伯爵令嬢、溺愛されるまで

うめまつ

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31、辺境伯

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サラを走らせ、私たちはゆったり歩いて戻ります。

「あの馬車が通りすぎるだけならサラを走らせなくて良かったかしら。」

もしランディック家の馬車なら、お母様と交流があるのでこちらの家紋が見えて停まるのかもしれないと考えましたが、どうなのでしょう。
家紋に気づかないふりして、呼ばれるまで戻らなくてもよかった気がします。
これは私の希望ですが。

「念のためです。お知らせしとかないと嫌がられますから。」

「行っても不機嫌になりそうじゃない?」

「そうですね。」

以前はヨルンガを思い通りに出来なくてお怒りだったけど、最近は王都にいく日が近くなるにつれて、練習や勉学にのめり込みピリピリすることが増えていました。
 
お姉様がプレッシャーを感じていらっしゃるのではと皆で心配しておりますが、少しでも意にそぐわないと嵐のように荒れ狂い側に寄るのも憚られる状態になるので、私たちは戦々恐々と見守ることしか出来ずにいます。

唯一ヨルンガの優秀さは卓越しているようで、何かとヨルンガを呼びつけ対応させようとします。

お姉様の侍女がヨルンガに助言を求めてきて目の前で話を聞いても私にはさっぱりでした。

このように気難しいお姉様にどうしたらいいのかしらと考えていると、がらがらと車輪の音が近づいて追い越していきました。

「あら、無駄なことをと叱られそうね。」

「お嬢様、ほら見てください。あれは速度を緩めてるので停まりますよ。」
 
良かったじゃないですかと護衛が明るく告げます。

 
「えー、停まらないでいいのに!」

「へ?怒られないで良かったじゃないですか?なんで?」

思わずこぼれた心の声に護衛がキョトンとしました。

「リリィ様は人見知りなんですよ。」

「へぇ。いつも俺たちにも話しかけて元気なのに。意外ですね。」

「あなたたちは家族だもの。」

「へ?家族?俺がですか?」

「お互いを大事にしていたらそれは家族だってシスターレイが言ってたの。」

「はぁぁ?!いや、そんな。お、お、俺はただの護衛っすよお。仕事っすよぉ。」

「リリィ様の前で口調が崩れてますよ。しっかりしてください。否定したらリリィ様が悲しむのでやめてください。ありがたく受け取ってください。それともリリィ様に家族と思われて不満なんですか?お話なら私が聞きますけど?私としてはリリィ様の家族宣言に水を刺されてとても不愉快です。本当に許せません。」


「ないです!ありません!て、照れただけで、あの、その…ほ、ホントウニウレシイデス!光栄デス!」

「当たり前です。相手の気持ちを考えて発言してください。」

「すいません。」

ディーナより大きな体の護衛が叱られています。

その姿が孤児院の、小さい女の子に廊下を汚して、箒でおしりを叩かれた大きなお兄さんを思い出して懐かしくなりました。
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