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67※ルーラ

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はしゃいでるというのは同意する。

メイド長と執事長も。

不備がないようにと厳しくなったけど同じくらい笑顔で冗談を仰ることが増えた。

雰囲気が柔らかい。

勤めてから初めてお二人が楽しそうに仕事をしてる。

「ライオネル、当日の段取りのことだけど」

「今度は何ですか?」

「料理の配膳は私達の対応になるのよね?」

「その予定ですけど」

「無理よ」

「どうして?」

「さっき献立を把握したんだけど配膳が多すぎるの。ある程度は動く予定だけどメイド達は全員お仕着せじゃないからいつものようにはできないわ」 

「なるほど、それは配慮不足でしたね。すぐにリカルド王子に話を通しておきます。他には?」

「ダンスタイムの演奏は私とあなたと、他にどなた?」

「陛下の使用人でダンスに参加しない方々と担当する予定です。定番の曲だけ。でもそれなりに打合せが必要ですね」

「メンバーのリストはある?」

「リカルド王子の部屋に預けてます」

「楽譜を渡すついでに軽く打合せしてくるわ。あなたは忙しいでしょう?」

「お願いします。あとで一度音合わせに集まるように段取りしてください」

「時間は?」

「私の手が空くのは夕方です」

「私が忙しいわ」

「ルーラ達がいるでしょう」

任せればいいと返す。

「心配が過ぎると過保護ですよ。それより久々なんだから楽器の練習しなさい。今さら弾けるか怪しいものです」

「あら、あなたこそ気を付けたら?」

「失礼。自分を含めてですよ」

お二人ともこうやってポンポンと会話が弾んで今までと雰囲気が変わられたことに皆気づいてる。

「メイド長は独身よね?ご主人を亡くしてからお一人を貫いて」

「執事長はご結婚されてたかしら?」

皆が興味津々。

「ルーラは知ってる?」

「何も」

離婚のことを気軽にしゃべれないから知らないと誤魔化した。

お二人のことは嬉しいの寂しいので半々。

これで本当に私が唯一の独身になるのかとため息が出た。

乗馬の練習がいらなくなったことも。

琥珀に染まった景色は諦めるしかなくて残念だった。

「ルーラ、来なさい」

「はい」

執事長に呼ばれてリカルド王子のお部屋についていく。

でもリカルド王子はご不在で、部屋の中央には女性もののトルソーが置かれていた。

そこにかけてあるものを見てご用意されたものが何かやっと分かった。

それとあまりの美しさに感嘆とため息。

「……綺麗」

「本当にそうですね。あなたが見つけた巨匠の作品だそうです。針や鋏を入れて手直しするのはリカルド王子がご遠慮されたので代わりにこちらを」

そこにはあのドレスとセットになるウェディングベールが飾ってあった。

透けるほど薄い絹の紗々。縁取りはドレスと同じ刺繍は銀。ドレスのものより大きな花と蝶の絵柄に彩られ、蝋燭の明かりに照らされて輝いている。

「先に来ていたか」

「リカルド王子」

眺めていたらお戻りになられた。

「君から見てどうだ?」

「美しさにため息ばかりです。それでこちらが奥様へのサプライズでしょうか?」

「そのつもりだがどうだろう。ご夫人の提案でね。結婚式をしてないのならという話だった。ディアナは喜びそうだと言っていたが君からも聞きたい」

ラインは喜びそうかと心配していた。

「きっとリカルド王子のお心遣いに感動されると思います」

「そうだといい」

どうにも自信がないご様子。

いつもの余裕が見られない。

「昼のパーティーのあとに二人で簡易の式をあげようと思う。装いに合うようにしてくれ」

奥様が選んだドレスはデビュタント向けの薄いピンクのかかった白。

お召し返せずにそのままでも合わせやすそう。

あとは髪型が合うようにすればいい。

メイド長と細かい打合せをしなくては。

「家族と君らの立ち会いを予定してる」

「あちらのご家族はいかがされますか?」

「呼ばない。あの件で王宮の立ち入りは禁止だ。あれが寂しがらながらないように頼む」

「かしこまりました」

少し可哀想に思えた。

家族との関係がいまいちのようなのに、時折懐かしそうに実家のお話をされる。

切り捨てるほどの憎しみは持っておられない。

まだご家族を慕ってるとリカルド王子もご存知なのね。

「ベールダウンはディアナと君でしてあげなさい」

「私まで、よろしいのですか?」

ご家族のみの特権。

メイド長なら分かるけど私までいいの?

「君らふたりとも娘か妹のように扱ってる。お互いかな?」

「ありがとうございますっ」

「あと、これは借り物だから終わったら梱包をしてくれ」

買い取ったものと思っていたので驚いた。

「ご夫人の亡くなった姉の作品らしい。ドレスと一緒に譲ると言ってくれたが、形見を取り上げるのは気が引ける」

私は鬼じゃないよと笑い、その微笑みにもちろん存じておりますと返した。

この方が皇太子であればよかったといまだに思う。

ご本人が望んでらっしゃらないからあり得ないことだけど。

私達のしたことがこの方のためなのか悩む。

でも今までの出来事全てがなければ奥様とご一緒にはなれなかった。

固い表情で笑うことのなかったリカルド王子。

目の前の蕩けるような笑みを見ればこれでよかったのだと納得できた。

「それと……」

モゴモゴと口ごもるから首をかしげた。

「……夜も、ムードというものを頼む」

やめて。吹き出しそう。

一番の期待はそれだと察してとっさに顔を伏せて隠した。

隣で執事長の目をそらす様子に同じように吹き出すのを堪えてるのが分かった。

肩が震えてるもの。

私も同じ。

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