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番外編※ラド
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「……いやはや」
「……」
無言で頭を抱える親父と額の汗を何度も拭き取る義父。
正体がバレたからといって仮面を外さないルーラさん。
でもさすがに気まずいらしく俺達に背中を向けてる。
この空気を無視して烏は娘の手入れを熱心だ。
「……今夜のことは私から報告します。今後のことはどうなるか分かりません」
「それは構いませんけど。俺以外、皆さんご親戚みたいですし。その図体のでかいピヨピヨがあなたの息子だとは思いませんでしたよ。若く見えましたが、かなり年上だったんですねぇ」
じろじろ見つめる烏を一瞥してため息を吐いた。
「あなたが忘れるのは死ぬ時くらいでしたね」
「俺の記憶力はそうですね。蝙蝠の顔は見せてもらえなかったけど名前は聞けましたし。あぁ、でも外ですれ違ったら耳と爪の形で見抜けますよ。洞察力もずば抜けてますから」
振り返って睨むルーラさんにヘラヘラ笑い返す。
「声もね。いつもはもう少し高い声なんだな。ルーラ」
「気安く呼ばないで。うるさい烏。頭が痛くなるから黙っててよ!」
「叱るなら悋気を起こした自分の旦那に。なお悪いのはそいつだ。安全の意味を知らない子供だ。揉めるよりもお互いの素性を知らないってのが重要だったのに。そんな奴を連れてきて何もかもぶっ壊れちまいましたよ。どうするんですか?」
「……申し訳ない」
分からずにいたら親父が先に答え、義父も頭を下げた。
ふらっと烏は立ち上がって俺の側へ。
「理解できてない顔だ」
そう呟いた途端、いきなり拳が顔に降ってきた。
「ひいっ、」
咄嗟に縮こまって避けたけど、吹っ飛ばされて転ぶ。
床を這って烏から離れようとしたのに、分厚いローブの裾を踏まれて逃げられなかった。
脇腹にじわじわとめり込む踵の重みが怖くて固まった。
助けてほしいけど親父と義父は仕方ないと諦めて眺めていた。
「もし誰か捕まって白状させられたら?知らなかったら死ぬまでそれで通せたのに。下手に知ってると命が惜しくて口が軽くなるんだ。俺達はそういうのを相手にしていたんだよ」
だから仮面舞踏会を利用してお互いを隠していた。
仮面の下は知らなくていいと言った義父の言葉。
理解した途端、頭から血が引いた。
「このくらいで済ますけど」
それだけ言ったら俺から離れていく。
「すいません、でした」
声が震えた。
リカルド王子の、組織の根本を壊したんだ。
「知りすぎた俺はどうせ処分でしょう。マスターに伝えてください。俺を埋めるなら娘と一緒にって」
「332体のうち、どの娘だ」
「334人です。一番のお気に入りはこの子ですね。睫毛の本数や唇の色が全て生き写しです」
「印をつけておいてくれ。他人には見分けがつかない」
「蝙蝠、お前のを何か形見分けにくれよ。印にするから」
「私の?なんで私なんかの。その子に相応しくないわよ」
「お前が体張らなきゃどうにもならなかった。俺が役に立つのは記憶力だけだった」
コンコンとこめかみを叩く。
「……そう」
聞いても小さく呟いて肩をすくめただけ。
「おーい」
だんまりにしびれを切らしたようだ。
「さっきの私を見てその子に身に付けさせたいなら頭おかしいわよ。髪の毛一本譲らないから」
「はは、そうか」
「ふん」
「あーあ、俺達はどうなるんでしょうね」
「……」
無言で頭を抱える親父と額の汗を何度も拭き取る義父。
正体がバレたからといって仮面を外さないルーラさん。
でもさすがに気まずいらしく俺達に背中を向けてる。
この空気を無視して烏は娘の手入れを熱心だ。
「……今夜のことは私から報告します。今後のことはどうなるか分かりません」
「それは構いませんけど。俺以外、皆さんご親戚みたいですし。その図体のでかいピヨピヨがあなたの息子だとは思いませんでしたよ。若く見えましたが、かなり年上だったんですねぇ」
じろじろ見つめる烏を一瞥してため息を吐いた。
「あなたが忘れるのは死ぬ時くらいでしたね」
「俺の記憶力はそうですね。蝙蝠の顔は見せてもらえなかったけど名前は聞けましたし。あぁ、でも外ですれ違ったら耳と爪の形で見抜けますよ。洞察力もずば抜けてますから」
振り返って睨むルーラさんにヘラヘラ笑い返す。
「声もね。いつもはもう少し高い声なんだな。ルーラ」
「気安く呼ばないで。うるさい烏。頭が痛くなるから黙っててよ!」
「叱るなら悋気を起こした自分の旦那に。なお悪いのはそいつだ。安全の意味を知らない子供だ。揉めるよりもお互いの素性を知らないってのが重要だったのに。そんな奴を連れてきて何もかもぶっ壊れちまいましたよ。どうするんですか?」
「……申し訳ない」
分からずにいたら親父が先に答え、義父も頭を下げた。
ふらっと烏は立ち上がって俺の側へ。
「理解できてない顔だ」
そう呟いた途端、いきなり拳が顔に降ってきた。
「ひいっ、」
咄嗟に縮こまって避けたけど、吹っ飛ばされて転ぶ。
床を這って烏から離れようとしたのに、分厚いローブの裾を踏まれて逃げられなかった。
脇腹にじわじわとめり込む踵の重みが怖くて固まった。
助けてほしいけど親父と義父は仕方ないと諦めて眺めていた。
「もし誰か捕まって白状させられたら?知らなかったら死ぬまでそれで通せたのに。下手に知ってると命が惜しくて口が軽くなるんだ。俺達はそういうのを相手にしていたんだよ」
だから仮面舞踏会を利用してお互いを隠していた。
仮面の下は知らなくていいと言った義父の言葉。
理解した途端、頭から血が引いた。
「このくらいで済ますけど」
それだけ言ったら俺から離れていく。
「すいません、でした」
声が震えた。
リカルド王子の、組織の根本を壊したんだ。
「知りすぎた俺はどうせ処分でしょう。マスターに伝えてください。俺を埋めるなら娘と一緒にって」
「332体のうち、どの娘だ」
「334人です。一番のお気に入りはこの子ですね。睫毛の本数や唇の色が全て生き写しです」
「印をつけておいてくれ。他人には見分けがつかない」
「蝙蝠、お前のを何か形見分けにくれよ。印にするから」
「私の?なんで私なんかの。その子に相応しくないわよ」
「お前が体張らなきゃどうにもならなかった。俺が役に立つのは記憶力だけだった」
コンコンとこめかみを叩く。
「……そう」
聞いても小さく呟いて肩をすくめただけ。
「おーい」
だんまりにしびれを切らしたようだ。
「さっきの私を見てその子に身に付けさせたいなら頭おかしいわよ。髪の毛一本譲らないから」
「はは、そうか」
「ふん」
「あーあ、俺達はどうなるんでしょうね」
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