご令嬢姿をご覧になると思い当たって、だからお許しになったのだと理解できた。

まだ明日もいくつかの別邸で保管しているドレスが届くそう。

それでも数が多くてどこからこんなに集めたのか同僚に尋ねた。

「亡くなったお母様のご実家にお願いしたそうよ」

「公爵家から?」

「古いものを譲ってもらったらしいけど、公爵家の品でどれも高価なものだから取り扱いに気を付けなきゃ」

特に奥様が選んだドレスは亡くなられたお母様がデビュタントの時に使用した思い出の品だから気をつけてと教えられた。

あり得ないけど全員で装いを取っ替え引っ替えの大騒ぎ。

奥様の前だと言うのに気が緩んで舞い上がっていた。

リカルド王子がもう寝ろと怒るまで。

執事長は全員で寝坊する気ですかとたしなめて、取りまとめのメイド長を叱ってた。

でもメイド長がお強い。

「女性の支度には時間がかかるんです。殿方だけの勝手に私達は大急ぎで支度を整えてますのよ。男性がこの部屋から出なさい」

二人を払って強気に鼻を鳴らしてた。

「あと四日、いえ、三日でパーティーの準備と若い子達全員の装いを整えるんですから。時間が足りません」

当日だけが忙しいと思われたくないわとご立腹。

ドレスが揃っていても身長や体型に合わない箇所は縫い直しをしなくちゃいけないし、緩いところは詰めて縫うか詰め物をして整える。

今も装いが決まって手が空いた人から奥様も一緒に針と糸で繕うのに忙しく、専属の針子に負けないくらい素早く縫い上げる奥様が一番張り切っていた。

ドレスの仕立て直しの他にアクセサリーや髪型の準備も。

特に髪型は誰が誰のを担当するか揉めてる。

気づくと疲れた奥様は針とドレスを握ったままソファーで熟睡されて、今夜は初めてリカルド王子の添い寝がなくのお休みとなった。

「明日、リカルド王子が不機嫌にならないといいけど」

奥様のお部屋を陣取って夜なべしてるからリカルド王子が部屋に入れない。

「奥様が喜んでるから何も仰らないわ」

心配してるのにメイド長はあっさり。

「リカルド王子はご機嫌な奥様がお好きだから大丈夫よ」

実際にその通りで。

翌朝も張り切る奥様を見て苦笑いをするだけ。

根を詰めて当日に熱を出すなよ、とそれだけを気にかけていた。

「あれを適度に休ませろ」

メイド長にもそれだけしか仰らない。

奥様も張り切りすぎて熱を出した前科があるから自分からもちゃんと気をつけてくださる。

昼間、皆が準備に奔放してる間は私と奥様は針子達に混ざって縫い物。

ルルドラ王子が遊びに来たけど初めて断っていた。

「ライン義姉様が働かなくてもいいじゃない。そういうのは使用人に任せなよ」

そう言って拗ねるルルドラ王子に当日を楽しみに待っていてと優しくなだめて送り返した。

「よろしかったのですか?」

ルルドラ王子にはとても甘いのに珍しい。

「うん。私だけ遊ぶのは嫌だし、せっかく役に立ってるんだもの。がんばりたい」

「針仕事は奥様の特技ですものね。お針子達に負けてません」

「うふふ」

そう言うと嬉しそうに笑っていた。
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