婚約破棄騒動を起こした廃嫡王子を押し付けられたんだけどどうしたらいい?

うめまつ

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68※ルーラ

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戻ってからは急いで準備。

香りのいい蝋燭、ロマンチックな燭台。

回りに置く調度品も全て相応しいものに。

部屋を飾るお花は庭師に手配を頼んで、専属の針子達に作りかけだった新作の夜着を急いでもらう。

今回はこっそりの支度だから奥様の寝室ではなくリカルド王子の寝室を豪華に飾り立てた。

カーテンからシーツ、小さな調度品、目につくものは全て私達の選んだものに入れ換えて、シンプルを好むリカルド王子は華やかに変身した部屋をご覧になって固まってる。

リカルド王子の寝間着も豪華なものにした。

それが一番理解できないようで、私がこれを着るのかと唸っている。

「……ここまでするものなのか?」

「はい」

私達の真顔になんとも言えない表情。

これがお二人の初夜になるんですから。

もっと飾ってもいい。

頷くと諦めたようにため息をこぼす。

「……そうか。このくらい気を回さねばならなかったか。……本当に私は女心が分かっていなかったようだな」

「理解しようとされる姿勢が素晴らしいかと思います」

呆然としながら反省を口にするリカルド王子に執事長がすかさず合いの手を入れた。

でもまだ室内を眺めて悩まれてる。

「しかし、ライオネル。これは少々派手な気がして私は落ち着かない」

「リカルド王子、奥様がこのお部屋で過ごすのです。こちらのお花に囲まれた寝台、上等な天蓋のカーテンから見え隠れするお姿を想像してくださいませ。灯りには繊細さが演出できますように細いデザインの蝋燭をご用意し、お二人の邪魔にならないように配置しました。香りは仄かに香る程度。しとやかな、いつもと違った奥様のお姿をご覧になれますし、奥様はこの華やかな内装に感動されて初夜の緊張がほぐれるはず」

気後れしておられるリカルド王子に囁く。

それと、針子が初夜に相応しい夜着を支度してますとお教えした。

「お二人のお好みに合わせた可憐なデザインです。夜は昼と違った髪型で装いを考えておりますが、普段通りがよろしいでしょうか」

「好きなだけやれ。もっとしていい」

目の色が変わって見事な手のひら返し。

あとはリカルド王子が獣にならなければよろしいかと思います。

リカルド王子の機嫌の良さに奥様は、パーティーが楽しみなのだと誤解されていた。

前日まで忙しく、当日は朝から支度で大騒ぎ。

「ねぇー、私が使うアクセサリーを知らない?」

「ちゃんと順番に並べとかないからよ!どこに置いたの?!」

「コテを早く貸して。まだなの?」

「待って、何度やっても上手くいかないの」

「あなたの髪質じゃ無理って言ったでしょ?」

「してみたかったんだもの」

「貸して。やってみるけどどうかしら」

「だめなら似合うようにして」

「予備のピンはどこー?!足らないんだけど?!」

忙しくて奥様の目の前なのに口調が崩れてる。

だいたい支度も使用人の私達は自室か、別の衣装部屋をお借りして済ませようと思ってたのに、奥様は移動の手間を考えて自室を提供してくださった。

「皆、こうやって綺麗になるのねぇ」

1人先に身支度を終えた奥様は女の戦場を手伝いながらニコニコと楽しそう。

こういった経験も初めてで見たかったのねと子供っぽさが可愛くてこっそり微笑む。

皆の装いに感動して喜ぶお姿が可愛らしい。

そして装いも、やっぱり可愛らしい。

若い女性向けのデザイン。

白いデコルテ、小さく乗ったお顔に細長い首。

ふっくらしたけどもとの骨格が細い。

リカルド王子のお母様は背が高くてかなりスタイルが良かったみたい。

かなり身を詰めなくてはいけなかった。

でも定番のクラシックなドレスは奥様にとってもお似合いで、色とデザインが可愛らしい奥様をいつもより華奢で可憐に彩っている。

どなたにも合うようなデザインで良い品物だから、もしかしたら将来の娘に譲れるようにとお考えだったのかもしれない。

私達は忙しいということで会場は男達が従事してくれてるから支度に専念してる。

メイド長が無理と伝えた献立もセルフの立食が中心。

リカルド王子の提案で全員が自由に過ごせるように給仕の手間を大幅に省いてくださった。

陛下とルルドラ王子は物珍しさから喜んで受け入れてくださったそう。

「支度はよろしいですか?皆様のパートナーがお待ちですよ」

準備が整った順に部屋を出ていく。

エスコートは近衛の方々。

皆様も式典の時に身に付ける鎧姿でお迎えに。

「ルーラは本当にいいの?」

「……何が?」

同僚の問いかけに答える。

「隊長のお誘いをお断りして」

「奥様が優先よ」

私は奥様に付き従うつもりなのでエスコートは断った。

メイド長は演奏やら何やらでお忙しい。

だから私がお側にいなくては。

いくら内輪のパーティーでもあちらだって陛下のお側を離れるのは論外でしょうに。

私だってそうよ。

「もったいない。そんなんじゃいずれ愛想尽かされるわよ」

「その方がいいわね。私じゃ不釣り合いだから」

「まだそんなこと言ってるの?呆れた」

あなたはバカよと言われてムッとするけど、一瞬悲しそうに顔が歪んで怒る気になれなかった。

“君は意固地だ”

以前、近衛隊長に言われたことを思い出して少し落ち込む。

熱意にほだされてるところもあるけど同じくらい煩わしさも感じてる。

期待されても息苦しいもの。

結局、何も知らない無邪気な奥様のお側が一番落ち着く。

「皆、綺麗。絵本の世界みたい」

回りに見とれてキョロキョロする奥様がポツリとこぼす。

「リカルド王子が読んでくださった絵本の挿し絵」

部屋に飾って字の勉強にはそちらの文章を手本に書いてらっしゃる。

綺麗、と何度も呟くのを隣で聞くだけで満たされた。

「ライン、支度はいいかな?」

ノックが鳴る。

どうやら待てずにお迎えに来られたらしい。

部屋を訪れたリカルド王子のお迎えに恥ずかしそうに、でも幸せそうに奥様は微笑む。

お二人の側に控えて私も後ろからついていく。

絵本から飛び出したような二人のお姿に微笑んだ。

花と高級な家具、豪華な食器に食事に彩られた会場。

華やかな光景。

絵本の終わりには必ず載る文章。

“お姫様は幸せに暮らしました”

リカルド王子と奥様ももちろん同じようにそうなってほしいと願った。


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