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番外編※ラド
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やっと腕の怪我が治った頃、痕が残ると言われた顔の傷はつるつるに完治。
ディアナ姉さんは自分が立ち去る日までに新しい通いの女中を三人入れた。
お久しぶりですとそれぞれがディアナ姉さんに挨拶してたから王宮で勤めていたメイド達。
この三人は信用に足ると義父と話していた。
何かあれば私が後の処理をしますと言うから怖かった。
三人もディアナ姉さんの言葉にビクッと体が跳ねて顔を引き締めていた。
ルーラさんを含めたらひと月の滞在だった。
でもディアナ姉さんは世話人というより教師として招いたと義母達は理解してたから気疲れしてた。
教師と俺の世話、ルーラさんがこなしていた家庭の雑務を全てこなす。
女三人で担当していたことを一人で。
全員落ち込んだ。
お腹に子供がいる時に以前のように動けないのは当然。
義母は俺の不在に義父のサポートで忙しく義妹は若いうちからこれだけ実家の仕事と家庭を両立させて素晴らしいと評してた。
気分が変わりやすい三人はそれでころっとディアナ姉さん信者になった。
合間で俺と一緒に授業を受ける。
その中にアディも。
パパと一緒がいいって。
邪魔しないと言う約束を守っていつも静かに座っていた。
包帯まみれで腫れた顔が怖くないかって聞くとそれでもいいって言うんだ。
泣くほど嬉しい。
あとお調子者の義妹。
ディアナ姉さんの教えにかなり出来た気分になって王宮のメイドになりたいと懇願してた。
婚期が遅れるということと家族との交流を数年は制限されると話して諦めさせた。
諦めてくれてホッとした。
平気で盗み聞きしてスカート捲れても気にせず走る娘が勤められるはずがないし、コネで入っても絶対粗相をする。
下手したら家まで処罰が来る。
やめてくれよと内心で引いてたのに、ディアナ姉さんは素直で明るいからご夫妻は気に入る性格をしてると言う。
でも皇太子とは合わないときっぱり。
騒がしいのとそそっかしいのはお嫌いなんだって。
ご夫妻が歯止めになってるらしいけどかなり好き嫌いが激しい。
なかなか信用しないし、ご友人や側仕えとして気に入った者がまだいない。
唯一、父親の陛下と兄のリカルド王子。それと奥方だけだそうだ。
「とても敏い方でこちらの内心や算段を全て見抜いてらっしゃる」
「まだ10の子供が?」
「今年11になられたけど“見る”ことに関しては大人以上ね」
「……こわ」
「怯むと侮られるわよ。それも察するから」
俺はビビるのに義父は興味深そうに頷いてそれはそれで接しやすいと答えた。
「対等を求めてらっしゃるということかな。そして賢いのなら話すのが楽しみだ」
「……本気ですか?」
「男にはそういう時期があるんだよ。そこを隠さずにいるのは幼さだなぁ。ふふ」
「男の子ですからねぇ」
義父が笑えばディアナ姉さんも。
二人から見れば子供なのか。
私も賢さにかまけてそうだったと懐かしむ義父と息子達がそうだったとディアナ姉さんも同じように目を細めて思い出にふける。
「どれもライオネルよりマシですけどね」
「ライオネル殿のことはわからんが、リカルド王子の子供の頃より良さそうだ」
「そうですわねぇ。兄君と比べたらまだ幼くて可愛らしいと思いますわ」
「……うむ。子供らしくいられたことがあるのかと何度も、」
「クドーさん。今、あの方は幸せを得ております」
「そうでしたな。ふふ。どうやらとても可愛らしい奥方らしいですな?この間、奥方への贈り物を大層悩まれておりました。何億という金を扱い、即決即断で事に当たるのに贈り物は結局決まらずにお帰りなった。はは!」
「とても控えめで質素な奥さまでして。自身を着飾る宝石より孤児院へのお土産を用意した方が喜びますの」
「私の方から贈る物も悩みますなぁ。お近づきの印に何か贈りたかったのですが。そうだ、刺繍がお好きだとか。珍しい糸や布地を考えてましたがどうでしょうかね」
「そうですねぇ。お喜びになると思いますが、刺繍は寄付のためにつくってらっしゃるから。最近は花の株を増やして幾つかの院に寄付されてました。子供達で育てられますし、貴族向けの高価な苗なので育てば売れますから」
「ほぉ。花も好まれるのか。うぅむ、しかし」
「ふふ、ご自分のためではありませんの」
「そのようで」
本当に無欲な方なのだなと義父が困っていた。
「献身的な方なんだね」
良いことじゃないか。
なんでそんなに困るんだろう。
「無欲な人間がもっとも難しいのだよ」
そう言われていまいちピンと来なかった。
勉強以外に仕事が増えて慣れた頃、もうひとつの仕事を見せると言われて義父とふたりで出掛けた。
「ここは娘達には教えとらん」
着いてビビった。
ケバい夜会。
金持ちが火遊びするための仮面舞踏会で派手で露出の激しい客と給仕がワラワラ。
衝立やカーテンの影から赤面もののお遊びがかいま見えた。
そんな中に俺達は地味な仮面と地味な服装で参加だ。
なんだってこんなところに。
我が家に関係ないと戸惑うのに屋敷の所有は義父。
資金も義父だと教えられた。
「……バレないんですか?」
「存在は知らせているが中身はなぁ。ここの主宰は私が雇った男にさせてる。我が家が関わってるとは知られていない」
ディアナ姉さんは自分が立ち去る日までに新しい通いの女中を三人入れた。
お久しぶりですとそれぞれがディアナ姉さんに挨拶してたから王宮で勤めていたメイド達。
この三人は信用に足ると義父と話していた。
何かあれば私が後の処理をしますと言うから怖かった。
三人もディアナ姉さんの言葉にビクッと体が跳ねて顔を引き締めていた。
ルーラさんを含めたらひと月の滞在だった。
でもディアナ姉さんは世話人というより教師として招いたと義母達は理解してたから気疲れしてた。
教師と俺の世話、ルーラさんがこなしていた家庭の雑務を全てこなす。
女三人で担当していたことを一人で。
全員落ち込んだ。
お腹に子供がいる時に以前のように動けないのは当然。
義母は俺の不在に義父のサポートで忙しく義妹は若いうちからこれだけ実家の仕事と家庭を両立させて素晴らしいと評してた。
気分が変わりやすい三人はそれでころっとディアナ姉さん信者になった。
合間で俺と一緒に授業を受ける。
その中にアディも。
パパと一緒がいいって。
邪魔しないと言う約束を守っていつも静かに座っていた。
包帯まみれで腫れた顔が怖くないかって聞くとそれでもいいって言うんだ。
泣くほど嬉しい。
あとお調子者の義妹。
ディアナ姉さんの教えにかなり出来た気分になって王宮のメイドになりたいと懇願してた。
婚期が遅れるということと家族との交流を数年は制限されると話して諦めさせた。
諦めてくれてホッとした。
平気で盗み聞きしてスカート捲れても気にせず走る娘が勤められるはずがないし、コネで入っても絶対粗相をする。
下手したら家まで処罰が来る。
やめてくれよと内心で引いてたのに、ディアナ姉さんは素直で明るいからご夫妻は気に入る性格をしてると言う。
でも皇太子とは合わないときっぱり。
騒がしいのとそそっかしいのはお嫌いなんだって。
ご夫妻が歯止めになってるらしいけどかなり好き嫌いが激しい。
なかなか信用しないし、ご友人や側仕えとして気に入った者がまだいない。
唯一、父親の陛下と兄のリカルド王子。それと奥方だけだそうだ。
「とても敏い方でこちらの内心や算段を全て見抜いてらっしゃる」
「まだ10の子供が?」
「今年11になられたけど“見る”ことに関しては大人以上ね」
「……こわ」
「怯むと侮られるわよ。それも察するから」
俺はビビるのに義父は興味深そうに頷いてそれはそれで接しやすいと答えた。
「対等を求めてらっしゃるということかな。そして賢いのなら話すのが楽しみだ」
「……本気ですか?」
「男にはそういう時期があるんだよ。そこを隠さずにいるのは幼さだなぁ。ふふ」
「男の子ですからねぇ」
義父が笑えばディアナ姉さんも。
二人から見れば子供なのか。
私も賢さにかまけてそうだったと懐かしむ義父と息子達がそうだったとディアナ姉さんも同じように目を細めて思い出にふける。
「どれもライオネルよりマシですけどね」
「ライオネル殿のことはわからんが、リカルド王子の子供の頃より良さそうだ」
「そうですわねぇ。兄君と比べたらまだ幼くて可愛らしいと思いますわ」
「……うむ。子供らしくいられたことがあるのかと何度も、」
「クドーさん。今、あの方は幸せを得ております」
「そうでしたな。ふふ。どうやらとても可愛らしい奥方らしいですな?この間、奥方への贈り物を大層悩まれておりました。何億という金を扱い、即決即断で事に当たるのに贈り物は結局決まらずにお帰りなった。はは!」
「とても控えめで質素な奥さまでして。自身を着飾る宝石より孤児院へのお土産を用意した方が喜びますの」
「私の方から贈る物も悩みますなぁ。お近づきの印に何か贈りたかったのですが。そうだ、刺繍がお好きだとか。珍しい糸や布地を考えてましたがどうでしょうかね」
「そうですねぇ。お喜びになると思いますが、刺繍は寄付のためにつくってらっしゃるから。最近は花の株を増やして幾つかの院に寄付されてました。子供達で育てられますし、貴族向けの高価な苗なので育てば売れますから」
「ほぉ。花も好まれるのか。うぅむ、しかし」
「ふふ、ご自分のためではありませんの」
「そのようで」
本当に無欲な方なのだなと義父が困っていた。
「献身的な方なんだね」
良いことじゃないか。
なんでそんなに困るんだろう。
「無欲な人間がもっとも難しいのだよ」
そう言われていまいちピンと来なかった。
勉強以外に仕事が増えて慣れた頃、もうひとつの仕事を見せると言われて義父とふたりで出掛けた。
「ここは娘達には教えとらん」
着いてビビった。
ケバい夜会。
金持ちが火遊びするための仮面舞踏会で派手で露出の激しい客と給仕がワラワラ。
衝立やカーテンの影から赤面もののお遊びがかいま見えた。
そんな中に俺達は地味な仮面と地味な服装で参加だ。
なんだってこんなところに。
我が家に関係ないと戸惑うのに屋敷の所有は義父。
資金も義父だと教えられた。
「……バレないんですか?」
「存在は知らせているが中身はなぁ。ここの主宰は私が雇った男にさせてる。我が家が関わってるとは知られていない」
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