伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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27、作法

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「リリィ様、足元を見ずに踏めるようになりましたね。でももっとしっかり踏んでください!」

「失礼な男にはそうやってお相手してさっさと切り上げるのです!蹴る時も、ちゃんと脛を狙えば軽い力でダメージをあたえられますからね!」

「ええ~…もう可哀想よ。もう普通に練習しないと怒られるわ。」

こんな練習をしてると知られたら何を言われるかと心配になりました。

「私のことはお気になさらないでください。旦那様からあしらい方を教えるようにと厳重に申し遣っておりますから。」

「私たちもしっかり教えるように言われております。」

「え?なにそれ?私、知らないわ。」

どうやらお父様、ロットバルト夫人、家令、3人の厳命で私に男性のあしらい方を教えることになったそうです。
 
「これは少々過激ですがね。」 

ヨルンガが一言添えて、公にできないがこういうものだと教えてくれました。
こんな作法があるなんて知りませんでした。
それならしっかり覚えなくてはいけません。

一通り練習したあとヨルンガの足が心配なので、休憩を挟むことにしました。

「しっかり覚えてくださいませ。リリィ様は本当におっとりされてるから、あっという間に狼の餌食です。」

「ほいほい誘いに乗ってはいけませんよ。」

メイドがお茶の支度をしながら、羊の皮を被った狼は怖いのだときつく言い含めます。

「お姉様も習ったのかしら?」

あのお姉様がパートナーを踏みつけたり蹴ったりするのを想像して首をかしげました。

「ウルリカ様はよろしいのですよ。あまり夜会で踊られませんもの。」

「そうなの?」

「ご令嬢とお話されることが多いそうです。」

「それに隙がありませんものね。そんじょそこらの男には目をくれませんし。」

「やっぱりお姉様はすごいのねぇ。今日のうちにしっかり練習しなくてはね。ヨルンガとは今日までかもしれないし。」

「は?」
 
訝しげに3人が顔を合わせて私に注目しました。

「お姉様付きになる話が出たでしょう?」

「あのお話でしたら、きっと奥様がお許しになりませんよ。」

「そうかしら…お母様はお姉様の説得に弱いから。」

メイド二人が口ごもりました。
心当たりがあるからです。
お姉様は手に入るまで粘るのでいつもお母様が根負けしてお許しになります。
きっと今回もヨルンガをお姉様付きに変えることになるんじゃないかしら。

「私をリリィ様付きから外す場合は旦那様のもとに戻るように言われております。」


「そうなの?」

「申し上げたでしょう?私はリリィ様付きになりたいからこちらに来たと。」

メイドが抱き合って、純愛だわ!甘酸っぱいわ!と叫ぶから恥ずかしくなりました。


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