伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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26、練習

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「もうよしなさい。」

このままで良いと話を終えましたが、お姉様は食事のあとも退出するお母様を追いかけてあれこれと話しかけていました。

午後から、私とヨルンガは私のピアノの部屋でダンスの練習をします。

ホールはお姉様がピアノの練習をされるので使えませんから。

メイド二人が交代で曲を弾いてくれます。
二人は下級とはいえ貴族の出身です。
その為、時間がある時はこうやってダンスとピアノを練習に付き合わせていました。

ヨルンガとメイドがお手本を見せてくれるので分かりやすく、二人が素敵なのでうっとりしました。

「二人が素敵だから見てて楽しいわ。」

「リリィ様、私もお二人が踊ると見とれてしまうんですよ。」

さあ、交代ですと流れるような所作で私をヨルンガへと受け渡します。

「今の素敵ね。」

音に合わせてメイドと私はくるくる交代して遊びました。
ヨルンガも乱れることなく私たちの手を引いたり離したり器用にこなします。

気に入らない殿方から逃げる時はこうするんですよとステップに合わせて、スルッと抜け出し礼を見せて離れました。

ピアノを弾いているメイドが笑って、私は失礼な殿方の蹴り方を教えましょう、躍りながらはコツがいるんですよと楽しげにしていました。

「ヨルンガ様も付き合ってくださるでしょう?」

いたずらっ子のように微笑むメイド二人にヨルンガは顔をしかめつつ頷いたのでびっくりしました。

「そんな必要ないわよ。」

「リリィ様、世の中には不埒な男がいるんです。特にダンスの最中は断れないのをいいことに好き勝手する者が。」

「そうですよ。男は狼なんです。」

「おおかみ。」

「そう。狼です。」

「しっかり覚えてください。リリィ様、繰り返してください。男は狼。」

「お、男は狼!」

真剣なメイドたちに圧倒され言われるがまま繰り返します。
何かの比喩なのは分かりますが、想像つきません。
もうこれは夜会で踊らなければいいのでは?

「二人は極端なことを教えないでください。社交界には旦那様のような紳士もおられますが、そうでない者が混ざってると二人は言いたいのです。決して近寄る男を全てを蹴散らせと言ってるのではありませんよ。」

その後の練習では初めて相手を蹴ったり踏んだりして誉められました。

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